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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第2章 多種族国家シェリル

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克服

私たちは社の中で珍しい人と話していた。

国防隊と一緒に訓練をしていたハイエルフの1人だ。


「お願いにきました。私の名前ディルクです」


いつも通り社を飛び出して話を聞いたのだが、深刻そうな顔だったので中に招いた。

隣にはヴィーネが寄りかかっている。

暇な時はいつもくっ付いている。


私が子供の時もこうだったのだろう。

甘えん坊だよね。


「どんなお願いかな?」

「恐怖を克服したいのです。私は家族を守りたいので戦える勇気が欲しいのです」


難しいお願いだよ。

私にはお母さんのお陰で魔人の心と人間の心があると思う。


魔人は少し違う。

戦闘が本能と言ってもいいかも知れない。

だから、地下では戦っては死んでを繰り返しているかもしれない。


しかし、人の本能である恐怖とは生き残る為にある。


「ちょっと間違った解釈をしていると思う。恐怖は絶対に克服出来ないよ。恐怖を上回る何かをもって覆うしかないと思う。それが、家族愛なのかもしれない、種族愛なのかもしれない。戦闘に恐怖を感じないなんて、おかしい事なんだよ」

「では、私は家族愛が足りないのでしょうか?」


どうだろうか?

何か違う気がするんだよね。


「恐怖を感じた時、家族の事を考えなかったの?」

「はい。思い浮かびませんでした。私はその時に死んだと思ったのです」


即座に死ぬと思うほどの恐怖を感じた。

でも、家族を思わなかったのは何故だろう。


「ハイエルフの森に移動しよう。転移魔法(テレポート)


りんご林に移動した。

ここでなら誰にも迷惑は掛けないでしょう。


「今から軽い殺気を当てるよ。動けるかどうか見せてね」

「はい。お願いします」


私は魔獣が出す程度の殺気を当てた。

「これなら大丈夫です。日頃、森で感じていましたので動けます」

「それって、武器を持って戦えるって意味かな?」


なるほど。

分かった気がする。

たぶん殺気を放す魔獣を見ていただけで、戦っていない。


「いえ、私は魔獣と戦った事はありません。まだ若いからと外されていました」

「それが一番の原因だと思うよ。今まで家族を守って戦った事がないでしょ?」


「分かりません。本当に足が竦んで動けなかったのです。逃げる事も何もできませんでした」

「それって逃げる事が許されない状況だったんじゃないの?絶対に立ち向かう必要があったでしょ?」


「そうです。それが試験でした」

「じゃあ、勘違いしているよ。恐怖で動けなくて家族を思い出せなかったんじゃない。そもそも家族の事を考えていない状況じゃない。しかも、死んだと思ったと言っているけど、実際には殺されないとも思っていたんじゃないの?」


これだね。

長老に守られているから安心している。

恐怖を自分に直接当てられた事は今まで無かったと思う。


「あ、そうです。殺される事はないと思いました。長老が目の前にいたからです。私たちを殺すような試験をする事はないと思っていました」

「だからだよ。恐怖の克服とは別問題なんだよ。だって、守ってもらえると思っているじゃない。それは恐怖じゃないよ。ただの諦めだよ。違うかな?」


「あ!そういう事ですか。私は戦う事を諦めただけで恐怖と戦った訳ではないのですね」

「そうだと思うよ。恐怖と戦って愛する人を思い浮かべないのは無いと思うんだ。違う理由があるはずとも思った。そこで聞きたいんだけど、本当に戦いたいの?」


「それは、戦いたいと思っています。いつか家族を守る必要がくるかもしれません」

「じゃあ、甘えを無くさないと駄目だね。いつかって事は長老がいる間は戦う気がないのでしょ?それでは、いつまで経っても戦えないよ。まだ若いという事は自分より年上の先輩がたくさんいるんでしょ?ずっと言い訳が出来ちゃうよ?」


みんな勘違いしている。

考え方を変えたら戦えるようになれると思っている。

もしできるとしたら、その人は戦闘の天才だよ。


「では、今から戦えるようになるには、どうすればいいでしょうか?」

「それは無理だよ。心を鍛えないと戦えない。考え方を変えたから戦えるようにはなれないよ。何度も何度も戦って、恐怖と向き合うしか無いの。誰もが最初は戦えない、まずは向き合う所から始めるから。人間でも狩りをする時は必ず複数で行動し、その中に初心者をいれるんだ。その人はまず動けないんだよ、我を忘れて無茶苦茶な行動をする人もいる。そこから動けるまで訓練していくんだ。常に守られていたあなたは、まず恐怖と正面から向き合わないと。今までは観測していただけだからね」


