ジェラルヴィーネ お祭り(前半)
「シャーロット様、ヴィーネ様、ウィーノ様、本日はお祭りです。よろしくお願いします」
外からアグネスの声が聞こえるね。
催物組合が引き続きお祭りを仕切ってくれているみたい。
母さんが外に出ていった。
いつも通りの言葉を言うと思う。
偶にはお願いを言ってもいいと思うんだけどね。
「何かお願い事はあるかな?お祭りに問題は無いかな?」
「問題ありません。催物組合が盛大なお祭りを企画しましたのでお楽しみ下さい」
盛大なお祭り…。
楽しみたいよね。
リンゴ飴しかお祭りは楽しめないよ。
でも、家族みんなで食べられるのは幸せな事だと思う。
「分かったよ。ありがとう」
「いえ。それでは失礼します」
孤児院の子は本当に真面目だね。
会うといつも丁寧なお辞儀をされるから。
母さんが戻ってきた。
「ヴィーネとウィーノはどうするの?一緒に行動する?」
「母さんはいつも通り行動するのでしょ?」
「母さんが開催を宣言しないと始まらないよね?」
私は叔母さん達の監視だね。
毎回少しずつ来るのが早くなっているから。
「お祭りは恒例だからね。いつもと一緒だよ。私の回復魔法が開会宣言みたいなものだね」
「私は社にいるよ。2人が来るまで待っているから」
「私はカーリンのところに行っているよ」
ウィーノは本当に…。
子供たちの気持ちを考えてあげなよ。
「分かったよ。また後でね。転移魔法」
母さんは私たちに手を振ってから海底の砂浜に移動した。
「カーリンはとても忙しいと思うよ?」
「孤児院を眺めてくるだけだよ。どっちにしても食事場所に集合でしょ?」
直接言わないと通じなさそう。
やはり子供たちには無関心だね。
「そうだけど、ウィーノが行くと子供たちが緊張するでしょ?少しは考えないと」
「緊張するのー?何度も孤児院に行っているよ?」
「周りに無関心だねー。母さんが行っても子供たちは緊張するよ。孤児院の子は私たちを崇めるように教育されているからね。洗脳問題も解決したばかりだからいつもより緊張するよ。経過観察に来たと思われる可能性もあるじゃない」
「なるほどー!問題が残っていないか確認に来ていると思われたら嫌だね。お祭りの日にそれは可哀相だよー。今日は純粋に楽しんで欲しいからね。組手がなければ私も楽しめたのにー!」
子供たちにも楽しんで欲しいとは思っているみたい。
根は優しいから今はカーリンにそれが向いているだけかな。
「義務みたいなものだから諦めなよ。私だって組手してきたからね。母さんのように圧倒的な強者になって、相手が諦めるくらいに強くなれば誘われないよ…」
「分かって言ってるじゃない!覚醒フェニックスと対等に戦えるとか神だよ?母さんは神なの。どうなっているの?遂に土地神様を卒業だよ。やっぱり魔神かな?」
魔神とか言っちゃったよ。
しーらない。
「未知なる力で組手決定だよ。母さんを魔神とかよく言えたね。母さんが見逃してくれる事を祈っていればいいよ。母さんの感情把握は進化しているの確定だからね…」
「やっぱりそうなの?何で進化しちゃったの?おかしいよ!魔神には何でもありだよ。卑怯だよ!」
更に悪口を重ねたよ。
しーらない。
「今日はお祭りだよ。みんな全力で楽しんでね!病人や怪我人はいないよね?何か問題があるなら私は食事場所の屋上か噴水の近くにいるから声を掛けてね。聖地シャーロットのお祭り開催だよー!」
嘘でしょ?
冗談は止めてよ。
「姉さん、常識を教えてこようよ。非常識だよ。体で覚えてもらおうよ!」
「はぁ…。来年は前泊かな?体で覚えられるなら喜んで組手だよ。ウィーノの相手はシィーナ叔母さんだよ?身体強化の生みの親だよ?喜んで体で覚えるだろうね」
叔母さん達を放置するのはまずいね。
目立ちたがり屋がいるから…。
「こういう場合はどうするべきなの?鉄板焼きすら始まっていないよ?」
「とりあえず食事場所の屋上に移動するよ。はぁ…。転移魔法」
食事場所に移動した。
竜王の尻尾を4本も持っている女の子はおかしいよね?
