シャーロット 汚染
あの国は一体何がしたいんだ?
他国と戦争をしている訳でもないのに。
苦しんでいく人の流れを見ていると、恐らく川に毒を撒いている。
川下の人々を絶滅させようとしているのか?
何故そこまでする必要がある?
本気で理解できない…。
最近はそんな事ばかりだね。
苦しんでいる人々の中に楽しんでいる奴がいる…。
地獄を見せてやるから楽しみしていろ!
「ヴィーネ、緊急事態だよ。行こう!」
「そうなんだ。分かったよ」
転移魔法。
南西の大陸に移動した。
苦しんでいる人の数がどんどん増していくな。
井戸にも毒を入れているのか?
流石に水の汚染範囲は分からない…。
大陸の外に漏れているようなら大陸ごと消すしかない。
最善の策を取ろう。
大陸全土に念話する。
「水の精霊がいるなら姿を現しなさい。私が何とかするから毒の成分と汚染範囲を教えなさい」
「水の精霊がこの大陸にいるの?」
「多分いるよ。水が無ければ移動できないのかもしれないね」
水の魔石を足元に転がす。
この大陸の人が何人死のうと興味ない。
このままでは中央大陸まで汚染されるのが気に入らないだけだ。
それに、海底にいる人魚やセイレーンも危ないかもしれない。
精霊が出て来ないならこの大陸は消す!
魔石から20㎝くらいの人魚みたいな人が出てきた。
青い魚の尻尾に三又槍を持っている。
尻尾には鱗がないね。
「本当に何とかなるのですか?」
「君が私に毒の成分と汚染範囲を認識させる事ができるならだよ。できるの?」
「毒の成分は把握しています。汚染範囲も分かっています。あなたに情報を送ります。いいですか?」
「勿論いいよ。すぐに送りなさい」
水の精霊から毒の成分と汚染範囲が送られてきた。
余りにも酷い状況だ。
この大陸はほとんど毒で汚染されているじゃないか。
ここまで毒を撒き散らして何がしたいんだ?
名君のつもりか?
こんなにふざけた真似がよくできたな。
回復魔法で防げるか?
範囲回復魔法
大陸全体を治療した。
「どうなった?大陸全体を治療してみたが結果までは分からないから教えて欲しい?」
「はい、大丈夫です。毒は消えました」
毒の成分が複雑じゃなくて良かった。
過去に治療経験のある毒を改良したものだった。
改良じゃなくて改悪か…。
元になっているのは植物の毒。
山で簡単に手に入るし、間違って毒に冒される事もある。
時空魔法に水の魔石を回収する。
最後まで水の精霊を巻き込もう。
「毒を撒いた国に行くよ。転移魔法」
王の間に移動した。
馬鹿の話を聞く気にはならない。
不快になるだけだ。
もう面倒なんだよ…。
念力。
城内の人の動きを止めた。
「何を考えている?お前にも地獄を見せてやるよ」
馬鹿の記憶を覗く。
ふーん…。
やはり自分が賢いと思っているようだ。
簡単に他国を滅ぼせる最適な手段だと考えている。
愚かにも程がある。
召喚魔法。
念力。
「毒遊びをしていた奴は呼び寄せてやったぞ。国内にいる関係者も全てな」
召喚:毒蜘蛛。
全員を毒に冒せ。
「母さんらしい仕返しだね。毒には毒だよ」
「口だけは動かせるようにしてやる。合唱でもしていろ」
「当然の報いですね。川や井戸に毒を入れるなど極悪な所業です」
王が何か言っているな?
蟹みたいに泡を吹いているのが笑えるぞ!
「なんだ?今すぐ死にたいって言っているのか?」
「戦争で毒を使って何が悪い。私の何が悪いんだー!」
戦争がいつ始まっていたんだ?
後の事を何も考えずに毒を撒いただけだろ。
本物の馬鹿だな。
「私が毒を使って何が悪い。悪くないよな?お前と一緒の方法だ」
「母さんの言う通りだね。毒を使ったんだから毒に冒されても文句を言えないよ」
「ふ、ふ、ふざけるなー!お前のような理不尽な存在がいるから計画が狂うんだ」
「止まりなさい!」
「母さん…」
ヴィーネはすぐに殺そうとする…。
理不尽な存在はお前だよ。
飲み水に毒を入れるとか理不尽の権化だぞ。
自分の行いがどれほど残酷なのか気付いてもいないのか?
「お前には苦しみが足りないようだ」
呪術:最大。
呪術。
「さあ、何か言ってみろ?」
「ぎゃあー、うがぁー、うぎゃぁー、いだい、だのむごろじでぐでー・・・・」
おいおい…。
死にたくなるまで早過ぎるだろ。
根性が足りないぞ。
お前のせいで苦しんでいた人はもっと長時間耐えていたんだぞ?
お前はそのまま苦しみ続けて死ね!
周りも煩くなってきたな。
国中に響き渡る大合唱だ。
大陸中に念話する。
「川や井戸に毒を入れるような愚かな国には神国シャーロットの名において鉄槌を下した。中央大陸の大きな木が目印だ。私たちを不快にさせるような事は二度とするなよ」
念力解除。
「言葉になってないね。煩いし帰ろう。転移魔法」
境内に移動した。
「とりあえず連れてきたけど水の精霊に名前は無いの?」
「ええ。水の精霊です。今回は助かりました。それで、何故連れてこられたのですか?」
「私もそれが気になるけど…」
何が気になるのかな?
