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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第5章 聖地シャーロット

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ジェラルウィーノ お祭り(後半)

私は母さんの能力と知識を継承している。

でも、シィーナ叔母さんがどのような組手するのかは知らなかった。


少し前に初めて組手したばかりだもん…。

竜の国だから当然母さんは内容を知らないはず。


何でこんな事になっているのかな?


母さんとした組手をゆっくり再現されているように感じるよ…。

魔力の動きから体の動きまで全てゆっくり再現しているみたい。


少しだけ怖いよ…。


竜の国で組手した時は魔力の移動速度だけで圧倒した。

シィーナ叔母さんも鍛えていたみたいだけど私の方が速かったから。


だけど、今している組手はおかしいよ。

掠り傷をつけられたら地獄の組手が待っていると思う。


だけど、こんなの無傷に決まっているよ。


わざと怪我しなければ無傷が確定しているもん。

仮にも世界最強だから一度経験すれば体が覚えてくれる。


私の体が何故か覚えているんだよね…。

シィーナ叔母さんの攻撃方法を全部だよ?


おかしいよね?


周りからはどのように見えるのかな?

接戦しているように見えるのかな?


攻撃方法が分かっているからいつでも反撃できる。

魔力の動かし方も分かっているから驚きも焦りもしない。


どのようにすれば可能なのかな?

母さんは一度も組手した事ないじゃない。


姉さんから組手の結果報告を聞いたりはしている。

でも、直接は見た事ないじゃない。


シィーナ叔母さんの魔力の動きだけで全ての動きを把握したの?

そして、次のお祭りでする動きを予想しているの?


母さんに組手した事が気付かれなかったらどうなっていたのかな?

んー、流石に無傷を保証する事はできないと思う…。


負ける事はないけど怪我しそうだからね。


だって、シィーナ叔母さんの組手の戦略が前回と全く違うもん。

短期間でこんなにも変える事ができるのは凄いよ…。


多分だけど、私と組手して隙を見付けたからだと思う。

シィーナ叔母さんは戦いの天才だよ。


それなのに、今の状況は何かな?

私にはまだ奥の手が残っている。


破壊は考えなくてもいいと言われているから。


これは、次のお祭りまで隠しておけという事かな?

シィーナ叔母さんは次のお祭りでこの手を使ってくる気がするよ。


「シィーナ叔母さんは凄いよー。短期間でここまで戦略を変えられたら普通は対処できないよ」

「私なりに努力しているからね。全て余裕で防がれると次の組手の戦略を考えるしかないね」


諦めてくれないよねー。

少しだけ期待していたのに。


「だって、二度目だもん。私と姉さんに同じ攻撃は効かないからね。怖くなってくるよー」

「二度目に感じているの?手強いなんてものじゃないね…。今日の動きを再現されたようだ」


そうなのかなー?

母さんとは組手が成立していないよ。


「どうだろう?同じ動きではない気がするけどね。母さんと組手すると反撃する事ができないから」

「全ての攻撃で動かした部位が破壊されるという事かな?」


思い出したくもないよ…。

我慢強い方だと思うけど痛過ぎるもん。


「一方的に破壊され続けるだけだよ。それなのに、二度目に感じるのは不思議だよー」

「破壊された攻撃方法を体が覚えているからじゃないのかな?私の攻撃速度が遅く感じていないかい?」


「母さんに比べたら世界中の人が遅いと思うよ。全然本気ではないと分かるからね」

「本能でそう感じているのさ。それが、世界最強というものじゃないかな」


世界最強と言われると悲しくなるよー。

何で母さんは私たちより強いのかな?


理不尽だよー!


「私たちが鍛えたら母さんを超えるらしいよ。母さんが言っているから間違いないとは思うけど…」

「私もそう思っているよ。だから、遊べるうちに遊んでおかないとね!」


そういう事なの?

