ハイオークを訪ねる
子供を多く救う為には食糧が必用だ。
その為、ハイオークを誘おうと思った訳なんだ。
私の力を使えば食糧の問題も解決できる。
でも、私が死んだら子供たちも死ぬような環境にはしたくない。
だからこそ、街の人たちが自分で考え、自分たちで発展していく国になって欲しい。
私はおまけだと自分では考えている。
強い力を持ってしまっているけど街の発展を考えているのは国民。
それが、大切な事だと思っている。
人ができる事は人がするべきなんだ。
ハイオークを勧誘に行くのも、考え方によっては私の力を使っている事になる。
でも、未来を見据えて行動する分には目を瞑る事にしているんだ。
さて、ジェラ姉ちゃんの言っていた通り川沿いを探索しよう。
川沿いには多くの集落がある。
差別されてきた獣人だと言っていたね。
つまり、他の集落から距離を取っていると思うんだよ。
国の西500mにある川を中心に南を探知していく。
川を北に上ると湖があって他の人たちが住んでいるからね。
多くの集落と離れていて周りの魔力濃度が薄いから草原だろうか?
目星を付けたからマリアンネに話をしておこう。
転移魔法。
社から街長室に移動。
「今からハイオークを誘いに行こうと思ってるけど問題あるかな?」
「いいえ。何も問題はありません。ご自由に行動して下さい」
「じゃあ、呼んでくるよ。戻ってきたら念話するから。よろしくね」
目星を付けた場所に転移魔法する。
やはり、草原地帯のようだ。
集落の入り口だと思われる場所に来たのだが、目に見える範囲にハイオークはいない。
そもそも、猪の見た目だという情報しか知らないのだけどね。
「こんにちは。ここから北にある多種族国家シェリルから来たシャーロットです。誰かいませんか?」
気配で人がいるのは分かっている。
声を掛けても誰も動いていないようだ。
まだ、働く時間だと思うけど隠れているのかな?
聞いた事のない声の人は相手にしないのかな?
私は集落で一番大きい建物を目指して歩いて行く。
誰も家から出てくる事は無く止められる事もない。
どういう状況なんだろうか?
何の妨害もなく一番大きな建物にたどり着いた。
木と乾いた草と粘土を利用した家だね。
乾いた草が乾燥させた作物かな?
大きいけど素朴だね。
家の中には猪の頭を持つ人が寝ている。
牙が長いから年長者だと思うけど。
「こんにちは。誰も出て来ないから話に来たよ。あなたが村長さん?」
「何用だ?お前は吸血鬼か?血を求める訳でもないだろうに…。何が望みだ?」
なるほど。
吸血鬼すら自分たちの血など求めないと考えている訳だね。
確かに今まで出会った事が無い人たちだ。
「私たちの国に来て一緒に暮らさない?農作が得意だと聞いたから誘いに来たんだよ?」
「奴隷が欲しいのか?残念だが俺たちが作った作物を食べたがる奴はいないぞ」
どれだけ根深いのだろうか?
差別され続けて来た結果なのかな。
「奴隷じゃないよ。一緒に暮らすだけ。私たちの国は差別が無いよ。様々な種族が楽しく暮らしているんだ。誰も見た目で判断しない。もし、差別されたと感じたなら私が罰を与えるよ。吸血鬼からしたら獣人の一種にしか見えない。別に何とも思わないんだよ。私が土地神様として崇められているくらいの国だよ?吸血鬼を崇める国がハイオークだからって差別する訳ないじゃん」
「その話が本当なら面白そうだな。だが、俺たちは働けない。皆、病気になってしまったよ。今までの病とは違う。お前なら分かるんじゃないか?誰も動かないだろう?皆、病気なんだよ。動く元気さえない」
なるほど。
集落全体が病気に罹ってしまった所に私が来たんだ。
だから、誰も動く気配が無かったんだね。
「運が良かったね。全員治してあげるよ。そしたら、国に来て働いてくれるよね?」
「病気まで治せるのか?普通の回復魔法では無理だぞ?まあ、治してくれるなら働いてやるよ」
範囲高位回復魔法。
「治ったでしょ?働く気になったかな?」
「まさか…。本当に治せるのか!約束は守る。仲間を全員治してやってくれ」
「全員治し終わっているよ。だから聞いたんだけど?」
「な、なんだと?どれ程の力を持っているんだ…。ちょっと待ってくれ。確認してくる…」
慌てて出て行ったけど何をするんだろうか?