悍ましい狂気を感じるよ…。
「やあ、今日はお肉を焼かないのかい?せっかくお土産に尻尾を持ってきたのに」
「流石シィーナ叔母さんだね。竜王の尻尾をお土産にできるのは他の誰にもできないよ」
今回は子供たちが食べる姿を見られそうもないね。
流石に4人もいたら緊張感が違うよ…。
平気なのは勇者だけだね!
「本当におかしな姉だわ。ところで何で誰もいないのかしら?来た意味がないじゃない」
「早過ぎー!何で午前中に来ちゃうの?鉄板焼きはもう少し後だよ。お祭りの開会宣言したばかりだからね」
時間を有効活用するべきだね。
夜に社で話をすると思うけど情報を共有しておいた方が捗る。
「少し時間があるし洗脳問題について話しておくよ。適当に座ってよ」
「そうだね。気にはなっていたから先に教えてもらおうかな。尻尾が邪魔だね」
「切断しておいて邪魔はないでしょ?鬼なの?」
「母さんは地獄の魔王だから鬼なら優しいよ。今は神になったから魔神だね」
ウィーノには恐怖心が欠落しているのかな?
魔神の訓練とか死ねるよ…。
「とりあえず、現在の状況を説明するよ。1重結界」
「厳重だね。それ程の内容だという事かな?」
「誰もいないのに防音するなんて余程ね。聞かせてもらおうかしら」
「姉さんは真剣に怒っているからね。クリスタを洗脳されたら、その種族を絶滅させるつもりだから」
「クリスタを洗脳できるのはあなた達かシャルくらいじゃないの。あり得ないわよ」
「あり得るから厳重に話すの。クリスタたちにも話していないよ。フェニックスと精霊だけにしか教えていないからね。じゃあ、話すよ」
・・・・。
洗脳問題については話せたよ。
精霊女王については母さんに何か考えがあると思う。
「本格的に狂っているね。狂った理由がフェニックスから与えられた能力だとするとあり得そうだよ。万能になった事で勘違いしている可能性があるね。それに、覚醒フェニックスが守っているのは最悪な組み合わせだよ。しかも、精霊としての役割が長命種への糧だとはね。現状では無視するしかないかな」
「何よ!そんな事でクリスタが支配されるの?頭おかしいじゃない!ヴィーネ、よく監視しておきなさいよ。下らない事をした種族は粛清よ」
当然しているよ!
でも、国民は信用しているから。
それに、私より母さんの方が激怒すると思う。
「心配しなくても母さんが絶対に許さないよ。国民は他種族に命令する事を禁止しているし破られた事は一度もないから。それに、人間と獣人には身分制度を許していない。門も閉じていて許可を得ていなければ出入りできないようにしている。条件さえ分かれば母さんに守れないものはないから。確実に結界の中に念話の傍受も入れているよ。懸念があるとすれば精霊女王が動き出す事だけど、人間と獣人の支配だけに終わらない可能性があるからどうしようもないよ。母さんには何も効かないと思うから国民を完全に念力で止めて対処すると思う。母さんは神だからね!」
「そうだよ。未知なる力を使う魔神だからね。姉さんを殺気だけで殺せちゃう超越者だから。フェニックスが母さんとの戦いを拒否しているから神で決定なの。戦ったら無になるらしいよ。世界滅亡どころか何も残らないね」
ウィーノは開き直っているのかな?
どうせ地獄なら言いたい事を言っておくつもりなのかも。
巻き添えだけはまずい…。
「ディーンはシャルに戦って勝てると思っていたよね?かなり恥ずかしくなってきていないかな?ヴィーネとウィーノが殺気で死ぬならどうにもならないよ。近付く事すらできないね。組手で遊んでみたいけど、私では何もさせてもらえないだろうからね。少しでも追いついて遊べるようにならないと」
神だと聞いても追いつくつもりだよ。
何でここまで戦闘狂なのかな?
