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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
番外編

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ジェラルシィーナ 姉妹

ジィーニは私を警戒しているみたいだ。

私もかなり成長しているという事だね!


「姉さん、何でジィーニが姉さんとの組手をお祭りまで延期したの?私には絶対に勝てると思っているのに姉さんには勝てないかもしれないと考えている。何か不安があるのかしら?」

「簡単な話さ。ジィーニは私とシャルが組手したのを知っているからだよ。社に住む前と比較したらかなり強くなっているよ。ヴィーネやウィーノの成長速度には勝てないけれど、孵化したばかりのジィーニでは私に勝てないと考えてもおかしくない程にね。頑張って鍛えている甲斐があるというものさ。まだまだ強くならないとね!」


ディーンを鍛えている私が同じ失敗をしていたとはね。

シャルとの組手は勉強になったよ。


「姉さんがシャルと組手したですって?勝負にならないでしょ!強くなる秘密でも教えてもらったの?」

「ふふっ。勝負にならないなんて優しい話ではないよ。身体強化を生みだした私が本気で辛いと思う程に痛かったからね。ヴィーネとウィーノが泣き言を並べているのもよく理解できたよ。シャルは強過ぎるね。同じ条件で戦って勝てる気がしなかったよ。それに強くなるのに秘密なんて何もないさ」


攻撃を仕掛けると破壊される。

攻撃を防御しても破壊される。

隙を見せたら破壊される。


とても人に見せられるような組手ではないね。

だけれど非常に楽しい時間だったよ。


「シャルにボコボコにされると強くなれるという事かしら?」

「それは違うね。私がシャルと組手したかっただけの話さ。強くなれた理由は違うけれど、何か切っ掛けがないと考え方を変えるのは難しいからね。また組手で遊びたいと思っているよ」


「強くなる考え方を教えてもらったという事かしら?」

「そういう事だよ」


「今までは何も教えてくれなかったシャルが何故教えてくれたのかしら?」

「精霊女王がこの星の全種族を支配できる力を持っていると予想していたからさ。だから私やディーンが敵になる事も想定していたみたいだよ。事実、精霊女王はその力を持っていたようだからシャルの予想通りだった訳だね。今は一緒に住んでいる家族だから。家族に隠し事はしないみたいだよ。私の弱点を知っていたシャルが教えてくれたのさ」


「姉さんに弱点なんてあったの?私も聞けば教えてもらえるのかしら?」

「ディーンは身体強化を極めてからの話だね。シャルは意外とそういうところが厳しいから」


まず教えてもらえないだろうね。

努力が余りにも足りないと一蹴されてしまいそうだよ。


「姉さんが教えてもらったものは何なの?それは私にも秘密なの?」

「秘密じゃないさ。ディーン、竜の国にいた時から一緒に訓練しているけど私は強くなっていたと思う?」


「強くなっているとは感じなかったわね。姉さんも強くなれるとは考えていなかったでしょ?」

「よく分かっているじゃないか。そこだよ!強くなれると考えていなかったのが間違っていたのさ」


「どういう事?姉さんが自分の限界を読み間違えていたという事なの?」

「実に情けない話だよ。ディーンに癖を直すようにと指導していた私にも癖があったという事だからね。限界は頭で考えるものじゃない。体が教えてくれるとシャルに言われたよ。私は身体強化を生みだした時の初心を忘れてしまっていたのさ。体の声を聴かずに頭で考えてしまっていた。これ以上は強くなれないから相手の隙を探すように戦っていた。シャルの隙なんて見付かる訳が無いし、自分を見つめ直すには良い切っ掛けだったよ」


痛いけど楽しい組手だった。

格上に挑戦するというのはとても楽しいね。


「姉さんが竜の国にいた時と余り変わらないように感じるのは何故なの?」

「ディーンの前では竜の国にいた時と同じように魔力を動かしているからね。シャルに教えてもらった事だけれど、対戦する相手には普段と違う魔力の動きを見せて実力を隠すのさ。本気の魔力の動きを見せず相手の反応を見て対処するとね」


