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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第2章 多種族国家シェリル

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建国祭

「シャーロット様。お祭りの日です。よろしくお願いします」


マリアンネに呼び掛けられる。

半年に1度あるお祭りの日だ。


社から飛び出し話し掛ける。


「マリアンネ。何かお願いはある?」

「いつもの様に自由にして頂いて構いません。ただし、今回のお祭りは、()()()としました」


なるほどね。

村から街になり国になった。

シェリル国初のお祭りな訳だね。


「国に入れる人たちはいるのかな?」

「いいえ。完全に国民だけで行います」


「分かったよ。結界を閉じるね」

「はい。お願いします」


マリアンネは一礼をして去っていった。

ちょっと嫌な予感がするな。


あの人、結界を破壊して侵入して来ないよね?


その時はまた、張り直そう。

まずは、国の入り口を結界で塞ぐ。


よし!

準備は万端だ。


中央区の噴水の上空に転移魔法(テレポート)をして、念話(テレパシー)する。

「今日は多種族国家シェリルの建国祭だよ。みんな楽しまないと駄目だよ。範囲高位回復魔法(エリアハイヒール)。元気になったかな?何か問題がある人は私に言うんだよ。今日は全力で楽しもう!」


「シャーロット様、ありがとうございます」

「シャーロット様、愛しています!」

「腕が治った。ありがございます」

「私の肩こりと腰痛が消えたわー」

「ああ、街長辞めたいなー」


おかしな声が聞こえたが気にしない事にしよう。

早く街長を見つけて国長にならないから悪いんだよ。


当然だけどハイエルフも妖精も参加可能だよ。

お菓子屋のおじさん大丈夫かな?


今回はボア肉が必要ないからね。

そのまま孤児院に移動する。


「さあ、お祭りだ。子供たち、お肉を焼く準備を今すぐするんだ」

「「はい!」」


お肉とお小遣いの時の動きは本当に素早いよ。


「クラーラは私と一緒に焼きたい野菜や食べたい果物を選ぼう」

「うん」

小さな天使と天使が語り合っているよ。


「さあ、今日の焼く肉は分かっているよね?」

「まさか、ドラゴンの尻尾ですか?」


クリスタが驚いているね。

食べたくないのかな?


「当然だよ!世界でここだけだよ?古代種(エンシェント)ドラゴンのお肉が食べれる場所は。残りの3人はお肉を準備してね」

「「分かりました」」


「本当に食べていいのかな?」

「クリスタは食べないの?あー、食べないんだー」


「食べます!お腹いっぱい食べます」

「そうでしょう?もし、あのドラゴンを見かけたら言っておいてよ。ご馳走様でしたってね」


ああ、残念で仕方が無い。

あの悔しがる顔が見られないなんて。


「ところで、孤児院のお肉は余裕あるの?」

「はい。最近は国防隊が訓練の一環で討伐した魔獣のお肉を寄付してくれます」


ビアンカが答えてくれた。

国防隊は頑張っているみたいだね。


いい事だよ…。


「素晴らしいね。じゃあ、私は皆がお肉を食べているのを見学しているよ」

「シャーロット様は食べないのですか?」


レナーテの疑問も当然だよね。

私はお肉を食べた事が無いんだ。


そもそも食事が必用ないけどね。


「吸血鬼だからね。体に血が入らない様にしているんだよ。だから、お肉は食べた事ないんだ」

「そういう事でしたか。では、私たちだけで食べさせて頂きます」


「遠慮しなくていいよ。どんどん食べて。足りなくなったらボアの肉でも何でも狩りに行くからね」

「はい。ありがとうございます」


あれ?

何で拝んでいるの?

私は神じゃないよ?


何か孤児院はクリスタ以外、皆おかしくない?

私を神か何かと勘違いしているよ。

ただの吸血鬼だよ!


