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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第1章 シェリル

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閑話 ユッタ 妖精について

な、何て言う事を授業でしているのでしょうか。

興味本位で参加しましたが私の知らない世界の話ですよ。


そもそも、長老様が知らない事を何故シャーロット様は知っているのでしょう。

厄災のドラゴンとの攻防で、確実に普通の真祖では無いと思っていますが、授業内容がおかしいです。


この世界の謎を解き明かしてしまいそうな勢いですよ。


ですが、魔法が当たり前のように使える事は不思議ではありません。

吸血鬼(魔人)とはそういう人たちですからね。


しかし、地下で産まれた魔人が地上に住む私よりはるかに知識量が多い。

とんでもない事ですよ。


シャーロット様はこの国を支配していないと言っていました。

この前、多くの住民が消えたのも街長や区長がお願いした結果です。


人間が人間を消して欲しいとお願いするのです。

本当に知らない世界の出来事みたいです。


今回の授業を多くの人に教えるのかも私たちの判断になっています。

要するに、勉強する為の切っ掛けを教えてあげている感じなのでしょう。


しかしですよ。

切っ掛けの内容が知らない知識で埋まっています。


そして思いました。

今まで妖精は魔法が使えない種族だと思っていました。


それは、私の勘違いの可能性が高い気がします。

今日の授業はそれを感じさせました。


使えたら籠に閉じ込められる訳が無いですから。

破壊して簡単に脱出します。


全ての種族は必ず無属性の魔力を持っているだなんて…。

魔法を使えないと思っていた私はそこから既に言葉も出ませんよ。


確認したいですね。


「長老様。今日の授業で無属性の魔力を魔石に入れていたみたいですが、どの程度の難易度ですか?」

「素晴らしい授業だったね。私も世界が変わりましたよ。無属性の魔力を操る難易度はかなり高いと思いますね。生物は自然に自分の魔力に属性を付けて体の外に出そうとします。それを、完全に思いのままにするのです。当たり前だと思っていた自分の常識を完全に否定する必要がありますね。ですが、私は多くの属性を持っています。納得しやすい内容だったのですよ。核が魔力の属性を決めていると言っていましたからね。体の中に様々な魔力が混ざって入っていると思うより、体のどこかで、魔力の属性を付与する核を作っていると考えた方が自然だった訳です。多属性の人は当然のように魔力を使い分けています。それを魔力ではなく核で行っていると意識するのが大変でした。しかし、できた時の充実感は素晴らしいですよ。まだまだ成長出来る訳ですからね」


あらら。

長老様はかなり興奮しているようです。

しかし、2000年以上生きている長老様が難しいと感じる難易度。

何故出来るのかより、何故知っているのか疑問に感じます。


「長老様。何故シャーロット様はあのような知識があるのだと思いますか?」

「私たちの見えない所で確実に自己鍛錬をしているのですよ。ご本人は鍛錬ではなく研究だと考えていると思いますけどね。何でもできる方が、それを当然だと考えずに出来る理由を考えて、私達に伝えてくれている訳です。素晴らしいではありませんか。普通上位者はできる事を当然だと考え、できない者を見下すものです。自分の場所まで引き上げようと考える事はありません。何故なら自分の地位が脅かされるからです。しかし、あの方はそうは考えていません。皆ができるようになればいい。そうすれば、世界は豊かに発展すると考えている訳ですね。当然危険も予測して伝えてくれています。恐らく、あの方が危険だと思うような行為をしようとしたら殺されるでしょう。私もそれでいいと思います。しかし、楽しい世界になりそうですよ」


想像以上に興奮しているようですね。

しかし、何でもできる人が、できない人にも分かるように教えてくれるのは凄い事です。


つまり、私の常識も壊して教えてくれる可能性が高い訳です。

これはいい機会かも知れません。


「妖精は魔法が使えない種族だと考えて誰も試していませんでした。その常識が間違っている可能性が高いと感じましたが長老様はどう思いますか?」

「君たちの体の中にも間違いなく無属性の魔力が入っているよ。最低でも身体強化は確実にできる事になる訳だね。では、魔法が使えないかどうかだけど、こればかりは試してみないと分からないね。シャーロット様なら妖精の事もある程度把握していると思いますよ。皆で聞きに行くといいかもしれませんね」


