選ばれた人?
ダミアンが設計書を完成させるまで特にやる事もなく社で寝転がっていた。
話によると病院の地下室に研究所を作って欲しい様だ。
理由を聞いたら納得できる話だったので作る事にした。
国になってから少しずつだけど前に進み始めていると感じていた。
妨害がなければ最高なんだけどね。
ああ、最悪だよ。
密偵が帰って来ない。
捕まえた討伐隊が死んだ。
討伐隊に関わった人たちも死んだ。
何故攻めてくるのか私には分からない。
絶対に勝てない相手だと思わないのだろうか?
大きな国で友好的に取引をしようとした国は無い。
近くの集落では特産品をこの国に売りに来る人たちもいる。
人は集まると馬鹿になるのかな?
それとも、馬鹿が権力を持ってしまったのだろうか?
転移魔法。
私は社から街長室に移動した。
「マリアンネ。1万の人たちがこの国を攻めて来ているんだけど、どうする?」
「殺しましょう。どうせ帝国の人間だと思います。密偵も邪魔ですからちょうどいいですよ」
「じゃあ付いて来てね」
「勿論です」
転移魔法。
私たちは攻めてきている人たちの、先頭にいる人たちの前に移動した。
私は唯一、馬に乗った男に話しかけた。
「君たちはどこの国を攻めるつもりか理解しているのかな?」
何をしているんだろう?
馬に乗った男は左にいる男に話しかけている。
「お前のような下賤な民に話す言葉は無い。話しかけた時点で殺されなかった事を有難いと思え」
闇魔法。
何か言っている男をとりあえず殺す。
「君たちはどこの国を攻めるつもりか理解しているのかな?」
馬に乗った男は右にいる男に話しかけている。
「何をしたのか知らないがと…」
闇魔法。
話し始めた男をとりあえず殺す。
「マリアンネ。これを1万回繰り返す事になるのかな?」
「恐らく、帝国の皇帝に繋がる地位の人間でしょう。自分は特別だと思っており、自分の声で身分が低い者に話す事を品位が下がると考えているようです」
「つまり、私たちに話すと品位が下がると言う事だね?」
「そうなります」
面倒だな。
探知範囲拡大。
帝国の人たち以外の人は周りにいないか…。
結界で帝国の人たちを囲む。
私とマリアンネと目の前の男は結界の外にいる。
これで他に被害も無いだろう。
目の前の男だけ生かしておいてやろう。
情報収集に必要だからね。
結界の中に魔法を放つ。
時空魔法。
結界の中に巨大な炎に包まれた隕石が落下していく。
結界の外にいる為、何を言っているか分からないが中は混乱しいるみたいだ。
シェリル国に攻めた罰だよ。
死んで償ってね。
結界解除。
私は魔法の結果を確認してやり過ぎたと思った。
だって大きな窪みができちゃったから。
人の姿形は何も残っていないけどね。
「あー、大きな穴が空いちゃったよ。もう少し加減しても良かったかな」
「そのうち雨で池になるでしょう。問題ありません」
そうか、池になれば助かる人も動物もいるかもしれないね。
マリアンネはいい事を言うね。
「おい、お前以外の人は皆殺したぞ。話す事が無いなら記憶を覗いて殺すだけ、どうする?」
結界で音が聞こえなかったせいだろうか?
男が後ろを振り向いたまま中々前を向いてくれない。
「早くしろ。私は敵に優しくするほど暇じゃない」
「下賤な血を引く蛮族が!私の部下を殺すとはお前の命もここまでだ。本気で帝国が攻める事になるからな。震えて待て」
「下賤な血ってどういう意味なの?」
「そんな事も蛮族は知らないのか?汚れた血だと言ったんだ」
「マリアンネ。こいつは私に入っている血が汚いと言ったんだよね?」
「はい。残念ですが現実を知らない馬鹿の様です」
私の血が汚い…。
お母さんの血が汚いと言ったのか?
「私からお母さんの血を抜いて欲しいのだな?」
私はお母さんの血を使うのを止める。
こいつを殺すのにお母さんの血を使うと汚れるから。
男の顔が恐怖に包まれている。
私の姿が変化して、初めて目の前にいる存在が人間では無いと気付いたのだろうか?
風魔法。
両腕と両足を切断する。
何か喚いているようだが聞こえない。
こいつの言葉は耳に入らない。
低位回復魔法。
出血を止めて死ねない様にする。
記憶を覗きこいつと関係している人を殺す。
魔法を使う必要も無い。
ただ手を握る感覚だ。
「お前の国のお前の知り合いは全て殺した。あとはお前だけだ。マリアンネ。何かいい案ある?」
「こいつを穴の中心に置きましょう。魔獣に殺されるか、飢えで死ぬか、水が溜まって窒息死です」
「じゃあ、採用するね。念力」
終わったからお母さんの血を戻す。
あんな相手にお母さんの血を使ったら汚れちゃうよ。
「シャーロット様は変身が出来るのですか?」
「違うよ。さっきの姿が本当の姿。この姿はお母さんの血を使ってるんだよ」
「なるほど。そういう事でしたか。それで、人になっている訳ですね」
「実際は、真祖の吸血鬼がただの吸血鬼に弱くなっているだけだよ。でも、お母さんの血を使っていると本当の親子みたいでしょ?だから、普段はあの姿なんだ。今の相手はお母さんの血が汚れるといけないから使わずに殺そうと思っただけだよ」
「なるほど。良く分かりました。では、帰りましょうか」
「そうだね。これで、国防隊も楽になるといいんだけどね。転移魔法」
私たちは街長室に移動した。
「じゃあ、社に帰るよ。何かあったら教えてね」
「分かりました。お疲れ様でした」
「疲れるような相手じゃないよ。またねー。転移魔法」
社に移動し寝転がる。
何でこの国に攻めるのかが分からない。
何で自分が特別だと思っているのかが分からない。
ここ最近分からない事ばっかりだ。
私はお母さんと一緒に寝たいだけなのに変な話だよ。
選ばれたと思い込んでいる人には分からないでしょうね。