何故か()()()()だけどね。


孤児院も子供が増えたね。

50人近くいるよ。


本当は孤児がいないのが一番の世の中だと思うけど。

助けてあげないと辛い思いをしている孤児はまだいると思うんだ。


研究室も作ったし上下水道も用意した。

とりあえず、ハイオークと話してみないとね。


「どうかな?伝説のドラゴンのお肉は美味しいかな?」

「めちゃくちゃ美味しいです。体から力も溢れてくるような感じがします」

「本当だ。これって魔力が回復する効果があるのかも。凄いよ」

「「おいしー!」」


「ピーマンは苦いからあんまり食べたくない」

「そうかな?焼いたら意外と甘くなるんだよ?」


肉食と草食が同時にご飯を食べていても違和感が無い。

凄い光景だよね。


多種族国家はこうでなきゃね。


結界に美味しいドラゴンが張り付いたよ。

「ちょっとー。お姉様の私を弾くとかどういうつもりかしら?」


何で今日に限って念話(テレパシー)してくるんだよ。

しかも、ここに来るつもりみたいだし。


「今、お祭りやってるから。他国の密偵とか邪魔だから入らないようにしていたんだよ」

「ふーん。じゃあ、私は密偵じゃないから入ってもいいよね?早くしないと結界壊れちゃうよ?」


壊れちゃうじゃなくて、壊すんでしょ?

絶対に言うと思ったよ。

まあ、いいか!


「じゃあ、天井を開けるから入って来てよ」

「ほーい」


結界の天井に入り口を作る。

凄い速さで飛んでくるね。


その勢いでここに急停止されたら衝撃で孤児院が吹き飛ぶよ。

流石にそこまで馬鹿じゃないよね。


んー!

んんーー!!


馬鹿だよ。

地上に近付いてきた瞬間に結界を張る。


ああ、結界に張り付いているよ。


笑える。

とても笑えるよ。


「痛いわよ!いきなり結界張るとかどんな嫌がらせよ」

「そのままの勢いで着陸されたら孤児院がが吹き飛ぶじゃん。配慮してよ!」


「そうか、街でお祭りだったわね。吹き飛ばしたら駄目だわ」

「当然の事だから。お祭りじゃなくても駄目だから。ねぇ、馬鹿なの?」


「そんな事はいいから結界を解除しないさいよ」

「あ、はーい」


結界を解除。


「なーに。子供達が美味しそうなお肉食べてるわね」

「皆。お姉ちゃんにお礼を言うんだ。お肉をくれたんだよ」


「「お姉ちゃん。美味しいお肉をありがとうございます」」

「とても美味しいです」

「最高のお肉ですね」


「ふ、ふーん。そういう事ね。ゆっくり味わいなさい」

「「はーい!」」


最高だよ姉ちゃん!

わざわざ尻尾を焼いている時に来るなんて。

その顔が見たいから尻尾を切断しているんだよ。


「お酒は無いの?」

「お酒は夜からなんだよ。それまでは子供の時間だよ」


「なるほどね。じゃあ、長老の所に行ってくるわ」

「虐めないでよ。長老は自分が普通だと言われて傷ついているから」


「普通じゃない。ちょっと私が鍛えてあげようかしら?」

「何で今日やろうとするの?明日以降にして」


「しょうがないわね。まあ、いいわ。夜に飲めるお酒用意しておいてよ」

「我儘すぎるよ。お金渡すから好きなの買ってよ」


10万ギルを姉ちゃんに手渡した。

「どれくらい飲めるの?」


普通先にお礼じゃない?

お金たかって飲める量を気にするとか終わってるよ。


「この前の半分くらいだよ」

「まぁ、十分か。ありがとねー」


「姪からお金たかる姉とか、おかしいよ」


聞いてないよ。

自由過ぎるよ、あの人。

何で誰も注意しないの?


まあ、今日は許そう。

あの悔しそうな顔が見れたから大満足だ。


「皆。食べ終わったらお風呂入って夕方まで昼寝だよ」

「「はーい!」」


お風呂に入れるの大変そうだ。

4人が頑張っているよ。


お小遣いあげないといけないね。

大体の給与は把握しているけど、やっぱり子供の相手をしてくれているからね。


皆の準備が終わった後、一緒に孤児院で昼寝する。

そして、昼寝が終わった後に声を掛ける。


「子供たち、全員整列!」

「「はい!」」


本当にこの時だけは素直だよ。

皆に1000ギル手渡していく。

勿論いつも同じ金額だよ。


「お姉ちゃんたちの言う事を聞けなかったら次は無しだからね」

「「はい!」」


「よし。お祭りに参加してきなさい!」

「「行ってきます!」」


「4人にもお小遣いをあげるね」

「お給与増えましたから大丈夫です」

「くれるんですか?やったね」

「いいんでしょうか?」

「・・・・」(拝んでる)


凄い反応に差があるけど別に関係ない。

全員に20万ギルずつ手渡す。


「夕暮れまでは子供たちを見ててあげてね」

「「分かりました」」


今年は絶対に早くいかないと売り切れそうだ。

間に合えー!


