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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第5章 聖地シャーロット

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閑話 カーリン 再会議の準備

「ヴィーネ様。今週の休日の昼食後に孤児院について再会議を行います。よろしくお願いします」


少しすると社の扉が開きました。

ヴィーネ様がお1人で中から歩いて来られました。


「やあ、新孤児院の職員の子はどうするのか既に決めているのかな?」


同じ失敗はできません。

新孤児院の職員の子には事前に確認を行いました。


やはり子供の救出に関わりたいそうです。

ですから、来年以降は別の組織を運営してもらうつもりです。


「はい。新孤児院の職員は組合を作り子供の救出に関わりたいそうです。ですから、新旧孤児院の子供たちは旧孤児院の職員だけで世話します。新しい組合名、組織名、必要な施設、就職人数、子供の救出条件等を会議で決める予定になっています」

「その話し合いには3人で参加するからよろしくね。あと新孤児院の職員に新しい施設の子でも身分は土地守を徹底するように伝えておいて。よろしくね」


「はい。分かりました」


ヴィーネ様は軽く手を振られた後に社に戻られました。

社の扉が閉まったのを確認して旧孤児院に帰りました。


夕食の準備時間になり新旧孤児院の職員が揃ったので声を掛けます。


「みんな聞いて。今週の休日の昼食後に来年からの孤児院について再会議します。社からはお三方が参加されます。新孤児院の職員の希望も伝えました。来年から新旧孤児院の子は旧孤児院の職員で世話します。滞りなく進行できるようにある程度は草案を練っておいてちょうだい。新しい施設でも身分は土地守を徹底するようにとヴィーネ様から仰せつかっているわ。孤児院の家族で仲間は聖地シャーロットの孤児院関係者のみです。新しい施設に救出された子については新しく考えてあげなさい。何か質問はあるかしら?」


今回は事前に打ち合わせしているので何もないでしょう。

予定通りに会議できそうだわ。


「ねぇ。よくよく考えたら私たちだけで料理するの凄く大変じゃない?1年くらいは手伝ってもらった方がいい気がするんだけど。やっぱ駄目?」

「あなたが分かりやすい状況にしたいからと言ったんでしょ?今よりも5倍は働きなさい。しかも、ヴィーネ様に報告した後に言う事じゃないわよ。気分で行動する癖を直しなさい」

「前回の会議で大見得切っていたのに今更何を言っているのですか?組手の鍛錬ばかりしていないで料理も鍛錬しなさいよ!」


誰もが感じたであろう真面目な意見をビアンカが言ってくれたわ。

本当にクリスタはいつもそうなのよね。


突然予定を変えようとするのよ。

本能のみで生きているのかしら?


「諦めたかしら?新孤児院の職員は子供の救出に関わりたいと決めているのよ。料理だけでも手伝ってもらえば孤児院と綺麗な切り分けができなくなる。分かっているでしょ?諦めなさい」

「後悔しても知らないからね。私は忠告したよ。始まってから泣き言を並べないでよ!」

「クリスタの言葉が全ての発端です。泣くならクリスタだけが泣いて下さい!」


レナーテが止めの一言をクリスタに浴びせました。

これで、少しは静かになるでしょう…。


当日が少し心配になるわね。


「新孤児院の職員に言っておくわ。クリスタの言葉を聞いたから1年延長しようなんて考える必要はありません。既にあなた達の希望をヴィーネ様に報告しています。報告内容の根本を変えるとか馬鹿な真似は許されません。孤児院も新しい施設でもシャーロット様たちを裏切る事は許しません。その教育だけは徹底しなさい」

「「分かりました!」」


忙しくなるのは分かっていた事です。

洗脳の問題が解決された事を喜ぶべきでしょう。


家族が多いから大変なのです。

喜ぶ事があったとしても忙しさに悲鳴を上げる事はありません。


「仕方ないわねー。覚悟を決めますかー!」

「あなたねー。覚悟もないのに会議で発言していたのかしら?覚悟を決めておきなさい!」


クリスタの発言は無視すればいいでしょう。

最後は黙って仕事するのはよく知っていますから。


子供たちを寝かしつけた後はどちらの孤児院で世話するのか考えなければなりません。

少ない人数で子供を世話するのであれば必須事項でしょう。


やはり派閥ごとにまとめた方が子供たちも安心でしょう。


「幼い子は旧孤児院に集めます。クリスティーネとシルキーの派閥の子もみんな旧孤児院です。クリスタの派閥とチェルシーの派閥は卒業が近い子が多いので新孤児院に移動してもらいます。後は適当に割り振りましょう」