「全員集まれー!病気は治っているはずだ。今すぐに集合だ!」
とんでもない大声だよ。
凄い声が出るんだね。
ハイオークがどんどん家から出て来た。
みんな不思議がっているようだ。
突然病気が治ったのが不思議なのかな?
「族長。何が起こったのでしょうか?」
「土地神様が治してくれたんだ。そして、一緒に国に来て働いて欲しいとお願いされている」
私の事を土地神様として説明しているよ。
皆が思っているから別にいいけど、吸血鬼だよ?
「私たちが国に行っても差別されるだけでは?」
「約束してくれている。万が一差別されるようなら罰を与えると。これ程の力がある方だ。嘘を吐く理由もないだろう。全員働けるな?」
「はい。頑張って働きます」
ん?
今、子供が働くって言った?
「ねえ?子供は働かせないよ。勉強してもらうからね。文字の書き取り、計算、街の決まり事や魔法が無料で学べるようになっているから、子供は勉強して。そして、子供は絶対に親と同じ仕事をする必要も無いよ。勉強してやりたい事が見つかったら好きな事をすればいい。病気で苦しんだから、病気を調べる事をしてもいいよ。何をしてもいい国だよ。だたし、決まり事は守ってね」
「それだと収める作物が減ってしまいますが…」
勘違いをしているんだ。
皆、奴隷だと思っている気がする。
「勘違いしないで欲しい。皆は普通に働いて、出来た作物を売って好きな物を買ってもいいし、食べてもいいよ。ただ、多めに作って欲しいだけだよ。奴隷じゃないんだから住む家も畑も全部私が用意するよ。私が招待するんだから全部任せて。できない事はほとんど無いから心配しないでいいよ」
「わ、分かりました。では、よろしくお願いします」
作物を育てる為に川沿いに住んでるのかも。
確認はしておいた方がいいね。
「確認したい事があるんだ。川沿いに住むという事は、川沿いじゃないと駄目な理由があるのかな?」
「はい。稲を育てる為には川の水が必要です。魔法の水には栄養がないので必ず川沿いに畑を作る必要があります」
栄養ね…。
人でいうと食べ物の事だよね。
魔法の水には入ってなさそうだけど、いずれ入れる事もできそうだね。
「分かった。国の500m西に川があるから、国を広げるよ。問題は全部解決させる。じゃあ、移動するから全員荷物を持ってここに集まって」
「分かりました。全員、苗と必要なもんを持って集合だ。急げ!」
「分かりました!」
5分くらい待ったかな。
全部で40人くらいだね。
子供は10人かな。
族長に声を掛けられた。
「皆、準備が出来ました」
「じゃあ、移動するよ。転移魔法」
念のため住民に警告しておこう。
念話。
「この国にハイオークを招いたよ。万が一差別をしたら本気で罰を与えるから気をつけてね。あと、マリアンネは北西区の端に来て」
これで大丈夫!
酷い差別するような人は罰を与えるだけだよ。
内容によっては区長会議で追い出す事も検討してもらう。
「これで差別の心配は無いよ。私はこの国の一番北の社に住んでるから、何かあれば言いに来てくれればいいからね。絶対に我慢はしないで。私は皆が作る作物で多くの孤児を助けたいんだ。お願いね」
「孤児を助けたいのですか…。分かりました。私たちも頑張って稲を育てます」
住む家を用意して畑の準備をしてあげて、せっかくだしお風呂も作ってあげなきゃね。
ハイオークは温厚です。