ああ、既に行列だ…。

大人も子供もたくさん並んでいるよ。


取り合えず私も並ぶ。

まだかなー。


おじさん何本作ったんだろう?


凄いよ。

売り切れないよ。


流石だよおじさん!


「1つ下さい」

「ああ、シャーロット様。これが半年に1回は大変ですよ…」


200ギルをおじさんに手渡してリンゴ飴を受け取る。

「次からは誰か派遣しようか?」

「お願いします。かなり多めに作ったのですが、ぎりぎりそうですので」


「じゃあ、街長に言っておくよ」

「はい。毎度ありがとうございました」


おじさんは妖精の為にりんごを4分の1に切ったリンゴ飴まで用意している。

値段は50ギルだし。


ちょっと優し過ぎるよ。

それは大変だよ。


次は絶対に人を派遣してあげよう。


席は空いているね。

噴水の縁の真ん中は何故か空いている。

別に私の指定席じゃないんだけどね。


縁に座りリンゴ飴を舐める。

これだよねー。


変わらない味が最高。

既に噴水の縁が埋まっているよ。


子供たちの肩の上に妖精が座ってリンゴ飴を食べている。

物凄く馴染み過ぎじゃない?


ああ、一緒に勉強しているから友達なんだ。

この国でしか見られない凄くいい光景だよね。


様々な種族が増えて行けば賑やかになるね。

楽しい国になるだろうね。


リンゴ飴を食べ終えると辺りを見渡す。

お酒が並んでいないからジェラ姉ちゃんはいないみたいだね。


ゆっくりリンゴ飴を食べ終えるとちょうど夕暮れ。


念話(テレパシー)で住民に呼びかける。

「子供は家に帰る時間だよ。大人は引き続き楽しんでもいいけど、今日は絶対に喧嘩したらいけない相手がいるから気をつけてね」


国全体に魔法陣を展開する。

光魔法(ライトレイン)で国中を光の雨で包む。


「さあ、孤児院に帰るよー」

「「はーい」」


「ちょっと人数が多いから皆が揃っているか確認だけお願いね」

「「分かりました」」


ちょくちょく遊びに来ているとはいえ、全員の顔と名前を確実に覚えている自信は無いからね。

孤児たちの面倒を見てくれている4人にお願いした方が確実だよ。


「どう?皆、揃っているかな?」

「はい。問題なく全員帰って来ています」


「皆布団の上に乗ってー。ゲームするよー」

「どんなゲームだろう?」


範囲睡眠魔法(エリアスリープ)

子供たちを眠らせてあげる。

これだけの人数が寝るのには時間が掛かりそうで、私1人では見てられないからね。


「4人とも飲みに行っておいで」

「すみません」

「やったー。行くよー!」

「ありがとうございます」

「・・・・」(拝んでいる)


レナーテは何故毎回拝むの?

ちょっと止めてよって言いたいけど何故か言えない雰囲気。


本当にお祭りはいいよね。

万が一の事を考えて外の状況を把握しながら横になる。


流石に喧嘩したら駄目な相手は見極めて欲しい。

いや、姉ちゃんから絡みそうだな。

本当にお酒が入ると話が長い。


4人が帰って来るのを待ちながら少し昔を思い出していた。

街から国になった時に人が一気に増えたんだよね。

結局、今は街の時の住民に戻っている。


お母さんが村を守っていた理由は分かったけど、途中で投げ出すつもりは無い。

ちゃんと皆だけで独立出来るまでは、見届けたいと思っているんだ。


それまでに、何度の出会いと別れがあるか分からないけど仕方がないよね。

私は皆と寿命が違うから…。


今はハイエルフと妖精がいるから、少し違うんだろうけどね。

短命種は短い人生を全力で走り抜ける感じだよ。


私は長命種だけど、ずっと見て来たから一緒に走っていたのかもね。

「ただいま戻りました。シャーロット様ー!」


カーリンが可愛い敬礼をして入って来た。

レナーテはお酒に弱いのかな?

