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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第5章 聖地シャーロット

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閑話 エルヴィーラ 補佐室(前半)

ヴィーネ様は本当にお優しいね…。

子供の命を最優先に考えておられる。


孤児院の卒業生が子供を殺す事にならなくて良かったよ。

マリアンネも方針の変更は良かったと思っているだろうね。


しかし、ディアナには不安を感じるよ…。


補佐室の秘書というものを正しく理解しているのかね?

前回の打ち合わせで最低限の助言はマリアンネがしていたようだけど、足りないねぇ。


余りにも知識がなさ過ぎる。

選別までに間に合うのだろうか?


ディアナが補佐室の秘書に就けたのはヴィーネ様の優しさのお陰だと聞いている。

それが何を意味しているのかも分かっていないようだ。


本当に今の子は…。


ヴィーネ様が新しい仕事を依頼された。

しかし、ディアナは秘書になってから一度も仕事していない。


今まで目の前の事で手一杯だったのは分かる。

でもね、それは補佐室の秘書として覚悟が足りなかったせいだとも言えるのさ。


甘い覚悟でヴィーネ様の情に訴えたようだね。

今のシャーロット様は特に厳しいよ…。


大丈夫なのかね?


今日はヴィーネ様が方針変更を伝えられた翌日だよ。

補佐室は新しく依頼が入ったからどのように動くか考えたかったようだね。


午後に改めて打ち合わせをする事になったのさ。

甘過ぎだね…。


ディアナが育っていれば当日に話し合いをすれば良かったはずさ。

マリアンネはかなり頑張って教育しているようだけど、そろそろ限界だろうね。


シャーロット様は見逃して下さらない気がするよ…。

既に見放していてヴィーネ様次第なのかもしれないね。


階段を上る足音が聞こえてきたよ。

2人が来たようだね。


ディアナに不安が見えない。

マリアンネと一緒に仕事する気だからだろうね。


「お疲れ様。補佐室としてどのように対応するのか決まったのかい?」

「はい。午前中に全種族へ話を聞きに回り、午後から面接が必要であれば対応する形にしていただきたいと思います」

「ほとんどの種族が午後から学校に通うからな。全種族を回るなら午前中が良いと判断したよ」


商人組合としては問題ないね。

午後からの方が楽なくらいだよ。


子供だけの場合はどの部屋に保護しておこうか…。

それに、卒業生のどちらかに対応してもらうしかないだろうね。


子供を利用しようとする国がないとも限らない。

どんな事態が起きるか分からないからね。


悪い気もするけど頼るしかないね。

他の従業員では手に余るよ…。


「分かったよ。それじゃあ、頼むから区長会議と同じ失敗をしないでおくれ」

「はい。こちらで対応可能なものは解決するつもりです」

「ああ、間違っても同じ失敗をするつもりはないよ」


マリアンネは昨日説明したのかね?

一応確認してみようか。


「ディアナ、対応できないものは何だい?」

「大規模な工事を瞬時に行うといったもの以外は全て対応可能だと考えています」


この程度の話はしているようだね。

でも、ここから先は無理だろう…。


「そうかい。じゃあ、誰に何を頼むのかはどうやって決める事にしたんだい?」

「基本的には私が主動で行う。ディアナにはこの国の把握を最優先してもらうつもりだ」

「すみません。私の秘書としての能力が足りていないのでマリアンネさんが主動なのです」


予想通りじゃないか…。

本当にそれでいいのかい?


「マリアンネ、ディアナに余り時間は残されていないと思うが考えているかい?」

「選別は今年の学校の卒業生が就職した後だと考えている。まだ1年程あると思うが違うか?」


それは、通常の職に就いている場合じゃないのかね?

