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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第4章 神国シャーロット

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閑話 イザベラ 商売人

ダニエルとフーゴの除名から始まった一連の出来事。

本当に何て事をしてくれたのですか…。


シャーロット様の言葉は間違いなく嘘ですね。

ヴィーネ様が除名の理由を話さなかったからに違いありません。


話さなかった理由は子供たちの笑顔を奪わない為ですね。

除名の理由を話してしまうとフーゴのお店が避けられると考えたのでしょう。


ヴィーネ様は何も悪くありませんよ…。


シャーロット様を悪役にしてしまった責任と同じ失敗を繰り返したくないという思いが、突然の選別に繋がったのだと思えてしまいます。


ヴィーネ様は命令をしてでも子供を残し守る事を選択しました。

初めて国民に出した命令が子供の命を守る事なのです。


本当に優しい女の子なのですよ…。

許しがたい2人です!


2人を野放しにはしておけません。

早急に引継ぎをして隠居してもらいたいですね。


検問所が閉まる18時に商人組合所も閉めます。

2人を18時30分に呼び出してあります。


本人たちからの申し出もありアグネスとエトヴィンも私たちの護衛として残っています。

孤児院の卒業生で今回の命令から除外されてしまったのは複雑な心境みたいですね。


商人組合もヴィーネ様の改革の1つで大切な組織だという認識はあるみたいです。

しかし、孤児院を手伝えないのは本当に残念なようですね。


孤児院を卒業した子にしか分からない感情があるのだと思います。

アグネスとエトヴィンにとって孤児院は特別な場所ですから。


想像できないような過酷な環境からシャーロット様に救い出されたのです。

孤児院で過ごした日々はとても幸せだった事でしょう。


「2人が来ました。もうすぐ到着します!」


エトヴィンの声が1階から聞こえました。

話し合いの場所は所長室です。


仕事の書類を片付けて副所長室を出ます。

所長室の扉は開いていましたので中に入ります。


所長は既に応接用の椅子に座っていたので、私も隣に座ります。

「やっかいな事をしてくれたもんだよ。ほんと困ったねぇ」

「自分たちの置かれている立場を理解してくれていたらいいですね」


「立場が分かる人間だったら国防軍のテストに参加しないよ。テストに落とす事もできないじゃないか。2人が合格できるように警備隊のテストを用意して下さったと考えた方が自然だよ。ヴィーネ様は除名にした理由を言えず、シャーロット様は嘘まで吐いているじゃないか。何も考えずに思い付きで行動しているだけさ。土地神りんごを使った商品を扱っているのに酷い裏切り行為だ。とんでもない失態をしでかしているはずさ」

「間違いありませんね。仕事に対しても自己満足していただけでしょう。偶々上手く行っていただけで、誰かの為に何かをする仕事はできないのですよ。子供たちの為にと言っておきながら、平気で裏切り行為ができるのですから」


警備隊の試験は突如実施されました。

予定になかったはずです。


国防軍のテストでは2人が死んでしまうと考えたヴィーネ様が用意したと思います。

本人たちはそんな事にも気付いていないと思いますがね…。


本当にどうしようもないですよ!

頭を使って欲しいものです。


「裏切り行為だよ。お2人に対しても子供たちに対してもね。シャーロット様の嘘がヴィーネ様を追い詰めてしまったのだろうねぇ。常々我慢はされていただろうけども嫌になったのさ。ゆっくりと人の心を変えていくように改革する事が。あれだけ手を尽くしていただいたのに、問題のある大人は何も変わらなかった。シャーロット様が殺害予告をされたのがその証拠だよ」

「除名の理由は嘘でも殺害予告は本当だと思いましたからね。もうすぐ一番の大馬鹿たちが来ます。この国で商売をする人間の恥ですよ!」


ヴィーネ様は多くの人を救おうと裏で動いておられました。

表で動いている活動ですら理解していない人ばかりです。


駄目な大人ばかりですね…。


階段を上る足音が聞こえてきました。

少しは理解をしてくれていたらいいですけど…。


「さあ、座っておくれ。呼び出された理由は2人とも分かっているだろう?」

「警備隊を除名された件でしょう?馬鹿じゃないんですから俺たちだって分かりますよ」

「その通りです。そのくらい分かります」


馬鹿だから呼び出されているのでしょうが!