身体強化の生みの親はおかしいよ。
母さんもおかしいからね…。
「娘が親を超えたのよ。嬉しい事じゃない。遂に神の域にまで到達したのね。誇らしいわ!」
叔母さんが頭のおかしな事を言っているよ。
私の精神汚染の原因は叔母さんだね…。
「母さんの親はお婆ちゃんだし、血の繋がりがあるのはシィーナ叔母さんじゃない。勝手に親になるとかどうかしているよ。私を精神汚染した責任を取ってよね」
「そうだよ。姉さんは叔母さんの5000年以上に渡る勘違いに苦しめられてきたんだよ。本気出せば勝てるって耳鳴りのように聞こえ続けていたんだからね。悲しい現実だよ。世界最強だと勘違いした姉さんは世界を魔力で覆って精神汚染されたんだから」
本当に可哀相な人になるから止めて…。
冗談だったのに事実にされそうな予感がする。
「なるほど。それは、面白い解釈だね。ディーンが世界最強だと思っていたからヴィーネも世界最強だと思って孵化した。自然に世界を魔力で覆った訳だね。ドラゴンの知識の継承は本来であれば2人の知識が入る事はないからね。辛い思いをしたみたいだね。尻尾の本数を増やしておくよ」
「姉さんまで何を言っているのかしら?子供の児戯に付き合うとかおかしいわよ。私の尻尾を切断したいだけじゃない。妹の尻尾をお土産にするとか当たり前のようにできるのが怖いわよ」
話に乗っかっておこうかな…。
お土産の尻尾が増えれば子供たちが喜ぶよ。
「流石シィーナ叔母さんだね。間違った事をした叔母さんは責任を取る必要があるよ。例えば尻尾を目の前で食べられるとかね。美味しく子供たちに食べてもらえるとか素晴らしい事じゃない。竜王が孤児の為にお肉を用意するなんて感動しちゃうよ。自発的な行動なら見直しちゃうね」
「お肉よりも組手だよー。飽きる程したよね?私を破壊する手段を見付けたの?もー、姪の破壊を考えるとかおかしいよ。私は怪我した瞬間に死亡判定だからね。母さんの地獄の訓練だよ。姉さんが監視しているし。酷いよー」
絶対に大丈夫だよ。
ウィーノは初めての組手だから実感する事になるね。
母さんの凄さを…。
恐ろしく感じる可能性もあるね。
「勿論考えてきているよ。ウィーノとはまだ遊べるからね。半年間鍛えてきたけどこの前は何もさせてもらえなかったからね。今日の一番の楽しみさ」
「姉さんは地下世界で戦闘狂になってしまったのよ。妹の尻尾を平気でお土産とか言えてしまうくらいにね。私は前回の組手で満足したわよ。姉さんの訓練が厳しくなったのが辛いわね…」
ウィーノと組手してから一月も経っていない気がするけど。
「母さんの予想通りの反応じゃない。半年に一度でいいの。それが、お互いの為なのよ。お祭りまで待ってもらえば地獄を経験しなくても済んだのに何で組手しちゃったの?」
「姉さんが遅いからに決まっているでしょ!暇だったの。暇しているのに断れる理由がないじゃない。何かあっても秘密にしてよ。姉妹だから当然だよね?」
少し罪悪感があるね…。
だけど、絶対無傷だから気にしなーい。
結界解除。
母さんたちが来たね…。
念力で魔獣の肉塊を浮かせているのにも狂気を感じるよ。
「シャルが来たよ。やあ、お土産は竜王の尻尾4本だよ。私たちがいると緊張させてしまうから早速組手に行くから安心してよ」
「いや…、早いからね。来年からは前泊するのかな?気付いたら住んでいそうな勢いじゃない。お土産は嬉しいから頂くね。ディーン姉ちゃんの目の前で食べて子供たちの感想を聞いて欲しいけど流石に4人もいたら緊張感が凄いから闘技場に行ってね。クリスタも行っていいよ」
「午前中からですか?いいのですか?シャーロット様に言われたら行くしかありませんね」
竜王を相手に腕試ししたくて仕方ない感じだね。
流石勇者クリスタだよ!
