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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第4章 神国シャーロット

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ジェラルヴィーネ 従来の国民

予想通りと言えばいいのだろうか?

私と母さんは気配を消して4人の見学をしていた。


余りにも情けない訓練結果…。


ダニエルとフーゴは文字通り何もできなかった。

クリスタとカーリンに助言をしてもらっていたけど全く活かせていない。


母さんは予想通りだと思う。

国防軍と警備隊に期待していないのだから。


「母さん、ダニエルとフーゴが検問所の前から動かないよ。立ち直るかな?」

「ヴィーネは優しいね。警備隊としてのダニエルとフーゴは死んだよ。クリスタの助言を聞いていたのにあの対処。カーリンの言葉の意味も理解していないと思う。クリスタもカーリンの言葉は一理あると考えたけれど、致命傷を負う可能性が高かった。犯罪者の刃物が迫ったら2人が硬直したからね。カーリンが心臓を即座に回復できるのなら放置したのかもしれないけど、できないから助けたんだよ。2人は何もできない自分に悔しがっていたけどクリスタもカーリンも死んだと認識している。そして、動けない犯罪者に止めを刺せなかった。私ならここでも死んだと認識するから2回目。ボアを殺しに行けると判断したから3回目。1日に3回も死んでいるんだよ。残念ながら何も経験していないから成長する訳が無い。カーリンは完全に見放している。クリスタは甘えた国民の中で少しだけ努力した人という認識だね」


かなり厳しい意見だけど、それが現実なんだよね。

優しいテストに合格した少しだけ努力した甘えた人間。


今のままでも暴動を鎮圧するくらいならできたと思う。

悪い言い方をすれば弱い者イジメだから。


国防隊と一緒だね…。


犯罪者に対しても弱い者イジメになるけれども、相手は本気で殺しにくる。

冷静な判断ができるのであれば、今の自分たちでは何もできないと言うべきだった。


クリスタはその都度2人に判断を促している。

そして、全ての判断を間違えた。


何も知らないのに外の世界を舐めて自分の力を過信した。

平和ボケした勘違いしている国民と余り変わりない。


母さんなら確実に今日の記憶を消して何も無かった事にすると思う。

2人にお店を続けさせる為にはそれが一番だから。


私はどうしようかな…?


「どうするべきか2人の意見を聞いて考えてみるよ。私にも経験が足りないからね」

「ヴィーネの好きにすればいいよ。私にはヴィーネがいればいいからね」


本当にもう。

恥ずかしいよ…。


「行ってくるね。転移魔法(テレポート)


母さんに手を振ってから2人の元に移動した。

カーリンが荷車を返した後に来たから孤児院に刺激を与える事はない。


検問兵も困るよ。

声を掛けるのも躊躇ってしまう雰囲気だから。


「2人には移動してもらうよ。転移魔法(テレポート)


訓練場の宿舎の広間に移動した。

獣人の集会も綺麗に片付いたから大丈夫。


「さて、何か言いたい事はあるかな?望みはあるかな?話す気力が無いのであれば、今日の記憶を消して終わりにする。2人は警備隊のままでお店を続けられるよ」

「待って下さい!逃げたくありません。俺は子供たちの笑顔を守りたいんです!」


どうしても犯罪者を倒したいのかな?

子供の笑顔を自分の手で守らないと気が済まない?


「お菓子作りを頑張ればいいじゃない。子供は笑顔だよ。駄目なの?」

「犯罪者からも守りたいんです。子供たちを血塗れにしたくありません」


やはり犯罪者を自分の手で倒したいんだね。

その為の努力を必死にしているのなら応援するけど…。


足りないよ!


「犯罪者に殺されたよね?クリスタとカーリンがいたから生きているだけ。迫る刃物を見て硬直したフーゴは首か心臓を刺されて死んだよ。どうすれば守れるようになるの?」

「犯罪者の刃物を見ても動じない心の強さを手に入れます。何度も対峙すれば動けるようになるはずです」


何を言っているのか理解しているのだろうか?

私に命令をしているのかな?


「フーゴの心を鍛える為に犯罪者の前に何度も立たせろと言っているのかな?」

「いえ、犯罪者が来たら呼んでいただけるだけで構いません」


命令しているよね?


