シャーロット お母さんの娘
お母さん、少し時間が掛かったけど血を使うね。
心臓がドクンと強く鼓動した…。
いいよと返事してくれたみたいだね。
私の髪が短くなり赤髪に染まる。
背中の羽は生えたままだね…。
どのような姿になっても私は変わらないよ。
お母さんの娘だから。
フェニックスは世界樹の上で寝るのが好きだったのに私たちと寝るのが好きになったみたい。
飛べる姿まではすぐに成長して凄く驚いたよ…。
いつも私の背中の上で寝ている。
せっかくの広い布団なのに4人固まっているね。
家族が増えて社はとても賑やかになった…。
お母さんが亡くなってから、このような日常を送れるなんて想像できなかったよ。
忘れないうちに連絡しておこう。
念話。
「シィーナ姉ちゃん、ディーン姉ちゃん。精霊女王は始末したよ。私が精霊女王になったからもう安心だよ。今はフェニックスも社で暮らしているからね」
「流石シャルだね。そろそろ引っ越しの準備を始めようかな」
「本当に無茶苦茶ね。まあ、よく頑張ったわね。時間を見つけて遊びに行くわ」
2人がすぐに引っ越してきそうな感じだね。
これは、止められないね…。
ますます賑やかになりそうだよ。
「母さん、私たちって母さんより強くなれるの?」
「そうだよ。星の魔力まで使える母さんに追いつけるのか分からないよ」
甘えん坊たちの泣き言が聞こえるよ。
理由は分かっているけどさ…。
「精霊女王は強くないから何も変わらないよ。2人が努力すれば世界最強になれるのは間違いないから。あと、姉ちゃん達が引っ越してきそうな雰囲気があるから組手で圧倒できるように鍛えておかないと大変な毎日が待っているよ」
「許可しなければいいじゃない。もしかして、許可しちゃったの?」
「そうだよー。無理って言えばいいだけだよー」
分かっている癖にこういう事を言うのは駄目だよね。
地獄の説教組手が必要なのかな?
「何を言っても止まらないのは知っているでしょ?こっちの事情は無視して来るの。分かったら考える力と心を鍛えなさい。お婆ちゃんに言われたのでしょ?本当にもう…」
「お婆ちゃんの性格に似せた母さんでしょ?お婆ちゃんは亡くなっているじゃない」
「そうだよー。私たちがお婆ちゃんの分身を待ち望んでいるかのように言わないでよねー」
予想通り凄く待ち望んでいるね…。
私もお母さんにあそこまで近付くとは思っていなかったよ。
「ふーん…。2人の組手の相手はお母さんに任せようと思っていたけど中止にするね」
「待って母さん!能力制御を鍛えるべきだよ。お婆ちゃんにもっと近付けられるかもしれないよ?」
「そうだよ。亡くなった人を心の中で生かすってお婆ちゃん言っていたよ。母さんの心の中で生きているんだよ。偶には外に出してあげてよー」
私はお母さんの血をたくさんもらったからね…。
お母さんの想いもたくさん詰まっていたのだと思う。
だから、たくさんの血と私の記憶でお母さんが生まれた気がする。
悪ふざけで私の真似をしているお母さんにしか思えないからね。
本当にもう…。
吸血技。
「娘たちが会いたいって煩いから組手してきてよ」
「仕方ないわね。それじゃあ、行くわよ」
「「はーい!」」
簡単に娘たちの心を奪われてしまったよ。
やはりお母さんは手強いね…。
しかし、負ける訳にはいかないから。
私も母親だからね。
それに、子供も増えたから。
フェニックスも私の子だからね。
フェニックスは普段学校に通っているよ。
学ぶ事は特にないけど皆と一緒にいるのが楽しいみたい。
皆との仲が変わらなくて本当に良かった…。
夕暮れまで球蹴りしてから帰ってくるよ。
だから、毎日家族一緒にお風呂に入るのが日課になった。
お風呂は本当に気持ちいいね!
