閑話 クラーラ 合同説明会
今日は学校が休日なんだ。
お昼過ぎからカーリンお姉ちゃんと鬼ごっこの予定があるんだよ。
非常に大切な予定だから早めに終わらせないとね…。
食事場所に新旧孤児院の子供たちがほぼ全員揃っているよ。
来ていないのは小さな子たちだね。
学校にも通っていないから秘儀も覚えていない。
コリンナには嫉妬しちゃうよ…。
絶対にカーリンお姉ちゃんをお母さんだと思うもん!
毎日抱っこされているからね…。
いいなー!
うーん、考え方を変えないとね…。
私に妹ができたと思えば問題なしだよ!
そうしよう!
それにしても、凄い光景だよ。
ヴィーネ様の本気は別格過ぎるよね。
さて、早速始めよう!
「今日は孤児院合同説明会だよ。孤児院の分からない事や気を付けなければいけない事を皆に説明するよ。一応派閥の説明もするけど、もう大体分かっているよね?」
前回と同じ説明をする。
カーリン軍は有名だから皆知っているね。
鬼ごっこする度に一員が増えていくから今は400人を超えているよ。
チェルシー親衛隊も30人は超えたんじゃないかな?
余り出番は無いから分かりにくいけどね。
「さて、何か質問はあるかな?」
「はーい。孤児院でお泊り会みたいなものは無いの?」
孤児院が2つあるからできない事はないね。
だけど、お姉ちゃん達に事前連絡しておかないと混乱させちゃうよ。
「できるけどお姉ちゃん達に事前連絡しなければいけないのと、同じ人数が移動する必要があるよ。10人くらいまでなら相談なしに移動しても問題ないと思うけど50人や100人が移動すると、流石に誰が移動するか相談しなければいけないね。無所属の子が大勢移動する時はカーリン軍やチェルシー親衛隊を頼るといいと思うよ」
カーリン軍なら何人移動させても人数を合わせられると思う。
カーリンお姉ちゃんがいる方に常に移動したいとかのお願いは不可だけどね。
「他に何かあるかな?」
「はい。新しい派閥を作ってもいい?」
新しい派閥を作るのは全然問題ないけど…。
誰かいたかな?
「全く問題ないよ。10人は所属していないと派閥とは呼べないね。誰の派閥を作りたいの?」
「クリスタ姉ちゃんだよ!やっぱり最強だからね。シャーロット様やヴィーネ様を侮辱した人を埋める。他にも国の治安を乱しそうな人も埋める。国の治安を守る組織。クリスタ公安部だよ!」
ええー!
大丈夫なの?
クラウスは説教され過ぎておかしくなっちゃったのかな?
元国防軍と元警備隊の人を埋めたりしないよね?
子供たちで気にしないと決めたばかりだよ…。
絶対に組織化したら危険だね!
「ほ、本気なのかな?説教され過ぎて現実逃避したくなっちゃったの?辛い事があったら相談に乗るよ?組織化する程の人数は集められないでしょ?説教の被害者しかいないよ?」
「50人は集まるよ。所属する為にはクリスタ姉ちゃんの説教を一度は受ける必要があるからね。洗礼だよ!洗礼を受けた後に所属したいなら僕に声を掛けて。公安部だから覚悟が必要だよ。卒業してからが本格的な活動になるね。治安を守る為には手を汚す必要があるかもしれないから。自己紹介していなかったね。僕はクラウスだよ。新しい孤児院の皆は洗礼を受けるのが難しいね…。声を掛けてくれたら僕からお願いするよ。洗礼を受けると世界が変わるよ!」
世界が変わるって何だろう?
余りにも恐怖で世界が歪んで見えているのかな?
自分から望んで説教を受ける変態はいるのかな?
そんな人は異常者で決定だよ!
異常者を集めたとんでもない組織だよ…。
カーリン軍でも卒業生なら犯罪者を始末しているみたいだけど。
犯罪者の始末に特化させるつもりだね…。
クリスタお姉ちゃん基準の粛清は一番被害者が少ないけど、大丈夫なのかな?
「クラウスは新しい孤児院ができるまで組織にしようとしていなかったよね?どうして今なの?国防軍と警備隊は関係ないよね?」
「皆で話し合ったのだから関係ないよ。理由はシャーロット様の選別が行われたからだね。ここから先は自分たちで国内を守らないといけないよ。その為にはクリスタ公安部が必要だと思ったんだ!人は集まっていたからね。時期を待っていただけだよ」
本気みたいだね。
ああ、嫌な予感がするよ…。
説教を洗礼とか言っているから、きっと恐怖で精神が壊れたね。
精神を壊す説教をし続ける孤児院の鬼だから…。
「新しい孤児院の皆には正確な情報を伝えないといけないよ。クリスタお姉ちゃんは孤児院の鬼と言われているからね。説教されると確実に心に恐怖が刻まれるよ。洗礼とか言っているけど、本当に危険だからね。命懸けで所属したいなら好きにすればいいよ」
「そういう事だよ!命懸けだからね。中途半端な気持ちだと立ち直れないよ。洗礼を受けても立ち上がれる強さが必要なんだ。それが、クリスタ公安部だからね。最強は命懸けだから。あと、絶対に高等科を卒業する必要があるからね。中等科では甘い!覚悟が足りないね。そういう組織だという事だよ。今日がお披露目だね。皆の全力を期待しているよ!」
孤児院で中等科を卒業する子供はまずいない。
全員で高等科卒業を目指すからね。
甘いと言っても間違いではないけど…。
説教を受けて立ち直れなくなるっておかしいよね?