「ふーん。つまり、次に犯罪者が来た時に死にたいと言う事かな?」

「俺は未熟ですから、誰かに手助けしていただきたいと思います」


全然努力していないからね。

子供よりも弱いのに、俺が守ると言っているのをおかしいと思わないと。


「誰か当てがあるの?君の心を鍛える為に協力してくれる人はいるの?」

「誰もいません…。警備隊の合同訓練では駄目でしょうか?」


「それはいいけど君の心は鍛えられないよ。どうやって君の心は鍛えられるの?犯罪者に警備隊が全員で対処した場合、他の隊員がすぐに始末しちゃうよ」

「俺が先陣を切ります。それなら鍛えられるはずです」


君は隊長なのかな?

自分の事しか考えていないね。


「それだと死ぬよね?君が動けなかったら他の隊員に助けてもらうつもりでいるの?」

「甘い考えだと分かっていますが駄目でしょうか?」


ここまで他力本願なのは酷いね。


それに、クリスタやカーリンのように誰もが動けると考えているのかな?

考えが甘過ぎるし非常に不愉快だよ!


「何も分かっていないね。君は死ぬよ。君が迫る刃物に硬直したと確認した後に対処できる人は、私と母さんを除いたら孤児院にしかいないよ」

「そうなのですか…。それでしたら、俺が孤児院の方にお願いをしますので駄目でしょうか?」


どこまで人に頼ろうとするの?

自分で努力する旨の発言が一度も無いよ。


「確実に断られるよ。孤児院の大人が君を鍛える理由が無いからね。頭を下げれば動いてくれる人たちではないよ。同僚の為になら動くだろうね。君が彼女たちを説得できる理由はあるの?」

「孤児院にいる子供たちも俺が守る事ができるようになります」


本気で言っているね…。

私と母さんの指示は当然なのかな?


それに、何故ここまで自分で守る事にこだわるのだろうか?

子供の過去に共感し過ぎているから?


「卒業生を待機させればいいだけだね。君が守る必要は無いよ。自分で守りたいと主張するのに、自分で努力するとは主張しないね。人に頼ってばかりだよ。君は他力本願なのかな?」

「秘儀の努力は続けますが、心は1人では鍛えられません」


子供の過去に共感している訳ではなさそうだね。

過酷な日々を1人で耐え続けてきたのだから。


フーゴの印象がどんどん悪くなっていくよ…。

今日の訓練でおかしくなった?

人柄を勘違いしていた?


分からないね…。


「心は1人で鍛えられないと誰が決めたの?自分で決めただけじゃない。心を自分で鍛えるのを諦めただけでしょ?」

「諦めていません!自分で鍛える方法が思い付かないのです」


開き直っているのかな?


ここまで酷いと飛ばすか殺すべき人だとしか思えないよ…。

でも、お菓子を食べる子供たちの笑顔がなくなってしまう。


「命の安全が保障された状態で心を鍛える方法が思い付かないだけでしょ?人を殺すのに自分の命が絶対に安全なんて事があると思っているの?子供を守りたい、血塗れにしたくない。子供が何故犯罪者を全力で殺すのか分かっていないの?仲間や家族を殺されたのか、命の危険に晒されたのか、攫われて過酷な生活をしてきたからだよ。その子供を助けたいのであれば、最低でも同等の覚悟を持つ必要がある。子供は誰かに手伝ってもらったのかな?過酷な日々を耐え続けてきたから今があるんだよ。心を1人で鍛える方法が思い付かないと子供に言える?子供を見下し過ぎだよ。秘儀を覚えた後に子供に何か言われたでしょ?それが君の現実だよ」

「俺は子供たちに守られる弱い人間でいろという事ですか?」


自分が弱いのを私の責任にするの?