クリスタとビアンカに担がれている。


「はい。楽しんで来たみたいだね。ゆっくりお休み」


今日は姉ちゃんがいるから、そこに向かう。

思った通り、りんごの木の所にいた。


「もう、お祭りは終わりの時間なんだけど?」

「時間なんて関係ないわよ。お酒が無くなるまで続くのよ」


「長老捕まえて何話していたの?」

「魔法の勉強さ」


へぇー。

本当にそうなの?


長老を見ると別に疲れている雰囲気ではない。

ただ、動く気配も無いけど…。


りんごの木からりんごを取って食べながら話す。


「ハイエルフの国は進んでいるの?」

「私を見ると逃げるから面倒なんだよ。なかなか進まないね」


自分の過去を思い出すべきだと思うよ。

どうせ、火を吹いた相手なんだよ。

完全に自業自得だね。


「ゆっくりでもいいから作ってよ。隣がハイエルフの国なら安心だよ。最近、人間の国を滅ぼしてばかりいるからね。ちゃんと友好関係を築ける国もあった方がいいでしょ?」

「何だ。シャルも滅ぼしているのか?私と一緒じゃないか」


「違うわ!相手が攻めてくるんだよ。意味が分かんないんだよ。勝てる訳ないのに、何故攻めてくるか理解できないんだ」

「考えるな。どうせ増える。そのうち、まともな人間の王にも出会えるさ」


「そういうもんかな。そういえば、地下にいる人って瘴気が無いと生きていけないの?」

「そうだね。私とあなたみたいな特殊な性能が無いと無理ね。行きたいの?」


「行くつもりは無いけど攻めてきたら地上の人では勝てないでしょ。それが気になっただけだよ」

「まあ、もし攻めてきたら大変だね。その時は手伝ってあげるよ。暇だしね」


ん?

手伝う?

少し嫌な予感がする。


「もしかして封印解けそうなの?」

「それは、絶対に無いと言いたいが、地下に住んでる馬鹿が余計な事をしていなければの話しさ」


「それは、攻めて来ると言いたいんだね?」

「封印されているものを見ると解きたくなる馬鹿はいるからね。まあ1000年に1度は私が掃除してるから大丈夫だよ」


いや、そこまで気にかけている時点で危険だよ。

姉ちゃんが絶対に封印を解きたくない姉か…。


「5000年以上の差があっても危ないの?」

「ああ、危ない。単純な力比べでは負けないけど戦う才能が違う。相手を殺す事にかけては世界一だと思うよ。最悪の場合シャルが全力で力を解放する結果になるかもしれない。地上も地下も一緒さ。どいつもこいつも殺し合いばかりしてるよ」


いや、火吹きドラゴンが何言ってるの?

地上で一番恐れられているじゃん。


「じゃあ、今度封印に行く時は付き合うよ」

「お!珍しい事を言うね。じゃあ、一緒に遊びに行こうか。仲間の吸血鬼にも会えるぞ。殺す事になるけどな」


「殺す事になったら仲間じゃないけどね」

「殺し合いが趣味だから気にするな。そうそう、長老たちに無属性を教えたみたいじゃないか」


「せっかくだからね。私は街が発展していく様子を見ていたいだけだよ。当然この国の外に出したら駄目な情報にしているよ。最悪の場合は私が滅ぼすよ」

「そこまで考えているならいいよ。馬鹿は平気で残酷な事をする。だから、管理は必要さ」


「そういえば、この世界に姉ちゃん以外の生きているドラゴンっているの?」

「いるよ。地上にはいないね。空に住んでいるのさ。島を浮かせてね。まあ、そのうち遊びに行こうよ」


へえ、空中都市か。

格好いい事してるね。


「ところで、何で長老静かなの?」

「私がお酒を飲ませたからさ」


「別に問題は無いか…。植物から作られているからね」

「2000年で初めて飲んで酔っ払っているけど頑張って起きているのさ」


「絡まれて疲れていないと思っていたら酔ってるだけか」

「私の話は世界一為になるからね。あんたも聞き足りないでしょ?」


結局、明るくなるまで意味のない話が続いたよ。

100年に1度の勝負の後みたいだ。


もしかして、今後は半年に1回飲みに来る気がするよ。

それはそれで楽しいから別にいいけどね。


空中都市に地下世界か。

まだまだ暇潰しが出来そうだよ、お母さん。

何だかんだと仲の良い2人ですからね。

お話しするのも楽しみなのです。

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