ジェラルヴィーネ お仕事
クリスタに真面目なお願いをされちゃったよ。
今後を考えたらとても有益だね。
研究結果を学校で閲覧可能にすると他国の人に見られる可能性があるかな…。
いや、一番他国の人を見極めやすい場所だし捕縛もしやすい。
魔法の成長や様々な商品を生み出す切っ掛けにもなる。
研究内容を背表紙に記入して本のように資料室に集めるのはやっぱり有りだね。
そうなると、製紙業をもっと活性化させる必要がある。
研究員は紙を無料で使えるようにした方が良さそう。
紙代は申請すれば税金から支給されるようにしよう。
無駄遣いしたらすぐに分かる。
研究員は余り外に出ないからね。
偶には太陽の光を浴びるべきだよ。
「母さん、聞いていたでしょ?手伝ってね。クリスタがクリスティーネに甘い理由も知っているのでしょ?」
「クリスティーネ本人は自覚していないけど、軟禁に近い生活をさせられていたんだと思う。物事に疎いし考えるのが苦手だから。知らない事が多いし、知らない事に対して違和感を覚えない。情報を遮断されて知らないのが当然の生活を強いられていた為だと思う。クリスタはそれを察しているから手伝ってあげたいんだよ。根は真面目で努力家だから尚更ね。知識を得る事に積極的になれば改善されるだろうから資料室を提案したんだと思うよ。必要な知識を得るだけではなく、不必要かもしれない知識も得る。自分で何かを知り考えるという行為が当たり前になるようにね。それで、何を手伝って欲しいの?」
やはり孤児院の大人についてはかなり把握しているね。
普段の行動と感情だけで人を把握してしまうから凄い。
人を見続けてきた母さんには敵わないね。
知識として私にもあるけど、そこまで深くは把握できない。
自分で経験する必要があるのだろうね。
火吹きドラゴンは駄目過ぎるよ!
手加減して城に火を吹く事なんて一生ないからね。
「クリスタの要望通りの学校を建てるのと製紙業を活性化させて欲しい。今のままでは紙の値段が高過ぎるからね。作る紙を縦30cm横20cmで統一しよう。資料を並べた時に綺麗になるからね。食事場所から離れた南の森に製紙工場を建てて欲しい。母さんは建物だけで必要な設備や道具は職人に作らせて。費用は税金で負担するように話してくるよ。建物を建てたり国民と会話するのは母さんがした方がいいでしょ?私はそれ以外の雑務を全部してくるよ。どうかな?」
「なるべく国民に仕事をさせたい訳だね。製紙業を活性化させるとしても人が足りないから病院関係者を雇う必要がある。仕事が無くて困っている人をなるべく救済したいんだ。結局飛ばしていないもんね。ヴィーネは優しいね!」
母さんは私の事を優しいと思い過ぎだよ。
偶々だよ…。
「お願いしてもいいって事だね?」
「娘の頼みは断らないよ。早速学校を大きくしてくるね。転移魔法」
母さんは手を振ってから学校に移動した。
優しいのは母さんの方だよ。
私の為に何人飛ばして殺すつもりだったの?
本当に私の事になると手加減しないんだから…。
私の事を怖がっている人は多いけど仕事を真面目にするなら別にいいよ…。
暴動を起こすつもりの人たちには容赦しないけどね。
後の事はいいや…。
仕事を終わらせて寝よう。
母さんの方が早く終わっちゃうよ。
転移魔法。
研究所の所長室に移動した。
「やあ、ダミアン。今日は大切な話をしに来たよ。研究員は研究結果を個人で所有しているよね?研究が途中でも未完でも構わないから、月に一度は綴じて学校の資料室に置いて欲しい。背表紙を付けて研究内容が分かるようにしてからね。紙代は税金から出すよ。研究員も他分野の研究内容を偶には見るべきだよね?それに、研究で得た知識は国の財産だから残すべきだよね?これからは紙の規格を統一するから新しい紙を買って研究に励んでね。紙は研究所でまとめて購入して。紙代は税理官室に申請してね。研究員の仕事が増えるから研究費をできるだけ増額するよ。研究にはお金が掛かるからね。一気に話したけど質問はあるかな?」
「どのような研究内容であろうとも、答えが導き出せていなくても、研究した証を残し続けると言う事ですね?途中で終わっている資料を見た誰かが研究を進めてくれるのかもしれない。行き詰っていた研究でも他分野の研究内容を見れば糸口が見付かるのかもしれない。研究員の努力は後世まで残り続けるという事ですね?」
何故か燃えているね!