母さんを超えるまで組手が続くよー。


「シィーナ叔母さんは戦いの天才だよ。竜の国で組手したと母さんに気付かれなければ間違いなく怪我したもん。歴代最強の古代種(エンシェント)ドラゴンじゃないのかな?私たちは古代種(エンシェント)ドラゴンになれるだけの真祖だからね。叔母さんの体や能力は全部上書きされているから。自分で言うのも変だけど卑怯な存在だと思うもん」

「予想通りだけど自覚があるとは思わなかったよ。認識できるという事は相当差があるという事だね?」


「相当だね。2人が出会った時、つまり母さんが100歳くらいの時には瞬殺できるくらいに強いよ。それに、母さんは鍛え続けているからね。姉さんが孵化した後に強くなって、私が孵化した後に更に強くなって、どこまで強くなるのか分からないよー。私たちを守る為に強くなるとかいうおかしな事をしているからね。その時の想定している敵が自分だもん。意味が分からないよ。自分を殺す方法を考え続けているよ。そして、私たちは母さんに殺されないように訓練されているからね。終わらないよー!」

「世界最強を自負している訳だね。自分以上の敵が想定できないから仕方ないさ。自分を殺す為に鍛え、自分に殺されないように鍛える。強くなり続けるね。限界がどこなのか分からないけど、既に覚醒フェニックスにまで到達している。不死の存在が無になると考える。本当に超越者だよ。それを、超えるべくして孵化した2人は頑張らないとね。勿論私も努力し続けるよ」


全く諦めてくれる気配がないよ。

完全に戦闘狂だよー。


「シャルが来たね。ここまでにしよう。次回が楽しみだよ」

「お祭りを楽しもうよー。屋台たくさんあるのに組手で終わるとか泣けるよー」


「そろそろ夕暮れだよー!土地神リンゴ飴を食べて休憩して」

「長いよー。組手の時間が長過ぎるよー」

「楽しそうに会話してたじゃない。次回も楽しめばいいよ」


姉さんは見学していただけじゃない。

途中で代わってくれてもいいのにさ。


クリスタの組手に夢中だよ。

本当に大好きだよねー。


「かなり強くなっているわね。流石に驚いたわ。また次回も楽しみましょう」

「はい。ありがとうございました。次回までに強くなっておきます」


「叔母さんは慣れるまで種族差使ったからね。気付かれないと思ったのかな?」

「何を言っているのかしら?使ってないわよ。少し驚いただけだわ。とんでもない言い掛かりね」


クリスタはそこまで強いの?

姉さんはクリスタを魔王にしたいのかな?


「まあ、楽しめたのならいいじゃない。クリスタも土地神リンゴ飴食べて仕事に戻らないとね」

「ですよね。仕事してませんから。夜になったら煩そうですよ。はぁ…」

「勇者の仕事はドラゴン退治と決まっているじゃない。十分仕事したよ」

「秘儀を極めていない叔母さんに勝てないなんて悲しい種族格差だよー」

「本当に煩いわねー。もうすぐ極めるわよ。5000年の癖は簡単に直せないのよ」

「その通りだね。5000年遊んだから取り戻す為には厳しくするしかないよ」


シィーナ叔母さんの言葉に悲しんでいる人がいるよ。

完全に自業自得だねー!


「じゃあ、先に行くね。お祭りを楽しんだ後は適当に社で寛いでいてよ。また後でねー。転移魔法(テレポート)


噴水前に移動した。


「クリスタは一番大変な仕事をしたからね。竜王の相手をし続けるとか泣けるよ。本当は少し増やしてあげてもいいけどクリスタも楽しんでいるからね。いつものお小遣いだよ。仕事頑張ってね」

「ありがとうございます!すぐに子供の様子を確認してきます」


全力で逃げたね。


何も問題はないと思うんだけどなー。

だって、叔母さんの相手は一番大変な仕事だもん。


「座って土地神リンゴ飴食べようか」

「「はーい」」


噴水の縁は混雑しているのに3人だけ座れるように空いているよ。

これって平等なのかなー?


問題なしだね!

頑張って国を守っているもん。


母さんがね…。

悪い気がしてきたよ。


母さんを真ん中に私と姉さんが左右に座る。


「ヴィーネ。ウィーノの組手はどうだったの?」

「遊んでたよ。説教が必要だね。組手中に成長しようという気概が感じられなかったよ」

「最強の古代種(エンシェント)ドラゴンが相手だよ?遊べる訳が無いじゃない。姉さんの目が曇っていたのかな?」


「そうだったかな?余裕過ぎてどうしようって感じだったよ?失礼にも程があるね」

「何を言っているのかな?私は一生懸命に組手するのを信条にしているからね。嘘はやめてよねー」

「それで?実際はどう感じたの?魔神に正直に話しなさい!」


全部聞かれているよねー。

終わったよ…。


「二度目だと思った。それに、動きが遅いから驚いたよ。この現象を解明するのが私の使命かな?」

「完全に馬鹿にしているよ。母の愛が足りないのかな?」

「ふーん。未知なる力を使う超越者に鍛えて欲しそうだね。4対1で組手だったかな?いつするの?」


普通に考えたら母さんが勝ったら駄目なんだよ?