「勉強していてもこれだよ。抜けている事に変わりはないね。最大派閥を無視しているよ。まあ、最大派閥をまとめてもろくな事がないから割り振るのは賛成だよ」

「そうですね。枕投げが毎日行われるだけです。非常に迷惑ですから割り振りましょう。旧孤児院は幼い子と特に人当たりが優しい大きい子を中心にしましょう。残りは新孤児院でいいと思います。それは、カーリンの得意分野ではありませんか?」


確かに幼い子だけを集めてしまうとまとまりがなくなってしまうわね。

人当たりが優しい子であれば怖がる事もないでしょう。


「怖い子はいませんが、特に人当たりが優しい子は旧孤児院に集めましょう。幼い子が怖がらないようにする事と、まとまりは欲しいですから。子供たちの割り振りは私がします。それと、私は両方の孤児院を交互に見ます。レナーテとビアンカは状況により移動をお願いします。クリスタとチェルシーは新孤児院をお願いします。クリスティーネとシルキーは旧孤児院です。基本的には自派閥の子がいる孤児院を見る事にしたいと思います。細かい動きについては私たちだけで子供を世話してみないと分からないわね。日々の状況により臨機応変に行動しましょう。何か意見はあるかしら?」

「いいんじゃない。それと気になっているんだけど、新孤児院の子や卒業予定の子は分かっているの?条件を決めるという事は放置される子がいる。目の前で助けられる子と見捨てられる子がいる事になるわ。理解しているの?」


これから新しい子を世話していくのよ?

理解していないのかしら?


「そこまで説明しなければならないの?新しく組合を作って施設を作って子供の救出をお願いするのよ?救出される子がどのような状況なのかは誰よりも知っているはずじゃない。条件なんて決められないわよ。具体的な人数を決めて、当てはまる場所の子の全員救出をお願いするのが基本じゃないかしら?条件を決めたら子供を置いてくるのはシャーロット様たちよ。心の負担を考えたら条件なんて決められないでしょ?それは、常識じゃないのかしら?」

「何も考えていないね。自分たちが子供を救出する英雄にでもなれる気でいると思うわよ。あの子たちは置いて行かれる子供の気持ちなんて知らないからね。シャーロット様は今まで子供を置いてきた事なんてないからさ。何とかしてくれると勘違いしている可能性があるよ。全てを決めろと言われた意味を理解していないね。前回の会議はそれ以前の問題だった。今回の会議は醜態を晒す事になるわよ」


クリスタがここまで言うという事はそうなのね。

それは、流石に看過できないわ。


「孤児院での教育が甘いのかしら?それとも、組合を作ろうとしている子たちの考えが甘いのかしら?」

「孤児院で教育する必要はないね。私たちは人間と獣人を保護している訳ではない。新しく組合を作る子たちの考えが甘いのよ。普通に考えれば会議の内容で救出条件を決めるとなっている事に意見を言うわよ。そのような事は決められませんってね。真面目に決めるつもりなのよ。自分たちが世話できる子供をね。それが、どれほど残酷な事なのかを理解せずに。会議の内容によってはヴィーネ様が完全に呆れる可能性がある。事前に話し合いをしておくべきよ。醜態を晒すのは許さない!」


クリスタが既に怒っている…。

やはり事前に話し合いが必要ね。


「分かったわ。明日の夜、子供たちを寝かしつけた後に食事場所で話し合いよ。シルキーは残ってちょうだい。新孤児院の職員も1人だけ残してもらうようにするわ。馬鹿な考えは叩き潰します。シャーロット様に不快な思いをさせるようなお願いは許しません」

