閑話 クリスタ 教員室
私がシクシク嘘泣きをしている時に事は起こりました。
「いやー、いい授業だったよ。じゃあねー」
シャーロット様が去りました。
「それでは、私も森に帰ります。試したい事でいっぱいですので」
ハイエルフの長老が去りました。
「私は考える必要があるみたいです。お先に失礼します」
妖精女王が去りました。
「では、先に研究準備をしておきます」
研究員達が去りました。
この最悪な状況。
完全に逃げ遅れています。
全然成長していないじゃない。
ウソ泣きしている場合じゃなかったよ。
見通しが甘過ぎた。
これは、本気の対策が必要だ。
「さて、クリスタ先生の意見を聞かせてくれないかな?」
マリアンネさんが脅迫して来ます。
「正直に言いますけど、無属性の魔力操作を長老が難しいと感じたのは2000年以上も普通に魔法を使っていたからだと思います。子供に教えたらすぐに覚えてしまうと思いますよ」
「なるほど。魔法を使った事がない子供たちならそれを当然だと考える。使い分けも簡単に出来るようになるという事か。やはり、討伐隊の件がかなり響いているな。身体強化の訓練を真面目にすれば、今日の話の大半は気付ける可能性があるのだろう?ダミアンはそう考えたんじゃないか?」
「間違いなく気付く問題が多い。まず、体の魔力が全員同じ色に見えた時点で疑うべき話だよ。最初に見たのは誰かな?」
それもそうだ。
魔力を見る方法は既に教えてもらっていた。
ダミアンさんは世界が魔力で満ちているように見えたんだ。
あのバカ。
「フリッツだ。皆の魔力が見えますで話が終わっている。つまり、討伐隊が壊滅した事をかなり重大な問題だと考えている。何故今の人間はこんなに成長しないのか不思議なのだろう。今日の授業も本当なら予定外だったかもしれないな」
「懇切丁寧に教えて誰も努力しなけりゃ、俺だったらキレてるぜ。それを気にせず教えてくれたんだ。流石に同じ失態はありえねーな」
「国防隊は努力している。その点は大丈夫だが発展させようと思うと難しい。結局人数が足りない。国全体を守ろうと思うと身体強化を会得していても倍は欲しいな。逆に言うと、討伐隊は国を守れるだけの戦力があった訳だがな」
本当にそうだよ。
身体強化を教えてもらって他国の人間に負ける
情けなさ過ぎるよ。
見放されなかったのが奇跡だと思うもん。
「ダミアン、上下水道はやはりかなり変わるか?」
「はっきり言ってこの国で、家で水を飲めない、お風呂に入れない、トイレを下水道に繋げないという状況のほとんどを解決できるね。研究すれば時間になったら街の街路を明るくするようにもできる、音が鳴るようにもできるだろう。もう、この国だけ他国と桁違いに発展する事になる。現時点で差がついているんだ。その差がさらに広がるよ。早く帰って研究したいんだけど…」
「それよりも、商品輸送用の結界の魔石が欲しいね。安全度が段違いだよ。いや、そのうち商品輸送を考える必要も無くなる可能性があるね。この国だけで全てを完結する未来が来そうだよ」
既に完結しつつありますからね。
シャーロット様が他種族をさらに呼んだら完結ですね。
外に出るのは気晴らしの旅行ですよ。
「クリスタはどこまで子供たちに教えるつもりでいるんだ?」
「身体強化は教えていますからね。無属性魔力を操作しているという事と、魔法使いは無属性魔力を体の外に出す事が出来る事は教えます。あと、身体強化で魔力を頭に集中させれば皆の魔力が見えるようになる事も教えます。魔石については教えるのが難しいですね。どうしても、魔法を使う必要が出ますから」
「魔石の知識は研究に属する人たちだけでいいと思うよ。今の人たちでは扱いきれないと思うからね。子供の悪戯で使われたら危険過ぎるよ」
ダミアンさんの言った通りだね。
軽い悪戯が好きな子は当然いるから。
魔石でやられたら死人が出かねない。
「子供でも大人でも一緒だな。魔石を使った悪戯はただの凶器だ。街の発展を研究する人たちだけにしよう。今は自由に好きな研究をしている人たちに研究する場所を用意するか。その方が守りやすいし秘密も漏れにくいだろう」
「それはいい案だね。病院の地下に研究所でも作ってもらおうか?街の発展の為だからお願い出来る内容だと思うよ。魔石を使えば地下でも普通に生活出来てしまうから、帰宅しない人たちが出るかもしれないけどね」
完全に研究馬鹿な発言ですよ。
帰宅しないのが前提なの?
