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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第5章 聖地シャーロット

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閑話 ビアンカ 球当て

授業中ですが外から物凄い音が聞こえます。

かなり強い振動も伝わってきますね…。


これでは、授業になりません。

多数の木を抜いているのでしょうか?


流石に外で何をしているのかが気になってしまいます。

子供たちも同じ気持ちでしょう。


ソワソワしているのがこちらまで伝わってきます。

自分たちから何も言わないだけ我慢できていると言えるでしょう。


「授業はここまでにします。慌てず外に出ましょう。決して走らないで下さい。分かりましたね?」

「「はーい!」」


子供たちと外に出ると想像以上の光景が広がっていました。

とても広い範囲の木が抜かれているのです。


畑の奥の森が消えたかのように感じてしまいます。


遠くてよく見えませんが髪の色からヴィーネ様とウィーノ様でしょう。

皆が畑の前で様子を見ています…。


戦々恐々といった感じでしょう。


「ほんと授業にならないよね。事前に告知して欲しいよ。親に似て無茶苦茶だよね」

「あなたの愚痴はお2人に聞こえているわよ。わざと言っているのでしょうけど、相変わらず礼儀がなっていませんね」


クリスタは本当に怖いもの知らずね。

許されているのが凄いわよ…。


何かある気がしてしまいます。


「いいじゃない。こっちは授業妨害されているの。文句を言っても怒られないよ。この後にもっと凄い事が起きるんだから」

「何か知っているのですか?私は何も聞いていませんよ?」


「ヴィーネ様たちが木を抜いて終わりな訳が無いじゃない。魔法練習場の横から学校の前まで木を抜いているから子供の遊び場を作るよ。間違いないと思う。どんな遊びか知らないけど大規模だね」

「あなたの予想ですか。まあ、確かにその通りだと思います。ウィーノ様が木を浮かせて飛んで行きましたね。製紙工場に行かれるのでしょう。クリスタの予想通りだとしたらこの後…」


私は自分の目を疑いたい気持ちでした…。

一瞬で目の前の荒れ地が遊び場所に変わったのですから。


「流石だね。網を張ってりんごの木や畑の邪魔にならないようにしたよ。そろそろここに来るよ」

「本当にあなたの勘はどうなっているの…」


本当にどうなっているのよ!

勘が鋭いなんて話で済むの?


「呼ばれたから来たよ。皆、外に出ているね。転移魔法(テレポート)


ヴィーネ様はクリスタの声を聞いて来たみたいです。

本当にどうなっているのですか?


学校に通っている子を網の中に移動させたみたいです。


地面に線が掘ってありますね。

どのような遊びなのでしょう?


ヴィーネ様は時空魔法(ゲート)から球をポロポロと取り出して配っています。


なるほど。

2組に分かれて球当てをするのですね。


孤児院の子は枕投げが好きですからね。

絶対に流行りますよ!


いくつもの面が用意してありますので同じ科の子と遊べます。

それに、精霊様や妖精の為の面と球も用意されています。


手が使えないフェニックス様たちの為に蹴る為の面もあるようです。


「面はたくさん用意したけど、2つの面がくっついているのが分かると思う。まずは2つの組と陣地を決めるんだよ。球を投げて遊ぶ場所と蹴って遊ぶ場所は分かれているよ。蹴って遊ぶ場所は相手の陣地の奥に球を入れる器が用意してあるから、そこに入れたら1点。点が入ったら中央から相手の球で開始。時間を決めて多く点を取った方が勝ち。球が面の外に出たら相手の球になるよ。球を投げて遊ぶ時は2つの組に分かれて球当て。面の外には逃げられない。相手の組の誰かに球を当てられたら面の外に出る。外に出た球で相手の組の誰かを当てれば中に戻れる。始める前に何人かは外に出ていて、その子たちは同じ組の誰かが外に出た時に交代で中に入れる。顔に当てるのは駄目。当てられても地面に着く前に同じ組の誰かが捕る事ができれば当てられた事にはならない。簡単な規則は考えてみたけど後は自分たちで遊びながら色々と工夫してみてよ。じゃあ、保育科に行くから。先生たち、後はよろしくね。またねー。転移魔法(テレポート)