それに、今の君には守られる価値が無さそうだよ。


「君の現実でしょ?今の現実を変える覚悟も無いみたいだね。君が強い人間になれるのならいいけど、どうやってなるの?」

「フーゴ、見苦しいぞ!俺たちは終わっているんだ。口だけの人間だ。子供を本気で守るつもりになっていただけだ。子供を誘拐しに来た犯罪者に止めを刺せなかった。動かない犯罪者に剣を突き刺す事すらできなかった人間に子供を守れる訳が無いだろ。お前は子供に言えるのか?子供を誘拐しに来た犯罪者を手が震えて殺せなかったと。商売は信用を失ったら終わりだ。お前は子供を裏切る行為をした。確実にお菓子を買いに来なくなるぞ。いいのか?」

「攫われて酷い目に遭った子供ばかりだからな…。裏切り行為だな…。もう終わりじゃないか…」


ダニエルは終わりを悟って黙っていたんだね。

今日の出来事が国民に知られたらお店は閉店だと思う。


「ヴィーネ様、秘儀に関する記憶と警備隊の記憶と今日の記憶を消して下さい。このままでは店に立てません」

「今日の記憶を消して警備隊を続けた方が上手く収まるよ。それでは駄目なの?」


「俺たちに警備隊は務まりません。必ずぼろを出します。何の覚悟も無く子供を守ると言っていたのです。今日のような思いはもうたくさんです。辞めさせて下さい!」


本気で辞めたいのに誤魔化して続けさせるのは可哀相だね。

泣いているダニエルを見ると辞めさせてあげたくなる。


こんな風に考えてしまう私は甘いのだろうか…?


除名する理由は言えないね…。

国民が不信感を募らせたら対策する必要がある。


今は本人の希望を叶えてあげる事しかできない。


「ダニエルの気持ちはよく分かったよ。フーゴは自信喪失でおかしくなっていたと思っておく。警備隊のプレートは返してもらうね。さてと…、闇魔法(メモリー・オブ・デス)転移魔法(テレポート)転移魔法(テレポート)


2人を自分たちのお店に移動させた。

少し戸惑うかもしれないけど、ここにいるよりは自然だから。


念話(テレパシー)

「クリスタとカーリンに話し掛けているよ。本人の希望によりダニエルとフーゴは記憶を消して警備隊から除名する。今日の出来事は誰にも話さないでね。特に子供には絶対に話したら駄目だよ」

「「かしこまりました」」


念話(テレパシー)

ダニエルとフーゴを除く全国民に伝えておかないとね。

「やあ、国長のヴィーネだよ。ダニエルとフーゴは警備隊から除名した。秘儀の記憶も消したよ。国防軍と警備隊は秘儀の鍛錬をもっと頑張って。またねー」


転移魔法(テレポート)

社に移動した。


警備隊のプレート2個は補佐室に置いておこう。

本当に気分の悪い話し合いだった…。


「ただいまー。フーゴはおかしくなっていてダニエルは悟っていたよ。お店の存続には今日の記憶を消して警備隊を続けるのが一番だと伝えたけど、ダニエルから警備隊を辞めたいと懇願されたから無理に続けさせられなかった。従来の国民には警備隊や国防軍は厳しいね。外の世界を何も知らないし、自分たちがぬるま湯に浸かっていると理解していない。考えが甘過ぎるよ」

「おかえりー。殺すのを我慢するほど酷かったみたいだね。だけど、ヴィーネはダニエルの気持ちを尊重したんだね。フーゴは秘儀を覚えて守る側になれると勘違いをした。その為の努力もしないし覚悟も無かった。やはり国防は厳しそうだね」


殺気は出していないと思うけど母さんには筒抜けだよ。

社にいたのに会話の内容まで把握してそう。


経験なのかな…。


「国防は余り期待していないよ。時期が来たら孤児院軍(仮)を組織するしかないと思う。資料室の稼働と共に逃げ延びている邪魔な人は飛ばすよ。そこから先は、国を大きくするか、世界を滅ぼすか、どちらかだよ」

「ヴィーネの好きにしなよ。この世界は力が全てだから。不幸から身を守る為には強くなるしかない。世界最強のヴィーネが何かしたところで誰も文句は言えないから。私は隣で見ているね」


世界最強は面倒だよ…。

そのうち星ごと押し付けられそうだよ。


「今日は疲れたから寝ようよ!」

「はーい。最強さんの我儘には答えないとね」


最強さん…?

新しいあだ名なのかな?


国長でお腹いっぱいだよ!


布団を敷いてくれたからすぐに入る。

母さんがすぐに入ってくれるからね。


「じゃあ、おやすみー」

「うん、おやすみー」


母さんに抱き付き続けていたい。

それだけでいいよ…。


この時間を長くする為に国長を続けているのだから。

嫌な事が遭った日は母さんに抱き付いて眠るのが一番だよ。

追い詰められた時に本性が出ますね。

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