見付けたから連れてきただけだよ。
考え過ぎだよね。
「じゃあ、今日からウンディーネね。決定!人魚やセイレーンが住んでいるし、精霊も3人いるから君もここに住めばいいよ」
「もしかして勢いで連れてきたの?」
「ウンディーネですか。いい名前ですね。分かりました。人魚とセイレーンが住んでいて、精霊まで住んでいるのでしたらここに住みましょう。巨大な世界樹も見えますからね」
名前は気に入ってくれたね。
精霊は楽しんで生活してくれればいいよ。
「じゃあ、学校に通って楽しみながら強くなってね。転移魔法」
学校に移動した。
「クラウディア、少し出て来て」
「またですか?また授業妨害ですか?隣にいる小さな人魚みたいな子は誰ですか?」
「またクリスタの授業中なんだ。毎回大変だね…。お疲れ様ー」
ヴィーネとクリスタは仲が良いよね。
いつも意気投合しているよ…。
私を除け者にしてね。
「何が御用でしょうか、シャーロット様。まさか…、水の精霊様ですか?」
「あー!シャーロットがまたやらかしているよ。精霊の雰囲気がしたから覗いたらこれだよ。精霊の聖地にするつもりかな?」
「流石シャーロットですね。私の友達に不可能はありません」
「おいおい。どうやって水の精霊見付けんだよ。無茶苦茶じゃねーか!」
「連れてきちゃったね。まあ、予想通りだけどさ」
フェニックスから精霊たちまでグチグチ煩いよ!
大騒ぎする事じゃないからね。
「この子はウンディーネ。水の精霊だからクラウディアが面倒見てあげて。学校にも通うからよろしく」
「あの子は人魚ですね。よろしくお願いします」
「ウンディーネ様。私にお任せ下さい!」
「やっぱり無茶苦茶だよ…」
ヴィーネが最後に酷い事を言ったよ。
素晴らしい国になってきたじゃない。
海底の結界を変更してウンディーネも出入りできるようにしないとね。
ついでだからシィーナ姉ちゃんも通れるようにしておこう。
3重結界。
「海底に行くからね。明日からよろしく。またねー。転移魔法」
海底の砂浜に移動した。
「なんですかここは?意味が分かりません。何故海底に砂浜があるのですか?」
「私と母さんが一緒に作ったんだよ。セイレーンと人魚の為にね」
「ユリウス。紹介したい人がいるから出て来て」
少しして洞窟からユリウスがユーリアを抱いて出てきた。
何度見ても可愛いねー。
「誰でしょうか?まさか!」
「この子はウンディーネ。水の精霊だよ。今日からここに住むからよろしくね」
「私はここに住むのですか?住み心地は良さそうですからいいですけどね」
「何でそんなに柔軟な対応をするのかな?精霊はおかしいよ」
環境がいいからに決まっているじゃない。
ここよりいい環境が無いから移住を決めるんだよ。
「洞窟に住む?好きなように海底に住む?新しい家を作る?」
「適当に泳いだりしていますから大丈夫ですよ」
「ユリウスも気に掛けてあげてね。楽しい毎日を送ってよ。またねー。転移魔法」
社に移動した。
念話。
「今日から水の精霊のウンディーネが国民になったよ。明日から学校に通うから皆仲良くしてね。またねー」
「母さん、何で水の精霊があの大陸にいると思ったの?」
「私の予想では各大陸に火、水、風、土の属性の精霊がいて、精霊に属した種族が住んでいるんだよ。あの大陸には魚人の城があったし、人魚やセイレーンの住処の近くでしょ?だから、水の精霊が住んでいると思ったんだよ」
大陸を消し飛ばす事にならなくて良かったよ。
あの地にも不幸な人は大勢いるからね。
「なるほどね。それはいつ頃から予想していたの?」
「えっとね…。最初の国防軍のテスト前くらいからだよ」
「物凄い前じゃない。何でそんな事を考えているの?意味が分からないよ」
「様々な種族に会いに行ったでしょ?その時に精霊も関係していると思っただけだよ」
「何でそんなに考えているの…。予想は外さないしどうなっているのか分からないよ」
「偶々だよ。気にしたら駄目だからね。予想は予想でしかないのだから。今回は緊急事態だったから、水の精霊がいなければ大陸ごと消し飛ばす必要があったよ」
本当に偶々当たっているだけだよ。
ヴィーネは私の事を凄いと思い過ぎだね。
優しい母でいたいだけ…。
全てヴィーネの為に行動しているのだから。
「毒を水に流すなんて最低な行為だよ。自分の首を絞めていると気付かないんだね」
「自分の代は大丈夫かもしれないけど、世代が代わるごとに汚染されていくだろうね。長い間、人が住める土地ではなくなるよ。本当に愚かだね」
余りにも馬鹿な計画…。
水が腐り、植物が腐り、動物が死に、人も死ぬ。
簡単に分かりそうなものなんだけどね。
「もう寝ようよ。今日は十分働いたでしょ?」
「そうだね。十分働いたから寝ようか」
私が布団を敷いてヴィーネが入ったら隣に入る。
そして、ヴィーネを抱きしめる。
「じゃあ、おやすみー」
「うん、おやすみー」
ヴィーネの元にまで毒が届いていたらもっと地獄を味合わせていたよ。
人間と獣人がふざけた行為を続けるなら、その代償を身を持って知るといい。
シャルが本当に知りたかったのは毒の汚染範囲だけです。
治療できる毒だったから良かったですね。




