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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第5章 聖地シャーロット

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閑話 ジェラルディーン 憧れ

もー、本当に生意気だわ。

シャルの魔力が濃過ぎるのよ!


とりあえず姉さんに報告しておきましょう。


「姉さん、娘が産まれたわよ。名前はジェラルウィーノ」

「シャルは本当に女の子が好きだね。それを、今言うという事は何かあるのでしょ?」


普通に話したつもりだったけど違和感があったかしら?

今は2人でお茶を飲んでいるだけじゃない。


姉さんは勘が鋭過ぎるのよ!


どうせですから聞いてみましょう…。

純粋に姉さんがどのように判断するのか興味あるわ。


「姉さんは娘を2人同時に相手して勝てるかしら?」

「1人でも無理だね。何でそんな事を聞くのかな?」


そうよね…。

普通は1人でも無理なはずよ。


「シャルが2人同時に相手したと言うのよ。しかも、2人を圧倒したらしいわ。可能だと思う?」

「可能だね。シャルなら余裕でできるよ。ディーンはシャルの能力を甘く見過ぎているね。娘2人の感情把握なんて楽なものだよ。軽く手玉に取れるだろうね。それを、聞いたという事はディーンもそこまで強くなりたいという事かな?」


何でそうなるよの!

普通の会話でいいじゃない。


「不可能じゃない!姉さんでも勝てないならとても無理よ。やはり能力の差が大きいのかしら?」

「それは、違うね。シャルは能力が無くても圧倒できるよ。情報の処理能力が桁違いだからね。2人を自分の思った通りに誘導できるだけの動きができるのであれば可能だよ。シャルがどんどん隙を潰していくから無理だと思うだけで、何もしていないのであれば私は可能だからね」


それは、どういう事かしら?


「姉さんに負けないようにシャルが対策しているの?それとも、別の目的があって隙を潰しているのかしら?」

「母として娘の隙は見過ごせないだけだよ。世界最強だからこそ隙があってはいけないでしょ?シャルは娘たちを名実ともに世界最強にしたいのだと思うよ。隙を突ける相手はいないと思うけど絶対ではないからね。シャルは常に最悪を想定しているよ」


娘を鍛えれば世界最強になるなのね。

それならば、時間の問題なのかしら?


「成長した娘たちが世界最強かしら?」

「少しだけ違うね。シャルが教育して成長したら世界最強になるよ。そうでなければ、私とシャルには勝てないからね」


シャルの教育がそれほど重要なの?

それに、姉さんが勝てるのは何故なの?


分からないわ…。


「姉さんにはシャルのような能力が無いじゃない。何故同じように勝てるのかしら?」

「私は魔人を殺し続けてきたからね。魔人の行動を常に考えて戦っていたんだよ。力で圧倒するのではなく、隙を突いて勝つのを目標にしてね。だから、相手の動きを見れば隙が分かるようになったよ。偶に殺戮衝動を発散させる為に力だけで圧倒したりもしたけどさ」


殺戮衝動に苦しみながら何をしているの?

姉さんは本当におかしいわよ!


「私は力で圧倒してきただけだから駄目だという事なのね?」

「そうだね。ディーンの力はこの世界では別格だから力で圧倒できてしまう。娘2人も本来は圧倒できるけどね。私とシャルが例外的な存在だよ。私は相手を破壊する事を考え続けてきた。シャルは人の考え方を理解しようと考え続けてきた。結局は考える力の差だね。圧倒的な力があっても考える力が弱ければ隙が生まれる。シャルの娘たちは圧倒的な力があるけれど隙はあったからね。そして、隙さえあれば勝てるくらいの力が私とシャルにはある。戦闘中に簡単に隙は潰せないからね。相手の一撃に耐えられるだけの力があるのなら勝てるよ。力があればあるほど隙の怖さも大きくなるからね」


どういう事なのかしら?

力があれば隙の怖さも大きくなるの?


「隙の怖さは同じじゃない?何故力があるほど隙が怖くなるのかしら?」

「強くなればなるほど相手の力量が分かるようになる。対峙した瞬間に勝ち負けの判別ができる程にね。ディーンは楽に勝てると思った相手に全力で挑まないでしょ?全力で挑めば隙を突くのも難しいけど相手が勝手に油断してくれる。世界最強が油断したら猶更危険だね。一撃で致命傷を与えられる。何故世界最強なのかを理解していないと駄目なのさ。強さには理由があるからね。世界最強には世界最強である理由がある。相手の魔力路に魔力を入れられる私やシャルのような存在がいる。その怖さをディーンなら知っているでしょ?」


無属性魔力を入れて破裂させるだけでは致命傷にならない。

警戒されてしまうだけだわ。


確実に一撃で勝つ方法…。


「姉さんとシャルが実験していた事ね。属性魔力を相手に入れるという事かしら?」

「その通り。やはりシャルも実験しているんだね。どのような結果になったか見たでしょ?腕に入れただけでも半身近くが吹き飛ぶ。では、胸や肩といった頭に近い位置に入れる事ができたらどうなると思う?即死だよ。一撃耐えて相手に触れるだけで勝てる。強ければ強いほど濃密な無属性魔力が全身を満たしているから、体の内部から大爆発するのさ。この世界の強者は強靭な魔力路を圧縮した魔力で満たしている。それを、当たり前過ぎて理解していない可能性がある。実際にヴィーネは理解していなかったはずだよ。シャルは半身を犠牲にしても死なないから相手に触れるだけで勝てるという訳さ」


何故私はできないままにしているの…?