これでは何も分かっていませんね。


「そうかい。じゃあ、2人はどうするつもりなんだい?何か考えがあるんだろう?」

「俺は子供を守りたいんです。国防軍だって警備隊だって仕事をしながら続けているじゃないですか?何で俺たちだけ駄目なんですか?今回のシャーロット様は強引過ぎます」

「フーゴの気持ちはよく分かるぜ。テストに合格したのに一方的に除名されたからな。子供たちを守ろうとする事がそんなに悪い事ですか?」


ここまで自分勝手な考え方をしますか。


アグネスとエトヴィンの雰囲気が変わった事にも気付いていないようですね。

本当にどんな失態が隠されているのか怖くなりますよ…。


「これは驚いた!国民であんた達が除名された理由がシャーロット様の言葉通りだと思っている人に出会えるとは思わなかったよ。嘸かしお店も繁盛しているんだろう?」

「どういう意味ですか?シャーロット様が嘘を吐いていると言っているのですか?土地神様です。疑う方がおかしいですよ!お店のお客さんは減りました。妖精の子が来てくれただけです。お菓子が食べられなくなるから、戦いたいなら誰かに引継いで下さいって言われましたよ」

「俺の方はさっぱりですよ。だーれも酒を買いに来ません。シャーロット様の言葉を疑っている奴ばかりなんでしょうね。勘弁して欲しいですよ…」


ここまで愚か者ですか…。

本来なら選別で飛ばされていますね。


自分に都合のいいようにシャーロット様を利用しています。

シャーロット様のお気持ちを理解しようとしていないのですね。


「シャーロット様の言葉を信じるなら早く引継ぎをするべきじゃないのかい?大手を振って警備隊になれるじゃないか。この国で土地神りんごを仕事で扱っているのはあんた達と妖精だけだ。当然別枠に決まっているじゃないか。土地神りんご酒と土地神りんごジュースはこの国の特産品だよ。あんた達が死んで終わりますじゃあ他国に示しが付かないね。しかも、土地神と商品名に入っているんだ。シャーロット様が貶される事になるじゃないか。そんな事も分からないのかい?」

「俺が造った酒を誰に売ろうが勝手じゃないですか。それに、侮辱するような国は滅ぼされて終わりですよ」


やはり頭も悪いようです!


この国の商人組合に登録した商人に売らないとなると大問題です。

世界一信用される国にしようとしているヴィーネ様の計画を潰すつもりですか?


「ほぉー。確かに国内に限れば好きにすれば良かったけど、商人組合に登録した商人を避けて売らないのは困るね。ヴィーネ様は世界一信用される国を目指しておられる。あんたはそれを邪魔するのかい?それに、自分だけの手では酒を造れないと理解していないようだね。土地神りんごも砂糖もシャーロット様と妖精が用意してくた物だ。それも、シャーロット様の願いでね。あんたが好きに扱って良い物ではない事くらい分からないのかい?シャーロット様の引継げという言葉を無視するのであれば土地神りんご酒と土地神りんごジュースはこちらで造らせてもらうよ。土地神りんごと砂糖は商人組合が買い取らせてもらう」

「待って下さい!それではお菓子も作れなくなります。子供たちの笑顔が失われます!」

「商人組合が自国の商売人を潰すのかい?流石にやり過ぎでしょう!」


お客さんが入らないのに潰すとは笑えますね。

時間の問題だと理解もしていないのですか?


