表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第2章 多種族国家シェリル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/425

閑話 ジェラルヴィーネ 国防隊

母さんはずっと悲しんでいる。

討伐隊の壊滅。

国防隊の力不足。

兵器として見られている。


この国の住民は母さんの努力を知らな過ぎる。

そして、母さんは国に対して口を出すつもりがない。


そこは、徹底しているから今更どうこう言う事じゃない。

問題は母さんが悲しむ事。

それだけだよ。


「長老。訓練を見せてもらうよ。私は母さんと違って優しく無いよ。分かってるでしょ?」

「ええ、そうだと思っていますよ。シャーロット様を悲しませたくないのでしょう。ですが、今の訓練を見たら確実に悲しみます。それは避けられないと思います」


やっぱりそうだ。

長老だってそう考えている。

つまり、()()()()()()()()んだよ。


国防隊が来たね。

一応グスタフも訓練しているんだ。


「今日は私が見学しているけど気にしないで。見ていたいんだ」

「そうですか。では、長老。お願いします」

「はい。他のハイエルフも呼んで始めましょう」


ハイエルフも国防隊も、ただの砂場遊びだよ。

滑って転んで遊んでるだけじゃない。

戦闘訓練とはいっても擦り傷程度。


母さんの技術を使えば負けないと思う。

でも、その技術が生まれた理由を考えて欲しい。


教えてもらった技術が簡単に手に入るものじゃないと知って欲しい。

これは、私の我儘なのかな?


この国には病院があり貴重な回復魔法が使えるレナーテもいる。

そして、母さんが控えている。


今は私もいる。


それなのにこんな訓練をしているの?

どうしてあの技術が生まれたのか考えてくれてないの?


誰でも強くなれる技術がそんなに簡単に思い付く訳がない。

母さんは何もしなくても強いんだよ。


人が強くなる為にどれだけ自分の体を犠牲にしてきたか…。

吸血鬼が人が強くなる方法を考えたり教えたりする意味を考えて欲しい。


自分たちの国を守る力が無いから教えてあげたんだよ。

今日の訓練が本気なの?


やっぱり母さんを帰して正解だよ。


「皆。聞きたいのだけど訓練は本気でしているのかな?国を守るつもりの訓練なのかな?」

「そのつもりです。何が足りないのでしょうか?」


「長老も国防隊も足りない。痛みが足りない。訓練した後も元気に帰れるでしょ?命を取り合う訓練をしろと言っている訳じゃないんだよ。皆は技術を習得しようとしているだけだよ。全く戦っていない。長老ですら技術を磨こうとしている。甘過ぎるよ。その技術が生まれた過程を考えたら、そんな生易しい訓練は出来ないはずだよ。国を守る戦いで誰にも痛みがない事は有り得ない。だって殺し合いなのだから。痛みのない訓練をしている皆は同格の敵と戦えるのかな?技術を磨いて自分たちが格上でいる事を意識しているだけ。違うかな?」

「その通りですね。同格の敵を想定していない。あくまで技術を磨き格上として戦うつもりでいる。ハイエルフはそれで子供たちを攫われてきた経験があるのに何という不覚。情けないですね。私ですらシャーロット様の考えた技術を磨く事に囚われて、本質を忘れていました」

「長老。本質とは殺し合いですか?」


グスタフは戦闘を知らないよ。

これじゃあ駄目に決まってる。


「訓練で殺し合いはしませんよ。なぜ技術を磨けば強くなれるかを考えていなかった。その過程がどれだけ苦しいかを忘れていました。実戦は技術ではありません。心持が大切です。今の訓練では身に付かないのです。あなた達はシャーロット様に攻撃できますか?ヴィーネ様に攻撃できますか?殺されるのが怖いでしょ?当然です。確実に殺されるからです。しかし実戦はその場面が起こり得る。なぜ最強であるシャーロット様が人が強くなれる方法を知っているか。つまり、自分の体で実験をしたんですよ。必要のない実験を繰り返した。そして、人が耐えれるであろう強化方法を考えた。そういう事ですね」