2人の実験結果も姉さんとクリスタの訓練も見ているのに。


世界最強で生まれた2人の娘は最初から身体強化を極めている。

魔力を入れる事ができるのであれば、触れるだけで勝てるじゃない。


身体強化の弱点は身体強化とはそういう意味だったのね。

極めていない私はまだ弱いとばかり思っていたわ。


酔って真面目に聞いていなかったせいね…。

難しい話は姉さんに任せるのが癖になっているわ。


「シャルが隙を潰した今は無理だという事かしら?」

「絶対に無理だね。誰が相手でも完璧な結界で身を守るようになる。組手では属性魔力を入れるような危険な事はしないとお互いが分かっているから守らないけどね。シャルがヴィーネの体と結界の隙間がなくなるまでボコボコにしているから、完璧に対策しているよ」


お酒のせいで記憶が曖昧だわ…。

そのような事も言っていた気がするわね。


「結界を完璧にしても、次元を操れるなら直接相手の体内に魔力を入れられないの?」

「隙があれば可能だけど、今のヴィーネに隙は無いから無理だね。むしろ攻撃の機会にされるよ。次元を扱って魔力を入れようとすれば動けないからね。ヴィーネは次元が開いたのを感知できるから少し動くだけで躱せる。シャルは次元を利用して魔力を入れる事ができるとヴィーネの体に教えたからね。今なら反射で回避できると思うよ」


「無茶苦茶な戦いじゃない。ついていけないわ。他にもヴィーネに隙はあったの?」

「魔力量の判断が雑だったね。それに、攻撃動作時の魔力量を見ていただけだったと思う。その隙もシャルが潰したね。攻撃が当たる直前に魔力量を変化させる手段はいくつかあるけど、全部潰した。世界最強のヴィーネは一度やられたら二度と同じ技は効かないよ。シャルの攻撃は例外だと思うけどね」


攻撃が当たる直前に魔力移動をするのかしら?

他にできる事が何かあるかしら?


「攻撃が当たる直前に魔力移動をするくらいしか分からないわ。他にも何かあるの?」

「ディーンはまだできないからね。手から魔力を吸収する。攻撃を当てる直前に両手で魔力を吸収して魔力量を変化させる。これは、人間の魔力量で組手していた時だからこそ有効なだけで、普段は無意味だよ」


普段は無意味な技術を何故使えるの?

姉さんが何を考えているのか分からないわ。


それに、私とクリスタが組手している横で何しているのよ。

毎回そんな組手していたの?


「姉さんが一度も手や足を破壊できていないという事は、シャルが隙を潰した結果なのね」

「もっと凄いよ。私がお祭りでする予定だった攻撃を予想して隙を潰しているんだよ。シャルはヴィーネを鍛え続けている訳じゃなくて、お祭りで組手する時の為に隙を潰しているんだよ。つまり、私の考えまで予想しているという事さ」


「シャルは姉さんを警戒して隙を潰しているという事なの?」

「もっと先を見ているだろうけど、別に焦って潰す必要は無いからね。私対策だと言ってもいいよ。ヴィーネの成長も早いから、私の考えを即座に把握されたよ。本当に嫌になるよね」


「組手の相手を指名しようとしたら牽制された事かしら?」

「そうだね。女の子に向けた視線を一瞬で遮られた。この子とは組手させないという牽制だね」


姉さんはお祭りの度に何をしようとしているの?

話を聞いていると問題児にしか思えないわ。


「分からない事ばかりね…。姉さんはヴィーネとウィーノはどちらが強いと予想しているの?普通は後から産まれた方が強いわよね?」

「ドラゴンはそうだね。それに、シャルの戦略も継承している。だけど、ヴィーネの方が確実に強いよ。シャルの戦略はシャルじゃないと意味を成さない。ウィーノは勘違いしてシャルの戦略をヴィーネに使ってボコボコにされるだろうね」


「シャルは今何をしているか姉さんは予想しているの?」

「間違いなくウィーノの隙を潰しているよ。私が組手に指名すると予想してね。シャルは私の楽しみを奪い過ぎだよ。普通の組手しかできないじゃない」


娘を破壊しようとするからシャルが対策しているだけじゃない。

姉さんが間違っていると思うわ!


