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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第4章 神国シャーロット

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ジェラルヴィーネ 私の想い

何をしたいのか自由に考えるように気を付けている。

それなのに、人を助ける事ばかりを考えてしまうのは何故だろう?


今まで世界中の不幸な人を見続けてきた影響なのだろうか?

それとも、本当に不幸な人を助けたいと思っているのだろうか?


感情の出所が分からないよ…。


母さんが隣で行動してくれるようになってから、何も問題が起きていない。

全てが上手く進んでいるように見える。


何が違うのだろうか?

どこを直せばいいのだろうか?


人を助ける事が大変な事はよく分かっている。

それでも、人を助ける母さんを見たいと思っている。


物凄い我儘だよ…。


結局まだ自分が何をしたいのか見付けられていない。

大好きな母さんの真似がしたいだけなのかもしれない。


母さんは凄いから…。


母さんとゴロゴロできる国を作る。

世界中にこの国の名を知らしめる。


私の最初の目標は人助けと関係が無かったはずだよ。

それなのに、何故まだ人を助けたいと思うのだろうか?


助かった人の笑顔が好きなのかな?

助かった人が母さんに見せる笑顔が好きなのは間違いない。


でも、笑顔になるのかどうかは相手次第だよ。

それに、孤児院に負担を掛けないようにしなければいけない。


どうすればいいのかな?

もう命令はしたくないし孤児院の卒業生を縛りたくはない。


そうすると、不幸な種族を救うのが一番なんだよ。

孤児院に負担は掛からないし、移住してもらうだけで生活する事ができるから。


そんな種族が簡単に見つかる訳が無いけど…。

私はずっと世界を見ていたけど、感情把握と魔力探知で種族までは分からない。


母さんなら分かるのかな?


頭の中が凄いごちゃごちゃしている。


整理すると…。

母さんが誰かを助けるのを見たい。

母さんが誰かを笑顔にするのを見たい。


私は何もしていないけど赤ちゃんだからいいのかな?

母さんの隣にいれば考えて行動した事になるのかな?


「ヴィーネ、混乱しているみたいだよ?どうしたの?」

「うーん…。私のしたい事を考えているのに、母さんにして欲しい事に変わっちゃうんだよ」


「ヴィーネが考えて私にして欲しい事があるなら言ってみて」

「母さんは不幸な種族を助けに行く事ができる?」


「ヴィーネは不幸な種族を助けたいの?」

「母さんの真似がしたいだけなのかもしれない。でも、母さんが誰かを笑顔にするのが好きだよ。それだけは間違いないと思う」


「私の真似がしたいんだ…。不幸な種族かどうかは分からないけど行ってみようか。転移魔法(テレポート)


ダークエルフが住んでいた場所の近くだ。


荒野の大きな岩にくりぬかれたような部分がある。

魔獣は入れない大きさだね。


私たちも入れない大きさだよ。

妖精と同じくらいの大きさにならないと入れないね。


「母さん、この中にいる人たちがそうなの?」

「そうだよ。この前ヴィーネが助けたヨルムンガンドでここを思い付いたんだ」


「岩の中にいて動けないって事?」

「そうじゃなくて、本来この場所には世界樹があり森だったはずでしょ?ここにいる人たちも今とは違った生活をしていたんじゃないかな、と思ってね」


感情把握と魔力探知で何故そこまで思い付くのかな?

妖精だと目星を付けていて、役割があったと考えているのかな?


母さんの考えている事は難しいよ…。

でも、それを私も考えられるようにならないと駄目なんだよね。


「そんなに考えなくても中に入ってみれば分かるよ。時空魔法(ミニマム)


私と母さんが30㎝くらいの大きさになって岩の中を歩いて行く。

奥に進むと30㎝くらいのお婆ちゃん達が糸を紡いでいた。


大きさから妖精だと思うけど全員お婆ちゃんだよ。

全員が綺麗な白髪で2枚の翅がある。


エルヴィーラを小さくしたみたい。

世界は不思議だよ。


脇目も振らずに糸紡ぎをしている。

ここで糸紡ぎをしても売る相手がいないよ?


それで、母さんはここに来たのかな?

仕事をしている妖精がいるなんてどうして分かったの?


母さんが不思議だよ!


「やあ、族長は誰かな。話をしたいんだけど、いいかな?」


母さんが話し掛けたら1人のお婆ちゃんがこちらを向いた。


「なんだい?今忙しいのが見て分からないのかい?」

「忙しそうなのは分かるけど、誰の為に糸を紡いでいるのかな?」


母さんの質問に皆が手を止めて一斉に顔をこちらに向けた。


「誰の為にと言われると難しいね。私たちにはこれだけしかできないからしているだけさ。糸を紡ぐ妖精なのだから仕方ないだろう?」

「私たちの国に来たらその糸を買ってあげるよ。お金で美味しい食べ物が買えたりするけど、どうかな?」

「絶対に来た方がいいよ!ここで糸を紡いでいるだけなんて勿体ないよ」


世界樹があった頃はエルフたちがこの妖精の糸を使っていたのかな?

それとも、他の妖精たちがこの糸を使っていたのかな?


どちらにしろ、誰かが使っていたはずだよ。

荒野に取り残されているなんて可哀相だよ!


