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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第5章 聖地シャーロット

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閑話 クラーラ 最重要問題

何かがあったのかな?

少し前からカーリンお姉ちゃんの様子がいつもと違う。


物思いに耽っている感じがする。

シャーロット様以外に好きな人はいないはずなのに。


とても気になるよ…。


カーリンお姉ちゃんが孤児院の柱だから。

何か不安な事があれば家族に相談して解決するべきだよ。


私から聞いてみようかな?

正直に答えてくれるかな?


休日の鬼ごっこは中止になったよ…。

理由は分からないけど、その時に何かがあったのかな?


それに、カーリンお姉ちゃんが少し変わった気がする。

ウィーノ様との訓練が切っ掛けかな?


違う理由なのかもしれない…。


もしも、カーリンお姉ちゃんが飛ばされるような事をしていたらどうしよう?

恐らくカーリン軍も記憶を消されて飛ばされるか殺されるよね…。


あー、不安だよ!

何を考えているのかな?


考え事の邪魔をしたら悪いと思うけど気になる。

じっとしていられないよ!


「カーリンお姉ちゃん、最近少し変わったよ。何かあったの?」

「少し変わったように見えるの?それは、とても嬉しいわ。変わろうと努力しているのよ」


カーリンお姉ちゃんが変わろうと努力している。

そんな事をする必要があるの?


何か問題があった気がするよ…。

シャーロット様ならカーリンお姉ちゃんに更生する機会をくれるはず。


もしかして、それで変わろうとしているのかな?

孤児院としての最重要問題だよ!


「カーリンお姉ちゃんは変わらないと駄目なの?今のままでもいいと思うんだけど…」

「私は考える事や想像する事が苦手だとウィーノ様に教えていただいたのよ。実際その通りだと思うわ。それで、考える癖を身につけるように言われているのよ」


それは、その通りだと思う…。

カーリンお姉ちゃんは抜けているところがあるから。


シャーロット様に言われた事なら完璧にできると思う。

だけど、自分から何かをしようとした事は一度もないから。


「今は何を考えているのか秘密なの?」

「秘密じゃないわよ。孤児院に改善点が何か残っていないのかと、休日にあなた達と球当てをするつもりなのよ。それについて考えているわ」


うそ?

休日にまた遊んでくれるの?


鬼ごっこが中止になって絶望していたのに。

奇跡が起きたよ!


ウィーノ様のお陰かな?

ありがとうございます!


これは、カーリン軍が本気で考えないといけない問題じゃない?

お姉ちゃんと遊べるなら全力だよ!


孤児院の改善点を探すのは難しい気がする。

私たちは余りにも贅沢に生活しているから。


両親がいないという点を除けば、この国で一番贅沢で便利な生活をしていると思う。

その中で改善点を探すのはとても難しいよ…。


でも、考える癖を身につける為に考えているのであれば別にいいのかもしれない。

最終的に改善点が見付からなかったとしても、考えた結果であれば今までとは違うから。


カーリンお姉ちゃんは変わろうとしているんだ…。

私たちが不安に思うような理由じゃなくて良かったよ。


それなら、休日の球当てを考えるべきだね!

球当てはカーリンお姉ちゃんの近くで楽しみ続ける事ができる。


カーリン軍の最重要問題だよ!


「休日の球当てについては私たちと一緒に考えたら駄目なのかな?」

「そうね…。今までそういう事もしてこなかったわね。新しい経験になりますから一緒に考えましょうか」


ウィーノ様、ありがとうございます!


休日に一緒に遊ぶだけじゃなくて一緒に考える事もできる。

つまり、カーリンお姉ちゃんと話す機会が増える。


「今日は考える事に集中して明日か来週から球当てを始めようよ。私は球当てする子を食事場所に集めるから、カーリンお姉ちゃんは先に行ってて」

「ええ、分かったわ。お願いね」


カーリンお姉ちゃんが食事場所に移動するのを見送ってから2階に全力で駆け上がる。


「カーリン軍は全員食事場所に集合!休日にカーリンお姉ちゃんが私たちと球当てをするつもりだよ。急いで全員に伝えて。今からカーリンお姉ちゃんとどういう風に球当てをするのか相談する事になったから。私は新孤児院に行ってくるからこっちはお願い」

「鬼ごっこで終わりじゃねーのか…。最重要問題だな。全力だー!」

「そうですね。全員に伝えないと駄目でしょう。抜け駆けすると埋められる可能性がありますからね」


私は急いで食事場所を経由して新孤児院に移動する。

そして、2階まで駆け上がり同じ事を伝える。


よーし!

これで、カーリンお姉ちゃんとゆっくり話せる。


食事場所に行くと既に100人くらいに囲まれていたよ。

流石カーリン軍だね…。


集まるのが早過ぎるよ。


新孤児院からも続々と集まる。

今は400人くらいに減ったよ。


クリスティーネお姉ちゃんの派閥やシルキーお姉ちゃんの派閥に入った子がいるからね。

それでも、まだまだ多いけど…。


司会は堂々と私がさせてもらう。

だって、私が聞いたんだからね!


