ジェラルヴィーネ 遊びの形
私の考えた球当てと球蹴りが大流行しているのは素直に嬉しい。
しかし、鬼ごっこする事が極端に減ってしまった。
鬼ごっこは種族の垣根を超えた遊びだったのに、それが無くなってしまう。
これ程まで熱中するのは予想外だよ。
流石に鬼ごっこで遊んで欲しいとは言えないね…。
凄い楽しんでいるし秘儀を鍛える事もできるから。
それに、秘儀を覚えていなくても十分に遊べる。
保育科の子も楽しんでいるからね。
やはり体の大きさに関係なく楽しめた方がいいよ。
仕方ないから力技で解決しよう。
私ならできる!
球当てと球蹴りする場所の名称も決まっていないね。
それも、私が決めた方がいいのかな?
「母さん、魔石を使ってもいいよね?」
「皆の笑顔の為なら仕方ないね。好きなようにしなさい」
何をするのかが分かっているみたい…。
母さんの頭の構造はどうなっているのかな?
「姉さん、何をするの?」
「皆が平等に遊べるようにするだけだよ。今のままだと種族で固まって遊ぶようになるかもしれないでしょ?それは、私が望んでいた形ではないからね」
「ヴィーネはよく考えているよ。ウィーノも一緒に見てきなさい」
姉は大変だよ…。
妹の面倒を見ないといけないからね。
「ウィーノ、行くよ!」
「分かったよ。球当てする場所に行くんだね。転移魔法」
球当てと球蹴りする場所に移動した。
さて、始めよう!
学校から一番近い入り口の近くに3つの扉の枠だけを用意しよう。
横に並べるように用意した方がいいね。
土魔法。
土魔法。
土魔法。
大きさは縦2m、横2m、幅0.5m、枠幅0.2mの扉の枠ができた。
それぞれの扉の枠に文字を刻む。
左から順に…。
50㎝に小さくなる。
元の大きさに戻る。
20㎝に小さくなる。
それぞれの扉の下に魔石を埋める。
時空魔法:50cm。
時空魔法。
時空魔法:20cm。
念話
学校にいる人全員に話し掛ける。
「今日から球当てと球蹴りする場所を運動場とする。そして、授業を中断して運動場に来て。球も持ってきてね!」
残りは説明するだけ。
実際に使用してもらうのが一番だからね。
「これで、後は待つだけだね」
「姉さんは全員が同じ遊びができるようにするんだね…。何かまずい事が起きるの?」
「まずくはないかもしれないけど余り良くはないね。今まで一緒に遊んでいたのに、体の大きさが理由で遊べないのはつまらないでしょ?それなら、体の大きさをフェニックスと精霊に合わせれば文句が出ないと思っただけだよ」
「フェニックスと精霊に文句を言えるのは私たちだけだからね。姉さん、凄い考えているね」
私は妹に甘い気がする…。
考えている事を正直に話してしまう。
まあ、家族だからいいけどね。
子供たちを呼んだつもりなのにおかしい。
クリスタが一番最初に来たよ。
「全力で授業妨害ですね。授業が終わってから何かしようとは思わないのですか?当然思わないですよね。はぁ…」
「クリスタ、そこの扉を通り抜けてよ」
「何ですか?20㎝に小さくなるってどういう事ですか?」
疑問を感じても取り合えず通り抜ける事は知っているよ。
そして、一番小さくなる扉をあえて選んだね。
それが、勇者クリスタだから。
(何ですか!小さくなっちゃいましたよ。全員を小さくするつもりですか?)
足元で何か呟いている小人がいるよ。
勿論聞こえているけどさ…。
「フェニックスと球蹴りで遊びたい子やドリュアスと球当てで遊びたい子がいるでしょ?自由に遊んでもいいし、体の大きさを揃えて遊ぶ事もできるようにしたんだよ。フェニックス用と精霊用と通常用で場所を少し離してあるけど、踏まれる可能性もあるね。クリスタを見ていたら踏みたくなってきた」
「確かに踏みたくなるね。何でクリスタを見ると踏みたくなるのかな?」
(姉妹で不穏な事を言わないで下さいよー。安全対策して下さいね!)
土魔法。
球蹴りと球当てを分ける壁を用意。
土魔法。
球当ての精霊用と通常用を分ける壁を用意。
土魔法。
球蹴りのフェニックス用と精霊用を分ける壁を用意。
土魔法。
球蹴りの精霊用と通常用を分ける壁を用意。
完璧だよ!
仕切りがあれば遊んでいる時に踏まれる事はないからね。
「クリスタは何で元に戻らないの?気に入ったの?」
(あの扉を通り抜ければいいのですね?)
絶対に気付いていたね…。
分かっていて遊んでいたに決まっているよ。
それが、人間卒業のクリスタだから。
「みんな集まったね。ここに3つの扉がある。左から順に、50㎝に小さくなる、元の大きさに戻る、20cmに小さくなる扉だよ。フェニックスたちと球蹴りしたい人もいるでしょ?ドリュアスたちと球当てしたい人もいるでしょ?種族に関係なく遊べるようにしたよ。それと、ノームにお願いがあるんだ。壁と扉を花崗岩に変えておいて欲しい。見栄えがいいからね!」
「そうさな。そのくらいならお安い御用だ!」
ノームは簡単に土や岩を好きなように変える事ができる。
精霊だけに与えられた特殊能力だね。
「皆さん、一緒に球蹴りをしましょう。これで種族に関係なく遊べますよ。最高ですね!流石シャーロットの娘のヴィーネです」
「球当てで私と勝負しようじゃないか。地上で戦ってあげるよ!」
フェニックスとドリュアスが勧誘合戦を始めたね。
初等科は扉を通り抜けず普通に遊ぶつもりみたい。
高等科は確実に扉を通り抜ける。
遊びに対しての本気度が違うからね!
「母さんの娘だから皆に平等だよ。さあ、楽しく遊んでね!」
「姉さんは結構先にいるね。追いつくのが大変だよー」
追いつかせる訳が無いでしょ!
当然のように追いつくつもりの妹は何なの。
そろそろクリスタが諦めるはず。
授業を終わらせてね。
「もー!今日の授業はここまでにします。全員好きなように遊んで下さい!」
そうそう。
流石クリスタは分かっているね。
「みんな楽しんでね。ウィーノ、帰ろうか」
「そうだね。皆またねー。転移魔法」
社に移動した。
「おかえりー。最高の遊びが始まったね。これで、皆が本当に楽しめるようになるよ。私が指摘する前に動くなんて成長を感じるね」
「ただいまー。私のする事を先に予想して当てている母さんに言われても実感が湧かないよ」
「ただいまー。姉さんは成長しているんだ。私も頑張るから見ててよー」
「ウィーノも成長しているよ。カーリンを見ればよく分かる。2人とも成長しているね。今日はお風呂に入ってから寝よう」
妹が拗ねないように言った気がする。
だけど、間違いなくウィーノも成長しているからね。
それよりも、お風呂だよ!
3人で入るお風呂は気持ちがいいね。
今日は仕事もしたから気分もいいよ。
お風呂から出ると母さんが布団を敷いてくれる。
私とウィーノは争うように布団に入る。
いつも同時だね…。
やはり侮れない!
「じゃあ、おやすみー」
「「うん、おやすみー」」
母さんに注意される前に気付けたのは成長していると思えるね。
今日は皆の笑顔が見れたから良かったよ。
優しい姉です。