未知なる力を使う超越者には常識が通用しないみたい。


「またまたー。母さんも冗談ばかり言うんだから。叔母さん達が死んじゃうよ?」

「そうだよー。何も殺す必要はないじゃない。楽しい組手が終わったばかりだからさ」

「3対1だったね。シィーナ姉ちゃんは参加を希望していたし明日の朝でいいかな?」


「お祭りの日以外に組手したら毎日しないといけなくなるよ。母さんらしくないね」

「そうだよー。毎日組手するなんて大変だよ。衝動的に行動するなんて母さんらしくないよ」

「二度と挑まれないように圧倒すればいいでしょ?誘われないように組手すればいいでしょ?」


絶対にみんな瀕死だよ…。

全力で阻止しないとまずい!


「私たち以外は死んじゃうよ。シィーナ叔母さん死んじゃうよ」

「母さん、殺したら駄目だよー。私たちに守れって事かな?」

「私が相手によって加減もできないような弱者だと言いたいの?体で覚えたいの?」


あれあれ?

母さんが不機嫌な気がする。


「体で覚えられる事にも限界はあるよ。だって、死んだら終わりだもの」

「今日の母さんは何でそんなに組手したいの?嫌な事でもあったかな?」

「そうだね。娘たちが私の見えない所で悪口を言っていたくらいかな。動機としては十分でしょ?」


全部聞かれていたの決定だね。

本当に意味不明だよ…。


「そんな人いたかな?私とウィーノは母さんを褒め称えていたからね。知らないよ?」

「姉さんの言う通りだよー。母さんの悪口を言う人なんて懲らしめるから心配しないで」

「まあ、今日はお祭りだから許すよ。それで、組手はどうだったの?」


お祭りの奇跡だよ…。

でも、朝から夕暮れまで組手とかおかしいよね?


クリスタは空腹じゃないのかな?


「クリスタはかなり健闘したと思う。叔母さんが焦って魔力多めに使ったくらいだよ。ウィーノは無傷。これは、当然だから別に報告する必要ないでしょ?」

「シィーナ叔母さんは戦いの天才だと思ったよ。最強の古代種(エンシェント)ドラゴンも冗談で言った訳ではないからね。私は自分が古代種(エンシェント)ドラゴンだとは思ってないもん。姉さんも一緒だと思う。前回の組手で隙を見付けて戦略を大きく変えてきたと思うから凄いと思った。私は全ての攻撃が経験済みだったし動作も遅かったから余裕があっただけだよ。破壊するつもりはなかったからシィーナ叔母さんの事を考えていただけだよ」

「考えて組手していたのであればいいよ。身体強化でできる事なんて限られているからね。同じ肉体強度ならば基礎力が上の方が圧倒的に有利だよ。極小魔力の操作。魔力移動速度。魔力量の把握。これだけでいいの。誰よりも鍛えれば種族差のない相手には勝てるよ。身体強化の隙は視野を広く持って鍛えれば全て無意味。空気中の魔力の動きも視界に入れておく。2人ともまだ戦略に頼っているから隙が生まれる。基礎力を徹底的に鍛えなさい。後は自分の感情抑制を意識しなさい。怒りや悲しみでは強くならない。激怒していても考える。悲しみに暮れていても考える。物事には意味があり考えれば分かる事が多い。ヴィーネは感情抑制が甘い。ウィーノは周りの感情を意識していない。それぞれ意識して生活しなさい。お祭りだし、今日はここまで。セイレーンの歌を聴いてから孤児院に行くよ。先に社に帰っていてもいいからね」


助言のような説教だったね…。

お祭りだから地獄の組手に発展しなくて良かったよ。


「「はーい」」


母さんの魔法で綺麗な光景ができたよ。

その中でのセイレーンの歌はいいね。


癒しだよ…。


この殺伐とした世界で唯一の癒しじゃないのかな?

心が洗われるようだよ…。


リンゴ飴とセイレーンの歌が聴けたからいいかな。

お祭りを満喫した気分だよー。


終わっちゃった…。

皆の拍手が鳴り止まないね。


この国に観光客はいらないよ。

被害者が集まった国なのだから。


この心地好い雰囲気は壊したくない。


「子供は家に帰る時間だよ。大人は引き続き楽しんでもいいけど、お酒の飲み過ぎには注意してね」


母さんのいつもの念話(テレパシー)だね。


「みんな、孤児院に帰るよー」

「「はーい」」


私と姉さんは母さんと一緒に旧孤児院に入った。


「みんな揃っているか確認をお願い」

「「分かりました」」


・・・・。


「みんな揃っています」


早過ぎでしょ!

