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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
番外編

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422/425

ジェラルディーン 普通

ようやくだわ…。

最初に世界樹が植えてあった砂漠での訓練が終わる。


ここで訓練するのは私への戒めかしら?

いつも頭を使えと言われている気がしてしまうわね。


それにしても身体強化を極めるのに時間がかかったわね…。

クリスタは死ぬような魔力移動を笑顔で続けているのよね。


本当に凄いわね。

シェリルの次に凄い人間かしら?


「極めて満足気だけと全く足りていないと気付いていないようだね。大丈夫かな?」

「極めたからそれなりに強くなれたでしょ?」


「鈍感すぎるよ。今まで手足が破裂する可能性も死ぬ可能性もなかった魔力移動をしていたのに、極めた今も同じ魔力移動速度を維持できていると思っているの?残念ながら魔力移動速度は遅くなっているよ。今の状態でクリスタと組手すると確実に破壊される」

「嘘でしょ?極めたら弱くなるなんてあんまりじゃない。移動速度を鍛えるのは簡単ではないのでしょ?お祭りに間に合うかしら?」


安全に魔力を動かしているから遅くなっているのね。

今まではそんな事を考える必要がなかったですもの。


「お祭りでしている組手は交互に攻撃を繰り返しているみたいだから、種族差も利用すれば何とかなるとは思うけれど厳しい訓練を続ける必要があるね」

「姉さんなら効率的な魔力移動速度を鍛える方法を知っているでしょ?教えてちょうだい!」


「効率的な訓練方法なんてないよ。とにかく魔力を動かし続けるしかない。極める前までの移動速度までは頑張れば戻ると思う。一応魔力を動かしていた経験を蓄積してきた訳だからね。但し、それでも極めている人の中では最弱だよ。人間の魔力量で人間にできる魔力操作のみで組手した場合は誰にも勝てないね」

「今からまた地獄の訓練が始まるのかしら?泣けるわ…」


私は最弱なのね…。

流石に悲しくなるわ。


「ディーンは本当に甘えているね。地獄の訓練というのはシャルが娘たちにしているようなものを言うんだよ。私の訓練は今でもかなり優しいよ。ヴィーネたちは成長速度が凄いからね。私たちも成長は早い方だけれどヴィーネたちと比べると天と地ほどの差があるから、より努力するしかないのさ」

「それならジィーニはすぐ姉さんに追いつけるはずでしょ?何故警戒されているの?」


ヴィーネたちの成長速度は異常ね…。

一度受けた攻撃は二度と効かないとか反則だわ。


「成長速度に天と地ほどの差があっても努力量は裏切らないからね。シャルと組手したことで私の考え方が変わったと知っているからさ。私の努力量で訓練方法を変えているのであれば最低でもお祭りまでは待って欲しいという事だよ。ジィーニは地獄の訓練を続けているだろうね。姉妹で自分だけが私に破壊されたら何を言われるか分からないからね」

「どうせ寝る場所を変われとかその程度よ。あの子たちには重要なことみたいですからね」


娘たちも精霊たちもシャルにどれだけ触れていられるのかを競っている。

あれは一体何なのかしら?


それにフェニックスまでシャルを母さんと呼び出したわね。

神様の母親は何になるのかしら?


「理由は何でもいいのさ。今の私は努力すればする程に成長している。隙を探したり意表を突いたりそんな事は必要なくなったよ。ようやく鬼気迫る組手ができるというものさ。一瞬の動揺が破壊に繋がる。そういう組手だよ」

「姉さんは相手を見れば隙を見つけられたじゃない。その特技は消えてしまったの?」


何でお祭りの時に鬼気迫る組手をしたがるのかしら?

私とクリスタが楽しんでいる横で命懸けの組手をしないで欲しいわね。


「もう誰もがその段階を過ぎているのさ。隙は見つからない。何か1つでも相手より基礎力が上回っていないと絶対に勝てない。そういう勝負だよ」

「以前みたいに魔力移動で隙を作ったりはできないの?」


戦略とかはなくなったのかしら?