「私たちの糸が誰かの役に立つのかい?その方が糸を紡ぐ意味もあるね。皆、移住しようか」

「族長が決めたのなら私たちは付いて行きます」

「「その通りです」」


「私はシャーロットで、娘のジェラルヴィーネ、愛称ヴィーネだよ。君の名前は?」

「名前は無いよ。ハベトロットと呼ばれていたね。ここにいる10人を受け入れてくれるのかい?」

「問題ないよ。すぐに家だってなんだって用意するから」


「じゃあ、行こうか。転移魔法(テレポート)


チャドの店に移動した。

気付いていないね。


「私たちは元の大きさに戻ろう。時空魔法(マキシマム)


ハベロットは飛んでお店の机に全員が乗った。

お婆ちゃんだから飛び続けるのも疲れるのかな?


「やあ、チャド。ハベトロットの糸を買ってよ。服屋の方か良かったかな?」

「んー?ハベトロット?おい、まじかよ…。その糸で縫った服を着ると病が治ると言われているんだぜ。どうやって見付けたんだよ…。土地神様はマジで恐ろしいぜ。母さん、値段は頼んだ!」

「任せて!勿論私たちが買い取るわ。食べ物に困らなくて好きな服も買える値段にするから」


「良かったね。族長が糸を売りに来て」

「ああ、買い取ってくれるなら売りにくるさ」

「母さん、家は近くに用意した方が良くないかな?」

「そうだね。ここの裏に作ろう。またねー。転移魔法(テレポート)


「ヴィーネ。最高の家をお願いね」

「分かったよ。仕事ができてお風呂にも毎日入れるように作るからね」


設計図は頭の中に既にあるから、後はお決まりの言葉を言うだけなんだけど。

皆が見ている前で言うのは恥ずかしいね。


特に母さんの前では…。


「私の思った通りの家になーれ!」

「あれあれー?私の真似をするようになったのかな?素直になってきたね!」


絶対に言われると思ったよ。

だから隠していたのに…。


「効率重視だよ。ハベトロットにいい環境をすぐに用意してあげたかったからね」

「そうなんだ。効率がいいんだ。ヴィーネも分かってきたようだね」


むぅ…。

反論できない!


「ハベトロットの皆は中に入ってよ。お風呂はいつでも入れるようにしたから一度入ってみて」

「お風呂とは何だい?」

「温かいお水に浸かる事だよ。気持ちいいよ」


家は手前が作業場になっていて、奥の扉を開けるとお風呂にいつでも入れるようにした。

作業場の道具などは使っていたものを移動させた。

お風呂は小さくてもいいから孤児院と一緒の作り。


「お風呂から入ってみてよ。体を拭く布も用意してあるからさ」

「そうかい?じゃあ、入ってみようかね。お風呂に入るよ」

「分かりました。族長」

「「分かりました」」


今のところ全種族がお風呂好きなんだよね。

お婆ちゃんの妖精だから絶対に好きだよ。


「あぁ、これはいいね。最高じゃないか。外に出てみるものだね。不思議な事があるもんだ」

「母さん、土地神りんご買ってきてよ」

「もう、母遣いが荒い娘だよ。転移魔法(テレポート)


お金の使い道も分からないに違いない。

美味しい食べ物があると知ってもらわないとね。


「ただいまー。はい、10個買ってきたよ。ハベトロットの皆、これを食べてみてよ」

「何かを食べるのは初めてだね。不思議な食べ物なのだろう?せっかくだからいただくよ。シャク、シャク、シャク。こ、これが買えるようになるのかい?」

「もっと美味しい食べ物もあるからお金を稼いで色々と買い物をするといいよ」

「族長!美味し過ぎますよ。早く糸を紡いで売りに行きましょう」

「「その通りです!」」


お婆ちゃん達がやる気になったよ!

土地神りんごは凄いね。


「ゆっくりお風呂に入った後でいいよ。私はこっちも好きなのさ。買い物に行きたいならあんた達だけで糸を紡げばいいじゃないか」

「そうですね。お風呂に入った後でいいですね」

「ゆっくりしましょう。来たばかりですからね」


やはりお婆ちゃんだね。

ゆっくりしてくれればいいよ。


「今日エルダードワーフのお店の裏にハベトロットが移住したよ。糸紡ぎが得意な妖精だよ。みんな仲良くしてね。またねー」


母さんの念話(テレパシー)だ。


「母さん、学校はいいの?」

「この妖精たちは糸を紡ぐ職人だよ。学校に行きたいと言われたら勿論賛成だけど、こちらから強要はしないよ」


確かに学校に通う雰囲気はないね…。

糸を紡いで売って楽しく生活しそうだよ。


「ここで楽しく生活してね。色々とあるから分からない事があったら北にある社に来て」

「社には私と母さんが住んでいるよ。またねー。転移魔法(テレポート)


社に移動した。


「母さんはあそこに妖精がいると思ったの?」

「荒野に10人。とても暮らせる人数ではないし、食事をしている雰囲気も無かったからね。妖精だと思ったんだよ」


やはり妖精だと先に気付いていたんだ。

私では見逃してしまう妖精たち。


凄過ぎだよ。


ハベロットは自分たちを不幸だと思っていない。

目的が無くても糸を紡ぐ事だけを平然としていた。


糸を紡いだ後に何も無いのは寂しいよ…。

お風呂も土地神りんごも皆が喜んでいたね。


母さんが連れてくると皆が笑顔になる。

私はそれがとても嬉しい!


「母さん、寝ようよ!」

「そうだね。寝ようか」


布団を敷いてくれたらすぐに入る。

抱きしめてくれるようになってから、本当に気持ちよく眠れる。


「じゃあ、おやすみー」

「うん、おやすみー」


眠る前に幸せを感じるんだ。


私は母さんの一番大切な娘だよ。

星よりも世界よりも私が一番だからね!

世界中に叫びたいヴィーネちゃん!

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