謎の声と娘
「た・け・くださ・。おねが・しま」
「だれ・た・けて!」
うーん。
問題の予感がするけど放置はできないんだよ。
お母さんの性格なのかな?
マリアンネに言っておこう。
念話。
「マリアンネ、誰かが助けを呼ぶ念話を私に送ってくるんだけど見に行っても大丈夫?」
「はい。助けるのがシャーロット様ではありませんか。ご無事をお祈りしております」
そんな風に思われているのか。
じゃあ、助けに行かないといけないね。
うーん…。
どこだろう?
地上じゃない。
地下は有り得ないよね?
空かな?
探知範囲を上空1000kmにして…、いた。
ジェラ姉ちゃんが言っていたドラゴンの島かな?
転移魔法。
「やあ、助けに来たよ?」
ああ、最悪だよ。
「助けて―。お願いだよー」
厄災だったよ。
「何しているの?」
「卵を地熱で温めないといけないけど、今は時期が悪いんだよ。ハイエルフの国を作るって約束しちゃったからさ」
何言ってるんだろ?
まさか産卵で動けなかったとかかな?
「どうすればいいの?」
「卵を温めてくれればいいよ。地熱じゃないと孵化しないけどシャルなら地熱の温度も魔法で出せるでしょ?お願いだから温めてよー」
何だか嘘くさいな。
演技のような気がするよ。
「大体3500℃くらい?」
「もうちょっと頑張ってよ。ダンジョンの瘴気で地熱も上がっているの」
「じゃあ、5000℃かな?」
「そうそう、お願いよ。まったねー」
ええーー!
私と同じくらいの大きさの卵を投げ渡して逃げたよ。
とりあえず社に帰ろう。
転移魔法。
さて、結界を3重にすれば大丈夫かな?
一番大きな魔石に火魔法を入れて3重結界。
外に熱は漏れてないね。
急いでやる事もないし魔石に魔力を送って発動を早めよう。
燃えてるねー。
良かったよ。
たぶん温度は大丈夫だと思うんだけどね。
これ以上の火魔法は危険だから使えないよね。
1日経過…、あれ?
1週間経過…、あれあれ?
1カ月経過…、ちょっとー?
孤児院が落ち着くまで様子を見ようと思っていたからいいけど、私を拘束し過ぎじゃない?
そして、私って実は暇過ぎじゃない?
あー!
卵が動いているよ。
産まれるのかな?
ポロ。
ポロポロ…。
パリパリパリ。
ウギャー。
よし、魔石の魔法を火魔法に変更。
結界解除。
魔石回収。
「おはよう。私はシャーロットだよ。君の名前は何かな?」
「流石に産まれたばかりで名前は無いよ、母さん」
小さな銀色のドラゴンに母さんって言われたよ?
「え?」
「え?」
「私が母さんなの?」
「だって、母さんの魔力で温めてくれていたじゃない」
「地熱の温度がどうとかジェラ姉ちゃんが言っていたけど…」
「あれは、魔力の消耗を嫌ったドラゴンが暇潰にダンジョンに潜るんだよ。そうじゃなかったら空に国があるのおかしいじゃない」
やっぱり演技だったんだ。
私の魔力で孵化させて何を考えているんだろう。
それよりこの子、私よりきっと賢いよね?
「ちなみに君は男の子?女の子?」
「ドラゴンは好きな姿になっているだけで雌雄はないんだよ。産みの親のジェラルディーンは女性の格好が好きなだけだよ」
ジェラ姉ちゃんが産みの親になってるよ。
完全に私が母親なんだ。
私まだ子供なんだけど…。
「名前は私が考えればいいのかな?」
「そうしてくれると嬉しいなー」
「じゃあ、ジェラルヴィーネ。女の子の名前にしたから、愛称ヴィーネって呼ぶね」
「はーい。女の子になります!」
ハイエルフといい、ドラゴンといい、恥を知りなさい。
頭いいのにこういう所がおかしいんだよね。
「ちょっと待った。私のでいいや。これ着てよ」
「分かったー。よいしょ、よいしょ、っと」
「不思議だね。黄色い髪じゃないんだ?」
「母さんの魔力が影響するからね。銀髪だよー」
「それで、これから何するの?」
「何すればいいかな?」
「ドラゴンは何してるの?」
「何もしてないよ。暇潰しにダンジョンを荒らしてるくらいだよ」
とんでもない種族だよ。
何で暇潰しに殺害するの?
魔物だからいいのかな?
「ご飯は何食べるの?」
「いらないよ。自然の魔力で十分。母さんの魔力を偶にねだるかもしれないけどね」
「じゃあ、学校行って勉強する?」
「わたし。5000年以上生きた知識あるよ?」
やっぱりそうだよね。
そんな事を言ってたもん。
「私より知識あるじゃない。できない事ないんじゃないの?」
「まあ、産みの親と同じ程度の事は出来るよ」
「それなら、ここでゴロゴロしてよう」
「それでもいいけど母さんは孤児を助けたいんだよね。手伝ってあげるよ」
「そっか。じゃあ、そういう時とか子供と遊ぶ時とか一緒に行動すればいいね」
「それでいいよ。母さんの隣が一番落ち着くからね」
子供同士にしか見えないよ。
「街長に紹介しないといけないね。転移魔法」
街長室に移動。
「マリアンネ。厄災のドラゴンの子供の母親になっちゃった。ヴィーネって呼んでね」
「よろしくね。5000年以上の知識があるから何でも聞いてよ」
「はぁ…。本当に辞めたいなー」
「ほら。すぐこうやって言うんだよ」
「母さんの常識が足りてないんだよ。私は厄災と違って勝負とかしないから大丈夫だよ」
「それだけで安心です。よろしくお願いします」
「じゃあ社に帰ろう。転移魔法」
念話。
「ジェラ姉ちゃん、産まれたよー。私が母さんになってるけどいいの?」
「いいよー。可愛がってあげてね。初めて卵産んでみたんだ。えへへへ」
何だこれは?
どう反応していいか分からないよ。
「産みの親は産卵しておかしくなったのかな?念話したのが間違いだったよ」
「母さん、5回も勝負して今気付いたの?遅いよ。遅すぎるよ」
「はーい。ごめんなさい」
「私も強いから今度は楽勝だよ!」
産みの親と戦う気なんだ。
尻尾斬り落とすの?
「やっぱり尻尾を目の前で食べられるあの顔が見たいの?」
「2人記憶が被ってどんな顔してたかよく分からないんだ。是非見たいんだ」
「2人なら楽勝だよ。だってヴィーネの方が強そうだもん」
「でしょ?楽勝だよ。100年後が楽しみだね」
お母さん、私より賢い子供ができちゃったよ。
でも、可愛いから問題ないね。
シャーロットがお母さんの縫った服を着せた事の意味は大きいです。




