お風呂を作ろう
一緒に寝ていた2人は同時に起きた。
やる事があったから。
前日に決めた約束。
お風呂を作ろうと。
2人が自分たちの為だけに作るお風呂、何故か魔法で作るのは勿体無いと考えていた。
理由は単純で暇なのにすぐ終わっちゃうから。
「さて、お風呂は掘らなくても作れるよね。綺麗な石でも並べる?」
「じゃあ、母さん。花崗岩使おうよ。あれで、床と浴槽を作れば綺麗だと思うよ」
「どこかに産地あるの?私は知らないよ?」
「あるよ!行こうか。転移魔法」
あれあれ?
ジェラ姉ちゃんが卵を投げてきた場所じゃない?
「気づいちゃった?火吹きドラゴンの炎にも強いんだよ。だから敷き詰めてるんだ」
「あー。盗っちゃうんだ。悪い子だねー!」
「私を投げ捨てた、産みの親より悪いドラゴンは、地下に眠ってる人だけだよ。これは、あの人の巣を破壊して拠点を潰そうという慈善活動だよ。ちゃんとドラゴンの里に帰ればいいのに、地上に近いここに帰るから被害者が後を絶たないんだ」
「是非持って帰ろう。とても大切な事だよ。流石ヴィーネだね」
2人は笑顔で行動に移った。
花崗岩の重さなど関係ない2人には全てを持ち運ぶ事が出来た。
「お風呂はこれだけあれば足りるんじゃないかな?」
「そうだね。じゃあ、最後に火魔法で温めておいてあげよう」
「名案だね。これでこそ、火吹きドラゴンの巣だよ。定期的に魔法を放つように魔石も置いとこうか?」
「最高だね。イライラしてここで寝転がった時に魔法が放たれるなんて母さんも悪いね」
2人で魔石をたくさん削り取って火魔法を入れる。
ただの嫌がらせだが2人はご機嫌だった。
最後に水の魔石を置いて水蒸気でモクモクにした。
2人は最高の笑顔で社に帰った。
「さて、境内の横に作ろう。十分な場所はあるからね」
「そうだね。2人のお風呂なら十分な大きさが作れるよ」
そこからの2人は職人だった。
丁寧に石を斬り裂き床と浴槽を作る。
社の横に花崗岩のお風呂という景観を無視したものが出来上がった。
「社に来た人に見られちゃうね。でも、木の板で隠すのはなんかねー」
「板じゃなくて木を植えちゃおうよ。低くて生茂るような木を植えれば見えないよ」
「名案だね。魔法で作っちゃう?」
「流石に木を抜いて植え直すのは大変だし枯れる可能性が高いからね。創造魔法【世界樹】」
世界樹を植えちゃったよ。
確かに低くても生茂ってるけど大胆だね。
「完璧だよ。流石私の娘だよ。世界一の親子には世界樹しかないよね」
「その通りだよ母さん。世界一の親子なんだ。世界樹しか選択肢がないよ」
「あとは、魔石を置く場所を簡単に作って、時空魔法、で社と出入り出来るようにしとこう」
「素敵だね。私たちのお風呂って感じだよ。魔石で発動させてるのがいいね」
人の魔法使いにはとてもできない芸当だけど2人なら簡単だよ。
何故ならできない事はほとんどないからね。
「結構頑張っちゃったね。お風呂に入って寝ようよ」
「そうだね。結構いい時間だね」
「ふぅ…。お風呂って気持ちいいね。今まで作ってばかりで入った事無かったよ」
「だと思ったよ。母さんは人の為に頑張り過ぎだよ。自分の為にも力を使わなきゃ」
「誰かなー。私の住処を綺麗にしてくれたのはー」
「優しい人がいるんだね。綺麗にしてくれたなんて」
「そうだね。火吹きドラゴンの住処を綺麗にするなんて、かなり善良な人だと思うよ」
「そう…。まあ、水蒸気が気持ちいいから許してあげるわ」
「そうなんだ。気持ちいい事まで考えてくれたんだね」
「そこまで尽くしてもらったらお礼を言うべきだよ」
「今度のお祭りにお礼に行くから。じゃあねー」
「もしかして本当に機嫌がいいかもしれないね」
「あの人単純だからね。多分ご機嫌だよ」
2人はとてもいい事をしたんだと記憶を上書きした。
「さて、体を綺麗に拭かないと社が濡れちゃうね」
「そうだね。それは大変だけど私たち体が小さいから簡単だよ」
2人の体は水をはじくほど艶々だ。
当然簡単に拭く事が出来る。
「じゃあ寝ようか。おやすみー」
「おやすみー」
今日は、とてもいい事をして、とても気持ちがいいお風呂も作った、最高の1日だったよ。
ジェラ姉ちゃんは水蒸気風呂でご機嫌です。
水の魔石でモクモクさせたのは奇跡的な判断でした。




