閑話 クリスタ 馬鹿と信者
フリッツの模擬戦の翌日にダンジョンに向かわせるとはね…。
討伐隊は壊滅するに決まっているじゃん。
隊長は予想すら出来なかったの?
生き残りだけで再編成するつもりで壊滅したの?
どちらにしても最悪な結果。
もっと隊長にきつく言えば良かったよ。
討伐隊にいた時にも感じていた。
国を守る気が無い人が多過ぎる。
普段守る仕事をしていないからだろうか?
しかし、実際に仕事をしたら殺される。
そんな事すら理解していない。
魔獣討伐の訓練をするだけで強くなると思っている。
シャーロット様の活動報告すら読まない。
明らかに異常な状態だった。
シャーロット様から秘儀を教えてもらった時、討伐隊にいる人たちは、特別な存在だと優越感に浸っているんじゃないのかと思った。
何故教えてもらえたのか、理解していないように感じた。
シャーロット様は討伐隊に国を守って欲しかった。
そして、多くの密偵を始末する中で感じたと思う。
討伐隊の力が足りないと。
だから、討伐隊の力を底上げする為に教えたのだと思う。
私は教師に選ばれたけど子供たちの方が真剣だった。
毎日真剣に授業に取り組み努力する。
思っていたのとは違い教師は楽しかった。
特に孤児院の子供たちが努力するから周りも引き上げられる。
良く出来た仕組みだと思うし、シャーロット様が子供を大切にする理由も分かった。
自分の過去に重ねているだけじゃない。
未来の事を考えているに違いない。
常に言っている言葉がそれを物語っているから。
人のできる事は人がするべき。
当たり前の事だけど殆どの人ができていない。
討伐隊の皆は理解しているのだろうか?
充実した日々の中、フリッツから声を掛けられた。
訓練所で模擬戦をして欲しいらしい。
面倒だと正直に思った。
笑える事に私に勝てると思っている。
そして、隊長はフリッツを負けさせたいと考えているに違いない。
本気でだるい…。
ただ、現在の討伐隊の様子を見ておきたいとも思った。
だから、模擬戦をしたのにここまで酷いのは…。
残念だと失笑する状態じゃない。
シャーロット様にあれだけ手厚くしてもらってこの状態。
本気で討伐隊の資格が無いと思った。
何故努力しないのかが分からない。
自分の可能性を教えてもらったのにさ。
しかも、実際に体験したのにだよ?
私だったら嬉しくて全力で動けるように努力するけど。
それほど、魅力ある授業だったと思うんだけどな…。
ほとんどの人が死んだみたいだけど当然だから何も感じない。
外の世界を舐め過ぎた結果だよ。
最悪な状況はまだ終わっていなかった。
シャーロット様が国民に向けて少し本音を話したから。
毎日のように時間に関係なくやってくる密偵。
常に対応し続ける土地神様。
守ってもらって当たり前だと思う住民。
これは、無言の命令だよ。
奴隷だと感じるに決まっているじゃん。
項垂れている暇があるなら、自分たちで守ろうと立ち上がるべきでしょ?
国防隊に名前は変わったけど、志願するべきじゃないの?
怒りを露にする奴までいる。
お前たちは何様なんだよ。
何なんだこいつらは。
見ていて本当に不愉快になる。
土地神様と崇めておきながら、奴隷として使ったんだ。
本気で報いを受けるべきだと思う。
シャーロット様がいなければ、国の半分以上の人間は奴隷か死ぬと思う。
それでいいと私は思う。
死ぬべき人間が神様の慈悲で生かされていただけ。
ついに、死ぬ時が来たんだよ。
生かされている間に努力もしなかったんだ。
死んで当然だよ。
シャーロット様が結界を張らないと休めないと思うような状況まで追い込んだんだよ。
どれだけ土地神様を働かせているんだよ。
ここの国民は頭おかしいのかな?
言葉と行動が噛み合っていないもん。
それに気付いてもいないし。
流石に街長や区長も怒るよ。
怪我と病気の回復だけで、どれだけ恵まれていると思っているの?
気まぐれで回復させてくれるだけで、土地神様だと思うよ。
それなのに、命まで守れって馬鹿じゃないの。
馬鹿は想像以上に馬鹿な事をする。
結界を張って休みに入ったシャーロット様に、命を守って欲しいとお願いするらしい。
とんでもない行列だよ。
道が人で溢れている。
街長や区長ですら手が出せない。
何か言えば暴動に発展するかもしれないから、何も言えない。
この国は終わっているんだ。
もう駄目だね。
これは酷過ぎるよ。
シャーロット様は当然のように予測しているよ。
馬鹿どもをお母さんのお墓に近付ける訳が無いからね。
命乞いをする害虫は、結界の前で惨めな姿をさらしている。
しかし、こいつらは結界が解除される日まで、張り込みをするらしい。
ここまで来ると殺意が湧くよ。
余りに醜いよ。
同じ人間として恥ずかしい。
何が土地神様だよ。
奴隷だと思っているなら正直に言えばいい。
そして、殺されればいい。
子供たちに悟られないように授業と孤児院の往復を続けた。
そして、結界解除の日。
張り込んでいた人々は興奮していた。
これで、お願いを聞いてもらえると。
どんな結末を迎えるのか、私は孤児院で皆と眺めていた。
「カーリンはどう思う?」
「殺される事はないと思うけど、洗脳くらいはされてもいいと思うよ」
熱烈な信者は違うね。
洗脳くらいは当然だと考えている。
「ビアンカは?」
「殺しても良いけど、出来れば子供に血を見せたくないわ」
あれあれ?
ビアンカも過激だ。
「レナーテは?」
「天国に行くでしょう」
いい意味で?
悪い意味で?
みんな孤児たちに優しいけど、シャーロット様の信者だからね。
こんな回答になっちゃうよね。
誰か正解がいたのだろうか?
結界にお願いをしに行った人は皆消えたよ。
他の住民も消えたみたい。
なるほどね。
消えた人たちを考えると予想は出来る。
国民を選別していたんだ。
授業で見なくなった子供もいる。
余程の事だと思う。
でも、仕方が無いと皆が感じているよ。
天国か地獄に行ったのか分からないけど、静かになって良かった。
孤児院に信者が集まっていますね。
クリスタも結構信者です。




