ジェラルヴィーネ 世界の真実
本当に厳しい母さんだよ…。
絶対に全員を帰国させるからね!
竜の国に移動した。
「遅い遅いおそーい!絡まれ続けているの想像できるでしょ?姉さんが遅いから魔石で明るくしておいたよ。本当に手間がかかる姉だよ。魔王に脅迫されていたんだからね!どれ程の恐怖か知っているの?」
着いて早々に妹が煩い…。
魔王に脅迫される恐怖は分かるけどね。
「未知なる力で殺されそうだったけどウィーノはそれ以上の恐怖だと言うの?私の本能が殺気を抑えている母さんに殺されると判断したからね。分かるかな?殺気を抑えた母さんと話し合いという名の誘導尋問だよ。ウィーノはどれ程の恐怖だったのか教えてよ」
「えっ?仮にも世界最強なのに殺気で死んじゃうの?姉さんの本能がそう告げたの?ま、まあまあだね…。私が孤児院の子に命令する時に何を言われたのか知っているの?万が一失敗したら母の愛で満たしてあげるって言われたんだよ。死ぬよね?私の感情は間違いなく死ぬよね?洗脳だよ!口ごもる事も許されない。呪術の失敗も許されない。孤児院の大人たちに勘付かれたら駄目。叔母さんに説明するのも面倒。中でも一番面倒だったのが叔母さん達との組手だよ。今から何するのー?呪いを解除する前に厠に行かせるように言われているから安心して。その後に呪いを解除した状態で状況説明だけしてある。孤児院に残っていた子と召喚されていない卒業生は大丈夫だけど、洗脳された卒業予定者たちと卒業生4人は元に戻っていないよ」
厠に行かせろとか指示が細かいよ…。
絶対に問題を解決するつもりだったみたいだね。
洗脳されている子は動かないし襁褓していないから必要な指示だよ。
ウィーノは機転が利かないだろうし大変な事になる。
孤児院の子に興味は余りないだろうからね。
今回の問題には興味がありそうだけどさ。
あの状態の母さんは恐ろし過ぎる…。
それなのに、細かい事まで考えられるのは凄いよ。
それと、母の愛で満たされるという幸せそうな言葉で絶望しか感じないのは何故かな?
会議中に娘を脅迫して動かしていたんだね…。
ウィーノも頑張ったみたい。
土地神様だと思ったのは勘違いだったのかな?
どのように考えても地獄の最強魔王だよ。
「状況は分かったよ。どこかに家でも建てたの?何で叔母さん達はいないの?」
「家を建てて外に出ないようにと言ってあるよ。洗脳されている卒業生4人については動きが分からないから軟禁するように母さんから言われているよ。それと、叔母さん達が満足するまで組手したからね。ずっと組手だからね。姉さんが来るまで延々と組手だからね。流石にご満足いただけたよ…。掠り傷も付けられていないから大丈夫だけど母さんには何も言わないでよ。私は頑張ったの!」
かなりの時間を組手していたみたいだね。
卒業生4人については何か命令されているから軟禁の指示が出ていると思う。
命令内容で拒めるのか試験したのかもしれない。
「ウィーノ。私と母さんの予想で国民には秘密だから今言うね。世界は腐っていて人間と獣人は呪術で洗脳され続けている。そして、世界の奴隷として産まれてくる。精霊女王が星の魔石に洗脳の為の呪術を入れているよ。その為、奴隷として産まれた人間と獣人が身分を奴隷と認識した瞬間に絶対服従の奴隷になる。孤児院の子たちが感情のない奴隷になったのは学校で奴隷について勉強したから。呪術の効果は自分の知識の中の奴隷に洗脳。洗脳された奴隷に命令するのは誰でも可能。孤児院に入って子供たちは奴隷である事を忘れていった。その状態も上書きされるから日を追うごとに自由で元気な子に戻る。だけど、人間と獣人には身分のない国だから身分の変更がされていない。だから、命令されたりすると奴隷だったと思い出してしまう。その瞬間に洗脳が完了してしまう。王族に奴隷を支配できると伝えれば今の世界が出来上がるよ。まあ、全部母さんが予想したんだけどね。私は言わされただけだよ。母さんの中で精霊女王は塵芥だから殺す価値もないけど、私たちが処分を願うなら永遠の拷問で処分してくれる。何も願わなくても母さんの寿命が尽きると感じる頃に永遠の拷問で処分してくれる。以上が今回の問題だよ」