だって説教なんだよ?
そんな事をしている人をどうにかした方がいいよ!
私たちは子供だからね?
ここで迂闊な発言をするとクリスタお姉ちゃんが乱入してくる可能性がある。
そんな平凡な失敗をするつもりは無いからね…。
前回で学んだよ!
「という事で新しい組織の発表があったね。皆の好きにすればいいよ。他にも組織にしたいなら10人以上集めて皆に発表してね。他に質問はあるかな?」
「強くなる方法が知りたいです!」
またジェナだね。
本当に強くなるのに必死だよ…。
気持ちは分かるけど焦ったら駄目だからね。
「ジェナは中等科に進んだね。魔力を動かすのにまだ手間取っているよ。自然に流れるように動かせないと先には進めない。全身に流れている血のように魔力も全身を流れるように動かすんだよ。最適な魔力の配置にする為には魔力が自然と流れるようにしておかないと混乱してしまうからね。魔力をどのような順番でどこに配置するのかを頭で考えてはいけないから。常に魔力を動かし続けて体が勝手に魔力を配置する順番を決めてくれるようにする必要があるよ。他に質問はあるかな?」
「あら、皆いないと思ったら集まって何をしているの?」
余りにも予想外だよ…。
何でカーリンお姉ちゃんが入ってきたの?
コリンナを抱いているね…。
カーリンお姉ちゃんに抱かれている時だけ大人しいとか反則だよ。
赤ちゃんだから本能で分かるのかな?
誰が孤児院の癒しなのか…。
末恐ろしいね!
「孤児院が2つできたからね。簡単な説明会だよ。お泊り会もしたいみたいだから、そのうちあるかもしれないからよろしくね」
「お泊り会ね…。どの子がどちらの孤児院にいるのか報告してくれれば問題ないわよ。定員があるから人数によっては入れ替わる必要があるわね。そのくらいかしら?」
カーリンお姉ちゃんに今聞きたい事は特にないからね。
誰かあるのかな?
「カーリンお姉ちゃんは王女様だったりしたのですか?」
あー!
それは聞いたら駄目だよ…。
「違うわよ。クラーラ、しっかり説明しないと駄目じゃない。いいかしら?孤児院にいる誰に対しても過去を詮索するのは駄目よ。本人が自分から話さない限りは絶対に聞いてはいけないわ。話せないような過去を持っている子が多いの。特にシャーロット様に救われた子は口にも出したくないような過去を持っているのかもしれない。今回は見逃しますけど、同じ事をした場合はクリスタの説教を受けてもらいますからね。分かりましたか?」
「はい。分かりました…」
新しい孤児院にいる子は親が選別で飛ばされた子だけだった。
過去を詮索してはいけないという当たり前の話もするべきだったよ…。
「選別で親が飛ばされた子には教えておきましょう。本来ならあなた達はここにはいないの。ヴィーネ様が無理を言ってこの国に残して下さったのよ。飛ばされた場合はどうなるか教えておきましょう。奴隷か餓死が確実よ。殺される可能性も高いわ。飛ばされた大人はシャーロット様とヴィーネ様を裏切り続けた人たちよ。あなた達の態度が悪い場合、一緒に飛ばした方が良かったと判断される可能性もあるわ。シャーロット様はあなた達の感情と行動を全て把握されている。世界で平和な国はここにしかない。お2人がいなければこの国も滅ぼされて、皆は奴隷にされるか殺されて終わりね。気を付けなさい。自分たちの事を親が飛ばされた被害者だと考えているのなら本当の被害者になるだけよ。世界は優しくない。あなた達よりも可哀相な子供はたくさんいる。シャーロット様とヴィーネ様が救いたい子供はたくさんいるの。ヴィーネ様が初めて命令をされたのがあなた達の命を守る事よ。どれだけ特別な事なのか理解しなさい。理解できないのであれば、本当に可哀相な子供と入れ代えてもらうだけよ。親と一緒に死にたいのであれば社に行きなさい。孤児院は親がいないのが当たり前なの。そんな事では誰も共感や同情はしないわ。勘違いしている子が目立つなら私から直訴します。あなた達は学校に通っている。親が何をしていたのか全く理解していないとは思っていない。それでも、被害者だと思うのであれば親の元に行きなさい。孤児院は悲しい過去を持つ子を保護する場所よ。説明会をするのであれば、正しく孤児院の在り方を伝えなさい。分かりましたね?」
「はい…。カーリンお姉ちゃん」
カーリンお姉ちゃんが怒っている…。
つまり、新しい孤児院の子は勘違いしているんだね。
「私は孤児院に戻ります。続けるならあなたの過去を少し話してあげなさい。どれだけ自分たちが恵まれているか理解できるわ」
「分かったよ」
カーリンお姉ちゃんは孤児院に戻って行きました。