「結論としては2人を相手に勝つのは無理なのね?」

「時が経つごとに難しくなるね。2人の成長速度は物凄いから離される一方だよ」


「つまり、シャルもすぐに勝てなくなるという事かしら?」

「それは無いね。シャルは強過ぎる。完全に私の想定外だよ。シャルは人間や獣人を500年以上も相手にしてきた。ドラゴンと違って様々な性格の人がいる。それを、シャルは把握できるまで考え続けた。その考える力は桁違いだよ。シャルの強さは考える力だよ。相手の行動予測の的中率が凄いと思う。ディーンもシャルに勝てると思っていたのでしょ?考えを変えたほうがいいね。勝てると思わされていたんだよ」


「何よそれ!そんな事する意味があるのかしら?」

「勿論あるよ。ディーンはシャルに負けて悔しかった?本気を出せばいつでも勝てると思っていたでしょ?そうすれば、勝負の規模は小さくなる。ディーンが予想している力より少しだけ強くしていた。それに、シャルはディーンが本気にならないように注意していたと思う」


ムカつくけど分かる話ね。


シャルは街を守りたいと思っていた。

本気の戦いになれば余波で街は滅びたはずだわ。


真祖の力も使いたくなかったみたいだし…。

殺意に反応して闇の精霊が操ろうとしてくるのだから頷ける話ね。


「姉さん、どうすれば娘2人を同時に相手して勝てるの?私は勝ちたいのよ!」

「最初にそのような事を言っていたね。何故勝ちたいのかな?」


「2人同時に相手して勝てばお母様と呼ばせられるのよ。勝つしかないでしょう?」

「シャルが母親だから無理だよ。卵を産んで自分で温めればいいじゃない」


「それだと、娘たちに勝てないじゃない。世界最強の娘にお母様と呼ばれたいのよ」

「物凄い我儘だね。シャルが温めたからシャルを母親と認識しているだけではないよ?ディーンから継承しているものは知識だけだよ。ほぼ全てがシャルから継承されている。分かっているでしょ?」


「種族がドラゴンじゃない。古代種(エンシェント)ドラゴンの産みの親を叔母さんなんておかしいでしょ?」

「ドラゴンは強さにしかこだわらないよ。シャルの娘だから叔母さんなの。もし同じ状態で他の人だった場合は他人扱いされるよ。家族思いのシャルの感性を継承しているから叔母さんと呼んでくれると思わないと駄目じゃない」


「やはり私がシャルより強くなるしかない訳ね」

「そうだね。ディーンの頭が悪い事がよく分かったよ。その時点で娘たちに勝てるでしょ?何を言っているのかな?」


「そうじゃないの!どうすればいいのかしら?」

「叔母さんで納得するのが一番だよ。普通に考えて自分で産んだ卵を誰かに温めてもらうのはおかしいでしょ?ドラゴンに育児はないけど、ディーンは育児放棄しているのと一緒だよ。それを、忘れたら駄目だよ」


姉さんに正論を言われると腹が立つわね。

殺戮衝動が治まっても破壊衝動に取り憑かれているのに。


「今の私にできる事はないのかしら?」

「私よりも強くなる事だね。そうすれば、組手の相手はできるようになるよ。今のディーンだと娘たちと組手できないよ」


「破壊行為を禁止すれば組手できるわよ」

「ボコボコにされたいの?世界最強を相手にする意味を分かっていないね。全てがクリスタとは別次元だよ。身体強化を極めているのが最低条件。魔力路を限界まで鍛えているのも当然だね。魔力の移動速度も遅過ぎる。早いうちに私と対等の組手ができるまで鍛えておかないと手が付けられなくなる。私が相手していられるのも時間の問題だからね」


「情に訴えましょう。それなら、可能性がありそうじゃない?」

「本当に馬鹿な妹だよ…。情があるから叔母さんと呼ばれていると説明したじゃない。求め過ぎると、一緒にお風呂に入る事も寝る事も嫌がられるよ。一緒に暮らしたいなら今の距離感で我慢するべきだね」


「シャルばかり卑怯だわ。もっと苦労しなさいよ!」

「それは、ディーンに言いたいね。知識と経験が圧倒的に足りないよ。5000年以上生きてきて人間たちの城を焼いて回っていたのだからどうしようもないね。シャルより先に全てを行える時間があったのに何もしていない。ああ、世界樹を焼いたね。危うくフェニックスが覚醒して絶滅だったね。もっと頭を使いなさい。考えるのが癖になるまで考える。既存の技術に満足するのではなく新しい何かを見つける。そうした行動をしないとシャルには絶対に追い付けないよ」


「姉さんは新しい何かが見えているのかしら?」

「それを、一生懸命に探しているところだよ。ディーンは既存の技術を全て極める。訓練に余裕があるなら考えればいいよ。さて、訓練しようか!」


結局こうなるのよね…。

土地神りんご酒がないとやっていられないわよ!

完全に我儘です。

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