ハーピィの国
ジェラ姉ちゃんの話を聞いてハーピィが気になっていた。
まず、温厚な種族かどうか知りたい。
そして、生活環境を知りたい。
可能なら湖をハーピィの国にしてあげればハイディも喜ぶ。
やっぱり1人ぼっちは寂しいよ。
よし、ハーピィを探しに行こう。
「ヴィーネ、ハーピィの集落が何処にあるか知っている?」
「勿論知ってるよ。母さん、やる気だね。行こう。転移魔法」
ここは森だね。
近くに湖もある。
なるほど。
これなら環境としては変わらない。
問題はハーピィの現状だ。
近くにいるハーピィに転移魔法してくれたみたい。
大人のハーピィは子供より更に色鮮やかな羽だよ。
顔はハイエルフに近いね。
話しを聞いてみよう。
「ねえ、ハーピィってどんな生活しているのか教えてくれないかな?」
「あんた吸血鬼じゃないかい?何でそんな事を聞くんだい?」
「羽を毟られていた子供のハーピィを保護したんだよ。だから助けてあげたいんだ」
「あんた達、子供のハーピィを保護したって言うの?私たちの羽は高く売れるらしくてね。人間や獣人に狙われるようになったのよ。本当は大空を羽ばたいていたいんだけど待ち伏せされるんだよ」
最低だね。
空を飛んだら目立つから後を付けるんだ。
そして、休んでいる所を捕まえる訳だね。
「私は記憶を覗いて攫われたハーピィを全て救う事が出来るよ。どうかな?今の集落に案内してくれないかな?」
「母さんの話は本当だよ。ハイエルフの国も作ってあげたんだから」
「ハイエルフの国を作っただって?あんた達、あの堅物に信頼されているのかい?ちなみに吸血鬼の女の子は分かるけど銀髪の子は何だい?」
私は見た目が吸血鬼だから分かりやすいよね。
ヴィーネは銀髪の女の子だけど雰囲気が普通じゃないからね。
「私は母さんの娘だけど、古代種ドラゴンだよ。変身しないと信じてくれないならするけど?」
「いや、あんた達が格上なのは分かっているよ。だから、話しているんだ。集落に案内するよ。飛べるんだろう?付いて来て」
なるほどね。
戦っても勝ち目がない。
逃げても逃げ切れる気がしない。
だから、話を聞いてくれたのか。
結果的には良かったけど、やっぱり種族が違うと難しいね。
え…。
何でこんな場所に住んでいるの?
石山の洞窟の中じゃない。
「どうして洞窟の中に住んでいるの?」
「戦えば負けないからね。大勢で守っているのさ。自由に飛び回れる時代じゃなくなったんだよ」
ハイエルフとほとんど一緒だ。
隠れるか戦うかの違いだけど攫われているんだ。
翼をもつハーピーが高い山の洞窟の中に隠れる。
飛んでいれば捕まってしまうから。
何でそんなに酷い事をするの…。
「ここが集落さ。まあ、何もないけどね。皆ここにいるよ」
「もう本気だよ!全員の記憶を覗かせて。攫われて生きている子は全員呼び寄せるよ」
「母さんはやっぱり優しいね。それでこそ母さんだよ」
少しだけハーピィの女性に笑顔が出た。
ずっと難しい顔をしていたから。
「そんな事までしてくれるのかい?分かったすぐに皆を集める。少し待って欲しい」
「いいよ。誰か攻めて来たら殺すから任せて」
「皆殺しだね」
世界を知れば知る程、人間と獣人の嫌な一面ばかり見えてくる。
全てがそうではないけど、これがジェラ姉ちゃんが見せたい世界なのかな?
私の予想では人を食べる種族もいると思っているけど。
どうなんだろう?
それを見て助けたいと思うのだろうか?
自然の摂理だから放置するのだろうか?
考えがまとまらないよ。
「皆集めたよ。本当は1000人ほどのハーピィがいたんだ。今はこのありさまだよ。100人にも満たない数しかいない。突然攻められたから対応できなかったよ」
何て酷い状況なの。
何故こんな事をするの?
考えるのは後にしよう。
「皆の記憶を覗かせてもらうね」
お母さん、何度も血を使うのを止めてごめんなさい。
皆を助けたいの。
心臓がゆっくり止まり銀髪が足下まで伸びる。
この姿ならヴィーネと姉妹に見えるね。
「あ、あんた本当に吸血鬼なのかい?」
「吸血鬼の真祖だよ。私の姿は気にしないで。この姿なら世界を見る事が出来るから」
「母さんの本気の姿だよ。君たちを本気で助けたいと思ったのさ」
何人生きているかな?
