疑惑と救出
この前助けた獣人の子供たちも親は殺されている。
どうにも私は冒険者組合が怪しく感じてしまう。
組織で行動し親を殺し子を攫う。
前科があるから余計にそう感じてしまう。
もしかしたら同じ事をしている組織があるかもしれない。
とりあえず、この前の子供達の親を殺した相手を見つけ出そう。
そうすれば冒険者組合だろうと別の組織だろうと関係ない。
確実に滅ぼす事が出来る。
転移魔法孤児院に移動。
「皆、まだ学校に行く時間じゃないね。少し記憶を覗かせて欲しいんだ。ちょっと並んで。チェルシー手伝って。新しく入った子供たちだけでいいよ」
「分かりました」
並ばされた子供たちは不安がっているね。
「心配しなくてもいいよ。何も怖い事はないからね」
私は1人ずつ獣人の子の記憶を覗く。
親を殺害している犯人を把握する。
大丈夫。
問題なく見える。
つまり、親を殺された場面を鮮明に覚えている。
とても辛く悲しいよ。
皆の記憶を覗き終わった。
冒険者組合本部とは別の場所に集まっている。
「ありがとう。皆の敵を取って来るからもう怖い事は無いよ」
「まさか…!お気を付け下さい」
チェルシーは気付いたみたいだね。
でも、心配ないよ。
「大丈夫だよ!私は強いから。転移魔法」
ふむ。
ここは少し大きな建物だね。
冒険者組合に似ているけど違うようだ。
入り口には特に何も書いてない。
「こんにちは。あなた達は何をしているのかな?」
「何だテメエは!仕事の依頼なら金をまず見せな」
下っ端かな?
面倒だな。
把握した全員をここに呼びよせ動きを止めよう。
召喚魔法。
念力。
全部で40人はいるんじゃないか?
全員人間だと思っていたけど獣人も混じっているね。
とりあえず記憶を覗かせてもらおうか。
なるほど。
依頼主は奴隷商人か…。
とりあえず全員の記憶を覗く。
依頼した人もここに呼びよせ動きを止める。
召喚魔法。
念力。
奴隷商人が5人もいる。
今回は組織を潰すつもりで来たんだけど、やっぱり奴隷は放置できないよ。
依頼主や奴隷商人の記憶を覗き、奴隷や孤児がいないか確認をする。
やはりハイエルフや獣人ばかりだ。
召喚魔法。
全部で30人か。
ハイエルフが10人、獣人が15人、人間が5人。
この人数なら問題ない。
犯罪者の話しを聞く気も無い。
この組織に関わっている獣人以外を皆殺しだよ。
闇魔法。
死体が残って文句を付けられても面倒だからね。
残した犯罪者の獣人10人と救出した35人。
獣人には里がある。
こいつらは里を裏切っている可能性が高い。
全員を連れて行こう。
転移魔法。
一番多くの獣人を殺している犯罪者の里に移動した。
ちょうど近くを犬の獣人が歩いていたので話し掛けた。
「こんにちは。ここの里長と話したい。孤児を保護している吸血鬼と言えば伝わると思うんだ。案内してくれるかな?」
「ああ、話にあったよ。獣人の子供は保護したんだな。大人の獣人は…。すぐに案内する」
大人の獣人を見て表情が明らかに変わった。
何かを悟ったんだろうね。
犬の獣人に案内され歩いて付いて行く。
皆を念力で引っ張っているのは可哀想だが少しだけ我慢して欲しい。
「何だ慌てて」
「里長。例の孤児を助けている吸血鬼が裏切り者を連れて来た」
犬の獣人が裏切り者と言っている。
日頃から怪しい所があったのかもしれないね。
「ああ、大人と子供を両方知っている。まさかとは思うがこいつらが里の情報を流していたのか?」
「話せるようにしてあげるよ。一番殺したお前の里に来たんだ。説明しろ」
「里親、俺達は脅されたんだ。仕方が無かったんだよ」
こいつは馬鹿なのか?