「流石勇者だね。鍛え続けた成果を竜王に見せ付ける時が来たよ。人間の限界に挑戦だよ!」
「クリスタは既に限界じゃなかったかしら?更に強くなったの?誰が鍛えているのよ?」
「姉さんだよ。勇者は孤独に限界を目指し続ける生き物だからね。同じ魔力量で人間が可能な魔力操作のみで戦うときついと思うよ。お祭りは皆が楽しまないと駄目だからね。子供たちの緊張が伝わってくるよ。姉さん、早く行こう」
流石にこの4人が揃っていては駄目だね。
何もしていなくても威圧感が凄いから…。
ウィーノも優しいところがあるね。
子供たちにお祭りを楽しんでもらう事を優先している。
組手を嫌がっていたのにさ…。
そのうち、自分の意思で子供を救出に行くのかもしれないね。
「そうだね。お祭り楽しんでねー。転移魔法」
皆に手を振ってから闘技場に移動した。
「綺麗な場所になったわね。何かに使っているのかしら?」
「組手や魔法を使った試合会場になっているんだよ。見学できるのかどうかは試合する人が決めるけど、結構人気なんだよ。身体強化を使った試合だと白熱するからね。審判は母さんがしているから万が一もないし娯楽の1つになっているよ」
「シャルと戦うヴィーネとウィーノを見学したいね。できないのかい?」
「本気で言わないでよ。母さんは笑顔で許可するから。私と姉さんは断固拒否だからね!」
「絶対に言わないでよ。ここが血の海になるからね。私とウィーノじゃなければ死ぬから。母さんは異常者だからね。娘を瀕死にして笑顔だから。地獄の魔王の訓練は本気で痛いから!能力ありだったら、凄惨な事になるからね。戦うなら叔母さん2人で挑んでよ!」
ついに本音が出てしまったよ。
私も地獄の訓練行きだね…。
「面白そうな案だね。ディーン挑んでみようか?」
「私を巻き込まないで。3人で挑めばいいじゃないの。シャルなら許可するでしょ?」
シィーナ叔母さんのやる気はどこからくるの?
子供じゃないのだからワクワクしないでよ…。
子供だったね。
「3対1でも許可してくれるかな?」
「本気で駄目だよ。4対1でも許可するよ。神なの!魔神なの!」
「ウィーノ、余り危険な言葉を使わない方がいいよ。母の愛で満たされるよ」
「まずいまずい。ここは聞こえる場所だったよ。この世界に母さんから逃れられる場所はないけど、直接言ったのを聞かれているからまずいよ。姉さん、一緒に母の愛で満たされようよー」
「とても心温まる言葉ですね。シャーロット様の愛は満たされると死にそうですけど…」
「クリスタは相変わらず勘が鋭いね。満たされると死ぬよ…。早く組手を始めなよ。3重結界、会場を破壊されると困るから一応ね」
私は叔母さんが焦るのを見たいからね。
早く始めて欲しいとも思ってしまうよ。
「シャルとの組手は夜に話し合おう。ウィーノ、早速始めようか!」
「今から夕暮れ近くまで組手とか泣けるよー。何これ?お祭りだよ?」
次回はお祭りが始まる前から組手かな?
泣けるね…。
「私たちもしましょうか。途中で魔力回復を入れた方がいいわね」
「そうしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします」
叔母さんとクリスタは平和だね。
お祭りの組手だからこれでいいのに。
「私は見学しているよー。みんな頑張ってー」
クリスタと叔母さんの組手が始まったね。
最高だよ!
叔母さんが凄い焦っている。
「ヴィーネ!あなた何て事をしたのよ。楽しい組手がおかしくなっているじゃない」
「勇者が力を求めていたからね。少し手を貸しただけだよ。まさか竜王が魔力を多めに使って種族差を利用して防ぐとかないよね?ないよねー?」
勇者クリスタを甘く見過ぎていたようだね。
まあ、すぐに修正してくるだろうけど。
さて、ウィーノはどうかな?
