閑話 サラマンダー 精霊女王と精霊
エルダードワーフも中中に面白い種族だね。
一緒に暮らしていけそうだよ。
土地神リンゴはとても美味しかったよ。
魔力を回復する食べ物を作り出せるのはおかしいよね。
吸血鬼の真祖なら誰でもあんな事ができるのかな?
うーん…、絶対にできないよね。
さて、約束通り話しに行こう!
ペタペタと歩いてドリュアスの元まで行く。
ドリュアスのお店に火は見当たらないからね。
今度魔石でも置いてもらおうかな。
世界樹が燃えない場所にね!
ペタペタ、ペタペタ。
・・・・。
やっと着いたよ…。
「ドリュアス、話しに来たよ」
世界樹の中からドリュアスが顔を出した。
「待ってたよ!何から話そうか?楽しみだったんだよ」
「巨大な世界樹はどうしたの?ここにはいっぱい世界樹が植えてあるのがとても気になるよ」
世界樹は世界に1本だけのはず…。
多過ぎるのも変だし1本は余りにも巨大過ぎるよ。
「植えたのはヴィーネだよ。妖精とハーピィは世界樹が好きみたいなんだ。だから、植えてあげたんだって。巨大な世界樹はヴィーネが植えた世界樹をシャーロットが育てたんだよ。1日で育てちゃったからね。流石規格外だよ!」
ドリュアスは世界樹の精霊だよね…。
自分で植えた世界樹が1本も無いのは変だよ?
「もしかして、ドリュアスは世界樹を植える力を持っていないの?」
「そうだよー。私は育てる事ができるだけ。流石にあそこまで育てようと思うと1万年以上は掛かりそうだけどね」
精霊女王は世界樹の精霊に植える力を与えていないんだ。
世界を守る気があるとは思えないね…。
ヴィーネは植える事ができる。
シャーロットは育てる事ができる。
うーん…。
意味不明だよ。
「ドリュアスは星に寿命があるのは知っているよね?」
「知ってるよー。でも、あの世界樹があるから世界の崩壊は止まったよ」
星の寿命を知っているのに世界樹で崩壊を防げると思っている。
精霊が世界樹で世界の崩壊を防げると思うのなら、それが世界の理だよ。
シャーロットが疑う理由がよく分かるね…。
ドリュアスが世界は崩壊しないと言っているのだから。
「僕の知識だとね、世界樹で世界崩壊の時間を遅らせる事はできるけど止められないんだよ。おかしいよね?」
「それはおかしいね。精霊が世界の理を間違える事なんてあり得ないでしょ?あー、あるよ。私は学校で勉強しているからね。以前より賢くなったのさ!つまり、君は私より後に生まれたんだよ。私が生まれた時は世界樹で崩壊が防げたけど、君が生まれた時には防げなくなったのだとすれば辻褄が合うよ」
精霊は生まれた時に世界の理と役目を知り、精霊女王から使命を受けるからそれがあり得るのか…。
ドリュアスは世界最古の精霊だと思うからね。
星には世界樹が一番最初に必要だから。
「ドリュアスは精霊女王を信じている?シャーロットの推測を聞いたら疑問が湧いてね。星の寿命を縮めているのは精霊女王だって言うんだよ。シャーロットは殺す可能性も示唆している。どう思う?」
「星を滅ぼす力がある人はいるけど、寿命を縮められる人は精霊女王しかいないと思うよ。シャーロットは何で殺すって言ったの?」
星を滅ぼす力がある人がいるのはおかしいよ。
この世界は無茶苦茶だよ!