どんな能力を使ったの?


「ありがとう。範囲睡眠魔法(エリアスリープ)転移魔法(テレポート)


子供たちが倒れる前に寝る場所に移動させたみたい。


母さんの魔法制御能力はおかしいよ…。

凄く繊細な事を簡単にしているように見える。


「さあ、子供たちは眠らせたから飲みに行っておいで」


分身したね…。

姉さんも母さんと話したいと思うから私は分身についていこう。


「私はこっちに残るから新孤児院の子をお願いね」

「了解だよ。大人が戻ってきたらこっちに戻ってくるよ」


役割を自分で決めているのだと思う。

自身を完全に納得させるのは難しいのに。


「母さん、私は新孤児院についていくよ」

「私の方についてくるの?秘密の相談かな?」

「母さんを独り占めにしたいだけでしょ?お互い様だから別にいいけどね」


姉さんの為を思ったのに…。

まあ、私も母さんと2人で話したいのは間違いないからね。


分身の母さんと一緒に新孤児院に入った。

食事場所を経由するとすぐだね!


「やあ、子供の人数確認は終わっているね?」

「「はい!」」


「ありがとう。範囲睡眠魔法(エリアスリープ)転移魔法(テレポート)


新旧孤児院の子供の寝る位置まで覚えているのはおかしいよ。

国民を全員認識しているような雰囲気まであるね。


「さあ、子供たちは眠らせたから飲みに行っておいで」


「ありがとうございます。ご迷惑をお掛けしました」

「申し訳ございません。情けない限りです」


「いいから楽しんできなさい。次の会議で同じような事だけはしないでね」

「「はい!ありがとうございます」」


皆が笑顔で出て行ったね。

お祭りだから楽しまないと駄目だよ。


「ウィーノも布団掛けるの手伝って」

「はーい。分かったー」


母さんと一緒に子供たちに布団を掛けて1階に戻る。

そして、椅子に座って向かい合った…。


「それで、何でこっちに来たのかな?」

「母さんと2人で話したいと思ったからだよ。分かっているでしょ?」


「分かっているけど何かあったかな?組手の事かな?」

「フェニックスの事はみんな揃ってから話すと思うから組手の事だね。あれは何かな?」


「組手がつまらなく感じたの?それとも、シィーナ姉ちゃんの戦略を知っている理由かな?」

「組手は少し怖かったよ…。姉さんが無傷は当然だと言っていた意味が分かったから。何であんな事ができるの?一度も組手を見た事ないじゃない。竜の国でした組手なんて何も知らないでしょ?」


「ヴィーネとウィーノの訓練を見て竜の国で組手してきたと分かったよ。そして、隙を見付けられているともね。シィーナ姉ちゃんは相手の隙を見付けるのが凄く上手い。地下世界で努力した結果だろうね。私もウィーノの隙を知っていたから、それを潰しただけだよ」

「何でシィーナ叔母さんと同じ隙を見付けて潰す事ができるの?私には奥の手まであったよ。いつでも破壊できたんだよ?おかしいよー」


姉さんとの組手を見ただけで竜の国で組手してきたと分かったの?

何で母さんが知っているのか分からなかったけど、あれだけで十分なんだね。


更に、シィーナ叔母さんに隙を見付けられているとまで分かったのは何故かな?

隙を見付けられたと思って訓練していた訳ではないよ?


母さんは普通におかしな事ばかり言うもん…。


私とシィーナ叔母さんとの組手を見ていないのに同じ隙を見付けるとかおかしいよ。

完全にシィーナ叔母さんの思考を把握している事になる。


同じ隙を見付けて潰し奥の手まで用意する。

組手している私を通して母さんはシィーナ叔母さんを掌握しているよ。


「シィーナ姉ちゃんは自己鍛錬が苦手なんだよ。相手の隙を探す事に特化してしまっている。戦略にこだわっているね。だから、何を考えているのかが分かりやすい。ウィーノと組手したら試してみたくなる事とかがね。基礎力はウィーノの方が上だから相手の戦略が分かれば対処できる。その為、シィーナ姉ちゃんが使う戦略を少し強化して私が模倣した。私の時は対処できないけど体が覚えている。知っていると感じる。組手した時は相手の動きが遅く感じたでしょ?ウィーノが知っている動きは私の動きだからね。いつでも破壊できると感じたはず。相手の動きが分かるからね」

「シィーナ叔母さんは努力が下手だという事なの?古代種(エンシェント)ドラゴンで最強だと思ったのは本当だよ?」


母さんから見ると自己鍛錬が苦手な分かりやすい人になっちゃうの?