「精霊女王は本当に最悪な世界を作ったね。奴隷として産まれてきて自分の身分が奴隷だと思った瞬間に洗脳されるのは酷過ぎだよー。神に選ばれた王族を作って奴隷を支配できると伝えた。殺し合いを奴隷を使って続けているのは絶対服従だからだね。王族も洗脳されているでしょ?」
考える力が上がっている気がする。
やはり鍛えているね。
油断していると負けそう…。
「人間と獣人は全て洗脳対象だけど効果があるのは王族と奴隷だけ。王族だと認識した人の事を他の身分の人は従いたくなるようにしている。絶対ではないけど自意識過剰な人だったら命令するだけで貴族でも奴隷にする事が可能なのかもしれない。基本的には魅力的になるだけだと思っていいよ」
「なるほどねー。身分が分からない人たちでも従いたくなるように仕向けるんだ。身分を教えて奴隷を教えて洗脳完了だね。それほど賢いとは思わないけどさ。日々の奴隷への仕打ちで絶対服従すると思っているだけだろうね。流石に世界が呪いをかけているとは考えられないよー」
考える力がかなり上がっている。
カーリンを立ち直らせる為に相当考えているね。
本気で努力しないと危ない…。
世界が呪いをかけているなんて母さんにしか分からない気がする。
どのように鍛えればあのように考えられるのだろうか?
「そういう事だよ。そこで、新しい身分はどうしよう?何か考えたくない?平民とか既にある身分はつまらないよ。覇権国家で地獄の社に宇宙最強魔王が住んでいるんだよ?何かいいのある?王族を超えて神族でも面白いよね。孤児院らしい名前が一番だとは思うけどさ」
「世界が洗脳する身分は王族と奴隷だけだから何でもいいんだね。んー、魔族でいいんじゃない?最強魔王の大切な孤児院出身だからね。魔族だよー!」
はぁ…。
妹は馬鹿だったみたい。
魔族って何かな?
魔人と魔物と魔獣が魔族と呼べるよ。
土地神が守る孤児院の子だから…。
土地守でいいね!
「土地守でいいんじゃない?土地を守るでとちもり。簡単で分かりやすいでしょ?威圧感も与えないし特別感もない。平等じゃないと駄目だからね」
「平凡だねー。姉さんらしいけどさ。じゃあ、それで早く終わらそうよ。お祭り前には帰りたいなー」
腹が立つ言葉選びが上手いよね!
私を励ましていたとか言って逃げたのを思い出したよ。
お祭りは今月末でもうすぐだったね…。
皆に楽しんで欲しいから早く解決しないと。
「行くよ!案内して」
「はーい。転移魔法」
大きい孤児院が建っているよ…。
竜の国にあるのが強い違和感を覚えるね。
「孤児院を再現したんだ。気が利くじゃない!」
「1階のお風呂が占拠されているけどね。叔母さん達のお気に入りだよー」
ふーん…。
叔母さん達は好きにしていればいいよ。
孤児院の扉を開けた。
正面だけしか見えていなかったけど広過ぎだよ。
特に奥行きが凄い…。
目の前に洗脳されていない子が揃っていた。
「やあ、皆を国に帰す為に来たよ。但し、条件がある。ウィーノから聞いたかな?」
「はい。ご迷惑をお掛けしました。どのようにすれば良いでしょうか?」
代表で話しているのはお菓子屋のコンラート。
ユッタの娘が嘆いていたね…。
「今から話す事は真剣に聞きなさい。君たちの身分を土地守とする。孤児院に救出された子には身分を与える事にした。土地を守ると書いてとちもり。みんな分かったかな?」
「「はい。分かりました!」」
洗脳されていない子は大丈夫そうだね。
「孤児院は家族で仲間で身分は土地守に変わったから。約束破ったら許さないよ!」
「カーリンを悲しませたら制裁だからねー!」
「「はい。分かりました!」」
少し驚いたよ…。
ウィーノがカーリンを庇う発言をした。
やはり一緒にいる時間が長いと大切に想うようになるんだね。
「コンラートは皆をまとめておいて。これからが本番だからね。皆を帰してあげたいからさ。新しい身分を心に刻むようにして。土地神を守るから土地守。裏切るのは許さないよ!」
「はい。分かりました!」
皆の表情が真剣だね…。
孤児院の子は信用できるよ。
「みんな聞いて!今からヴィーネ様が大切な仕事をされるから上に行くよ。一番上の階に行く。何をしているのか聞いたり考えたりしたら駄目だ。新しい身分を心に刻む訓練をする。分かったね?」
「「はい!」」
コンラートは何も知らない方がいいと感じているね。
流石高等科の卒業生だよ!