とても考えられた規則ではありませんか…。

ここから更に自由に考えて遊んでみてという事ですか。


「球が手で捕れないフェニックス様とサラマンダー様と妖精犬(クー・シー)、捕るのが苦手な妖精猫(ケット・シー)は球蹴りで遊んで下さい。秘儀を使っても大丈夫そうな球ですから最初は科ごとに分かれましょう。精霊様と妖精用に小さい球も用意してありますし、小さい面も用意してありますね。はい!今日の授業はここまで。全員全力で遊んで下さい!」

「早速球蹴りをしましょう。最高ですね!」

「期待しちゃうね!鬼ごっこより楽しいかも。僕の顔を蹴らないでね」

「こんな遊びは初めてですね。とても楽しそうです」

「組分けをしっかり考えましょう」


こういう時のクリスタはとても頼もしいですね。

あっという間に子供たちの心を掴んで指揮していますから。


カーリンとは別の力があります。


フェニックス様たちは早速球蹴りの場所まで行って組分けをしています。

球当てをする高等科と中等科の子供たちの組分けは早いですね。


カーリン軍が指揮しているので間違いはないでしょう。


「クリスタは混ざらないの?」

「ウィーノ様が戻ってきそうじゃない?私に感想を聞くと思うから待ってるよ」


クリスタは何を感じているの?

ウィーノ様が本当に来そうではありませんか。


「私は初等科に混ざっているわ。ドリュアス様はどうしましょう?」

「誘惑に負けるよ。だって、凄い楽しそうじゃない。他の精霊様はやる気だから時間の問題だよ」


誰が見ても我慢していると分かる表情ですからね。

間違いなく時間の問題でしょう。


「まあ、そうでしょうね。では、初等科に混ざってきます」

「子供に当てられるような真似はしないでよ」


「分かっていますが絶対とは言えませんね。初めて遊ぶのですから」

「この競技は鬼ごっこよりも秘儀を上手く使う必要があるね。難しそうだよ」


「分かっています。それでは、行ってきますね」


クリスタに後を任せて初等科が集まっている面に向かいます。

しっかり球を持っていますね。


「組分けに悩んでいるみたいですね。最初は種族が同じ人数になるように分かれなさい。人間と獣人は男女も同じ人数になるように分かれるのよ。まずは初めてみないと何も分かりません。じゃんけんでも何でもいいからとりあえず分かれなさい。早く遊びますよ!」

「「はい!」」


私は人数が少なくなった方に入ります。

球を最初に持つのは代表がじゃんけんで勝った組にしました。


「よーし!いくよー!」


「さあ、全力で捕りますよ!」

「「はい!」」


これは…。


誰が狙われるのか分かりませんね。

それに、初等科とは言え秘儀を使えます。


かなりの球の速さになるでしょう。


【バシィ】


「あっ!当たっちゃったー」

「痛くはありませんでしたか?」


「はい、全然大丈夫です。次は捕ります。すぐに当てて中に戻ってきます!」

「それならいいわ。頑張ってね!」


「はい!」


女の子は元気に面の外に出ました。

代わりに最初に外に出ていた男の子が面の中に入ってきました。


「かなり難しいみたいですよ。頑張りましょう!」

「はい。あの速さは秘儀を使わないと捕れないですね。凄い遊びです」


本当に凄い遊びですね。

難しいですが怪我もなく皆が楽しめます。


実に素晴らしいです!


そろそろ私が狙われる頃でしょう。

子供たちは大人に勝ちたいと思っているでしょうからね。


【バン】


「流石先生!捕られちゃったよ。これはまずいね…」

「当然です。覚悟しなさい!」


柔らかいですがしっかりとした球です。

地面に落とすとかなり弾みますね。


どのような素材でできているのでしょうか?


さてと、全力は駄目ですね。

秘儀の初歩を極めた程度の力に抑えて球を投げます。


「いくわよー」


【バシィ】


「あっ!やっぱり捕れないかー。次は捕ります!」

「ええ。次は捕ってみなさい!」


当たった球はどこに飛んでいくのか分かりませんね。

当て方も考えなければなりません。


上手く勝つ事を考えると難しいです。

当てるだけで簡単に勝てる遊びではありませんね。


「盛り上がってるねー。ビアンカと反対の組に入れてー!」

「ちょっと待ちなさい!あなたは高等科と一緒に遊んできなさいよ!」


クリスタが初等科に混ざろうとする理由なんて誰でも分かります。

目的が見え見えなのよ!