私は戦いの天才だと思ったのに…。


「相手を見ればどちらが強いのか分かるでしょ?魔力の動かし方を見れば大体分かるよ。魔力の動かす速さや流し方でね。先程も言ったけど、基礎力が強いのが一番だよ。必殺技なんて必要ない。分かっているでしょ?私が組手すると知っていたら態と魔力の移動速度を落としておく。魔力の流し方も変える。いつもと同じ事はしないよ。シィーナ姉ちゃんも勘違いしているんだよ。今の身体強化が限界近くであるとね。限界を決めるのは自分だから。最上位種というのはそういうものだと私は思っているよ」

「つまり最上位種であれば誰でも私たちのようになれるという事?」


シィーナ叔母さんは限界を勘違いしているんだ。

適切な努力をすればまだまだ強くなるんだね。


つまり、組手が終わらないよー。


「あなた達は特別よ。地下と地上の最上位種が合わさって産まれた子だから。種族によって限界はあると思うけどあなた達の限界は分からない。少なくとも私より強くなれるのは確実だから。現時点で最強なのは私だと分かっているよ。でも、100年も経てばあなた達の方が強くなっている可能性がある。私の限界もまだ先だからね。娘がいなければ鍛える理由はなかったけど今はいるから。子供を守るのは母の務めだからね。それに、限界まで鍛えれば分かると思う。でも、まだ私も子供だから。大人になれば限界が変わるのかもしれない。強くなりたいなら目的を持って鍛える事が大切だよ。鍛え方が分からなければ私の真似をすればいい。娘に隠したりはしないからね」

「それは、娘以外には隠すという事なの?」


覚醒フェニックスと対等に戦える母さんは限界じゃないんだ。

私たちはそんな母さんを超えないと駄目なんだよね。


厳しい世界だよ…。


母さんは叔母さん達も警戒対象なんだ。

それは、流石に予想外だよー。


「勿論そうだよ。最悪な状況を常に想定しておく。精霊女王は古代種(エンシェント)ドラゴンを操れる可能性がある。でも、あなた達は操れない。精霊女王が作った世界で想定されていない種族だと言えるからね。私が悪意を持たずに地上にいる事が想定外だから。それに、私も操れない。だって、私の方が強いから」

「何で母さんの方が強いと分かるの?」


私たちを操れない理由は分かるけど母さんを操れない理由は格好いいね。

やはり本物の世界最強は違うよ!


「フェニックスが教えてくれたからだよ。無になるとね。何もない、誰もいないから無。精霊女王もいない。遠隔でフェニックスを覚醒できたとしても何もできないよ。無になるからね。自分が死ぬのを恐れているから動けないよ」

「母さんは何であの会議をしたの?危険だと分かっていたでしょ?」


あの会議は危険だと思う…。

精霊を使って監視しているのかもしれないから。


確実にしている気がする。

フェニックスが母さんと戦うと無になると言ってくれて良かった。


誰も動けなくなるから…。


「ヴィーネの心の為だよ。会議しなければ納得できなかったと思う。少しずつ収まっているけど、不幸な子を見ると自分を追い詰めてしまう。短命種を見放していると言っていたのにあそこまで乱れたからね。それに、何があってもヴィーネとウィーノは守るよ。それだけだとつまらないからこの国も守る。そうすれば、他の星で生きていけるでしょ?勿論精霊女王は傀儡にするよ。星の魔力はドリュアスとあなた達がいれば大丈夫だし、生活環境もあなた達と精霊がいればすぐに出来上がる。あなた達の成長が見れないのは残念だけど母親としての務めは果たすから心配しないで」

「母さんは自己犠牲ばかりじゃない。自分が楽しい事をするべきだよ!」


やはり姉さんの為だったんだね…。

本当に娘の為なら危険な事を平気でするんだから。


だけど、対策は考えているんだね。

でも、母さんがいない世界はつまらないよ。


「今が楽しいのよ。母親が一番楽しいの。私のお母さんは死ぬまで自己犠牲じゃない。私を拾ってからずっと私の為に生きてきた。同じ事をしてあげたいだけだよ。私はお母さんから命をもらい続けた。500年も生きてきた。娘もできた。十分だよ。あなた達との生活が長ければ長いほど幸せ。終わって欲しくはないけど、終わるのであれば守り切る。例え相手が神だろうとね。私は土地神だから」