シャル程の強さになると魔力の動きを全く見せてくれない。

魔力の動きを見る為には相当鍛える必要があるだろうね。


「姉さんならジィーニに勝てたという事なの?」

「全力勝負だと流石に無理だけれど、人間の魔力量での勝負なら勝てたと思うよ。私も強くなったでしょ!本当に楽しいよ。まだまだ強くなれるし、今の自分を試せる相手もたくさんいる。最高の環境だよ。移住して大正解だね。ドラゴンは家族というものに余り興味がない種族だけれど、今の私は家族と一緒に暮らしていると思っているよ。そういうところの考え方も変わったね」


ディーンは余程お母さんと呼ばせたいみたいだね。

一緒に住む家族なのだから叔母さんで十分じゃないか。


全く我儘な妹だよ…。


「ディーンには正直に言っておくよ。弱過ぎるからもっと真剣に鍛えなさい!社で家族として一緒に暮らす以上、身体強化を極めるのは必須。そこから先は自由でいいと思うけれどね。今までの訓練が甘かったみたいだよ。シャルのように死ななければいいという組手に切り変えよう。覚悟はできたかな?」

「ちょっと姉さん!今でも十分に死にそうなんですけれど…。何を突然言い出すのよ!」


「シャルは組手で一切容赦しなかったよ。素晴らしいと思ったね。相手が格下であろうとも挑まれた以上は死なないギリギリを見極めて攻撃する。そして、勝敗はきっちりと決める。相手が負けを認めるまで攻撃は続くよ。もしくは体が動かなくなるまでね。今でも思い出すと身震いするよ」

「姉さんは体が動かなくなるまでシャルと組手したの?」


「勿論だよ!延々と組手していたと思っているのかもしれないけれど、30分も持たなかったよ。残念な事に体が負けを認めてしまったからね。シャルとの組手の凄さが分かるでしょ?現在世界最強のシャルは心と体に負けを認めさせる事ができる。私の心が負けを認めないと分かって体に負けを認めさせたのさ。体が震えて動けなくなったよ。今まで経験した事がない状態だね。最高に楽しい組手だったよ!流石に弱いまま挑むのはシャルに申し訳ないからね。もっと鍛えてから再挑戦さ!」

「姉さんが震えて動けなくなるなんて余りにも異常事態じゃないの。身体強化を極めるのとは全く関係のない話じゃない。私の体が動かなくなるまで攻撃し続けても極められないわよ」


本当に甘えん坊だよ…。

5000年以上も甘え続けていたから直すのは大変だね。


「私が言いたいのはそこじゃないよ。家族にも徹底するシャルを見習おうと思ってね。ディーンに今まで甘い訓練をしてきた事を反省しているのさ。それでは隙間が埋まるまで破壊し続けようか。5000回破壊すれば癖も直って隙間も埋まるでしょ?」

「おかしいわよ!それは唯の拷問じゃない。身体強化を極める訓練はシャルにお願いしようかしら…」


すぐに逃げようとする。

このままではクリスタにも申し訳ないよ。


「先程言わなかったかな?シャルは身体強化を極めていない人とは組手しないよ。国民がシャルと組手する為の条件が身体強化を極めている事なのに、身内が身体強化を極めずにシャルと組手していたらおかしいじゃないか。余りにも甘え続けていると叔母さんとも呼んでもらえなくなるよ?ヴィーネとウィーノはディーンよりはるかに辛い訓練をしているのだから。ジィーニも一緒だね。この恵まれた環境で最高齢のディーンが身体強化を極めていないのは流石に問題だよ。シャルと組手して私もその思いが強くなったのさ。ディーンが身体強化を極めていないのは甘えだとね」

「分かったわよ!お祭りまでに極められるように指導してちょうだい。そのくらいの時間はいいでしょ?」


「私もお祭りまでにもっと鍛えたいのを知っているよね?手加減はしないよ。私自身も鍛えつつ組手しようと思う。痛いのが嫌なら隙間を埋めなさい!」

「ええ。全力で癖を直すわ。私だけ極めていないのは余りにも情けないですから」


ようやく覚悟が決まったみたいだね。

さあ、楽しい組手の始まりだよ!

シィーナも辛い組手は異常ですね!

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