あんたのお菓子で子供は笑顔になれないよ。

シャーロット様を裏切ったあんたのお菓子を食べる訳が無い。


唯一のお客さんの妖精にも言われているじゃないか。

戦いたいなら引継げとね。


「今のあんたが作るお菓子で子供たちは笑顔にできていないだろ?寝ぼけたことを言ってるんじゃないよ。子供たちを笑顔にしたいなら引継ぎな。それに、自国の商売人を潰すなんて訳ないね。あんた達は勘違いをし過ぎだよ。シャーロット様とヴィーネ様に迷惑が掛かかる前に手を打つだけさ」

「俺は子供を笑顔にしたいんですよ。何故それを邪魔するんですか?シャーロット様とヴィーネ様は子供を笑顔にする事を望まれているではありませんか」


子供たちの事を何も考えていませんね。

予想通り自己満足していただけの男でしたか…。


「あんたは人の話を聞かないのかい?笑顔にできていないだろ?それに、あんたが笑顔にしなくても他のお菓子職人でも問題は無いね。それが分からないのかい?妖精の子に言われたんだろう?食べられなくなるから引継いでとね。あんた達には引継ぐか店を畳むかどちらかしか残されていないよ。客が入らなくて追い詰められるよりマシだろう?」

「俺が笑顔にしたいし守りたいんです。他の人では意味がありません。何故それが分からないんですか?」

「引継ぐ相手なんていませんよ。それに、店を失くしたら何をすればいいんですか?」


相当に自己中心的な事を言いますね。

自分に非があるとは微塵も思っていません。


確実に警備隊で問題を起こしましたね。

それも大問題ですよ…。


「あんたは駄目だね。子供たちの事を全く考えていない。誰が笑顔にしてもいいじゃないか。自分が特別だと思っているのかい?何も特別な事はしていない。特別なお菓子がある訳でもない。子供を笑顔にできないお菓子屋は邪魔だね。引継ぐ相手はこちらで用意するさ。学校の卒業生が何人も手を挙げているよ。それに、あんた達は国防軍のテストを受ける予定だったんだ。国防軍に入ればいいじゃないか。命を懸けて戦いたいんだろう?敵と殺し合いがしたいんだろう?自分たちで選んだ道だ。その道に戻りな」


「話し合いの途中に突然立たないで下さいね。護衛任務として殺しますよ?」


アグネスの声がしました。

気付くとダニエルとフーゴの肩を2人が押さえています。


高等科の卒業生は凄いですね…。

席を立とうとした事さえ分かりませんでしたよ。


アグネスとエトヴィンがいるだけで安心感が違いますね。

私と所長だけでは恫喝しようとする人もいますから。


2人に恫喝されそうになるとは思いませんでしたよ。

どこまで堕ちているのやら…。


堕ちたのではなく元々かもしれませんけどね。


「あんた達は老婆を恫喝でもしようとしたのかい?うちの従業員は優秀だからね。年寄りを労わってくれるのさ。話し合いの途中に席を立つという事は私の話を蹴ったと認識させてもらうがいいんだね?新しい酒屋とお菓子屋を用意するよ。あんた達は排除させてもらう事になる。あんた達は知らないみたいだが、国内が殺人禁止でも関係なく動ける組織もあるからね。お2人公認の治安組織さ。どうするんだい?」

「た、立とうとしてねーよ。何だよ…。脅されているのはこっちじゃねーか。引継いで国防軍に入るしか生き残る道が無いじゃねーかよ」

「俺のお菓子で笑顔にしたいんだ。笑顔を守りたいんだ。何故それを邪魔するんですか?何故それを邪魔するんですか!」


これは流石に酷過ぎますね!

選別で殺されていてもおかしくない人間じゃないですか。


「やあ、母さんから2人次第だと聞いたからね。様子を見ていたけどやっぱり駄目だね。お客さんも途切れたみたいだし、母さんの嘘を信じているのは君たち2人だけ。終わりだから除名された理由を教えてあげるよ。2人とも誘拐犯を許してあげたんだよ。それでも、私は除名せずに隠そうと思っていたんだけど、ダニエルに警備隊を辞めたいと泣きながら懇願されたんだよ。今日のような思いはもうしたくないと言われたから除名したんだ。フーゴは自信喪失でおかしくなっていたと思っていたけど、自己満足したいだけの人だったんだね。今日は孤児院から嬉しい提案があってね…。とても機嫌がいいんだ!だから、引継ぎをするなら特別に命を助けてあげるよ。どうする?」


