閑話 ダミアン 大胆な設計図
街の構想はどうしようかね。
下水道の本管はコンクリートで問題ない。
上水道は鉄に変えた方が良さそうだね。
各区に最低でも1本の補助管が必用だろう。
各家庭と繋ぐ為の補助管を更に配置する必要がある。
そして、本管の水を固定した風の魔石で押し上げる。
そうすれば、各区の補助管から家庭へ繋ぐ為の配管まで水が行き渡るはずだ。
今の研究結果では鉄を使う工事が一番楽だが、さらに進めばもっと良い素材が出来るはず。
仕方が無いが、今は我慢しよう。
私はここまで考えて最高の計画が思い浮かんだ。
病院の地下に研究所を作ってもらえる事になったんだ。
街全体に地下室を作ろう。
その方が上下水道の本管と各区の補助管を繋ぐ修理も楽になる。
厚さ1mのコンクリートで街の地下3mから縦4m、全て地下室にする事に決定だ。
排気口を作れば空気の問題も無い。
そもそもだ。
シャーロット様の浄化の魔法があれば空気も水も浄化できる。
ただ、同じ個所で魔石を使い過ぎると魔力が足りなくなる可能性もある。
ちゃんと考えないとね。
水の魔石、風の魔石、光の魔石、浄化の魔石が何個必要か考える必要がある。
1分間にどれだけの水を生み出すか。
そして、一家庭あたりどれだけの水を使用するか。
最後は満たされた水が溢れた場合に再度本管に戻す仕組みを考えるだけ。
戻さなくても中央区の噴水に流してあげてもいいね。
やはり、地下室があれば調整が簡単だ。
今、完璧に考える必要は無い。
上水道は水が行き渡る仕組みと溢れた水を戻す仕組み。
下水道は浄化して川に流す仕組みを考えればいい。
シャーロット様がいる事が前提の設計ではあるが。
地下室も地上の配管もシャーロット様にお願いするべきだろう。
魔石に魔法を入れるのもお願いしないといけない。
魔石の提供もお願いしたいね。
全部お願いしないといけないね。
とりあえず、街長に見てもらってからだね。
あんまりシャーロット様に頼り過ぎるのも良くないと考えているが。
私たちの力では時間が掛かり過ぎてしまうんだよね。
初期の工事は頼ったほうが確実だと思う。
安全性も上がるからね。
シャーロット様が作る素材は余分な混ざり物がない。
極めて純粋な素材な為、強度が高い。
将来を考えるならお願いするべきだ。
私の中では決定だよ。
街長室を訪ねる。
「やあ、街長。設計図が出来たよ。まあ、見てくれよ」
「ああ。ん?これは…、まさか、街の下を全て地下室にするつもりか?」
「正解だよ。未来を考えてね。人が出入り出来る地下室に上下水道の本管と各区の補助管があった方が問題が発生した時に修理が簡単だろう?シャーロット様の力なら簡単さ。今は鉄とコンクリートが素材になっているが未来は分からない。その度にお願いするよりは、一度しっかりとした地下室を作ってもらって、人が手入れできる環境を作った方が良くないかい?」
「言っている事は分かるが街が沈む心配は無いのか?」
「シャーロット様の力を甘く見過ぎだよ。研究者が作る素材とは純度が違う。太い柱も各区の中心に用意すればいい。だが、絶対に沈まないとは言えない。しかし、私達が生きている間に沈む事はない。まあ、全てシャーロット様の力ありきだがね。人の技術者がやるのは配管に繋ぐ工事をするだけさ。各家庭が繋ぐ配管は地下室の上に作り各区の補助管を地下室と本管の間に配置する。コンクリートに穴をあけ、各家庭が繋ぐ配管と各区の補助管を繋ぐんだ。とても今の技術者ができる工事じゃないんだよ。見れば分かるだろう?何年も何十年もかかる工事になる。それを、シャーロット様なら一瞬だよ」
「つまり、技術者は少し地面を掘れば上水道も下水道にも繋げる配管があり、大切な各区の補助管と、それを満たす為の本管を地下室に設置か。絶対に無理な工事だな。今の子供たちが魔法を使えるようになって初めて実現可能な状態だろう。逆に言えば、今の子供たちが魔法を使えるようになれば修理等も簡単に行えるという事か。問題は地面に埋める配管だな。腐敗は無いのか?」
「残念ながら今の素材では腐敗する。20年から30年程度なら大丈夫だと思うが、雨などで地下に水が染みた場合に錆びてくると思う。だから、将来は素材を変えるべきだね。つまり、絶対に修理が必要な時期が来るんだよ。各家庭の為に用意する配管が錆びた場合は、各区の補助管で水を止めて魔法使いが一気に素材を入れ替えると便利だが、最悪の場合は地面を掘る必要がある。地下室が錆びた場合も補修が必要だね。どっちがいいかい?地上に作れば見栄えが悪いが修理が簡単だ。地下に作れば街は綺麗だが修理は大変だ」
「街を綺麗に作って技術者の育成をした方がいいだろうな。研究も進めて新しい素材を見つけるべきだ。最先端の街が見映えが悪いのは駄目だろう」
「そうだろう?世界一の街を見栄え悪くするなんてあり得ない。それに、技術の発展を甘く見てはいけない。必ず錆びない素材を見つける事ができるはずだ。基礎の規模が大き過ぎるからおかしく感じるが、街をシャーロット様の家だと考えれば普通に思えるだろう?」
「まあ、そうだな。とりあえず、現時点で上下水道を使っている家庭に一旦中止を要請して一気に工事する。そして、使っていた家庭の工事は人でゆっくり進めて行くか?シャーロット様なら繋げる事もできると思うぞ?」
「そうだろうね。繋げてもらった方がいい。これからはトイレを作るのが大変だと思うよ。みんな最新式がいいに決まっている。そして、工事をする人も大変だ。すぐに使えるように人々はしたいと願うからね」
「あれを知ってしまえば止められないだろうな。それくらい便利で楽で快適なんだよ。お願いするか」
街長がボタンを押した。
お願いする気になった様だね。
シャーロット様が突然現れても驚かなくなったよ。
最初はドキッとしたものだったがね。
「何か用かな?ダミアンがいるって事は設計図ができたんだ」
「そうです。しかし、かなり大規模ですしシャーロット様の魔石と魔法が前提です。お願い出来ますか?」
「シャーロット様。最新の街が綺麗なのは当然です。確実に未来の為になりますよ」
シャーロット様は未来を確実に意識しているんだ。
絶対にやってくれるよ。
「ちょっと設計図見せてね。んー、簡単じゃないか。私の空間把握能力を舐めちゃ困るよ。今、上下水道を繋いでいる家は全て最新の配管に切り替えてあげるよ」
「そこまでして頂けるのですか。では、5日後にお願いします。国中に工事の案内を出しますので」
「分かったよ。5日後だね。別にやる事も無いと思うけど一応連絡を入れてね。またねー」
シャーロット様は笑顔で去っていった。
「言ったろう?シャーロット様を甘く見ない方がいいんだよ。簡単な工事さ」
「そうだったな。簡単な工事だ。自分の常識に囚われてはこの街に住む意味が無いな」
そうさ、この街が世界一の街になる。
私は更に研究をさせてもらうよ。
ああ、どんな事が出来るようになるかな。
楽しみで仕方が無いよ。
ダミアンは開き直りますから強いですね。
シャーロットの性格も把握していますから。