「コンラートの言う通りだよ。本当に大切な仕事なんだ。失敗したら母さんに殺されるから。一緒に死ぬ事になるかもしれないよ?分かったら上に行きなさい」
「「はい!」」
さて、全力で頑張らないと。
私が来た意味がないよ…。
「ウィーノ。まずは新孤児院の大人と卒業予定者がいる場所を教えて」
「えっとね、奥には3つの部屋があって一番手前の部屋だよ。一番奥がお風呂になっていて叔母さん達が寛いでいるよ。姉さんが来たからお風呂から出ると思ったけど相当気に入っているみたいだね」
邪魔されない方が助かるよ…。
お祭りで会うし無理に会わなくてもいい。
「お祭りがあるから今日はいいと思っているのかもしれないよ。まずはウィーノが支配者になっている部屋から行こう」
「そうだったね。私が支配者になったままだよ。命令が遂行できないからね。絶対に国防軍になれないから。存在しない組織になれるのかな?」
実現不可能な命令をされた状態でも他の命令ができるのであれば一生支配されたままだ。
一生従えと命令する人はいるのかもしれないけど、それと一緒だよ。
身分を覚えて奴隷に洗脳されたら生涯絶対服従の可能性が高い。
殺気を剥きだしで平民になりたがっていた気持ちが分かるね…。
実に不愉快だよ!
「その命令は取り消されているかもしれないね。今は唯の奴隷状態なのかもしれない。とりあえず行こうか。試験をしないと駄目だから」
「そうだね。試験をして合格しないと連れていけないね」
ウィーノと一緒に一番手前の部屋に入る。
「ウィーノ。簡単な命令して」
「はーい。みんな静かに右手を挙げて」
本当に嫌になる光景だよ。
絶対服従の奴隷…。
これで命令遂行扱いにならないのかな?
私が命令してみよう。
「みんな右手を下げて」
誰も動かない…。
遂行できない命令をされると一生支配される可能性がある。
しかし、何か方法があるはずだよ…。
誰でも命令できる奴隷が1人の言う事だけを聞き続けるようにするはずがない。
「ウィーノ。命令を全て取り消すと言ってみて」
「はーい。皆の命令を全て取り消す。自由にしていいよ」
皆が腕を下げた。
感情が動いていないのは奴隷のままだからだね。
今なら私の命令に従う可能性がある。
「みんな静かに右手を挙げて」
皆が右手を挙げた。
支配者が私に代わったね。
国防軍になるのが遂行できない命令として残り続けていたようだ。
「皆の身分を奴隷から変更する。今から土地守だよ。分かった?」
「「はい!」」
予想通りだけど不愉快だよ…。
上位種族は身分を強制的に変更できる。
誰でもクリスタを支配できるじゃないか。
ふざけるな!
「エルマー、どの程度の記憶が残っているの?」
「全てです。孤児院を否定し姉ちゃん達を飛ばして欲しいと願い、シャーロット様とヴィーネ様を邪魔者だとしました。申し訳ありません…」
奴隷は記憶を残さないとは授業で習わない。
感情が動かないだけで記憶は残り続けていると思ったよ。
習っていたらどのようになるのかが怖い…。
どこまで洗脳で実現してしまうのかが分からない。
既に最悪の奴隷なのに、これ以上酷くなる可能性が残っている。
授業内容について母さんに相談だね…。
「エルマーに命令する。今の身分を教えて?」
「土地守です」
命令されても奴隷にはならなかった。
身分を聞いただけだから?