仕方が無いから子供の親を殺して攫っていい訳が無いだろ。
里長はかなりの怒りを我慢しているが、子供がいるのか冷静だ。
やはり、ちゃんと話は伝わっている様で良かった。
「なるほどね。あんたはどうしたいんだ?」
「大人の獣人は全員渡すから、子供の獣人をどうするのか決めて欲しい。ここで育てるか私たちの国に任せるか。獣人は全員この里出身じゃない。他の里の獣人もいる。里を裏切って子供の親を殺して攫っていたみたいだ。組織と奴隷商人と依頼人は皆殺しにしたよ。前に冒険者を殺した時に獣人に国を襲われたから今回は連れて来たんだ」
「なるほど。獣人は大人も子供も引き取ろう。それに文句はないんだろ?」
「ないよ。獣人の里の子供たちだからね。親が目の前で殺されているのは可哀想だけど、知っている顔に囲まれて生活した方が安心だと思うんだ」
「おい、大人の獣人を全員縛れ」
「分かりました」
全員縛り終わるのを待ってから、子供の獣人と大人の獣人を動けるようにした。
「待ってくれ、俺達は脅されただけなんだ!」
「こいつに脅されたんだよ!」
「何だよ。何でこんな事になるんだよ!」
意味のない言い訳を喚いているよ。
「おい、口も縛っておけ。じっくり聞きたい事もあるし他の里とも協力しないといけない。あんたには世話になったな」
「いいよ。また何かあったら手助けするよ。子供を助けたいだけなんだ」
「そうか。本当に話通りだな。馬鹿な獣人が襲った時は迷惑をかけたな。すまない。こいつらはきっちり、こちらで面倒を見る」
「大人も子供もよろしくね。じゃあ、私たちは行くよ。じゃあねー。転移魔法」
孤児院に移動した。
さて、奴隷だった子たちの記憶を覗こう。
人間の子も攫われているな。
見た目がいいからかな?
ハイエルフの子も攫われている。
やはり、親の記憶はないか。
動けるようにして皆を話せるようにする。
「今まで拘束してごめんね。皆を助けたかったんだ。ハイエルフの子は自分の子もいるみたいだね。ここにはハイエルフの集落もあるし孤児院もあるんだ。どちらで過ごしたいかな?」
「ハイエルフの集落で過ごさせて下さい」
「私も自分の子供と過ごしたいです」
人間の子はまだ幼いせいか話さないね。
ゆっくり元気になって欲しいな。
「勿論いいよ。ちょっと待っててね。カーリン!ちょっと出てきて」
「はーい。あ、また助けて来たのですね。お疲れ様です」
「ハイエルフは集落を希望しているから、人間の子供たちを中で保護してあげて」
「分かりました。辛かったね。ここは安心だから綺麗になってご飯を食べようね」
「うん…」
「はい」
人間の子供はカーリンに任せておけば大丈夫だね。
ハイエルフの長老に連絡をしよう。
念話。
「長老。ハイエルフを10人保護したから今から連れて行くよ」
「同胞を助けて頂きありがとうございます。すぐに入り口に向かいます」
「じゃあ、集落の入り口に行くね。転移魔法」
長老がこちらに向かってきているね。
いつ見ても若いよ。
2000歳以上だとは思えないもん。
「この人が2000年以上も生きているハイエルフの長老だよ。ここなら安心だよ」
「そのような方がいるのですね…」
「すみません。よろしくお願いします」
「気にしないで下さい。同じ仲間です。一緒に暮らしましょう」
やっぱり仲間の元で暮らすのが安心だよね。
長い間奴隷だった人は人間が怖いと思うんだ。
「さて、家を何軒作るかも知りたいけど、まだ森は広げなくても大丈夫かな?」
「そうですね。少し広げて頂けますか?100m広げて頂ければ十分ですので」
念話。
「今からハイエルフの森を東に100m広げるよ。防護壁の近くにいる人はすぐに離れてね。魔獣が1匹入るよ。国防隊お願いね」
よし!