娘たちもフェニックスと一緒の生活に違和感を覚えてはいない。
自然に受け入れてくれたよ。
但し、ディーン姉ちゃんから卵をもらうのは禁止だって。
絶対に勝てない妹が産まれると予想しているね。
私はそんな事はないと思っているよ。
姉ちゃん達が引っ越してきたら考え方が変わるのかもしれないね。
それに、闘技場が大人気になりそうだよ。
卒業生たちが姉ちゃん達の組手を見たいだろうからね。
目に映るくらいまでは鍛えていないと音だけしか分からない。
それでも、何か感じるものはあると思う。
精霊たちは何だかんだ言っても妹や弟が欲しいみたい。
皆の前では恥ずかしくて言えないだけで感情で丸分かりだったからね。
フェニックスが許可しているのも大きい。
そのうち言いに来ると思う。
次元結界で隠していた星は魔法で消したけど、この星の問題解決の為だと分かっているからフェニックス自身で覚醒を抑えてくれたと思っているよ。
分身に記憶を移す能力を与えて記憶を入れてもらおうか悩んだけど、殺してしまった友達に隠し事をするのは止めた。
私が精霊女王になった時にフェニックスを自分の子だと思ったのが一番の理由だね。
だから、自分の子を信じて感情抑制は一度もしていない。
精霊女王は信じていなかったみたいだけどね…。
フェニックスを守れない精霊女王は失格だと思っている。
感情を殺して覚醒させないようにするなんて私にはできない。
感情抑制はとても残酷な能力だから。
洗脳の呪いと何も変わらないよ…。
生命の繁栄の為に自身で感情を殺す能力を生み出した。
覚醒フェニックスから能力を受け取った時にその思いが伝わってきたから。
フェニックスが生み出した能力なのがとても悲しいよ…。
だから、私は感情抑制を絶対に使わない。
私は正義の味方でも何でもない。
自分の子が一番大切な唯の母親だから。
仮にフェニックスが覚醒しても家族と国民は絶対に守る。
当然フェニックスの記憶も守る。
私の子だからね。
今は球蹴りで負けた時に少し不機嫌になったりもしている。
感情を殺されて常に笑顔でいるよりも余程いいね…。
大差で負けて覚醒しそうになったら説教だけどね!
万が一覚醒してしまったらこの星の全ての生命体を守るよ。
子供の失敗の責任は親の私が取る。
フェニックスは本当に元気で明るくなった。
休日は国中を歩き回って色々な人たちと会話している。
好奇心も強くなった気がする。
新しいものや珍しいものが大好きな子供だからね。
この世界は強くなければ守れない。
誰よりも知っているはずの精霊女王が弱いままだったのは残念だね。
どれ程の歳月を実験に使ったのかは知らないけれど、一度も自身を鍛える努力をしていない。
人を利用する事しか考えていないような相手に私が負ける訳が無い。
それと、私は不滅になってしまった…。
フェニックスと一緒に宇宙を旅してお互いに飽きたら一緒に無になるのもいいかもしれない。
フェニックスを他の精霊女王には任せられない。
感情抑制があるから任せたくない…。
母親としての私の我儘。
それに、娘たちの成長が長く見られて大満足だよ。
今までよりも寂しい経験を多くする事になるけれど心の中で元気に生き続ける。
皆と心が温まる思い出をたくさん作らないとね!
この国は長命種が主体にゆっくり代わっていくと思う。
だけど、短命種を救い続けるから理想的な国になるのは間違いない。
これからも色々あると思うけれど私は何が起きるのか楽しみにしているよ。
今の私があるのはお母さんのお陰。
森の中で得体の知れない吸血鬼を拾って育ててくれた。
毎日…、20年以上も血を吸わせてくれた。
普通はできない事をしてくれた…。
そこから全てが始まってこれから先も続いていく。
私は胸を張って世界に言える。
シェリルお母さんが宇宙で一番の母親だよ。
今のところはね…。
私がシェリルお母さんを超える母親になるから!
次回最終話です。
幸せは特別な事ではなく明日も続く日常です。
シャルは日常を守り続けます。
お母さんは凄いのです!