「分かりました。聞きに行く事にします」

「そうだね。君がそう思うのも授業のお陰な訳だから素晴らしいよね」


その通りですね。

女王の私が挑戦しなかったのが悪いのです。

他の娘たちに問題があるとは思いません。


私1人で聞きに行きましょう。

社までパタパタ飛んで行きます。


当たり前のように人とすれ違うのですが危険はないのです。

この状況が既に他国とは違うのですけどね。


社の扉を全て開けるのではなく隙間を作ります。

シャーロット様は中で座っています。

まあ、分かりますよね。


「お願いがあって来ました。率直に聞きます。妖精は魔法を使えると思いますか?」

「その質問に来ると思っていたよ。だから聞きたいけどユッタは気付いたら1人じゃなかった?」


私が来るのは予想通りですか。

それよりも、気になる質問ですね。


「その通りです。気付いたら1人で森にいました」

「じゃあ、私の予測通りかな?名前を付けたのハイエルフでしょ?」


「そうです。何か根拠があって分かるのでしょうか?」

「ユッタが最初の妖精か他の妖精女王からはぐれた妖精か分からないけど、ユッタは他の妖精の子たちと繋がっているでしょ?だって、普通人間に捕まったら殺されるかもしれないと考えるはず。でも、ユッタは揃った人数だけを気にしていたからね」


そんな事まで観察しているのですか?

何でもできる方がそんなに細かい事をしているだなんて。


「その通りです。私は全ての妖精を把握しています」

「じゃあ、人間に捕まりそうな時、他の妖精は全力でユッタを守ろうとしたんじゃないかな?そして、人間に捕まり始めてから妖精は産まれていないでしょ?」


正直怖いです。

何故そこまで把握出来るのでしょう。


「その通りです。私が女王だから守ってくれていると考えていました」

「うーん。いいのか悪いのか分からないけど、ユッタが魔法を使えないと思っていたお陰で、皆は生きている訳だね。これ以上私の話を聞くと、ユッタには考えないといけない問題が生まれるけど、どうする?」


ちょっと待って下さい。

魔法を使えないと思っていたのは自分の体を見ての事ですよ?


とても不安ですが私が魔法を使ってみたいと思ったのです。

この先も聞くべきでしょうね。


「教えて下さい。知る必要があると思いますので」

「まあ、私の予測だからね。授業で話した内容で瘴気で魔物が産まれているってあったよね。じゃあ、魔力で産まれている生物も地上にいると思わない?」


ま、まさか…。

それが、私達妖精だと?

この話の先が本当に怖いです。


「その可能性はあると思います。だって私は1人でしたし、他の妖精も気付いたらいましたから」

「ユッタが魔法を覚えようとすると他の妖精も覚えるよね?不思議だったんだ。授業を聞いている妖精たちが誰も身体強化をしようとしないから。でも、納得できたよ。ユッタが魔力が無いと思っていてその知識を継承して産まれていたんだね。ここまで言えば分かると思うけど他の妖精も確実に魔法は使えるよ。ユッタの魔力と自然の魔力が合わさって産まれている可能性が高いから。だから、言わないといけない事があるんだ。魔法を使いたいなら全員に名前を付けてあげないと駄目だよ」


名前を付ける。

皆が普通に行っている行為でも私たち妖精はしていませんね。

何故なら名前がなくても認識出来るからなのですが…。


「その理由も教えて頂けますか?」

「妖精はユッタの魔力と自然の魔力が合わさって産まれた魔力の結晶だと考えると、ユッタ以外の妖精は自分たちを個人として認識していない。女王に仕える妖精の一部だと考えている可能性が高い。魔力の結晶である妖精が、魔力がなくなるまで全力で魔法を使ったら消える可能性が高い。実際は、消えたのでは無く自然に還ったと考えるべきだろうね。でも、名前を付けてあげたら自然界から切り離す事ができると思うんだ。それが、いい事かどうか私には分からない。だから、女王のユッタが判断するべき問題だと思うんだ」