力のぶつかり合いでひるんだ方が負けみたいな感じね。


「無駄な魔力移動をしたら破壊されるよ。それに意表を突こうと考えた時点で破壊されるだろうね」

「そんなに強くなっているの?私には何も分からないわ」


「ディーンは弱すぎるからね。魔力移動も見えないし使っている魔力量も正確には分からない。みんな必死で努力しているのにディーンだけ甘えていたからね。仕方ないよ」

「私は姉さんと訓練していたじゃない。甘い訓練ではなかったでしょ?」


弱すぎると言われ、甘い訓練だと言われ。

私のこれまでの努力が否定されていくわ。


泣けるわね…。


「シャルと組手するまでは私も甘い訓練だとは思っていなかったよ。言ったでしょ?震えて動けなくなったと。シャルの訓練はそれが基本だよ。訓練だろうときっちりと勝敗をつける。私にはそれがなかったからね。ディーンは厳しい訓練をしていると思っていても私に負けたとは思っていないでしょ?」

「訓練ですから勝負しているとは考えていなかったわね」


「その差が大きいよ。相手が降参するまで徹底的に鍛えるのだから。心か体のどちからが負けを認めるまでシャルの訓練は終わらない。お祭りで遊びに来ていた時は私の対策を体に覚えさせるだけだったけれど今は違うからね。娘たちが訓練を望んだらボコボコだよ。いつも愚痴を言っているでしょ?言いたくなる程の訓練なのさ」

「私はシャルに訓練をお願いすればいいのかしら?」


毎日煩いのよね…。

超越者だの、宇宙最強魔王だの。


事実ですから仕方ないわよね。


「弱すぎるから無駄だよ。自分の弱さを知りたいならシャルと組手すればいいよ」

「姉さんでも本気を出せば私をボコボコにできるわよね?」


「ボコボコにするだけなら簡単だよ。シャルはそれ以上のことをしてくるだろうね」

「死ぬ寸前までボコボコにされるだけじゃないの?」


「そんな簡単なことは私でもできるよ。呼べばいいじゃないか。私は見学しているから」

「見世物じゃないわよ。本当にもう…。念話(テレパシー)、シャル、身体強化を極めたから組手の相手をしてちょうだい」

「極めたのならいいよ。すぐ行くね」


妹を死ぬ寸前までボコボコにするのが簡単だと言える姉はおかしいわよね?


「お待たせ。ボコボコにされたいなんてディーン姉ちゃんも変態だね?」

「違うわよ。姉さんがシャルとの組手を勧めるから呼んだのよ。私が弱いのを知ることができるとね」


「弱いのに弱さを知りたいとはどういう事かな?これはナゾナゾかな?」

「馬鹿にしているわね!私に負けたと思わせてちょうだい!」


「分かったよ。人間の魔力量だよね?」

「そうね。それでいいわ」


「それ以外はいいの?」

「本気でやってちょうだい!」

「条件をつけないんだ。頑張ってね」


姉さんが応援した?

非常にまずい気がするわ。


「じゃあ、行くよ!」

「ええ。始めましょう…」


【ドパァン】

【ドサァ】


いったぁーい!


な、何をされたの?

攻撃が見えなかった。


一瞬で両腕と両脚が弾けたわ。

空中で達磨になった私の体が砂漠に落ちた。


高位回復魔法(ハイヒール)


落ち着きましょう。

立ち上がって攻撃をしなければね。


【ドパァン】

【ドサァ】


もう…、痛いわよ!

まさか私に攻撃させないつもり?


立ち上がった瞬間に達磨にされる。

どうしようもないじゃない…。


転移で距離を稼ぐ?

組手中にそれはできないわよね。


高位回復魔法(ハイヒール)


大人と乳飲み子ほどの差があるわね。

これは負けなの?


勝負にもなっていないわ…。

私には構えることさえ許されない。


「シャルからの攻撃を禁止。私に攻撃させなさい」

「分かったよ。立ち上がらないの?」


私は砂漠で倒れたまま…。

何故だか立つ気にはなれない。


とりあえず立つ!


・・・・。


自力で立てないの?


たった二度破壊されただけなのよ?

もう心が折れているの?


そんな訳が無いわ!

立つのが面倒なだけよ。


「シャル、自分で立つのが面倒だから立たせて」

「我儘な子供じゃないんだから。本当にもう…。念力(サイコキネシス)


「さて、攻撃するわよ!」

「攻撃させてと言うのは無しだからね?」


魔力を満たして拳を突き出すことくらいできるわよ。

馬鹿にしないでちょうだい!


右手の魔力を満たして拳を突き…。


【パァン】


痛い…。

何この痛さ?


異常な程に痛かった。

右手を破壊されただけの痛みではないわ。


それに私の拳が動いた瞬間に破壊された。

今度は体を動かすことを許さないという事なの?