「本気で粛清対象になる可能性がある。甘い態度をしないでよ」


孤児院は家族で仲間。

ですが、シャーロット様を裏切る者は敵です。


徹底的に教えたはずです…。

辛いですが、家族を粛正するのも家族の務めだわ。


翌日の夕食の準備時間になりました。

「エルマー、新孤児院に1人だけ残して食事場所で事前に話し合いをしておきたいと思います」

「分かりました。伝えておきます」


エルマーは洗脳の問題が解決した後から雰囲気が変わりました。

命令しているつもりではないのですが、嫌々従っているという感じを伝えてきます。


反抗期かしら…。


孤児院の職員が反抗期を前面に出す事は許されない。

成長するにつれて同じような気持ちを抱く子はいても皆が自制しているのですから。


とても心配になるような雰囲気です…。

今のエルマーには何を言っても聞入れてくれない感じがします。


子供たちを寝かしつけた後にシルキーに旧孤児院を任せ食事場所に移動しました。

幼い子から離れようとしない為、無理に引き離すよりは任せた方が良いのです。


食事場所に新旧孤児院の職員が集まりました。


それぞれが向かい合って座る形にしました。

「さて、何故急遽話し合いの場を設けたのか説明するわ。ある程度は子供の救出条件を考えているでしょ?それを、先に聞いておきたいのよ。今はどの程度進んでいるのかしら?」


代表で口を開いたのはエルマーです。

「話し合った結果、最初から幼い子を世話するのは難しいと判断しました。洗脳されている子や酷い状態の子も同様です。ですから、10歳前後の健康な子を就職した子の人数に合わせて救出をお願いするつもりです」


隣に座っているクリスタが激怒しそうな雰囲気ね。

私も怒りを抑えるのに必死よ…。


「あなた達は不幸な子を助けたいの?それとも、不幸な子を世話したいの?私の質問が同じ事を言っているように感じるのであれば容赦しないわよ。孤児院の敵になる。相談してもいいから考えて発言なさい」


私とクリスタの様子に色めき立っている。

ただ事ではないと理解はできたようね。


「質問してもいいですか?」

「どうぞ。何かしら?」


「世話できなかもしれない子供も世話できるようにしろという事ですか?」

「なるほどね。人間と獣人は大人になると傲慢になるのかしら?これ程の待遇で、仕事せずに遊べて、学校に通って勉強させてもらえて、その答えにたどり着くの?シャーロット様たちが助けられた子は今まで健康だったかしら?年齢を決めていたかしら?10歳前後の健康な子なら秘儀を覚えているあなた達なら助けに行けるわよね?国の場所だけ教えていただきなさい。それなら、見逃してあげるわ。但し、そのような下らないお願いをするのであれば粛清対象よ。エルマーは決定にしましょう。孤児院長として私が決定しました。理由は不愉快な質問をしたからです」


空気が静まり返りったわね。

エルマー、私は本気よ…。


「な、何で僕だけですか?理由も納得できません!」

「納得して欲しいなんて頼んだかしら?私が決めて社にお願いに行けば決定です。あなた達に止められるかしら?」


この子たちが子供を世話できるのかしら?

この程度の事で狼狽えていては駄目じゃない。


「エルマーは外して私の質問について考えなさい。それとも、全員対象だったかしら?静かに沈黙されると不愉快になるわ。あなた達には元気な子しか任せていない事にも気付いていないの?両腕と両脚を切断した後に治してもらった子もいるわ。理由は四肢の先端が腐敗していたからよ。あなた達は子供を助けに行く事を軽い事だと考えている。子供を世話する事も同様ね。質問について考えて答えなさい」

「考えて回答すればエルマーは助かるの?」


「何故かしら?あなた達にそのような権利はありません。私はあなた達と同じ事をしているだけよ。それにも、気付けないのかしら?本当に手のかかる子たちだわ。日々考えてきたのでしょ?考えなさい」


クリスタの予想通りじゃない…。

このような状況をヴィーネ様に見られてしまえば終わりよ。


「あなた達はカーリンのようになれると考えているでしょ?毎日笑顔で子供を世話していれば人気者になれて、子供たちが慕ってくれる。甘過ぎるわよ!全てを甘く考えている。助けられた子は無条件で大人を慕ってくれる。そんな風に考えていない?」

「カーリンとクリスタが怒っていたら誰でも委縮してしまいますよ。ですから、私たち全員が怒る前に考えて下さいね。二度もシャーロット様を裏切るなど許されませんから。そのような回答であった場合は神に代わって粛清です!」