「ですが、長老の組織する軍に入りたいのです。戦えるようになりたいのです」

「それは、家族を守る為に?それとも、同じ部族の長老が組織する軍に入れないのが恥ずかしいから?」


「そ、それは。両方あります。恥ずかしいですし見放されているという思いもあります」

「それはまた、恐怖とは関係なくなくなってるよ。同じ部族としての誇りでしょ?それはただの飾りだよ。誇りと恐怖は別物だよ。強大な誇りをもっていれば恐怖を覆う事もできるかもしれない。でも、そうでも無いでしょ?話を聞いている限りだと、恥を掻きたくない思いの方が強くないかな?」


「はい。ハイエルフにとって恥とは一生付いて回るものです」

「じゃあ、訓練しないと。言葉だけでは始まらないよ。一度魔獣と向き合ってみる?」


「はい。よろしくお願いします!」

「じゃあ、行くよ。転移魔法(テレポート)


グレートボアの前に移動したよ。


私は敢えて後ろに下がる。

相手の威嚇行動を見て動けるのかな?


「さあ、戦ってみよう」

「え、え、え。まま魔法をうううたなくちゃあああ…」


闇魔法(デス)

青年の目前に迫ったグレートボアは白目を剥いて横に倒れた。


「これが訓練。あなた達が今までしていたのは練習なんだよ。本当の殺気の前では無意味でしょ。どれだけ強大な魔法を放てようが動けなければ意味がないから」

「は、は、はい…。本当にそうですね」


「格下と思っても殺気を前にしたら動けない。それが本当の自分なの。訓練を何度も繰り返して動けるようにする。今日は動けなかった。今度は少し動けるようになるかもしれない。今まで魔法の訓練と、動きの訓練だけしてきたのでしょ?」

「はい。そうです」


「それでは戦えないよ。恐怖を感じていないから。お互いに練習だと思っている。命を懸けていないから。訓練は2つあると思うんだ。心を磨く事と、体を磨く事。あなたは体だけ磨いてきた。これからは心を磨けばいいんだよ」

「ですが、この訓練は1人ではできません」


「その通り。そして、恥ずかしいと思ったでしょ?勝てると思った相手に動けなかったのだから」

「はい…。魔法を放って終わりだと思っていました」


「じゃあ、恥を忍んで頼まないと。グレートボアと戦えるようになりたいと、長老にね。私だと恥ずかしさが足りない。自分と本気で向き合えない。見放されたと思う相手に頭を下げて、簡単だと思っていた訓練をお願いしないと駄目だよ」

「分かりました。まずは、ボアやグレートボアと戦えるようにお願いしてみます」


「頑張って。誰でも恥を掻くんだから。それを乗り越えて1人前になるんだよ」

「分かりました。一杯恥を掻いてきます。そして、その恥を打ち消して見せます」


「いい感じだね。じゃあ、戻ろう。転移魔法(テレポート)


りんご林に戻って来た。

「頑張って。恐怖と向き合う事は決して無駄にはならないから」

「はい、頑張ります!ありがとうございました」


ディルクは頭を下げて森に帰って行った。

頑張って欲しいね。


「母さん、どこまで優しいのさ。見てて驚いちゃうよ」

「娘が心を折った相手じゃなかったら、ここまでしなかったよ。あなたに心を折られても、お願いに来るだけの気持ちがあるんだから、立派だと思うよ。理由なんて何だっていいと思う。あなたの恐怖を知っても戦いたいと思った、その心が大切なんだよ」


「確かにね。1人でお願いに来たんだ。ハイエルフが()()()()()()()ね。勇気あると思うよ」

「でしょ…。私は頑張る人は応援したいんだよ」


「帰ろうか。転移魔法(テレポート)


ディルクは一度の機会を逃さなかったんだ。

とても偉いと思う。


皆恥を掻くんだから。

それで成長していくのよ、多分ね。


「あ、孤児院にグレートボア寄付してくるよ。忘れてたー」

「私は寝てるからね」


ヴィーネは1人布団に入った。

何て我儘な子なんでしょう。


私も手伝うって言うと思ったのに。

もう、本当に私にそっくりなんだから許せちゃうよね。

シャーロットは優しいですからね。

昔の人間の訓練方法を知っていたのが生きています。

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