「私の過去であれば話してあげる。大した過去じゃないからね。私は長命種のエルフだけど、自分の年齢は分からないの。気付いた時には奴隷商人の檻の中に閉じ込められていた。檻の高さは私の身長と同じくらいで、横幅は私の身長より小さい。寝る時は地べたに膝を曲げて寝る必要がある。私は余り食事が必要の無い種族だったから水と野菜くずを偶に与えられるだけ。何年閉じ込められていたのかも覚えていない。多くの子供が買われていくのを見たよ。買われると首輪を着けられて鎖で引っ張られる。家畜と同じ扱いだね。人間や獣人の子は小さいうちは家畜のように扱われ、大きくなると労働奴隷として売られる。奴隷商人に売られた子供は泣きながら檻に入れられる。買われる時になると泣きながら檻に戻りたいと叫ぶ。檻の中の方が安心だから。暴力は当然で時にはもっと酷い事もされる。無実だけど罪人として殺される事もある。奴隷の処刑が娯楽の国もある。私は多くの国を檻の中で見てきた。他国だったら大人も子供も斬首か縛り首。酷い時には拷問される時もある。選別で飛ばされた大人は他国なら公開処刑で子供も一緒に処刑される。親の罪を知っていなくても関係ない。連座だよ。カーリンお姉ちゃんが怒っていたのは、新しい孤児院の子たちが被害者だと思っているから。自分たちを可哀相だと思っているから。酷い勘違いだよ。恵まれ過ぎているよ。自分たちで親を叩きのめす事もできたのに何もしなかった。力があるのに使わなかった。シャーロット様とヴィーネ様を侮辱し続ける親を許した。孤児院では死ぬギリギリまで痛めつけて埋める事になっている。お2人を今も侮辱しているのなら殺してもいいと考えている。何の為に学校に通っているの?子供がいる大人が大量に飛ばされた事が不愉快だよ。孤児院はシャーロット様とヴィーネ様を侮辱する人を絶対に許さない。子供でも関係ない。派閥も関係ない。孤児院の子供たちで決めた規則。あなた達の言動によっては孤児院の在り方を歪められてしまう。そんな事になるなら全力で排除する。ヴィーネ様の優しさを裏切り勘違いし続ける迷惑な存在だから。何か言いたい事がある人はいる?」
「クリスタ公安部を組織した理由が良く分かったでしょ?中途半端は許さない!中等科を卒業するなんて孤児院の恥だよ。君たちは世界を知らないし本当の不幸を知らない。この国の孤児院にいて努力しないのは有罪だよ。僕たちには努力しない理由が分からないんだ。知りたいとも思っていないけどね。一番努力したのがクリスタ姉ちゃんで次にカーリン姉ちゃんとレナーテ姉ちゃん。そして、孤児院の大人で努力していない人はいない。努力を止めた人もいない。孤児院の評価が高いのは卒業生のお陰だよ。君たちが卒業した時に孤児院の評価が落ちるようなら排除する。命懸けだと言ったでしょ?僕はいつ殺されるか分からない生活をしていたよ。命懸けで努力するなんて当然だよ。自分の為に努力できるんだからね。今生きているのも奇跡だし、この国で勉強できるのも奇跡だよ。そんな子供の集まりが孤児院なんだ。学校に通っていたのに何もしなかったのは君たちだ。許されないけどヴィーネ様が許されたから一度は許そうと思う。次は無いからね」
子供でも関係ないからね。
シャーロット様やヴィーネ様を裏切ったら許さない。
それが、孤児院だから!
「厳しい話になっちゃったけど、カーリンお姉ちゃんが怒ったという事は、それだけ甘えていたという事だからね。本気で怒ったら確実に孤児院から飛ばされるよ?クリスタお姉ちゃんとカーリンお姉ちゃんは、シャーロット様とヴィーネ様に意見が言えるから。そして、信頼されているから。孤児院にいて努力しない理由は分からないからね。中等科を卒業した人は今までいない。中等科を卒業する事を恥とまでは言わないけど努力しているかどうかは見れば分かるから。努力して中等科なら仕方がないと思うけど、サボっていて中等科を卒業するのなら仲間だとは思わない。こんなところだね。カーリンお姉ちゃんと鬼ごっこしないといけないから、説明会はここまで。解散だよー!」
新しい孤児院の子たちは落ち込んでいるね。
本当に甘えている。
大丈夫かな?
そんなに親と一緒がいいのなら社に行けばいいのに。
世界と不幸を知りながら命を落とす事になるけどね。
勉強していたのに勘違いした親を放置した。
私にはその気持ちが分からない。
親のせいで飛ばされると思わなかったの?
親がシャーロット様やヴィーネ様を侮辱していると感じなかったの?
分からないけどヴィーネ様が許したのだから一度だけ許そうと思う。
子供を守る国だと宣言されたけど、勘違いしている子供を守る必要は無いと思うから。
救出された子供たちは世界の厳しさを知っているので勘違いしている子供を許せません。