「フェニックスは物凄く拷問されていたんだよ。僕はそれを観察して蘇ったフェニックスに記憶を入れる使命があるんだ。それを聞いたら怒ってね。精霊女王は世界を崩壊させる為に世界樹を植えなかった。フェニックスに世界の崩壊を望ませる為に記憶を入れさせている。精霊女王は自分の目的の為だけに命を弄び星を滅ぼしているって言ったんだよ。精霊女王の目的は新しい生命を生み出す時に望んだ生命が生まれる事だと推測していた。その目的の生命が生まれるまで星を滅ぼし続けるってね」
「なるほど。それは、シャーロットなら大激怒だね。君も殺されそうになってない?フェニックスは精霊女王の為だけに世界を恨むように仕向けられている。シャーロットの推測通りで、死ぬ度に新しく蘇るフェニックスは世界を絶対に恨まないでしょ?だから、君にそんな能力を与えて使命として押し付けたんだと思うよ。精霊女王を殺せばフェニックスは不死じゃなくなるか聞かれた?フェニックスを自由にする為だったらシャーロットは精霊女王を必ず殺すよ。フェニックスは精霊女王の目的の為に拷問の記憶を残され続け、精霊女王の為に自殺しなければならないからね。そして、その時に記憶を消される。そんなのは理不尽だよ」
「殺されそうになったよ!大陸全ての生物を殺すと脅してから、僕の事を火の精霊だと当てて、見ていると当てられて、移動手段まで当てられたからね。用意された火魔法の魔石に移動するしかなかった。シャーロットは精霊の使命は精霊女王から命令されて拒否権が無い事を分かっている気がする。だから、正直に話したら殺意が精霊女王に向いたんだよ。フェニックスについて、僕は何も知らないから答えられなかった。やっぱり殺しそうだよね?ドリュアスはかなり自由な考え方をしているね。僕は星と共に死ぬ運命にあると定められているけど、ドリュアスは違うの?」
「私も星と共に死ぬ運命だと定められているよ。まあ、無視だよ無視!あんな女の言う事なんて聞く必要ないと思ったもん。私は5000年以上も世界樹の無い砂漠に1人ぼっちだよ…。あり得ないでしょ?世界樹を植えられないし、誰も私の姿を見る事はできないし、最悪な思い出だよ。でも、この国なら誰でも私の姿を見る事ができるし楽しい事がいっぱいだよ。美味しい食べ物もたくさんあるからね。シャーロットやヴィーネが寿命で死ぬなら私も星と共に死んでもいいけど、死なないなら付いて行くよ。あの2人は宇宙でも死なないからね。毎日が楽しいよ!」
シャーロットの言った通り精霊は核さえ無事なら死なない。
ドリュアスは精霊女王の命令を無視してもいいと考えている。
つまり、精霊女王からの使命は世界の理とは違うね。
精霊が無視できるのだから。
世界と共に死ねというのは邪魔だという事だよね?
拷問されている記憶をフェニックスに入れ続けるのは嫌だったんだよ。
もうその必要は無さそうだけど、その使命は無視できたんだ…。
世界と共に死ぬ必要も無いね。
命を弄び精霊を使い捨てにしているのは間違いない。
自分の目的の為に星の寿命を削っているのも間違いないと思う。
世界の理を壊そうとしているのは精霊女王しかいないね。
世界の崩壊を望んでいるのだから…。
ドリュアスみたいに勉強したり遊んだりした場合、フェニックスは精霊女王の言う事を聞くのかな?
努力して話せるようになった記憶は消されたくはないはずだから。
この国で楽しく遊んだ思い出も消されたくはないに決まっているよ。
その場合、星の寿命が来る前に精霊女王を殺すしかないね。
「シャーロットが不意にフェニックスに精霊女王を生み出せるか聞いたでしょ?あれって答えを予想していたと思うんだ。それで、予想通りにフェニックスは答えた。何でもできそうって。恐らくフェニックスが精霊女王を生み出したんだよ。そして、精霊女王に利用されていると確信したと思う。もしかしたら、宇宙で最上位の存在がフェニックスなんじゃないのかな?精霊女王が星のエネルギーを吸収して寿命を縮めていると考えれば、世界樹で世界崩壊を防げないとサラマンダーが考えているのも分かるからね。でも、それはシャーロットとヴィーネが存在しない時に知った世界の理でしょ?今の世界樹があれば精霊女王が世界の寿命を削るのは相当厳しいよ。だって、世界樹にはエネルギーが余っているからね。星にエネルギーが満たされている証拠だよ」
確かにフェニックスの答えを聞いた時は驚いたね。
質問をしたシャーロットにも驚いたけど、何でもできそうだと答えたから。
力に目覚めたら精霊女王を生み出す力を得る可能性があるよ。
そして、ドリュアスが世界樹にエネルギーが余っていると言っている。
星に渡すエネルギーが余っている証拠で間違いない。
精霊女王が寿命を削ろうとしても、それ以上にエネルギーが補給されてしまう。
シャーロットとヴィーネがここにいるからエネルギーが過剰にあるんだ。
「僕が生まれた後に巨大な世界樹が植えられて、シャーロットとヴィーネがいるから世界樹のエネルギーは常に余っているんだね。世界の理を2人の存在が変えた可能性が高いね。僕が生まれた後の話だから知らなかったと考えると問題ないからね。余ったエネルギーはどうしているの?」
「世界には魔力が満たされているし世界樹を成長させる必要が無くなったからね。成長に魔力を使わないのであれば全て星に渡すエネルギーに変換できる。余ったエネルギーはこの国に私が流しているよ。この国の国民は長寿になるね。凄いでしょ?」
とんでもない事をしているよ!
世界樹のエネルギーを国に流していいの?
この国に来ると誰でも無茶苦茶になるの?