羽を毟って殺していない?
それとも成長を待っているの?
人間や獣人の考えが分からない。
皆の記憶を覗いて行く。
やはり遠くに散らばっている。
1つの国に集まっていない。
完全に商品だと思われている。
ふざけているよ。
みんな助けるよ。
召喚魔法。
絶対に羽を毟られている。
それだけじゃないかもしれない。
そんな姿を仲間に見せたくない。
範囲高位回復魔法。
お母さんの血を使うね。
心臓が動き出すと安心できるんだ。
お母さんの娘でいられるから。
「こんなに大勢をありがとう。本当にありがとう」
「翼が治ってるわ。また飛べる。狭い籠の中じゃない!」
「ああ、私の子供が帰って来た!」
皆が泣いて喜んでいる。
本当に良かったよ。
「どうかな?皆で私たちが住んでいる所に移住しない?湖があって森があって今は世界樹もあるよ。どうかな?」
「とんでもない環境じゃないか。私たちはハイエルフと敵対していない。世界樹を飛んでも大丈夫だと思う。お願いするよ」
「決定だね。みんな持ち物を持って集まってね」
「分かったよ。皆、新しい住処を用意してくれるみたいだ。移動するよ。恩人の言葉を疑う真似をするんじゃないよ」
「勿論さ。すぐに用意するよ」
「ああ、家族で暮らせるだけでいいんだ」
そうだよね。
家族で暮らすのが一番だよ。
良かった。
ハイディの仲間を助ける事が出来たよ。
孤児院の生活は悪くないと思うけど1人は絶対に寂しいよ。
「用意出来た。よろしく頼むよ」
「それじゃあ、行くよ。転移魔法」
リザードマンがいた湖に到着。
シェリル国のすぐ近く。
高台だから私たちの住む社も良く見えるよ。
「こ、ここを自由にしてもいいのかい?」
「ハーピィは魔獣は大丈夫なの?湖の周りを囲って魔獣が入れないようにできるよ」
「私が世界樹をここに植えてあげようか?果物の木もたくさん植えよう」
ヴィーネが優しい事を言っているね。
それより、世界樹って何本も植えていいのかな?
駄目なら後で考えよう。
「子供は飛ぶのが下手だからお願いするよ。湖の周りを囲って欲しい。世界樹って何本も植えれるものなのかい?あればハイエルフと何も衝突せずに暮らせるから嬉しいけど」
やっぱり疑問に思われてる。
私も疑問だけど社にも植えてるしいいよね。
駄目なら伐採だよ。
伐採!
「分かったよ、土魔法。ヴィーネあとお願いね」
湖の周囲と森を300m囲ったから魔獣は入れないね。
今いる魔獣は殺しておこう。
闇魔法。
「任せてよ、湖の近くにあったら綺麗でいいね。創造魔法【世界樹】。母さん、果物を適当に買ってくるからお金頂戴」
「そうだね。気になる果物適当に買ってきて」
時空魔法で取り出した5万ギルをヴィーネに手渡した。
「世界樹はどれだけ高くしたい?ハイエルフは100mくらいの高さにしたよ」
「高台にあるんだ。半分で十分だよ。とんでもない素敵な環境だよ」
よーし、世界樹に魔力を送っちゃうよ。
「50mおっきくなーれ!」
「えー?それで大きくなっちゃうのかい。あんたとんでもないね。滅茶苦茶だよ」
「母さん、果物買ってきたよ。適当にばらまくよー」
「ありがとう。果物、たくさんおっきくなーれ!」
完璧だ。
またまた完璧だよ。
森と湖しか無かったのに世界樹と果物林ができあがったよ。
「母さん、そろそろ言葉を考えてよ。魔法の呪文のように言うとかして。恥ずかしいから…」
「まだ慣れてないの?あと数回聞けば慣れるよ」
「まだ続けるんだ…、私は隠れてるね」
「照屋さんなんだから。可愛いから許しちゃうよ」
(私は母さんの言葉を許してないよ!)