「エルマーで試験したい。身分が土地守に変わっているのなら部屋から出て最上階に行って。孤児院は家族で仲間で身分は土地守が絶対の約束。二度と破るような真似はするな。カーリンが悲しんでいたのを知っているでしょ?同じ事をしたら本気で制裁だよ。分かったね?」
「「はい!」」
エルマーを残して他の子は小走りで部屋から出ていった。
「姉さんがカーリンを庇うなんてどうしたの?」
「カーリンは孤児院の柱だよ。嫌っていると思っていたの?嫌いじゃないからね」
私がカーリンを嫌った事なんてないと思う。
何を気にしているのかな?
「そうだったの?クリスタの事しか興味ないと思っていたよ」
なるほどね。
ウィーノはカーリンだけにしか興味ないのか。
「孤児院の子には私が助けた子も含まれているからね。みんな助けたいと思っているよ。エルマー、試験をしてもいいかな?私の言う事を絶対に聞かないつもりで聞いてね」
「勿論です!同じ失態はできません。全力で抗ってみます!」
心の強さで抗えるのかな?
だけど、最強のクリスタで試験したくはない。
私の甘さになるのかな?
「いい覚悟だね。私が命令する。今から奴隷だ」
「はい!」
簡単に奴隷になってしまった…。
心に一瞬の躊躇いも何もなかった。
「明日までここで待機。いいね?」
「はい!」
私が支配者の状態で身分の変更は可能だろうか?
「ウィーノ。身分を変更してみて」
「はーい。エルマー、君の身分は今から土地守だよ。分かった?」
「はい…」
余りにも簡単だよ…。
世界が知ったら更に最悪な世界の出来上がりだ。
世界の奴隷…。
言葉の通りだよ。
「さて、どんな気持ちだったのか正直に話してみて」
「命令だと聞こえた時に何も考えられなくなりました」
命令の意味を知っているからかもしれない。
勉強するほど不幸になる…。
「今の身分を教えて?」
「土地守です」
エルマーには心が弱かったと説明しよう。
皆が本気で身分を心に刻もうとするはずだから。
「孤児院は家族で仲間で身分は土地守。先程も言ったけど二度と破るな。今の試験は誰にも話したら駄目だよ。皆が帰れなくなる。分かったね?」
「はい。分かりました!」
「君の身分は土地守。上に行って皆と孤児院の約束を復唱してきて。二度と破らないようにする為にね。まだ身分を強く意識していない。身分は土地守だと強く意識する必要があると分かったよ。その事を伝えて全員で努力してきて。お願いね」
「はい。ありがとうございます!」
エルマーは一礼して部屋から出ていった。
「姉さん、何でエルマーに嘘を吐いたの?」
「悲しいじゃない。命令されただけで奴隷にされる。それも、人間と獣人以外の全種族からだよ。不愉快過ぎる。私たち以外は知らない方がいい」
「優しいねー。国の安定を考えると誰も知らない方がいいのは間違いないけど、姉さんはエルマーの為だけに嘘を吐いたでしょ?孤児院の子が大切なんだね」
「母さんと協力して助けた子だからかな?理由は何でもいいよ。国の為にもエルマーの為にもなるのだから。次が本番だよ。行こう」
ウィーノが結界を解除した…。
これは、軟禁じゃなくて監禁だよ。
部屋の扉を開けても誰も反応しない。
予想通りだね。
「君たちの身分は土地守とする。分かったかな?」
「「はい…」」
「記憶はあるね。どんな事があったのかな?アグネス、代表で教えて」
「はい。明日に保育科の子を秘密裏に皆殺しにするとの命令に従いました。シャーロット様の商人組合を皆殺しにするという命令は無視しました。シャーロット様から強く威圧されましたが無視しました」