こういう人たちが研究者と呼ばれるのかな?
「ダミアンの仕事場所だから上下水道の設計と一緒に設計図を書いてくれ」
「勿論さ。夢の研究生活だよ。誰にも邪魔されない空間だ。最高じゃないか」
「おい、閉じ込めれるような設計するなよ。帰宅したい人を捕まえんじゃねーぞ」
「可哀想に。まあ同じ様な人種なんだろう。たぶん、喜んで地下に潜るんだろうね」
ところで、私は帰っていいのかな?
区長会議に変わっているよね?
孤児院でお風呂に入りたいよー。
足を伸ばして熱めで入りたい。
もう、私は疲れたの…。
ああ、全てがウソ泣きから始まっているんだ。
何てつまらない事をしてしまったんだ。
本当だったら真っ先に教室から出たのに。
「ああ、聞き忘れていたよ。何で1階に3部屋あって2階建てになったのかな?」
「えっと、未来を考えまして…。教員が休める場所もあったほうがいいかなと。そして、同時に2つの授業が行える方が便利かなと。さらに、2階は色々な事に使えば便利じゃないかなと。軽い気持ちで提案しました」
ついにこの話が来た。
本当に軽い気持ちだったのに。
ここまで大きくなるなんて思ってませんよー。
病院と同じくらいの大きさになってるもん。
シャーロット様を知っているのに何で適当にお願いしたのよ。
バカ!
大バカー!
「そういう事か。朝から授業して昼も授業して夜も授業したいと。ライトの魔石まで付いているもんな。当然、そのつもりだったんだろ?」
「違いますー。私が間違えましたー。許して下さい。ごめんなさい!」
マリアンネさんの表情を伺う。
これで大丈夫かな?
1回の授業でも結構疲れるのに朝と昼に授業になったら大変だよ。
夜まで授業は本当に無理。
絶対に無理だから。
「どうせなら、食事を作る場所を用意してもらえば良かったじゃないか。子供たちもお前も帰る必要がなくなるぞ?お願いしておくか?」
「無理ですー。もう、本当に無理ですー。絶対に実現しちゃいますから。シャーロット様は子供の教育に本気ですから、これ以上私を酷使しないで下さい」
「まあ、実現するだろう。本気だからな。子供たちを教育する意味をお前なら理解しただろ?消えた人間はこの街で教育されてない人間だよ。知識の差もあるし意識の差もある。教育には計り知れないほどの価値がある。その場所をここまで改造するほど意見するとはね。なかなかやるじゃないか」
「勿論理解していますよ。子供たちは真剣に学びますからね。成長も早いし飲み込みも早い。貴族だけ学ばせている他国は馬鹿だと思いますよ。国の発展に差があるのも納得です。教師になったら確実に理解できますからね」
もう帰してよー。
区長たちも何で黙って聞いているの?
まるで尋問だよ?
誰かマリアンネさんを止めてー。
「さらに、孤児院も任されている。シャーロット様の大切な場所を任されている君に聞きたいんだ。教員室は何をする所だろうか?」
「他の教師たちと意見交換をしたり、授業の準備を学校でしたりする為です」
「ふーん、お前の授業の内容は他の教師に話せないよな?何でそんな考えが浮かぶんだ?是非とも根拠を街長に聞かせてくれ。お前が街長になれば私は国長だな。シャーロット様に信頼されているんだ。住民からの不満は出ないぞ?」
「言ってみただけです。何となく言ってみたんです。そしたら一瞬で出来ちゃいました。もう許して下さい!」
「そうか。冒険者時代を思い出すとな、どうしても疑ってしまうんだ。分かるだろ?」
「私は成長しました。あの頃のような人間ではありません。人は成長するんです」
逃げらない。
これは、確実にバレている。
完全に調子に乗った私の失敗だ。
学校で昼寝したいから教員室を作ってもらいましたなんて言えない。
完全にバレています。
最後は怒られて終了です。
冒険者時代から変わらない2人のやりとりです。