余りにも酷過ぎる真実ですね…。


ヴィーネ様は子供たちの為に我慢されていたのでしょう。

ですが、引継ぎを拒み続けるので終わりという事ですね。


それに、辞めたいと自分から懇願したのですか…。

2人ともお客さんの事を何も考えていませんね。


「とんでもない真実だよ。警備隊の人間が誘拐犯を許していたとはね。子供たちを笑顔にしたいとは、とんだ口だけじゃないか。しかも、自分から辞めたいと懇願までしていたとはね。犯罪者は怖かったのかい?ヴィーネ様はお優しいから、そんなあんた達でも引継ぎをすれば命を助けて下さるそうだ。良かったねー」

「分かりました…。引継ぎをしますので誰か寄越して下さい」

「そんな…。俺は子供を笑顔にしたいんだ。守りたいんだ。そんな訳がありません。引継ぎをさせる為の嘘ですよね?」


フーゴ、あんたは終わっているよ。

本当に偶々上手く行っていただけだったようだね。


「ふぅー。似たような思いをさせないでよ。フーゴには相当我慢をさせられている。自分の事しか考えず、私に何度も命令をしようとする。人を利用する事しか考えず、気持ちを理解しようとしない。次に口答えをしたら終わりだから。機嫌が悪くなるまで話しに付き合うつもりはないよ」

「フーゴ諦めろ!子供を笑顔にしたいのなら引継ぎをして他国で笑顔にすればいい。死んだら終わりだぞ?誘拐犯を許したと広まればこの国で商売はできない。引継ぎをしろ!」

「シャーロット様と話を…」


転移魔法(テレポート)闇魔法(デス)。後の手配は任せたよ。またねー。転移魔法(テレポート)


やはり終わりましたね…。

私たちに死体を見せないように配慮して下さいました。


ヴィーネ様はとても優しくて可愛い女の子ですからね。


「馬鹿な男だ。どれだけ許してもらったんだか…。最期まで自分の事しか考えられないのかい。ダニエルは引継ぎでいいんだね?」

「明日から引継ぎます。国防軍も警備隊も無理じゃないですか…。引継ぎを終えたら安全な国に飛ばしてもらいます」


「そうかい…。それじゃあ、明日の昼までに人を手配しておくよ。頼んだよ」

「分かりました。それでは、失礼します…」


ダニエルは席を立って階段を下りていきました。

安全な国はここにしかありませんよ?


馬鹿な男ですね。


「あんた達もお疲れ様。助かったよ。今日は上がっていいよ」

「お疲れ様でした。明日からもお願いしますね」

「はい。それではお先に失礼します」

「はい。お先に失礼します」


本当に助かりましたね。

あの様子では何をしてくるか分かりませんでしたよ。


「酷い真実が隠されていたもんだ。誘拐犯を許すとはね…。この国では絶対に許されない犯罪者だ。他国だって許されないだろう。それに、安全な国に飛ばしてもらうとか馬鹿な事を最後に言っていたけど、そんな国がどこにある。世界中で戦争さ。情報は商売の基本だろうに、安全な国はここだけだよ。世界が落ち着けば話も変わってくるが、当分は怪しいね」

「商人は情報をいち早く入手して戦争から避難しますからね。ここに訪れる他国の商人と話をするだけでも分かりそうなものですけど…。本当に口だけの男たちでしたね」


「酒屋の引継ぎとお菓子屋の再会は早く済ませないとね。手を挙げている卒業生はいるから誰にしようかねー。誰でも問題ないから選ぶのが大変だよ」

「贅沢な悩みですよね。他国では優秀な人材が枯渇しているのに、この国では年々増えていくのですから。お2人の力が必須ですけど素晴らしい政策ですよ。移住希望者も増えていくでしょうし、発展は止まりそうもありませんね」


「世界征服できる国が人を育成しているのに、他国は奴隷集めに必死になっている。本当に馬鹿な話だよ。この世界はいつになれば真実に気付くのだろうね」

「一度は滅ぼされないと気付かないですよ。この大陸でさえ何ヵ国も滅ぼされて、漸く少し静かになりましたからね。神に選ばれたと思っている王族や貴族が減らない限りはどうしようもありません」


世界はヴィーネ様の優しさに感謝しなければいけませんよ?

シャーロット様の御令嬢ですから優しい女の子なのかもしれませんけどね。

焼き増しですね。

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