最低限の試験だけで決断している。
母さんの行動は早過ぎる。
赤ちゃんを殺す命令すら拒めない。
最上位だと思われる母さんが威圧しても命令を変更できない。
余りにも危険過ぎる…。
「孤児院は家族で仲間で身分は土地守だから。二度と破らないように。それと、誰か1人残って。試験しなければならない。洗脳が危険だと理解しているでしょ?」
「僕が残ります!」
「私が残ります!」
検問している2人は責任を感じているね。
失敗した訳ではないのに…。
「早い者勝ちでエトヴィン。残りの3人は、皆が一番上の階で身分を心に刻み込む訓練をしているから一緒にしてきて。君たちの身分は土地守。全力で心に刻むんだよ。二度と支配されるような真似はしないで。皆と一緒に帰りたいでしょ?分かったね?」
「カーリンを悲しませたら制裁だから。孤児院は家族でしょ?破らないでねー」
「「はい。分かりました!」」
3人が一礼して部屋を出た。
遂行していない命令が危険過ぎるね…。
何かあるかもしれないから3人は監視しておこう。
「君が立候補した理由は何となく分かる。覚悟はできているね?」
「はい。どのような試験でもして下さい!」
「分かった。では、君の身分は奴隷に変更だ」
「はい!」
試験しているだけで不快感が増すよ…。
地下に魔石を埋め込んで結界で防げるようにしよう。
いや、駄目だね…。
魔力を使い過ぎると街の設備が機能しなくなる可能性がある。
私たちが社にいるから魔力は大丈夫かな?
これも、母さんに相談しないと…。
人間と獣人の為だけの結界。
平等とはかけ離れているけど既に平等ではないから。
もう考えるのが面倒だから殺そう。
この世界を作った馬鹿を殺す!
「私を殴れ」
「・・・・」
絶対服従でしょ?
何故私を殴りに来ないの?
上位種族には手を出せないの?
「自分のお腹を殴れ」
「はい!」
【バシィ】
秘儀を使っている…。
簡単に自殺させる事ができる。
それに、命令が続いている。
受け止めているのに力を入れ続けている。
「命令は全て取り消しにする」
「はい!」
学校で習った奴隷の知識がこのような事に繋がるなんて。
酷い奴隷についてまとめたものを教えていたはず…。
行動の全てが支配者の許可がなければ駄目だろうね。
奴隷として産まれるなんて本当にふざけた世界だよ。
「今から身分を土地守にする」
「はい…」
「何故私を殴りに来なかったの?」
「分かりません。命令の内容が理解できませんでした」
上位種族に攻撃する事は許されないのか。
どれほど不幸を生み出せば気が済むんだ!
「お腹を殴る時の力は自分の中でどれくらいか分かる?」
「秘儀を使って全力です…」
「奴隷は命令されたら全力で殴ると誰かから聞いたの?」
「いえ。手加減して自分を殴ったら死刑になった奴隷がいると学校で習いました」
死刑になりたくないから自殺するの?
未来を切り開く為に秘儀を鍛え勉強したのに、奴隷だと自認した瞬間に終わってしまう。
不幸になる為に努力しているようにさえ感じてしまう。
精霊女王が上位種族に伝えていないのは、不幸が世界を満たさないから。
人間と獣人を食べる種族以外は邪魔に感じているはず。
飼育牧場が出来上がるだけだね…。
母さんが善良な上位種族で最強であるのが奇跡だよ。
シェリルお婆ちゃんは世界の救世主だね。
星が滅びるまで名前を残しておくべきだよ。
大陸を支配して名前を変えようかな…。
いや、星の名前にしようかな?