補佐室がそこまで余裕があるとは思えないよ。


「本気かい?あんた達は補佐室だよ。何が切っ掛けで飛ばされるか理解しているんだろうね?」

「仕事を失敗しない限り大丈夫だと考えているが違うのか?」


分かってないねぇ。

街長の時の感覚が抜けていないようだ。


「マリアンネ、何を言ってるんだい。補佐室が仕事を失敗するはずがないだろう。お2人の補佐だ。あんた達に仕事が依頼できるのもお2人だけさ。どうすれば失敗できるんだい?ディアナはお2人の秘書であってマリアンネの秘書じゃないよ。ちゃんと理解しているかい?」

「エルヴィーラ、まさか今回の仕事はディアナが主動で行わなければ失敗だという事か?」

「どういう事ですか?補佐室として仕事を完遂すれば良いのではないのですか?」


ディアナは甘え過ぎだ。

補佐室は準備さえすれば楽な仕事ではあると思うけど優しくはないよ。


覚悟もなく知識もなく甘えるだけかい。

残念だけど厳しいねぇ…。


「その通りさ。当然マリアンネにも違う依頼があるかもしれないね。国の周りに集落ができつつあるのは知っているだろう?戦闘の可能性があるのであれば依頼相手はマリアンネさ。何で補佐室が全種族から話を聞くだけで2人も必要だと考えているのか不思議だね。秘書だけで十分じゃないか。違うかい?」

「そういう事か。まずいな…。本当に時間が無い。どうする?」

「私だけで全種族を回って話を聞いて問題を解決させていくのですか?何故そんな急に…」


おやおや…。


何を言ってるんだかね。

急でも何でもないじゃないか。


「全く急ではないよ。あんたは補佐室の秘書になる前に知っておかなければいけなかった事をまるで知らなかった。税理官として働いていたのだからもっと情報を知る事ができたはずだ。普段の会話からでもね。あんたが国を把握していないのをシャーロット様は知っているはずだよ。そして、シャーロット様は母親としてヴィーネ様を見守っている。これが、どういう事か分かるだろう?」

「ああ、ヴィーネ様の依頼を失敗すれば飛ばされるか殺される…」

「どうしてそんな…。秘儀の記憶を消されるだけではないのですか?」


記憶を消されるだって?

この子は本気で何を言ってるんだい。


これは間に合うかどうかの状態じゃないね。

ヴィーネ様次第だよ…。


「本当に何も考えずにヴィーネ様の情に訴えて秘書になったようだね。そんな事までしておいて秘書になったのにヴィーネ様を裏切って許されると思っているのかい?それに、補佐室を首になるような人間が残れる国じゃない。お2人を裏切ったのだからね」

「お前はヴィーネ様の優しさで秘書になったんだ。それを裏切るような真似はシャーロット様が絶対に許さない。時間の問題ではないんだ。シャーロット様がどのように考えておられるかでお前は終わる。ヴィーネ様は秘書に立候補したお前がここまで国を知らないとは思われていない。人を知る事と覚悟を持てば問題ないと考えておられるはずだ。しかし、シャーロット様は全てを知っておられる。今まで見逃してもらっているだけに過ぎないんだ。そして、ヴィーネ様が秘書の仕事を依頼された。ヴィーネ様からしてみれば時間は十分に与えたという事だ。そもそも、秘書に立候補したのに覚悟がなかったのが問題なんだ。ヴィーネ様だから訓練する時間を与えてもらえたと考えなければいけない。お前は訓練を頑張ったがシャーロット様からしてみれば甘過ぎるんだ。ヴィーネ様の優しさに縋り続けてしまっている。本気でまずい…。私では何もしてやれない。誰も何もできない状況だ」

「そんな…。うぅ…」


補佐室の人間が泣き崩れているようでは話にならないね。

最期まで足掻くくらいの気概が無いと駄目じゃないか…。


間違いなく選別で飛ばされていたね。

ヴィーネ様が国長でなければ既にここにはいないだろう。


補佐室の人間がこんな姿で泣いているのを見られたら終わりだよ。

最後まで足掻く為に訓練したんじゃないのかい?


訓練の意味も無かったように思えてしまうじゃないか。


「あんた、最後まで足掻こうとすら思わないのかい?泣いている暇があるならできることをやりな」

老獪なエルヴィーラには見破られましたね。

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