「高等科を見てよ。凄い事になってるから。ハーピィやドラゴンが空から狙ったり無茶苦茶だよ」

「これは…。とんでもないですね。立体的な戦いになっています。あなたが当てればいいでしょ?」


平面だけではなく角度もつけられると捕るのは大変ですね。

流石高等科だと言えるでしょう。


すぐに楽しみ方を見付けますね。


「いいじゃない。飛んでいる高さも考えているみたいだよ。下から届く距離をしっかり見極めているね。届かない位置まで逃げていたら当てたけど考えて遊んでいるからさ。私はビアンカを当てにきたの」

「そんな事は分かっているわよ。だから邪魔なの!」


今日はレナーテが休みでしたね。

絶対に捕ります!


「おー!初等科でも速いね。凄いじゃん。私を狙わないの?当ててみなよ!」

「やってしまいなさい。初等科の実力を見せてあげましょう」

「分かりました。クリスタ姉ちゃんといえど人間ですからね。当てます!」


「やあ!」


クリスタはいつものように魔力を満たしていない。

体が点滅もしていない。


一体何をしているの?


【バン】


何故今の球が捕れたの…?

手に魔力を溜めたのも見えなかった。


「混乱しているね!魔力を溜めなくても初等科の球は捕れるだけだよ。訓練しないとね」

「そうなのですか?今の球は秘儀を使わずに捕れるのですか。むぅー!」


絶対に嘘ですね…。

何か絡繰りがあるはずです。


「さて、ビアンカは覚悟できているかな?当然教師に手加減はしないよ!」

「いいでしょう!好きなように球を投げてきなさい」


おかしいですね。

何をしているのでしょうか?


魔力を動かしていま…。


【バシィ】


えっ?

当てられた!


いつ投げたの?


魔力を満たしたのは見えませんでした…。

ですが、魔力を満たした球の速さだと思われます。


「はい。ビアンカは外に出てね。秘儀の鍛錬が甘いよー」

「何をしたの?今の球の速さは普通じゃないわよ。魔力を満たして投げたでしょ?」


「手に魔力を溜めて投げただけだよ。初等科の訓練と一緒でしょ?全身を満たして助走をつけたりはしてないよ」

「投げた動作が見えなかったわよ!全く…。まぁいいわ。当てて戻ってきますからね」


外に出たら周りの様子をゆっくり観察できますね。

みんな凄い楽しんでいます。


高等科は本当に凄い事になっていますね。

球も2個使って遊んでいます。


あれでは、駆け引きまで要求されるではありませんか。

本当に遊びに貪欲ですね。


とても素晴らしい事だと思います!


フェニックス様たちも楽しんでいますね。

秘儀を使って球を蹴るので結構な威力になります。


器に入れるのが難しいので近付かなければならないでしょう。

ですが、器に入れられないように守っている人もいますからね。


しっかり遊び方を考えているみたいです。


クリスタは2人を同時に狙って当てていますね。

当たった球が跳ね返って違う子にも当たる。


腹が立つほど上手いですね…。


これでは、中に戻らないと負けてしまいます。

クリスタにこだわっている場合ではありません。


「中に戻らせてもらいます。では!」


【バン】


「私ばかり狙わないでよね。はい。当てちゃいなよ」

「はーい!頑張ります」


もー!

憎たらしいですね。


あなたを狙っていません。

一瞬で移動して球を捕ったわね。


自分ばかりが投げても皆が楽しめないので、球に触れていない子に投げさせてあげる優しさは評価できますが、総合点はマイナスですよ。


全くもう…。

今夜は盛大に愚痴らせていただきます!


ですが、本当に楽しい遊びですね。

鬼ごっこだけでも子供たちは楽しめていましたが、これは画期的です。


秘儀も鍛えられますし皆が平等に楽しめます。

同じ実力の子たちで遊べるのがとても良いですね。


ここまで子供たちを虜にする遊びを一瞬で用意されるのは流石です。

土地神様の立派な御令嬢ですね。

球当てでは禁止されていませんから。 byクリスタ

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