やはり母さんの組手は的確過ぎる。
見ていて怖いよ…。
ここまで予想を的中させている。
予想じゃなくて未来予知だよ。
「あれから対策したのかい?簡単に防がれると驚いてしまうよ」
「地獄を経験したからね。シィーナ叔母さんと組手した結果、地獄の組手が決定したの」
組手したと母さんに気付かれなければウィーノは破壊されていたね。
シィーナ叔母さんも相当強者だよ…。
「なるほど。私に組手を見せたと知ったシャルが対策した訳だね。流石に手強いね」
「姪の血が大量に流れたんだよ?何で喜んでいるの?おかしいよー!」
シィーナ叔母さんは対策されて笑顔だよ。
見ていて恐ろしいね…。
本当におかしいのは母さんだよ。
ウィーノは叔母さんを破壊できるのだから。
破壊はしなくてもいいと母さんに言われているからしないだけ。
お祭りだから組手をお互いに楽しめるように配慮しているのだと思う。
母さんはシィーナ叔母さんの戦略を予想して終わっていない。
ウィーノの心に余裕を持たせる為に圧倒できるようにしている。
その気になればいつでも勝てるように。
相手の戦略を予想し対策した上で反撃までできるようにしている。
攻撃を防ぐだけならウィーノは簡単に実行できているはず。
今でも爪を隠し続けている。
見せたらシィーナ叔母さんは喜ぶと思うけど、それは次のお祭りでいい。
母さんは常に相手の戦略の先を行くよ…。
洗脳の問題の時にも感じた。
母さんは相手に合わせる事ができる。
相手の力や思考能力を把握し、する事やできる事を考える。
洗脳された子を見た瞬間に精霊女王が関わっていると感じたのだと思う。
魔法を使わないと同じ状況を再現できないと判断した。
薬物や体罰や拷問を利用して奴隷として洗脳していたとしたら笑顔だった日常が嘘になる。
私は目の前の出来事に頭が真っ白になってしまった。
精神汚染された影響が残っているのだと思う…。
母さんは私が自己暗示する癖がついていると言った。
私は自分の失敗だと悔やみ続けていただけだよ…。
それが、自己暗示の影響なのかは分からない。
しかし、人間と獣人を洗脳する呪いに私が翻弄されているのは間違いない。
世界を魔力で覆った事で全てを一身に浴びたとは言え情けないよ…。
母さんが何も感じないのは呪いが弱過ぎるから。
私が呪いを感じるのは私が弱過ぎるから。
時期尚早なのは私たちが弱いから。
相手が覚醒フェニックス2人だとしたら母さん1人で相手するのは難しい。
同じ場所にいれば何とかできてしまいそうだけど違う場所にいる。
最低でも時間稼ぎができなければならない。
今の私たちではそれすらできない…。
私たちが成長すれば、母さんが消える事無く、フェニックスを殺す事無く解決できるはず。
母さんが私たちの方が強くなれると言っているのだから強くなれる。
母さんは嘘を吐かないからね。
焦る必要はないとは言え、私のせいでいつ何が起きるのか分からない状況にしてしまった。
感情だけで衝動的に精霊女王を殺したいと母さんに訴えた…。
母さんは私の為に話し合いの場を設けてくれた。
本当に情けないよ…。
日頃から母さんに注意されているのに。
何度注意されたのか分からないよ。
精神汚染も自己暗示も関係ない。
私が自分の感情を制御できていないだけの話だから。
母さんよりも強くなれるのか分からないけど本気で鍛えるよ。
焦らなくても私たちは訓練する度に確実に強くなる。
今回の問題は全て私の心に配慮して解決してくれた。
あれ程の激怒を抑えながら娘の私を最優先に考えてくれた。
試験場所まで用意して私に試験させた。
私が助けたいと強く望んでいたから…。
だから、母さんの期待に応えたい。
母さんが解決するのが当たり前の状況を改善したい。
この世界は何かを守り通すには力が必要になる事が多い。
私にも守りたいものがあるから力が必要だよ。
力を得るにも種族格差が存在する。
私は一番恵まれた存在として誕生したよ。
母さんの娘という世界で一番恵まれた存在。
もう少しだけ待っていて…。
母さんの娘としてあるべき姿に私は絶対になってみせるから。
ヴィーネの覚悟が見えましたね。