技術は血反吐の中からしか生まれない。

母さんの技を不適当に扱うのは許さない。


「そういう事だよ。皆は結果も知らずに魔力を頭に集める怖さが分かるかな?恐怖を知らない。痛みも知らない。これは、訓練じゃなくて練習だよ。子供たちがする練習。母さんに見せたくなかった理由は、その練習以下の訓練をしているからだよ。あなた達は母さんを土地神様と崇めている癖に、自分と同じ基準で考える。母さんは魔力を頭に集めると思う?魔力を体に延ばしていると思う?考えた事も無いでしょ?どれだけ甘い世界にいるのかを理解していない。昔は良かった。自分より強い魔獣に人が立ち向かっていたから、違和感なく手伝えた。今は何をしているの?同じ人に対しても立ち向かえない、動けない。他国の密偵は命懸けで攻めて来るのに、この国の人たちは何をしていたの?まだ勝てないから訓練していたの?」

「愚かですね。実に愚かですよ。シャーロット様が魔力を頭に集めたら死んでしまうでしょう。魔力量が違う事を理解していながら、同じだと考える。実に中途半端ですね。神だと崇めてお祈りするか、命を懸けるか。神様が命懸けで、自分には意味のない訓練方法を考えているのに、自分たちは何も考えない。これは、愚か過ぎて駄目ですね。解散しましょう。意味のない組織です。私にはそう思えました。何か訓練する意味はありますか?」

「今は他国に密偵を送る事も考えていますし獣人の里との連携も深めています。訓練は必ず未来に役立ちます」


本当に分かっていないんだ。

国防隊は役に立たないよ。


()()()()もん。


「それが、無意味だと言っているのですよ。私より強い方はお2人だけではありませんよ?あなた達は戦うのですか?戦わないでしょ?意味ないじゃないですか。シャーロット様には大恩があります。私が組織しましょう。それでは駄目ですか?」

「ハイエルフを中心とするという事ですか?」

「もう止めなよ。無意味だよ。ハイエルフを中心とすると思った時点で、自分たちは選ばれないと思ったんでしょ?それが答えじゃない。ハイエルフには戦士が残っている。国防隊に戦士はいない。そして、ここまで手厚くされても戦士になれなかったからもう駄目だよ。悔しいなら長老が作る組織に実力で入ればいいじゃない。実力が全てだよ。種族じゃない。私のお婆ちゃんは人間で、母さんは吸血鬼で、私は古代種(エンシェント)ドラゴン。種族で判断なんてしていないじゃない。国防隊で立候補する人は、長老か私に立ち向かえばいいだけだよ?目の前にいるよ?簡単じゃない」


「その通りです。私は新しい技術の嬉しさのあまり、本質を忘れてしまいましたが、あなた達には無理です。恐怖に立ち向かう勇気が無いですから。私が組織すると言っているのは、絶対に守ると言っている訳ではありません。絶対は不可能なんです。それでも、その危機に立ち向かえる戦士を集めると言っているのです」

「本当の恐怖というのは、こういう事だよ」


力を少し解放する。

死なないぎりぎりの殺気を国防隊に放つ。


「動ける人いる?長老はこの状態で動ける人を探しているだけだよ」

力の解放を止める。


「さて、シェリル国とハイエルフの国の両方を守れる戦士を探さなければいけませんね」

「お願いね。私は母さんの所に帰るよ。転移魔法(テレポート)


社の中で座っていた母さんに声を掛ける。

「ただいま。国防隊に戦える戦士はいなかったよ。長老が新しく組織してくれるから大丈夫だよ」

「そうだよね。彼らは自分の能力を自慢したかっただけ。国を守る気なんてなかったよね」


「大丈夫だよ母さん。私が一緒にいるから色々考えて行こうよ」

「そうだね。長老に任せて様々な種族の国を作ろうか?目に付いた国で助けれる孤児は助けよう。そして、ハーピィを先に見つけよう」


「そうだよ。やれることはたくさんあるよ。せっかくだし楽しんでやろうよ」

「本当に娘らしくない事ばっかり言うんだから。どっちが母親か分からないじゃない」


私は母さんの娘だよ。

心が温かい魔力をたくさんもらったもん。

母さんを悲しませる人は私が絶対に許さないよ。

国防隊のやる気のある人は、格好を付けたいだけの血の気の多い獣人でした。

でも、恐怖と戦おうとはしませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