高位回復魔法(ハイヒール)


どうすればいいのよ…。

私が攻撃動作をしたと判断された瞬間に破壊される。


しかもあり得ない程の激痛。


「ディーン姉ちゃん、攻撃してくれないと私は何もできないじゃない」

「分かっているわよ。それより星の魔力を使って私を呪っていないわよね?」


「組手中にそんな事する訳が無いでしょ?何で?」

「痛すぎるのよ!手が弾けただけの痛みには感じなかったわよ?」


「だって痛くなるように攻撃したからね。駄目だった?」

「何よそれ!そんな技術を知らないわよ?」


「一瞬に感じたかもしれないけれど指を順番に破裂させて掌を最後に破裂させたからね。蓄積された痛みを感じるように破壊したよ」

「酷すぎるわよ!姉には優しくしなさい!」

「ディーンが何も考えずに魔力で手を満たしたからできたのさ。拷問の技術に近いね。手首を切断するよりも指を順番に切断していく。相手に苦痛を与える最適な方法だね」


完全におかしいわ…。

拷問してくるシャルも冷静に分析している姉もね!


「家族を拷問するとか頭おかしいわよ。素直な攻撃をしなさい」

「組手中だからね。ディーン姉ちゃんが早く降参するようにしているだけだよ」

念力(サイコキネシス)で立たせてもらった時点で負けだよ。甘えん坊なんだから」


「ディーン姉ちゃんは人間にできる魔力操作だけしかできないみたいだね。クリスタと組手するだけならいいけれど、娘たちとは組手できないよ?」

「人間に可能な魔力操作を条件にした組手は古代種(エンシェント)ドラゴンとして恥ずかしいね。弱いことが知れて良かったじゃない」

「何よ!私は何をすればいいの?」


今日は弱い弱いと言われ続けているわね。

酷すぎないかしら?


「クリスタと組手を楽しみたいだけなのであれば、魔力の移動速度を鍛えるのと繊細な魔力操作を身につけるだけでいいよ。私たちと組手を楽しみたいなら全部鍛える必要があるね。極めてから鍛錬が始まるからディーン姉ちゃんはまだ何も鍛えていないという事だよ」

「ディーンに選択肢ができたね。どっちの方向に進むのかな?クリスタの方向に進んでから私たちの方向に進むという手もあるよ。それが最善だろうね」

「何で私が知らない技術を姉さんやシャルは知っているの?」


「実験しているからね。何ができて何ができないのかを考えるのも訓練の1つだよ」

「ディーンは私と訓練しているだけだからそれが全く足りないね。知らない技術は自分で発見するのが一番だけれど時間が勿体ないから知りたいなら教えてあげるよ」

「姉さん、クリスタと対等に組手できるように特訓して。その後に幅広く鍛えるのかはまた考えるわ」


「ところで負けを認めたの?続けるの?」

「私が負けましたと言うまで続けるつもりなの?」


シャルの中では組手が終わっていないの?

私も愚痴を言いたくなってきたわ…。


「当然じゃない。どうするの?」

「ま、け、ま、し、た!」

「本当に素直じゃないね。努力が足りないからいけないのだよ」


「姉さんはシャルと組手しないの?」

「まだあれから余り成長していないからね。ディーンを放置してもいいのであればもう少し早く成長できると思うけれどいいのかな?」


「それは駄目よ。姉さんしか私を鍛えてくれないじゃない」

「極めたのであれば私が鍛えてあげようか?」


地獄の訓練でしょ?

絶対にお断りよ!


「絶対に嫌よ!娘たちと同じように鍛えられたら死ぬわ」

「そこまで酷くないよ。誤解しすぎだよ。私が耐えられる痛みを想定した訓練だから心配しないで」

「私の優しさが分かったかな?身体強化の生みの親が想定している痛みは死の直前だからね」


身体強化を生み出すと精神が壊れるのかしら?

死の直前が訓練っておかしいと思わないの?


姉さんよりシャルの方が危険だとは予想外ね。


「姉さんの優しさがよく分かったわ。それより何でそこまで鍛えるのよ。何を目指しているの?」

「楽しみながら暇潰しだよ。人生長いから楽しまないとね!」

「シャルの言う通り。長い人生を楽しまないとね。私は移住してから実に楽しい毎日だよ!」


暇潰しに命懸けなの?

厄災のドラゴンとまで言われた竜王は普通だったのね。


身近にこれ程の異常者がいたとは…。

クリスタと組手を楽しめるまでは頑張りましょう。

普通は人それぞれですね。

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