ジェラルヴィーネ 妹
母さんの娘として行動する…。
クリスタを鍛えるのに夢中で大切な事を忘れていたよ。
母さんは土地神様。
国民に対して平等でなければならない。
孤児院を特別扱いはしているけど、私たちまでしてしまっては目立ち過ぎる。
国長の時は仕事していれば良かったけど、母さんの娘ならそれを考えて行動しなければ駄目だね。
今まで考えて来なかった事だから全然気付けなかった。
母さんに指摘されるまで分からなかったと思う。
やはり母さんが国をまとめているよ…。
娘であっても国を崩壊させるような行動をしていたら注意される。
問題になる前に対応する。
国を守る事に甘さが一切ない。
本当に徹底している。
だからこそ、国民から信用し信頼される。
母さんが社にいるだけで、この国は安泰だと皆が安心する。
母さんの存在は絶大だよ！
本当に凄いよ…。
500年以上も守り続けてきた経験を持つ母さんには簡単に追い付けない。
5000年と比較すると短く感じるけど、母さんが500年以上続けてきた内容は余りにも濃い。
叔母さんとは考える力が違い過ぎる…。
私と能力を同じにしても駆け引きだけで圧倒されると思う。
母さんは強過ぎる。
そして、それを隠すのが上手過ぎる。
母さんは私たちが成長すれば最強になれると信じている。
最強になる為に越えなければいけない壁が高過ぎるよ！
ドラゴンが親を超えるのは難しい事ではない。
そのように思われているのは間違いなく何も考えずに生きているからだね。
年齢と種族だけを誇る空飛ぶトカゲ。
本当に母さんの子供で良かった…。
今の生活を知ってしまったら、つまらないドラゴンの生活なんてできないよ。
さて、どこに行こうかな？
子供たちは学校で授業中だけど魔法を練習している人もいる。
新しい仕組みを考えてみるのも有りだね。
母さんが考えた仕組みは全て国民の為になっている。
それに対して私が考えた仕組みは余り役に立てていない。
私の力が足りないせいだね…。
能力を全て解禁すれば簡単に解決できる。
でも、それは楽しくない。
能力を使わない母さんの気持ちが少し分かった気がする。
クリスタと訓練していて思ったんだ…。
人が成長するのを見ているのは楽しい。
それに、私の考えた訓練によって成長しているのであればより楽しい。
私も一緒に成長している気がする。
人が成長する為の仕組みは母さんが一番力を入れている。
今の段階でこれ以上の仕組みは難しい気がする…。
「ウィーノ。何かやりたい事はある？」
「今日は外出するの？姉さんに付いて行くよ。私は特に何もないからねー」
私に完全に甘えているね。
妹だからって甘え過ぎだよ！
本当にもう…。
そういえば、ウィーノは刀持っていないね…。
気にしている感じでもないし私も使った事はないけど気になる。
「ウィーノ。刀欲しい？」
「姉さんは使っていないじゃない。でも、同じの持っていると嬉しいかもしれないねー」
かなり欲しいみたいだね…。
大人ぶっていらない雰囲気を出しているだけだよ。
感情を隠すのが下手過ぎるよ！
「今日のやる事は決まったよ。出かける準備はできているの？」
「いつでもいいよ。何するの？」
「行けば分かるよ。転移魔法」
エルダードワーフのお店に移動した。
「やあ、チャド。私と同じ刀を妹にも欲しいんだけど、何か必要な物はあるかな？」
「初めまして。私はジェラルウィーノ。ウィーノって呼んでね」
「お、おう。マジで似てるな。流石に驚いたぜ。今使っている刀でいいなら材料は余っていると思うからアーロンに言っておくぜ」
「お金が必要なら言ってね。受け取る時に払うからさ」
「いらねーよ。金なら余ってるからな。何を作ろうか考えるので必死だぜ！」
材料は多いけど何を作っていいのか分からないのかな？
そうだ！
面白い遊びを思い付いたよ。
「じゃあ、球作ってよ。大きさは5cmと20㎝の2種類。精霊や妖精や子供が蹴っても投げても割れないようにお願い。当たってもなるべく痛くない素材にして欲しい。20個ずつお願い。できそうかな？」
「ほー。精霊様や子供の遊び道具ね。いいぜ！アラクネの糸もあるしフェンリルの毛まであるからな。最高の球を作ってやるぜ。任せておきな！」
「姉さん、何か面白い遊びが思い付いたの？」
球のぶつけ合いだよ！
枕投げが大好きみたいだから絶対に気に入るよ。
「孤児院の子の枕投げから、規則を作って球を投げて遊べる競技にできそうだと思っただけだよ。孤児院の子は枕投げが大好きだから学校で絶対に流行る。フェニックスや妖精犬たちは球を転がして遊べるようにしよう。皆が遊べないと駄目だからね。保育科にも置いておけば皆が楽しむよ。チャド、よろしくねー。転移魔法」
チャドに手を振って社に移動した。
「今日はここまでにするの？」
「今日はここまでだね。球ができたら魔法練習場の横に遊べる場所を用意して、規則を決めて、球を渡して終了だよ。鬼教官が悲しむかもしれないけど仕方ないよ。多くの子供がいるのに、鬼ごっこだけでは面白くないからね。皆が楽しめる遊びを考えるのも土地神様の娘としての立派な役目だよ」
興味ない振りを続けているけど喜びが隠し切れていないよ。
刀が欲しいなら素直に言えばいいのに、本当に甘えん坊なのだから。
優しい姉ですね。
