ジェラルヴィーネ 下準備
ディアナが秘書として補佐室に入るなら秘儀を覚えて欲しい。
基本的には戦わせるつもりは無いけど、どうしようもない状況も想定しておかないとね。
「母さん、ディアナに秘儀を覚えさせてもいいよね?補佐室は特別だと思うから」
「そうだね。孤児院と同じで補佐室も特別だね。不満が出ても潰せばいいけど、もう少し様子見するんでしょ?」
学校に通わせると意味不明なお願いに来る人がいるかもしれないって事かな?
その可能性は十分にあるし、もう少しの間だけ刺激をしたくないからね。
対処するのが面倒だよ…。
「マリアンネに教えさせる。問題のある人は、救済できる人がいなくなった時点で飛ばすか殺すつもりでいるよ。未亡人が増えていて、この国に残りたいと強く希望しているから夜の授業を全て受ける事で許す事にした。女性だけ飛ばしても碌な目に遭わない事は確実だからさ」
「ヴィーネの優しさは少しずつだけど伝わっているね。それだけで私は嬉しいよ!」
もう、そんな事はどうでもいいのに…。
母さんはいつも私の事を気にし過ぎなんだよ。
「じゃあ、マリアンネにお願いするね。いいかな?」
「いいよ。ヴィーネの好きな国にしなさい」
私の好きな国はここにあるんだよ。
母さんと社でゴロゴロしていたい。
偶に子供たちと鬼ごっこしたり、孤児院で遊んだりするだけでいいんだよ。
念話。
「マリアンネとディアナに話し掛けているよ。夜に仕事をさせるのは悪いと思っているけど今回は我慢してね。税理官の仕事終わりに補佐室に寄ってディアナはマリアンネから秘儀を教えてもらって。そして、秘書として仕事をする前に活動報告書を読み終えていて欲しい。ディアナに戦闘をさせるつもりは無いけど、万が一の場合があるからね。税理官の仕事を辞めて補佐室に戻ったらディアナには一通りマリアンネの仕事に付き合ってもらう。見たくないものを見る事になるけど覚悟しておいて。私たちの秘書をするという事は綺麗な仕事ばかりではないから。マリアンネは孤児院に行って魔法を覚える為の魔石を借りてきて。何か質問や問題はあるかな?」
「私が秘儀を覚えても問題ないのでしょうか?反感を持つ人がいるのかもしれません」
確かに不安になるよね。
大人が秘儀を覚える為にテストを実施しているのだから。
「学校に通わないから誰も分からないと思うけど反感を持つ人は飛ばすか殺す。補佐室は特別な場所だから。母さんがマリアンネの為だけに用意した特別な仕事だから。ディアナは覚悟できている?補佐室は孤児院と一緒だよ。私たちの為に動く組織だと考えている。当然だけど中途半端は許さないよ?」
「自分で選んだ道です。覚悟できています!」
覚悟しているならいいよ。
私たちは覚悟していると思って仕事をお願いするからね。
「それなら問題ないね。新人の教育が終わり次第補佐室に戻って。よろしくね」
「「かしこまりました」」
念話。
「カーリン。マリアンネが魔法を覚える為に魔石を借りに来るから貸してあげてね」
「はい。かしこまりました」
勘違いしている獣人の取りそうな行動は…。
秘儀を覚えた2人に頼る事かな?
念話。
「アンゼルムとハーラルトに話し掛けているよ。国内で獣人連合みたいな組織を作ろうとする人たちがいるかもしれない。誘われらた参加して様子見して。内容によっては皆殺しでいいから」
「「かしこまりました」」
これで資料室ができるまでの準備は終わったかな。
未亡人は教育を受けて希望の職に就いてもらう予定だよ。
「母さん、夜の授業の全教科にテストを用意して全て合格した大人用に缶バッチを作ってもらおうと思っているんだけどいいかな?予算は5000ギルだよ」
「それで最後かな?エルダードワーフにお金が片寄っているのが気になるね」
そうなんだよね。
そして、エルダードワーフはお金をほとんど使わないから余ってしまっている。
お金は眠らせておきたくない。
「エルダードワーフから素材採取の依頼を受けるようにするよ。お金より素材が欲しいと思うから。それでお金を吐き出してもらう事にする」
「それしかないかな…。素材によっては私たちが動く必要もあるだろうね」
間違いないね。
ほとんど私たちが素材採取する事になりそうだよ。
「じゃあ、チャドに話してくるよ。転移魔法」
母さんに手を振ってからエルダードワーフのお店に移動した。
「やあ、チャド。仕事のお願いに来たよ。今度は簡単な缶バッチの製作。大人が学校を卒業した記念だね。1つ5000ギルで手の平の大きさでお願い。服に付けられるようにして欲しい。これもかなりの量を作ってもらう事になると思う。そして、エルダードワーフにお金がかなり集まっていて使い道が無いよね?だから、素材採取の依頼を出せるようにするよ。欲しい素材を税理官室に伝えて。それならどうかな?」
「ほー、缶バッチね。まあ、簡単な仕事だな。それより、素材採取の依頼が出せるようになる方が魅力的じゃねーか。つまり、余っているお金を素材に代えられる訳だ。悪い条件じゃねーな。仕事で金をもらっているのに、素材をただで貰うってのも悪い気がするからよ。難易度の高い素材は2人が動くって事だよな?」
まあ、私か母さんしか不可能な素材もあるだろうからね。
エルダードワーフはそれを期待すると思う。
「勿論動くよ。なるべくお金を市場に流したいからね。悪くないでしょ?」
「ああ、最高だな!採取不可能な素材がないからよ。あいつらの仕事もやる気が出るだろうぜ」
本当に職人だね。
素材の為に仕事をするって不思議だよ。
その素材でまた仕事をするんでしょ?