「カーリンお姉ちゃん、球当てする子は集まったよ。基本的な方針みたいなものはあるの?」

「やはり多いわね…。球当てを全員が平等に楽しむのが絶対条件よ。皆が秘儀を全力で使ってしまうと初等科や中等科の子が楽しめないでしょ?それは、駄目だわ。だからと言って、秘儀を使わないのも駄目。全員に秘儀の初歩を使ってもらおうと思っているの。但し、秘儀の初歩でも鍛え方で差が出てしまう。魔力の移動速度が良い例ね。つまり、魔力の移動速度の差のみで勝負しようと思っているのよ。初等科や中等科の子が少し不利になってしまうけど、球の速さは変わらないから頑張れば捕れるでしょ?もっと平等にするような案はあるかしら?誰でも意見があるなら言ってちょうだい。秘儀を使わないのは絶対に駄目よ。楽しみながら秘儀も鍛えるつもりなのですから」


既にかなり考えているよ。

魔力の移動速度のみで勝負する。


球の速さは変わらないけど、投げるまでにかかる時間は全然違ってくる。

高等科でも魔力の移動速度を鍛えるのは難しくて苦労しているから…。


全員が球当てで楽しみながら秘儀を鍛える事ができるよ。


「はい!秘儀の初歩にしてしまうと使う魔力量にかなりばらつきが出る気がします。初等科は自由。中等科は両手と片足の魔力量。お姉ちゃんと高等科は両手だけの魔力量。最初に出しておいた魔力だけを使うようにするのはどうかな?」

「なるほど。それは、いい案だわ。魔力の移動速度だけではなくて配置も考えなければならないわね。試合が始まる前に魔力を出しておいて、試合終了まで追加するのは禁止にしましょう。運用も考えられるようになるわ。かなり白熱した勝負になりそうね」


何て難しい球当てなの…。

両手の魔力量を使って全力で投げ続けたら試合終了まで魔力が持たない気がする。


とんでもない球当てになっているよ。

高等科の卒業試験より難しくしていないかな?


「それだと、200対200みたいな大規模な試合は流石に無理だね。絶対に試合終了まで魔力が持たないから。組分けをしっかり決めて総当たり戦にしようよ。一組40人くらいだといいと思う。それなら、皆が楽しみ続けられるよ。そして、順位を決めよう。カーリンお姉ちゃんは1位の組に入って。最初はじゃんけんで勝った組に入ればいいんじゃないかな?」

「私は最下位の組に入るべきじゃないかしら?毎週負け続けるのは辛いわよ?私が入れば少しは強くなるはずだわ」


それは、絶対に駄目だよ…。

全員がわざと球に当たるようになる。


同じ組になりたくて必死だからね。


「それでは、駄目です!白熱した試合になりません。毎週の球当ての順位を記録していきましょう。同じような順位が続いた場合は組分けをし直せばいいだけです。カーリン姉ちゃんが1位の組に入るのは絶対です!」

「その通りだよ。カーリンお姉ちゃんが最下位の組に入ったら球当ての楽しさが半減しちゃう。お姉ちゃんは常に1位の組に入るべきだよ。私たちはお姉ちゃんに勝ちたいからね!」


完璧な嘘だね!


一緒の組になりたいのではなく勝ちたい。

これなら、カーリンお姉ちゃんも納得だよ。


「なるほど。私を当てて勝ちたい訳ね。納得したわ。それなら、私は1位の組に入るべきね。一番最初の組分けはできそうかしら?今日中にできるのなら明日から遊べるわね」

「慣れてるから大丈夫だよ。私たちはこのまま組分けを考えるからカーリンお姉ちゃんは戻って孤児院の改善点を考えていて」


「それなら、任せたわよ。何かあれば旧孤児院の1階にいるので言いに来てちょうだい」

「分かったよ。任せて!」


カーリンお姉ちゃんは旧孤児院に戻っていった。

姿が消えた瞬間に場の雰囲気が変わるのはいつも通りだね。


派閥を変わった子が多い原因はこれだと思うよ。

初等科には辛いと思うから…。


「分かってるな?組分けに妥協は許さねーぞ。見栄を張らずに自分の実力を正直に告白しろよ。全員が見てるからな。不正申告をした場合は埋めるぞ!」

「初等科を怖がらせるような事を言ってはいけませんよ。大丈夫ですからね。埋められるだけです。ボコボコにはしませんよ。連続で不正申告したらどうなるのかは分かっているでしょ?」


誰が聞いても球当ての組分けをしている何て思わないよ。

完全に脅迫だよ…。


カーリン軍の闇が全開だよ。

つまり、試合開始だね!


「カーリンお姉ちゃんが一番最初に入る組を決めるのはじゃんけんだとまずいね。くじでカーリンお姉ちゃんに選んでもらおう。それなら、じゃんけんに負けただけで埋められたりしないでしょ?」

「正しい意見でしょう。被害者は減らすべきですからね」

「それなら、文句ねーな。さあ、組分けを全力でしようぜ!」


・・・・。


30分後。


半分に折りたたんだ紙を10枚机の上に乗せる。

あくまでも何も考えずにばらけたように装う。


カーリンお姉ちゃんは右利き。

そして、面倒を嫌い最短で取れる位置の紙を選ぶ。


試合は既に始まっている事に気付いていない。

2人で私を監視したところで甘いね!


「カーリンお姉ちゃん、組分け終わったよ。お姉ちゃんが最初に入る組を決めるから好きな紙を選んで」

「もう終わったの?やはり日頃から考えているから違うわね…。では、これにします」


予想通りの紙を手に取ったね。

5番だよ!


両隣は歯ぎしりが聞こえそうな顔をしているね。

私は偶々選ばれたような顔で喜ぶ。


「私と同じ組だね!試合中に全力で球を投げていたらすぐに魔力が尽きると思うから作戦会議をするべきだよ。誰が最初に外に出ているのかも考えないとね。カーリンお姉ちゃんが入っている組が最下位になっては駄目でしょ?」

「そうね。ウィーノ様も試合は開始と同時に始まる訳ではないとおっしゃられていたわ。しっかり作戦を考えましょう。クラーラ、行きますよ!」

「はーい!食事場所で組ごとに固まって作戦会議を始めているよ」


悔しそうな2人の顔が最高だね!

作戦会議も一緒にできるなんて夢のようだよ。


ウィーノ様。

ありがとうございます!

クラーラ、恐ろしい子!

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