冒険者組合の現状
冒険者組合。
ダンジョンに潜りお宝を探す。
一獲千金を狙う博打のような生活。
お母さんも元冒険者だ。
悪い人たちだけじゃないと分かっている。
だけど、明らかに組織的な犯行じゃないと無理な人攫いが多い。
冒険者本部だけじゃなくて支部も怪しいのだろうか?
そうなると、壊滅させるか放置しか手が無いよ。
とりあえず行くしか無いか。
行ってみれば分かる。
転移魔法。
街長室に移動。
「マリアンネ、今から冒険者組合に行くけど大丈夫かな?」
「はい。お付き合いします」
念話。
「エルヴィンとグスタフは準備ができたら街長室に来てね。冒険者組合の調査に行くよ」
獣人の里との連携も取りたい。
なるべく、獣人は獣人が育てた方がいいと思う。
10分ほど待ったかな。
2人ともほとんど同時に来たね。
「お待たせしました」
「遅れちまったか?冒険者組合がまだ怪しいのですか?」
「ちょっと組織的犯行が多過ぎるんだ。この前潰した組織も少し繋がっている様だし完全に綺麗にはなっていない。綺麗にするのは無理かもしれない。本部だけじゃなくて支部も怪しいと思っているんだ。お金儲けだとしか考えていないと思う」
「そうですか。そんなに腐ってますか。とりあえず本部を見に行きましょう。ダミアンはどうして呼んだんですか?」
「獣人の里と連携しているんだ。その時にダミアンがいた方が話が通りやすいでしょ?やっぱり獣人の子供は獣人が保護してあげた方がいいと思ってね。この国で保護出来る人数にも限りがあるからさ」
「分かりました。その際は里長との話し相手になりましょう」
「じゃあ皆、一気に本部長の部屋に行くよ。転移魔法」
ここは以前、冒険者本部の本部長の部屋だった。
だから、死体を片付けて新しい本部長がいるはずだよね。
座っている人が本部長かな?
「何だ?突然現れて何者…、マリアンネにエルヴィンじゃないか。どうした?」
「冒険者が人攫いと殺しをしているみたいでな。偉くなったアリスターなら何か知っていないか?」
「私は知らないぞ。以前の本部長のように奴隷商人から仕事を貰ったりはしていない。まさか…!冒険者チームが個人的に依頼を受けている可能性があるか。その場合は把握出来ない。前回の事もある。欲しい情報を言ってくれ」
「大規模パーティーとSランクだけ教えてくれればいいよ。4人だけでする仕事ではないと思うんだ」
この人は関係していないようだね。
嘘をついていない。
「大規模パーティーは基本Sランクが中心だ。ここに今から呼び出そう」
「悪いね。疑いだが晴らしておきたいんだよ」
「おい。黒い刃と女神の雫のリーダを呼んで来い。下にいるはずだ」
「かしこまりました」
秘書の子も変わっているね。
本部は変わろうとしているんだ。
じゃあ、壊滅は無しだね。
「なんだよ!呼び出すとか緊急任務か?」
「私も呼び出される覚えがありませんが?」
念力。
「ごめんね。2人の記憶を覗かせてもらうよ」
「Sランクを一瞬で止めるのか!」
「ああ、相手にならねーよ。絶対に敵対するなよ」
黒い刃の組織には獣人もいるようだ。
組織にいる条件が人攫いか…。
最悪の条件だな。
女神の雫は女で非力だと油断させてハイエルフを攫うのか。
両方とも駄目だな。
「両方とも駄目だ。黒い刃は獣人に里を裏切らせている。女神の雫は女だからと油断させてハイエルフの子供を攫っている。冒険者組合としてはどうしたい?」
「犯罪に関わった全員を処分したい。ここに集めてくれないか?出来るのだろう?」
ああ、前回のでおおよその事は把握しているのか。
召喚魔法。
念力。
黒い刃に所属している人と依頼人を呼び出し止める。
人間12人、獣人5人か。
全員の記憶を覗いて子供達を助けよう。
召喚魔法。
獣人の子供が10人、ハイエルフ3人。
召喚魔法。
念力。
女神の雫に所属している人と依頼人を呼び出し止める。
人間14人。
全員の記憶を覗いて子供達を助けよう。
召喚魔法。
人間5人、獣人5人、ハイエルフ10人。
「リーダーだけ話せるようにしてやるよ。何か言い残す事はあるか?」
「ダンジョンなんて金にならねーんだよ。どうやって生活すりゃいーんだよ?仕方ねーじゃねーか」
「・・・・」
「馬鹿野郎が。それなら冒険者を辞めて普通に暮らせばいいだろうが。Sランクが人殺しと人攫いを率先してやっているだと。他の支部も調査させる。だが、ここまで腐っていては駄目かもしれんな…」
「ああ、当たり前だと思っていやがる。自由を愛する冒険者は減ったんだな」
「そのようだ。Sランクを目指していた頃が懐かしいよ」
「じゃあ、獣人は里に引き渡すから、それ以外を殺すがいいか?」
「ああ、出来れば汚れないように頼む」
闇魔法。
お前らは苦痛にもがきながら死ね。
悲鳴すら聞きたくない。
「こいつは綺麗に食べ終わったら消えるから安心してよ。冒険者組合をよろしくね。できれば壊滅させたくないんだ。お母さんも冒険者だったからね」
「頑張ってくれよ。人攫いは流石に冒険者じゃねーからな」
「ああ、頑張るよ」
転移魔法。
前来た獣人の里にやって来たよ。