確かにあの娘たちは私の知識と性格を受け継いでいます。

個性的に見えて、実際は個人として認識していない。

妖精だとしか思っていない。


可能性はかなり高い気がします。

今後、私を逃がす為に全力で魔法を使って消える可能性もありますね。


名前を付けた場合は私と同じ位置に来る事になるのでは…。

いや、私の魔力と自然の魔力が合わさっているならそれはないか。


問題は個性的になるという事ですね。

この国で暮らすなら、仕事さえしてくれれば徹底した団体行動をしなくてもいい気がします。


「名前を付ける事にします。あと、何故全員が魔法を使えると思ったのですか?」

「先程の予測もそうだけど初めて妖精を見た時に思ったんだ。羽の色が使える魔力の属性を示しているのでは、とね。そう考えると、ユッタは全ての色が綺麗に入った羽をしているから全ての属性が使えると思った訳だよ。まあ、試してみれば分かるよ」


そう言ってシャーロット様は魔石を削りました。

それよりも、何でこれほど大きな魔石が当たり前のように社の中に置いてあるのでしょう。

まあ、気にするだけ無駄ですね。


そういう人ですから。


「さあ、この透明な魔石を持って」

「私の魔力を操作するのですね。お願いします」


体の中にある温かい液体が勝手に動いている様な感じですね。

魔石に真っ黒の火が点りました。


「やっぱり全属性だったね。もう1つの魔石は魔力を吸い取る魔法を入れておいたから使ってね」

「ありがとうございます。これから訓練します」


社からパタパタと飛んでりんごの木の近くにある机の上に座りました。

あの方はどこまで考えているのでしょうか?

不思議な方ですね。


まずは、安全な水の魔力を体から出す練習です。

せっかくですから授業の内容も意識しましょう。

体の中心から魔力を手に集める。


手から出る前に水属性の核を張り付けると…。

え?

一発で成功しちゃうのですか?


では、魔力の身体強化をしてみましょう。

体の中心にある魔力を全身に広く伸ばします。


ああ、体が温まるような感覚ですね。

そして飛んでみます。

パタパタ…、パタパター。


速過ぎます。

本当にとんでもない技術です。

こんな事を簡単に教えてしまうあの方は恐ろしいです。


「おや、もう身体強化まで使えるのかい。凄いね」

「はい。私も驚いています。今までの常識は思い込みだったようです。それに、私より妖精の事を知っていて怖いくらいですよ」


「いい事じゃないかな。長命種は誰かから何かを学べる事は少ない。特に年齢が高い程ね。だから、簡単に色々と学べる今の環境は素晴らしいと思った方がいいと思うよ」

「そうですね。しかも、自分たちだけでは疑問にも思わなかった事ばかりでしたから」


「そういう事だよ。やはり、隠れ住むだけでは成長に限界があるね。それを最近は痛感しているよ。ジェラルディーン様にも言われてしまったからね。人間ごときにハイエルフが捕まるなど情けないとね。その通りだよ。短命種に長命種が負けるという事は甘えている証拠だからね」

「規格外の2人が基準だと困りますがその通りですね。使える時間が多い訳ですから」


「そういう事だね。同じ時間を長く使えるのだから負けたら駄目なんだよ。だから、私はハイエルフを鍛える事にしたんだ。みんな弱過ぎるからね。今までは隠れていたから気にしていなかったけど、これからは駄目だと思うからね」

「そうですね。私も知識にある魔法を、まずは使えるように訓練します」


「簡単に身体強化まで使えるんだから、きっと魔法も簡単に使えるようになると思うよ。成長が目に見えて楽しくてたまらないと思うよ」

「本当にそうですね。身体強化で空を飛んだだけで爽快な気分でしたから」


ああ、大切な問題が残っていましたよ。

全員に名前を付けてあげないといけませんね。


今後お菓子の好みで魔法対戦をしない事だけを祈りましょう。

ユッタは頑張って名前を付けました。

妖精は魔力の扱いが得意です。

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