閑話 マリアンネ 侵入者
「皆、私に娘が出来たよ。産みの親はジェラルディーンだけど、私の魔力で孵化したから私の娘なんだ。名前はジェラルヴィーネ。ヴィーネって呼んで仲良くしてあげてね。5000年以上の知識があるから母親の私より賢いよ。難しい質問にも応えれると思う。またねー」
区長会議の前にシャーロット様からの念話が国民に入った。
これなら話がしやすいと思う。
「区長会議を始めよう。今、念話で紹介があったが、新しい住民が社にいらっしゃる。皆も変な扱いをしない様に注意して欲しい」
「最強なんじゃねーか?」
「そう思うわね。雰囲気で揶揄う人もいないでしょう」
「そう思いたいね」
さて、どうだろうか?
私には1つの不安がある。
彼女はどちら側なのだろうか?
腰まで届く綺麗な銀髪を靡かせて、少女が気配もなくそこにいた。
切れ長で先を見通すような透き通った灰色の瞳。
何時からいたのか分からない。
誰も気付かなかった。
目の前にいるのに…。
どれほどの力を秘めているのか。
恐怖で寒気がする。
「やっほー。噂のヴィーネです。皆様にお願いがあって来ました。母さんが悲しむ前に言っておくね。これ以上、母さんを兵器として見ないで。母さんは気付いているよ。私は母さんに付いて行くから安心して。会議を邪魔してごめんなさい。よろしくお願いしますね」
そう言って音もなく去って行った。
最悪だ。
気付いていなかった。
心の奥底で、当たり前だと思っていた。
「私は最低だ。完全に兵器として見ている。まずいぞ。人のできる事を人がしていない。大軍に攻められる前に対処出来た。密偵の対処も当然できないといけない。そして、心の奥底では何かあったら助けてくれると思っている。何でもできる便利な兵器だな」
「その通りだぜ!本気でまずいぞ。当たり前過ぎて気付いていなかった。普通に守ってもらっていたから気付けなかった。選別の時より質が悪いかも知れない。当たり前だと思っているからだ」
国防隊の戦力増強も、そもそも国防隊がまだ弱い。
余りにも未熟過ぎる。
敵を殺すシャーロット様を見て、安心している私たちに釘を刺しに来た。
それも当然の話だ。
娘が母を思って言っただけだから。
何も間違っていないし、間違った事を言っていない。
「国防隊とハイエルフとの合同訓練を実施しよう。私たちは未熟だと認めよう。恥を忍んで頼むべきだ」
「ああ。そうさせてもらう。長老に縋る事になるかもしれないがシャーロット様に縋り続けているより真っ当だと思って話してみる。そして、シャーロット様のお陰で獣人の里との連携が、かなり上手くいっている。有効利用してみたい。情報を自分たちだけじゃなく獣人の里からも集める」
「あと、できるのは…。シャーロット様の子供の保護をどれだけ自由にさせてあげられるかだ。孤児院と教師の人選はかなり厳しいがやるしかない」
「私は研究でしか役に立たない。たくさん食糧を確保できる仕組みを考えるよ」
「私は服飾関係を中心に頑張らせてもらうよ」
「全力で事に当たろう。私たちの縋り方は一番質が悪い。土地神様を兵器として見るなどあってはいけない事だ。何度も反省しているが甘さが抜けていない。今を持って甘さを捨てる、皆もよろしく頼む」
「ああ、本当に甘えていた。甘え過ぎていたんだ。肝に銘じるぜ」
「俺も出来る事は全てやろう。それが当然だからだ」
「シャーロット様が何人孤児を連れて来ても綺麗な服を着せてあげられるように頑張るよ」
「研究をさらに追及しよう。国を守る為に必要なら兵器を考えてもいい。いつでも声を掛けてくれ」
「よし、今から全力で動くぞ!全員頼んだ」
私の不安は本当に馬鹿なものだった様だ。
何がどちら側だ。
兵器として、どちら側か気にしていただけじゃないか。
本当に忠告しに来てくれたんだ。
感謝しなければいけない。
忠告です。(脅しです)