それとも、自分の趣味かな?
「焦らなくてもいいから作り始めておいて。今後は移住する為に必須の条件にするから。どれだけ国を大きくするか分からないけど、かなりの数の缶バッチを作る事になると思う。一番簡単な仕事だと思うから、最終的には技術指導を受けている人に任せるようにして欲しい」
「なるほどな。問題を起こす馬鹿ばかり移住させても仕方ねーからな。国内改革の総仕上げって訳か。了解だぜ!技術指導を受けている奴に任せれば簡単な仕事をする必要もねーし、そいつらの生活も安定するな。相変わらず完璧な仕事だな。任せておけ!」
「教師から名簿が届くようにするから、缶バッチの中央に名前を刻印できる場所を空けておいてね」
「ああ、分かったぜ。これで馬鹿の見分けが簡単につく国の出来上がりだな。どれだけ国に残れるのやら、楽しみにしているぜ」
チャドは流石に分かっているね。
努力した人が分かるようにするのが目的だけど、努力していない人も目立つ。
「任せたよ。またねー。転移魔法」
社に帰ってきた。
念話。
「ビアンカ。夜の学校の授業の全教科にテストを用意するように伝えて欲しい。全教科に合格した人には缶バッチを贈る事にしたから名簿で管理しておいて。エルダードワーフに渡す用と学校の保存用だよ。今まで全ての授業を受けた人がいないし、今後の移住は全教科のテストの合格を必須にするから。任せたよ」
「お任せ下さい!」
念話。
「税理官室にいる全員に話し掛けているよ。夜の授業の全教科にテストを用意して、全て合格した人には缶バッチを贈る事にする。エルダードワーフから申請がきたらお金を渡して欲しい。1つ5000ギルで用意してもらう事にした。今後の移住の必須条件にもする。そして、エルダードワーフから素材採取の依頼も受ける事にした。税理官室で依頼額と採取する人を決めて。私か母さんしか不可能な素材なら迷わず社に来ていいからね。エルダードワーフにお金が集まり過ぎているからさ。頼んだよ」
「「かしこまりました」」
最後に国民に話して終わりたね。
「やあ、国長のヴィーネだよ。全国民に話し掛けているよ。夜の授業の全教科にテストを用意する事にした。全教科に合格したら証明用の名入り缶バッチを贈るよ。今までは必要だと思う教科しか受けていないみたいだけど、努力をした証明が欲しいのであれば全教科合格を目指してね。子供たちは全教科合格しているよ。夜の大人の授業は初等科の内容。そして、初等科で卒業する子供は1人もいない。大人にも最低限の教養は必要だと思うから頑張って。またねー」
あとは国内が綺麗になってからだね。
国民がどんな風に動くのか楽しみだよ。
「国内は総仕上げって感じだね。反発する人は飛ばすんでしょ?」
「勿論飛ばすよ。知恵の無い大人は必要ない。国を乱すだけだと分かったからね」
「ヴィーネは多くの人を救済したよ。もうすぐ好き勝手に国長ができるようになるね」
母さんには本当に筒抜けだね。
私の考えている事まで分かっている気がするよ。
「そうだね。好き勝手にするには国内を綺麗にしてからじゃないと面倒だから。私は多くの救済案を出した。もう十分だと思う。平和な国で何の努力もしないなら怠慢だよ。神国シャーロットに怠慢な人は邪魔だよ。母さんの名前を汚すだけだから」
「簡単に解決できたのに仕事ばかり増やすんだから困った子だよ。資料室が出来上がるまでは布団に封印されていよう。ヴィーネも疲れたでしょ?」
「そうだね。あとは念話で指示を出せば解決できる問題ばかりだと思うから布団に封印されよう」
母さんが布団を敷いたらすぐに入る。
隣に母さんが入ると甘い匂いがして、すぐに眠たくなる。
「じゃあ、おやすみー」
「うん、おやすみー」
今日も母さんにすぐ抱き付く。
この時間になると母さんの娘だと強く意識する。
いつまで甘えさせてくれるのか分からないけど、ずっとこうしていたいよ。
改革の準備が整いつつあります。