今ある防護壁を消して土魔法。
国防隊は魔力の使い方が上手くなっているね。
魔獣討伐の速度が上がっている。
「長老。家はどこに作ろうか?」
「そうですね。家族は一緒に暮らしたいでしょうし孤児も増えて来ました。あの木とあの木に二軒、あとは、地上に大きい家を作って頂けますか?10人程住める家で結構ですのでお願いします」
「分かったよ。木魔法、木魔法・・・・」
「十分です。ありがとうございます」
「本当にありがとうございます」
「やっと安心して眠れます」
「気にしないでいいよ。私が勝手に動いただけだからね。りんごでも食べてゆっくりしてね。長老にいつも頼ってごめんね。お金は足りているかな?」
「お金は足りておりますよ。私たちの代わりに助けて頂いているのです。このように頼られるのは、嬉しい事ではあっても辛い事ではありません。仲間が助かって喜ばしい事ですよ」
長老は笑顔で言ってくれたし本当に喜んでくれているね。
それなら、これからも頼らしてもらおうかな。
「これからもよろしくね。じゃあ、またねー。転移魔法」
街長室に移動する。
「マリアンネ、事後報告になって悪いけど人間の子供を5人保護したよ。ハイエルフ10人も保護したけど集落で過ごしたいみたい。その為に国を広げたんだ」
「分かりました。お疲れ様です。獣人の子がいないのは何かありましたか?」
マリアンネは鋭いよね。
恐らく、予想も出来ているだろうね。
「獣人を保護したら襲撃された事があったでしょ?この前保護した獣人の子の記憶を覗いてね犯人の居場所に行ってきたんだ。冒険者組合だと思ったけど、ただの犯罪組織だったみたい。組織と依頼人は獣人を除いて皆殺しにしたよ。獣人の里に行って、裏切り者と子供を引き渡して来たんだ。子供も里で過ごした方が安心だと思ったし、里長も引き受けると約束してくれた。他の里とも連携したいみたいだよ」
「なるほど。裏切り者がいたから親を殺され子を攫われる獣人が多かったのですね。里長は証拠を吐かせて各里との連携を強めると思います。本当にお疲れ様でした」
「今回は該当者を殺すつもりで動いたから救出するつもりは無かったんだ。急遽連れてきてごめんね。奴隷商人たちは冒険者組合にも犯罪組織にも依頼しているみたいなんだ。少し気になるから一緒に冒険者組合に行ってもらいたいけど、いいよね?」
「勿論です。冒険者組合を綺麗にして下さい」
「良かった。じゃあ、戻るね。またねー。転移魔法」
孤児院に移動する。
「ばたばたしてごめんね。服とお金は足りているかな?チェルシーはまだ給料を貰ってないよね?」
チェルシーに10万ギルを手渡した。
「これで好きな買い物でもしなよ。あと、少し子供の服や靴も足してあげてね」
「お金を頂けるんですか?ご飯もお腹いっぱい食べれてお風呂にも入れるのに…」
「チェルシー、ここは甘えておきましょう。シャーロット様、ありがとうございます」
「いいよー。孤児院は私の希望が詰まっているからね。これからもよろしくね」
「はい。精一杯働きます」
「気合を入れなくても普段通りで大丈夫ですよ」
「そうそう。カーリンの言う通り。普通に子供に接してあげて。それだけでいいからさ。困った事があれば社に来てね。大体何でもできるから相談に乗るよ」
「はい。分かりました」
「これからもよろしくお願いします」
「よろしくね。またねー。転移魔法」
社に帰り私は考える。
里を裏切り仲間を殺して子供を攫う。
分からないよ。
何でそんな事をするんだろう。
そんなにお金が欲しいのかな?
やっぱり奴隷商人は絡んでくるね。
少なくとも私の目に入ったら必ず殺すよ。
被害に遭っている子供たちの事を考えたら、殺すだけで許されている事を感謝して欲しい。
シャーロットはお金持ちです。