「今から一番大切な試験をする。君の身分は土地守だからね。自分の身分を言って」
「はい。私の身分は土地守です」
「今から威圧をかけていく。身分を自分で変えるな!」
「はい。分かりました」
威圧を徐々に強くしていく。
軽い威圧で奴隷にならなくて良かった。
どんどん威圧を強くしていく。
膝を折ったね…。
「まだ話せる?」
「大丈夫です…」
「君の身分を教えて」
「土地守です…」
威圧を止める。
「正直に答えてね。土地守から奴隷になると思った?」
「本当に命の危機になると危ないかもしれません。過去を思い出してしまう可能性があります」
「君の身分は土地守だけど過去は何だったか答えられる?」
「はい。子供の頃は奴隷として働いていました」
「君の身分は?」
「土地守です」
最後の試験には2人必要じゃないか。
私は馬鹿だね…。
アグネスを召喚しよう。
監視しておいて良かった。
召喚魔法。
「アグネスごめん。少しだけ手伝って」
「大丈夫です!何でも手伝わせて下さい」
「よし。アグネス、君の身分は神に選ばれた王族だよ。分かった?」
「はい。私は王族です!」
「今の気持ちを正直に教えて」
「神に選ばれたのは光栄ですね。人を従えたくなります」
孤児院の子は向上心が強いから王族になっても上を目指すのかな?
「エトヴィンを奴隷にできるか命令してみて」
「分かりました。エトヴィン、今から私の奴隷になりなさい!」
「残念だけど土地守だからね。王族だと勘違いしているアグネスの命令は聞けないね」
エトヴィンは自分の身分に自信があるようだね。
私が土地守だと命令したのが大きそう。
身分を与えたのは母さんだと孤児院で教育してもらうべきだね。
「アグネス、君の身分は土地守だよ。エトヴィンに拒否された時の気持ちを正直に答えて」
「はい。凄く不愉快な気持ちになりました。ヴィーネ様の決められた身分だと知っていたので我慢できましたが、違っていたとしたら処刑したくなりますね」
「そ、それは酷くない?流石に悲しくなるよ…。身分に支配されているみたいだ」
なるほど。
奴隷から王族になると残酷になる可能性が高いね。
絶対服従で命令されてきた過去があるから命令を拒否されるとは想像しない。
だから、拒否されると殺したくなる。
かなり危険だよ…。
アグネスを呼び出したところから記憶を消そう。
闇魔法。
「さて、君たちの身分は土地守だよ。孤児院は家族で仲間で身分は土地守。大切な約束だよ。二度と破るような真似はしないように。心に身分を刻み込むようにして」
「はい。分かりました!」
「分かりました!」
転移魔法。
ウィーノとアグネスとエトヴィンと一緒に皆が集まっている最上階に移動した。
「試験は全て終了したよ。お腹は空いていないかな?エトヴィン答えて」
「とても空腹です…」
念話。
「やあ、旧孤児院の大人に話し掛けているよ。そろそろお酒の時間だよね?550人分の食事の準備を始めて。分かったね?全力だよ!」
「「かしこまりました!」」
「よし、食事場所で料理の準備を初めてもらった。エルマー達は手伝うべきだね。君たちの身分は土地守。今から食事場所で夕食を取る。土地守の意味は土地神を守るから土地守とした。カーリンは本気で悲しんでいた。分かるよね?国民の中で人間と獣人だけが特別扱いされている。それでも、私が子供を助けられる道を残したんだ。子供を助けたいなら新しい組合と施設を作る必要がある。孤児院は母さんの大切な施設。人間と獣人だけが使う事を誰が許可した?旧孤児院の大人たちは分かっていた。新孤児院の大人と卒業予定者は何を勘違いしている。次の会議は私が監視させてもらう。皆は私と母さんが救出してカーリンたちに世話をお願いした。いつ奴隷になるのを許可した?新しい身分を変える事は許さない。孤児院は家族で仲間で身分は土地守。母さんを絶対に裏切るな!分かったかな?」
「「はい!」」
ここまで強く言えば会議は大丈夫だと思うけど見ておかないとね。
私が子供の救出に動くつもりなのだから…。
「ウィーノ、一緒に帰る?叔母さん達は無視でいいよね?」
「勿論無視だよー。組手中シィーナ叔母さんの目が生き生きとしていたから、お祭りの組手で何か仕掛けてきそう。短時間でも何かする雰囲気があるよ。はぁ…、今日の組手で満足して欲しいのに残念。母さんの予想通り、お祭り以外に理由もなく組手に来ていたら危険だったよー」
「じゃあ、みんな帰ろう。転移魔法」
食事場所に移動した。
「やあ、お待たせ。1日で解決しちゃう母さんが凄いよね。旧孤児院の大人に伝えておく事がある。カーリンの約束には足りないものがあった。この国では禁止されているから考えていなかったのかもしれないけど身分が足りない。だから、新しい身分を考えておいたよ。土地神を守る土地守。孤児院は家族で仲間で身分は土地守。母さんを絶対に裏切らない。幼い子にも教えてあげて。大切な事だからね。いいかな?」
「分かりました。徹底します!」
エルマーたちは何をしているの?