「私が強くなれば母さんは死なないのでしょ?私と姉さんが強くなればいいだけだよね?」


お婆ちゃんは本当に命懸けで母さんを育てた凄い人だよ。

比べられる人なんていないもん…。


私たちが強くなれば全て解決だよ。

綺麗に終わらせて楽しく生活できるよ。


「確かにそうだね。でも、焦っては駄目だよ。心が壊れてしまう。考える力を身につける。心を強くする。そして、鍛えればいいの。産まれたばかりで急ぐ必要はないよ。カーリンと接している事でウィーノはとても成長している。強い人と特訓すれば強くなれる訳ではないよ。弱い人の為に考える事も大切。あなた達は強く産まれた。でも、それに縛られる必要はない。楽しく生きてくれればいいよ。強くなるのはおまけ。守りたい人がいるのであれば強くなりなさい。この世界は強くなければ守れない事が多いからね」

「私と姉さんで母さんを守ってあげるよ!それならいいでしょ?」


「私より強くなりたいと思うのはいいけど絶対に焦らない。焦って鍛えて超えられるほど私は弱くないから。焦ると心が耐えられない。考える力と心を先に鍛えなさい。遠回りしているようで一番大切な事だから。ウィーノが考えて解決できない問題はないと思いなさい。鍛えれば解決できる訳ではないよ。先を見据える。どのような状況でも考える。フェニックス以外に理不尽な存在はいない。考えれば解決できる問題だけだよ。あなた達ならね」

「私と姉さんの考える力が弱いから時期尚早なの?」


「考える力も心も弱いかな。私の殺気に恐怖しているようではフェニックス相手に動けない可能性が高い。焦っても身につかないよ。ウィーノはカーリンと関わるようになってから見違える程に考える力がついた。心を鍛える方法は自分より強者に立ち向かう事。それともう一つ。自分より弱者に面と向かう事。対等な相手だと考える。剥き出しの心の強さに種族は関係ない。それを、見極められるようになりなさい。相手と真剣に向き合っていれば分かるようになるから」

「難しいよー。何をすればいいのか分からなくなるよ…」


「考える力がまだ弱い証拠だよ。焦らなくてもいいの。心が弱くなる。今している事をしっかりやり遂げなさい。やる事が見付からないなら私についてきたり、ヴィーネについていったりして多くを目にしなさい。知識だけでは足りないから。自分の目で直接見て考えないと力にならないよ。それと、余裕があれば能力と向き合ってみなさい。便利だから使うのではなく、何故そういう事ができるのか考えてみなさい。能力が進化するのではなく、理解する事が大切だよ」

「分かったよ…。偶に考えてみる」


とても大切な助言をしてもらった気がする。

普段の母さんとは少し違うとも思う…。


母さんが分身を生み出す時に意識しているからだよね。

何を強く意識して分身を生み出したのかな?


「ただいま戻りました。ありがとうございます」

「戻りしたー。ありがとござますー」

「「ありがとうございます」」


カミラがかなり酔っているね…。

レナーテよりはいいと思うけど。


「楽しめたみたいだね。じゃあ、戻るよ。ウィーノ行こうか」

「はーい。またねー。転移魔法(テレポート)


旧孤児院に移動した。


「戻ってきたよ。解除して」

「はい。また今度ね」


母さんが分身を解除した。


少し寂しい気がする…。

母さんに違いないのに。


いつもと違う母さんに感じたからかな?

能力を理解するという事はとても大切だね。


「結構話し込んだみたいだね。助言し過ぎだよ。私だけど…」

「ウィーノだけ助言してもらうのは卑怯じゃない?私にも助言してよ」

「勘違いだから。助言してもらってないよー。説教されていただけだからね」


やはりほとんどの内容が助言だったんだね。

それに、激励された気がしたよ。


次のお祭りも分身の母さんと話してみたいな。

楽しみが増えたよ!


「確かに説教に近い気もするね。じゃあ、私たちは行くね。またねー。転移魔法(テレポート)


社に移動した。


今日は母さんとたくさん話せたしもう大満足だよ。

叔母さん達は放置して寝たいなー。

母さんは凄いのです!

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