ハイディのお願い
犯罪者を殺しに行くと、どうしても孤児の保護に繋がる。
もっと考えて行動しないといけないな。
私は目に入った孤児を放置する事ができない。
それなら目に入れない方がいい。
可哀想だけど国も大切なんだ。
ごめんね。
社に寝転がりながら考えていたら珍しくカーリンが来た。
「シャーロット様、お願いがあります。ハイディが空を飛びたいそうです」
「分かった。そのお願いは叶えてあげないとね」
社から飛び出して、ハイディに話しかける。
「ハイディは空の飛び方を知っているのかな?」
「分かんないけど、何だか空を飛びたいんだ。駄目かな?」
「すみません。本人も飛べるか分からないそうですが、飛びたいみたいです」
なるほど。
きっと本能だろうね。
「カーリンは戻っていいよ。私が一緒に空を飛ぶ練習をするから」
「ありがとうございます」
「ハイディは立派な翼があるよね。広げて見せて」
「うん」
まさか…。
気付かなかった。
元気に歩いているから大丈夫だと思っていた。
私の失態だ。
広げた翼の羽がかなり抜き取られている。
売れるのか知らないが殺しておいて良かった。
羽の形を明確に記憶。
羽が全て揃っている姿をイメージ。
よし、高位回復魔法。
うん!
綺麗に治ったよ。
本当に良かった。
「ハイディ。翼を動かしてみて」
「分かった。動かしてみる」
一生懸命に翼を動かしているけど飛べない。
この状態では飛べる雰囲気ではないね。
もしかしたら魔力を使って飛んでいるのかも知れない。
ハーピィはどうやって飛んでいるのだろうか?
ハイディの魔力を確認しておこう。
透明の魔石を時空魔法で取り出す。
「ハイディの魔力を動かすからじっとしていてね」
「分かった。ハイディはじっとしてるよ」
まずは属性を確認。
薄い緑色だ。
水属性と風属性かな?
風属性で飛んでいると難しいな。
一度、両方の羽に魔力を延ばしてみよう。
「ハイディ。今の状態で翼を動かしてみて」
「分かった。あ、ああーー!」
念力。
私の元までハイディを戻す。
変な方向に飛んで行ってしまった。
やはり魔力を羽に集中して飛ぶんだ。
「ハイディ。まずは今の感覚を練習しよう。体の中にある魔力を翼に延ばしたんだ。じんわり温かかったでしょ?その温かくなる練習」
「うん、温かかった。練習する」
種族適正もあるのだろう。
妖精は魔力の扱いが上手かった。
ハーピィも魔力の扱いは上手いに違いない。
そうでないと飛べないのだから。
「そうそう。両方の翼を温かくする感じだよ。上手くできてる」
「できてる?難しいよ。でも、飛びたいんだ。頑張る」
空を飛びたいのは本能だろうね。
籠の中に入れて羽を抜き取る。
最低な行為だよ。
やはり、翼に魔力を集めるのは上手い。
すぐに上達するね。
「いい感じだよ。よし、翼を動かしてみよう」
「分かった。動かすよ。お、おおーーー、飛べたーー!」
せっかくだし大空を飛んでみよう。
周りに密偵はいない。
結界の天井を空けよう。
「ハイディ、もっと高く飛んでみよう。付いて来て」
「分かった。付いてくー」
初めて空を飛んだんだ。
海を見に行こう。
「よーし!ちょっと速く飛ぶけど付いて来れるかな?」
「頑張る!」
頑張って翼を動かしているね。
少し疲れてきているかな。
海までもう少し。
頑張れ!
「到着ー。ハイディ、ここが海って言うんだよ。広いでしょー」
「すごーい、みんな水だよ。あっ!」
念力。
ハイディを私の元まで寄せる。
疲れちゃったんだね。
「ハイディはもっと体力を付けないといけないね。たくさんご飯を食べて、翼を動かしても疲れないようになろう。翼を温かくする練習も忘れないでね」
「分かった。次はもっと飛べるように頑張る」
転移魔法。
孤児院に移動。
結界を戻す。
「カーリン、ハイディは飛べるようになったよ。まだ体力が足りないみたい。ゆっくり体力を付けさせてあげて」
「分かりました。ハイディ良かったね」
「思いっきり空を飛べて気持ち良かったよ。ありがとう」
「こら。ありがとうございます、でしょ」
「ふふ、気にしなくていいよ。ハイディ、思いっきり飛びたくなったらまた声を掛けてね」
「分かった。ありがとうございます。シャーロット様」
ハイディもカーリンに懐くのかな?
天使の魅力は凄いからね。
「じゃあ、またねー。転移魔法」
社に帰り考える。
ハイディは空を飛べるのに帰る場所を知らない。
自由に移動できるのに家も親も分からないんだ。
この国を家だと思って楽しんで欲しいな。
もし家に帰れる本能があるのなら一緒に付き合ってあげよう。
うん、今日は楽しかった!
翼があったら空を飛びたいですね。