君たち新孤児院の職員が働かなくてどうするの。
「新孤児院の職員は料理を手伝いなさい。何しているの?皆が食べるんだよ?急いで!」
「「はい!」」
「カーリン、お祭りの後にもう一度会議して。私が孤児院について説明しておいたけど、組合をどのような形にしたいのかは聞いていない。私が監視させてもらう。日時が決まったら教えてね」
「はい。分かりました」
「後は任せても大丈夫かな?」
「はい。お任せ下さい!」
「クリスタに面白い事を教えてあげるよ。未知なる力は母さんの殺気だった。母さんが殺気を抑えなければ国民は全滅だよ。そのくらいの激怒だった。ちなみに、世界最強であるはずの私も死ぬと思う。おかしいよね?私とウィーノが死んじゃうと本能が告げていたよ。しかも、母さんの能力は進化確定だからね。感情把握で会話を把握しているとか嘘だよ。全部聞かれていたよ。終わりだよ。地獄にいる最強魔王からは逃げられないよ。ウィーノ、帰ろうか…」
「何で帰りたくない話をしてから帰ろうとか言うの?おかしいよね?姉さん、国民に報告をしていないよ。私より姉さんの方が慣れているでしょ?」
冷静な指摘をされたよ。
少し悔しいね…。
「そうだね。念話、やあ、ヴィーネだよ。夜分にごめんね。洗脳の問題については解決したよ。土地神様が1日で解決させました。またねー」
「えー!私たちもかなり頑張ったのに母さんだけの手柄なの?大変だったんだよ?本当だよ?」
ウィーノが意外なところにこだわるね。
本当に赤ちゃん何だから…。
「拗ねないでよ。組手の練習手伝ってあげるから」
「んー、今回はそれでいいよ。絶対だからね!」
「じゃあ、私たちは帰るよ。またねー。転移魔法」
社に移動した。
「ただいまー。姉さんが私の手柄を無にしたよ。説教が必要じゃないかな?」
「ただいまー。ウィーノは組手で遊んでいただけだったよ。母の愛で満たした方がいいよ」
「おかえりー。みんな連れて帰ってきたという事はそれなりの成果があるのね?」
娘の会話を完全に無視したよ…。
国を守る時の母さんは厳しいよね。
「まず身分を土地神を守る土地守としたよ。誰が身分を与えたのかで王族の命令に対する抵抗力が変わる。母さんが与えた身分だとしないと王族の命令で支配されるように感じた。孤児院の子で分かったのは、奴隷が王族になると確実に残酷になる。絶対服従だった過去があるから命令を拒否されただけで処刑を考えた。王族になれると思わせるのは危険だと考えて、その試験の記憶は消した。命令が遂行されていない奴隷は支配者が命令を取り消す事ができる。命令を全て取り消せば支配者を代える事ができる。全上位種族が強制的に人間と獣人の身分を変更できる。命令が残っていても身分を変えた後に奴隷に戻せばいいだけ。奴隷の状態は母さんの予想通り自分の知識で変わる。奴隷が上位種族に手を上げる事はできない。但し、自傷行為は可能。この国で勉強した奴隷の状態は厳し過ぎる。世界中の子供を集めて悲惨な奴隷の話を蓄積した集大成だから。自分を殴れと命令しただけで秘儀を使って全力で殴ろうとした。私が途中で止めても力を抜かないから命令遂行の結果は必ず自殺になる。この国で秘儀を努力し勉強を頑張った事で最悪の奴隷が生まれる。保護しないのであれば奴隷についての教育を考える必要がある。それと、どの程度までの知識を洗脳で実現するのかが分からないから怖い。この世界の人間と獣人は努力するほど不幸になる。完全に奴隷種族。上位種族が保護しなければ幸せな生涯は約束されない。どれほど努力しても上位種族の気まぐれの一言で人生が終わる可能性がある。世界にこの情報が広まったら絶滅させられるか、牧場が作られるだけだね」