「ドリュアスも無茶苦茶しているね。星に渡すエネルギーを国に流しちゃうんだ。世界に平等な精霊じゃなくなっているね。精霊はそこまで自由に行動してもいいんだね…」
「サラマンダーも勉強して遊びなよ。あの女に縛られ過ぎだよ。無視すればいいんだよ。余計な事をしたらシャーロットとヴィーネが制裁するから問題なしだね。シャーロットは私がエネルギーを国に流している事を知っているから、世界の寿命を縮められていないと予想していると思うよ。あの子は私に精霊について詳しく聞かないんだよ。私が話すのを嫌がると思っているんじゃないかな?世界樹が無くなって放置されていたからね。私は既に精霊女王に捨てられているんだよ。じゃあ、好きにしてもいいよね?あの女と私は無関係さ!」
世界樹の精霊に世界樹を植える力を与えずに世界樹が消えたのに放置した。
ドリュアスが捨てられたと考えている気持ちがよく分かる。
ドリュアスに精霊について詳しく聞いていないのに何であそこまで詳しいの?
世界の理を把握している雰囲気まであったよ…。
間違いなく規格外だね。
精霊を超える存在が2人も揃っているのだから世界の理だって変わるよ。
「そういえば、シャーロットは星にも魔力があるって言っていたよ。フェニックスは星の魔力が限界に近付くと力に目覚める。精霊女王は星の魔力を吸収しているって。目覚めたフェニックスは星の魔力と同等の魔力を得るから、星に魔力を与えるのか、別の星に魔力を与えるのか選べるのではないかってね」
「世界樹のエネルギーを星の魔力だと表現しているんだね。間違ってないと思うよ。星の魔力を満たすのも世界樹の役割だから。精霊女王は星の魔力で生きている。精霊は世界の魔力で生きていると考えているんじゃないかな。魔力だと表現しているからシャーロットが殺すのを前提にしている理由がよく分かったよ。フェニックスが力に目覚めたとして、どうやって星に与える魔力を集めると思う?私の予想だと星にいる全ての生命の魔力を吸収して、それを星に必要な魔力に変換できる力だと思うんだよ。フェニックスは絶望するよね。楽しかった毎日を自分が全て奪ったのだから。そこに、精霊女王が現れて他の星で新しい生命を生み出しましょうとか言うんだよ。フェニックスがこの星に命を与えても他の星に命を与えても生命は全て絶滅するね」
フェニックスが力に目覚めたら星の寿命を延ばせる程の魔力を得るのは不自然だね。
全ての生命の魔力を強制的に吸収できるのであれば星の寿命を延ばせる程の魔力になるはず。
「フェニックスが力に目覚めた時に死ぬ事がないのは星の魔力を吸収している精霊女王だけなんだね。間違いなく命を弄んでいるね…」
「違うと思うよ。本来なら精霊女王も死ぬはずだよ。だから、結界を張って隠れているんだよ。フェニックスに魔力を吸収されないようにね。フェニックスも全ての生命が死んだと思って絶望している時に精霊女王だけ生きて出てきたら喜ぶよね?本当に最低な女王だよ」
そうか…。
星の魔力も吸収するに決まっている。
精霊女王を生み出せるフェニックスが、精霊女王だけを生かす理由が無い。
フェニックスが力に目覚めた時に魔力を吸収するのは無自覚だろうね。
だからこそ絶望する!
絶望しているフェニックスに精霊女王が声を掛けて新しい星に移動する。
精霊女王はフェニックスから魔力を吸収すれば死なないから。
最低どころじゃないよ。
極悪だよ!
「流石に不愉快だね。精霊女王を殺したくなる気持ちが分かったよ。何故殺さないのかな?」
「精霊女王の力が未知数であるのと、フェニックスが世界は崩壊しないと言ったからだと思うよ。フェニックスが最上位の存在であるのなら本能で世界の寿命を把握できるはずだから。それに、精霊女王を刺激して目覚めさせたくないんだよ。殺す時には万全の対策をしてからだね。精霊女王は精霊に知識を与えるけどフェニックスに関する情報を隠したりしているから。星の崩壊が訪れないと知ったら何をするか分からないよ」
精霊女王は何かを隠している可能性が高いか…。
世界が崩壊しないと知った精霊女王の行動が予想できないね。
どんな力を持っているのか分からない。
フェニックスを無理やり覚醒させる力を持っていたら最悪だね。
それが分からないから手を出さないんだ…。
勢いで行動しているように感じたけど慎重に計画しているんだね。
「フェニックスの知識を精霊に与えていない事を考えると何か秘密があるかもね。眠りから覚めて、星の寿命が縮んでいないと知った精霊女王が何をするか分からないね」
「まあ、そこまで深刻に考える必要は無いよ。シャーロットが対策するからね。それに、精霊の力が必要だと思ったら頼ってくるよ。あの子は別に自分が世界を救いたい訳ではないからね。この国で勉強して楽しみなよ。ここまで歩いてくるの大変だったでしょ?楽になるからね。それで、鬼ごっこに参加するんだよ。あの2人を捕まえる仲間は大歓迎さ。フェニックスも鬼ごっこに参加だよ。流石に2人も終わったね。フフフ、悔しがる顔が楽しみだよ!」
何でかな?
最終的に星の崩壊より鬼ごっこ優先なの?
この国に住むと無茶苦茶になるのは決定だよ!
鬼ごっこが最優先です!