「ん?小さな声でしゃべっても、聞こえなーい!」
「いいよ、自由にやってて。私はお風呂に入って寝てるからさ。じゃあねー」
あー、逃げたよ。
卵を投げつけた産みの親と同じだよ。
「こんな感じで生活はできそうかな?」
「ああ、十分だよ。これ以上の安息の地はないよ」
ハイディも呼んであげよう。
召喚魔法。
「あれ?ハイディ授業中だったのに。シャーロット様、ここどこ?」
「ハイディの仲間を連れて来たんだよ」
「本当だ!みんな一緒だ。1人ぼっちじゃないよ。ハイディ、1人じゃない」
「ここで生活しながら学校に通う?」
「うーん、大人になるまでは孤児院でいいよ。楽しいもん。1人じゃないって分かったから、それだけで嬉しい。シャーロット様、ありがとう」
「いいよ。ハーピィの他の子供たちも学校に通う?」
1人じゃないって安心できたから孤児院でもっと楽しめるね。
ハイディの笑顔が輝いていて良かったよ。
「楽しいよ。ハイディ文字も書けるように練習してるし、計算も練習してるし、魔法も練習してるんだよ」
「そんな環境があるのかい。何か条件があるのかい?」
「そうだね。名前は必須だよ。それだけ。名前を付けてくれれば通っていいよ。あと、学校の子供たち、人間や獣人やハイエルフや妖精やハイオークがここに遊びに来てもいいかな?」
「あんたの街の子供たちだ。それだけたくさんの種族がいて問題が起きてないんだ。信じるよ。私たちは名前が無いから皆で考えておくよ。街には結界が張ってあるようだけど、どうすればいいかい?」
土魔法。
北西の防護壁の端に降りれる様に道を作ったよ。
「この道は街まで降りれるようにしておくよ。歩いて来てもらうけど、それはいいよね?」
「ああ、それくらいなら大丈夫さ」
「私はここから見える社にいるから名前が決まったら訪ねて来てよ。皆に街を紹介するからさ」
「あそこだね。分かった。ありがとうよ」
「あと、何か不足とかあるかな?食べ物が足りないとか何か欲しいものがある?」
「森があれば大丈夫だよ。それに、果物まで用意してくれたからね。世界樹で暮らせるし最高の環境だよ。これ以上は贅沢さ。自分たちで何とかするよ」
「分かった。何かあったら社まで来てね。ハイディ、学校に帰るよ」
「そうだった。勉強中だったよ。ハイディ、帰らないと」
「じゃあ、またねー。転移魔法」
私は学校の教室に移動してクリスタの顔と睨めっこした。
怒ってますよね?
私の責任ですね。
「シャーロット様。生徒を授業中に誘拐されると流石に困ります」
「クリスタ先生、本当にごめんなさい。間違いなく私が悪いです」
「ハイディ、授業に戻るよ」
念話。
「北西の湖にハーピィの国を作りました。子供たちが学校に勉強に来るようになります。悪い事したらとんでもない罰があるよ。気をつけてね」
「ハーピィの国を作って来たのですか?完全に2つの教室を使う必要がありそうですね」
「クリスタ先生、よろしくね。今、一生懸命名前を考えて付けてると思うから、子供たちはハイディと湖に遊びに行ってきていいよ。ちゃんと約束をして来たからね。またねー。転移魔法」
クリスタから逃げるように社に帰った。
本当にジェラ姉ちゃんと似てるかも。
ヴィーネと同じ事をしてるし。
あれあれー!
ヴィーネちゃんが不貞寝してるよ。
もう、寝た振りしてるのバレバレ。
そうだ念話。
「ジェラ姉ちゃん。ハーピィの国を作っちゃった。もう必要ないから」
「また、私の暇潰し奪ったの?あんた達、いい加減にしなさいよ。ドワーフの国を作るわ。見てなさい」
ドワーフって何だろう?
初めて聞く種族名だ。
会った事が無い種族は気になるね。
「ヴィーネちゃん。ここにドワーフの国を作る意味ってあるかな?」
「もー、なーに?ドワーフは装飾品を作ったり工芸が得意だよ。大酒飲みだけどね。奴隷にされて仕事をさせられたりはしてないと思うから、国を作る必要があるのか分かんないよ」
「暇だし今度見に行こうよー」
布団に入ってヴィーネを突っつく。
「分かったよ。今度ねー」
不貞寝は続いたけど暫くすると抱き着かれるから、気にしないよー。
皆大喜びです。
街長は大慌てです。