「3人が怒ったら誰でも委縮するわよ。エルマーは外された理由を考えなさい。残った子はエルマーが外された理由と何をしようとしているのか考えなさい」


ビアンカが上手くまとめてくれたわね。

クリスタとレナーテまで怒ってしまえば誰も止められないじゃない。


「不幸な子を世話したいと思っています。ですが、誰でも世話できるとは考えていません。それが、駄目だという事でしょうか?エルマーが外された理由は私たちが子供の救出条件を決めているからで、理由はありません。置いて行かれる子供の事を考えれば同じ状況になるはずですから」


全く足りない。


「本当に手のかかる子だわ…。子供の救出に行くのは誰なのか答えなさい?」

「シャーロット様たちです…」


「シャーロット様たちはあなた達が決めた条件の子だけを集める事ができると思っているのかしら?」

「不幸な感情の子を集めてから条件の子を連れてきて下さるのだと思います」


「そこまで分かっていて何も考えていないのね。救出条件から漏れた子はどうなるのかしら?あなた達が働いていた時の条件を言うだけよ。早く答えなさい!」

「間違いなく処刑されます…」


「それを分かっていて子供を置いてくるのは誰なのかしら?」

「シャーロット様たちです…」


「結果、何が起きるのか考えていないの?」

「置いて行かれる子供に恨み言を言われる可能性があります。救出を中止にするかもしれません」


甘過ぎる。

無理だとしか思えない。


「甘い!救出条件を出した時点であなた達は選別で飛ばされる可能性がある。ヴィーネ様の感情を考えているの?子供を救出してもいいと言われているのはヴィーネ様だけよ。子供を置いてくるなんて条件に納得する訳が無い。仮にヴィーネ様が納得したとしてもシャーロット様が止める。ヴィーネ様の感情が乱れる可能性があるのだから。組合まで作って救出した子を全員世話できないのであれば止めなさい。この国では助けられない子供は存在しない。真面目に世話する大人がいればね。救出条件なんて考えている大人が孤児院をまとめられる訳が無い。子供に信用される訳が無い。ここに来た子供は置いてかれた子供を見ているのよ?誰がそれを決めたのかすぐに理解する。子供を置いてく事が平気でできる癖に不幸な子供を救出したいなんて二度と言うな!あんた達が助けていただいた時に条件はあったの?洗脳が危険だと判断されて飛ばされた時は何も知らない孤児院にいた子も飛ばされている。人間と獣人の組合を作った場合は代表だと考えなければならない。あんた達のせいでこの国には人間と獣人が必要ないと判断されかねない。中途半端な事はするな!助けて欲しいと願うのであれば全て助けなさい。そうでなければ、違う職場に就職しなさい。もし会議で同じような失態を演じた場合は本気で粛清する。分かった?」

「「はい…」」


クリスタが私の言いたい事を全て言ってしまったわね…。

普段から説教しているクリスタに言われた方が本気で考えるでしょう。


「エルマー、会議当日までに考えておきなさい。この国はありとあらゆる病気や怪我を治せます。古傷や四肢の欠損も治せます。助けにも行けないのに条件を付けるなんて烏滸がましいわ。助けていただけるだけで感謝しなければならない。条件で許されるのは人数くらいよ。世話できる子供の人数は努力でどうにかできる問題ではないのですから。分かったわね?」

「はい…。分かりました…」


返事には怒りを抑えている感じがしました。

お願いだから会議までには自制して…。


「孤児院の子にも反抗期は当然あります。ですが、大勢で暮らしている為に自制する必要があるわ。職員が反抗期は以ての外です。今回の話し合いで怒りを感じている子もいるようですが、当日は必ず自制してちょうだい。孤児院は家族で仲間なの。身分が土地守になりましたが何も変わらないわ。お願いよ…」

「「はい!」」

「分かりました…」


やはり届かないの?

私にできる事はここまでね。


「前回と同じような悲劇は起こしたくありません。会議を13歳以上は見学自由にします。組合に加入するのか、新しい組織に就職するのかの判断材料になりますから」

「いいんじゃない。組合に強制加入は良くないからね。全員が加入したくなるような組合を考えてみなさい。今日の話し合いと同じような事をした場合は本気で粛清だから」


孤児院は家族で仲間で身分は土地守。

ですが、シャーロット様たちを裏切る人は敵です。

説教は聞くよりも話すほうが疲れます…。

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