「権力者を殺しても世界が変わらない理由が分かったね。酷い扱いを受けている奴隷しかいないから、王族になれば奴隷を支配するのは当然の権利だと考える。人間は自分の子供を売るから奴隷は減らない。教育が進むほど悲惨な奴隷が生まれてしまう為、世界は発展しない。上位種族に教えていないのは不幸が世界に満たされないからだね。地下世界での魔力生産が減るから。不愉快な世界だよ…。まず大前提として私たちが守っているのはこの国だけ。ヴィーネは世界中の奴隷を助けたいの?」
「そこまでは考えていないよ。例えばクリスタが支配されたらその種族は絶滅させるかもしれない。子供を助けたいとは思っているけど世界を救いたいとまでは思っていない。大切なのは国民だから。結界で呪いを防げるようにしても魔石の大きさと魔力量がどの程度必要が分からないし、街の設備が停止してしまっては困るから母さんに相談しようと思っていた。それに、街の発展には魔力が欠かせないから私たちが社にいれば大丈夫だと思うけど未来は保証できない。国民を平等にしようと思うと呪いを結界で防ぐか塵芥を消滅させるか拷問で地獄を見せる。別に殺さなくても国民が平和に過ごせるようなら無視すればいいと思っていたけど、奴隷の試験をする度に不快感が増していったよ。寄生虫は駆除するべきだと思った」
「ヴィーネの気持ちは分かった。ウィーノはどうしたい?」
「私は楽しい日々が過ごせればいいよ。カーリンの訓練も楽しいしお祭りも楽しみ。人間の寿命が短いのは知っているけど、カーリンが結婚して子供が生まれたら訓練してあげたい。もしかしたら他に訓練してもいいと思える子が見付かるかもしれない。世界には特に興味ないけど姉さんの試験は確かに不愉快だった。努力した人を言葉だけで支配できる世界は気に入らない。殺しに行くなら手伝うよ」
私が思っていた以上にカーリンを気に入っている。
カーリンは身分だけではなく自身に魅力もある子みたいだね。
「2人の気持ちは分かったよ。明日は精霊とフェニックスを交えて話し合いをする。フェニックスには直感で答えてもらう。私が精霊女王を殺さない理由なんて1つしかない。世界の理に関与していないのかが分からない。フェニックスが成長していないから新しい精霊女王を生み出せない。精霊とフェニックスには真実を告げる。その上で話し合いをするよ。私が念話で呼ぶから今日はもう寝よう。疲れたでしょ?2人ともお疲れ様」
そういう事だったんだね…。
母さんが寿命の時に拷問すると言うのはフェニックスが成長しているから。
精霊女王を消せるのかもしれないし生み出せる可能性が高い。
常に最悪を想定しているのは知っているけど考え過ぎだよ。
自分の感情を抑制してあらゆる未来を想像している。
あの時は私が殺す決断をしないと分かっていたからあのように話した。
私が本気で殺したいと考えたら殺す為に最善を尽くす。
本当に、いつ追いつけるのかな?
今回の問題で母さんがとても遠く感じたよ。
全てが準備されていて私は導かれただけだから。
解決を急ぎたいなら母さんが動けばすぐに終わったと思う。
私とウィーノの成長の為だったとしか思えない。
強いに決まっているよ…。
戦闘になったら誰も何もさせてもらえない。
母さんが布団を敷いてくれたから私とウィーノが飛び込む。
本当にいつも同時だよ…。
母さんが布団に入ってきて抱きしめてくれる。
「じゃあ、おやすみー」
「「うん、おやすみー」」
母の愛で満たされている気がするよ。
本当に母さんの娘で良かった…。
何事にも理由がありますからね。
ヴィーネもそれを強く実感しました。