同じ人が偶々歩いている。
「やあ、また会ったね。例の件だよ。里長に会いに行ってもいいかな?」
「くそが、まだいやがるのか。先に行ってくれ。縄を持って追いかける」
前回案内されたから場所は分かる。
ここからはグスタフに頼もう。
「グスタフ、ここからはお願いね」
「お任せ下さい。獣人の問題ですので、きっちり片を付けます」
「やあ、また会ったね。本当はこんな形で会いたく無かったよ。今日はグスタフに任せるから話し会って欲しい」
「久しぶりだな。こうして俺がここに来た理由は何となく分かると思うが、獣人の裏切り者が多過ぎるんだ。今回連れて来た奴らも裏切って親を殺して子供を攫っている。どうにか出来そうか?俺としては冒険者組合への加入を禁止した方がいいと思うぞ」
「信用してもらう為にお前を連れて来た訳か。懐かしいな。冒険者組合が腐っている訳か…。いい情報だよ。今は名簿を作っている所なんだ。そこに、冒険者組合所属の項目も入れよう。当然尋問するか拷問する事になると思うがな」
「それで、今日連れて来た獣人の子供達は面倒を見れそうか?」
「ああ、親のいた里で面倒を見てもらえるようにしている。安心してくれ。その5人が裏切り者なんだろ?縛って置いておけ!」
「分かりました」
「当たり前のように人攫いばかりだと嫌になるな。しかも同胞がやっている。最悪な気分だよ」
「ああ、金の為みたいだな。普通に働けばいいものを腐ったらおしまいだな」
「じゃあ、そろそろ国に帰ろうか。まだ話は続きそうかな?」
「いえ。安心できましたので大丈夫です」
「また迷惑かけたな。すまん、助かったよ」
「お互い様だよ。じゃあ、帰るね。転移魔法」
先にハイエルフの集落に来た。
泳ぎ終わって休憩しているハイエルフに声を掛ける。
毎回同じ顔に見えるのは気のせいかな?
「やあ。長老を呼んできて欲しい」
「分かりました」
「エルヴィンとグスタフ、ありがとう。また何かあったら声をかけるよ」
「冒険者組合の事でしたらいつでも声を掛けて下さい」
「こちらも、獣人の事でしたら遠慮せずに声を掛けて下さい」
「ありがとね。また、よろしくー」
2人は頭を下げて去って行った。
ちょうど長老が来たね。
「本当に何度もごめんね。ハイエルフの被害者が多いみたいだよ」
「ええ、情けない限りです。自分たちで守れないのですから」
動きを止めたままだった。
解除してあげよう。
「君たちハイエルフは、2000年以上生きている長老のいる集落と、様々な種族が暮らしている孤児院のどちらかで生活出来るよ。どちらを選ぶ?」
「ハイエルフの集落でお願いします」
「私たちもハイエルフの集落で暮らしたいです」
「よろしくお願いします」
「いいですとも。人数がどんどん増えて行きますね。これでは国になってしまいそうですよ」
「本当だよね。ジェラ姉ちゃんが仕事しないから悪いんだよ。火吹きドラゴンは駄目だよ。家は何軒作ろうか?」
「そうですね。五軒お願いします。あの大きな木が並んでいる所にお願いします」
「分かったよ。木魔法、木魔法・・・・」
「ありがとうございます。今回はこれで十分です」
「ありがとうございます」
「本当に助かりました」
「何かあったら北の社まで来てね。ほとんどの事はできると思うからさ」
「本当にできるので是非お願いして下さい」
「マリアンネ、孤児院に5人追加の手続きお願いね」
「分かりました。では、戻りますね」
マリアンネは歩いて街長室に戻って行った。
「長老。じゃあ、私たちは孤児院に行くよ」
「はい。ありがとうございました」
転移魔法。
孤児院に移動。
「カーリン、チェルシー。子供5人を保護してきたんだ。お願いね」
「はーい。良かったね!助かったんだよ。綺麗になった後でご飯を食べようね」
「そうだぞ。お腹いっぱい食べれば元気も少し湧いてくる」
「うん…」
「はい…」
うんうん。
天使に任せれば安心だよ。
授業中だと孤児院は本当に静かだね。
10万ギルをカーリンに手渡した。
「服や下着、靴を買ってあげて。何度も往復するよりも一度で揃えた方が楽でしょう?」
「はい。ありがとうございます。余った分は違う子たちの服や靴に使わせて頂きます」
「そうしてよ。私がお金を貯めてても意味が無いからね。あとは、よろしく。またねー。転移魔法」
社に帰り考える。
お母さんのいた頃と今の冒険者組合は違うのかな?
それとも、同じで嫌になったから辞めたのかな?
最近考えるんだよ。
殺して、助けて、殺して、助けて…。
助ける為には殺さないといけない。
何か悲しいよね。
同じ種族、同じ言葉を話せる人なのに、お金目的で攫ったり殺したり。
分からないけど…。
世界が変わったのは分かったよ。
でも、あんまり広くは見ないようにしているよ。
私では抱えきれないから。
奴隷や眷属を使えば何人でも助けれる。
私にその力があるのはどうしてだろうか?
使わせたいのかな?
でも、使いたくないな。
私はいつまでも、お母さんの娘でいたいんだよ。
おやすみ、お母さん。
シャーロットの本音です。
ハイエルフは孤児院に行かないですね。