目力が凄いんですけど…。
少しずつにじり寄ってくるのを止めて欲しい。
念力で固めようかな…。
女の子に迫ろうとする変態にしか見えないよ?
目がギラギラしているからね。
「その通りだよ。そして、国民には閲覧権限をあげる。つまり、研究に興味を持つ人が増える。子供にも分かりやすく書いてくれたら最高だよ。研究に興味を持つ子供が増えるからね。製紙業を拡大させるから再来月からお願いするよ。研究員への説明は任せたよ」
「お任せ下さい!この研究所を研究員で埋める為に私は全力で説明しましょう。そして、学校の資料室を最高の研究結果で埋めてみせましょう!」
今はまだ研究員が少なくて部屋が空いているからね。
研究所が手狭になるくらい研究員が増えたら凄い事だよ。
その時には新しい研究所を建てればいいね。
国の発展に研究は欠かせないから。
「じゃあ、任せたよ。転移魔法」
税理官室に移動した。
「やあ、ディアナ。仕事を持ってきたよ。大切な仕事だから全員が全力で取り組んでね。話をしてもいいのかな…?」
どんどん悲しそうな顔になるディアナに話し続けていいのか迷っちゃったよ。
税理官室はそんなに激務だったのかな?
念話。
「マリアンネ、再来月まで税理官室で働いて欲しい。国の未来が掛かっているからね。ディアナが泣きそうだからすぐに来て」
「かしこまりました」
「少し待ってね。ディアナが忙しそうだから助っ人を呼んだよ」
「あー、ヴィーネ様!助っ人を呼んで下さるなんて神様ですね」
ディアナってこんな感じだったかな?
記憶の中だと大人しい秘書なんだけど…。
お祭りの屋台で土地神リンゴ飴を売っているね。
作ってもいるみたいだし。
フーゴに依頼されたのかな?
まあ、自分で給料を決められるから問題ないね。
マリアンネが来たね。
「ディアナ、何を泣きそうな顔をしているんだ?ヴィーネ様が仕事の話ができなくて困っているじゃないか」
「あっ!マリアンネさん!私は秘書に戻りたいんです。戻れませんか?」
「私に聞いてどうする?私はお2人の補佐なんだぞ」
「何とかなりませんか…?」
物凄い悲しそうに見詰めてくるよ。
秘書の仕事がしたいんだ…。
マリアンネと一緒に税理官になったのに、マリアンネが私たちの補佐になったから置いてけぼりになっちゃったんだ。
寂しかったのかもしれないね。
「ディアナの気持ちは分かったよ。マリアンネは再来月までここで働いてもらうから、その間に2人以上雇えたら補佐室の秘書になってもいいよ。それ以降でもいいけど今が人を雇える一番の機会だから、次の機会は約1年後になる。それでもいいかな?」
「ヴィーネ様ー!精一杯頑張ります。勿論それで構いません」
「ディアナ大丈夫か?そんなに激務だったのか?」
「いつもですから心配しないで下さい。忙しいのは間違いありませんけどね」
税理官の仕事が楽な訳がないからね。
ここで国の方針を決めているのだから。
「じゃあ、話をするね。研究員が途中で止めた研究でも関係なく、研究で得た知識を全て学校の資料室に集める事にした。その為には大量の紙が必要になるから製紙業を活性化させる必要がある。建物は母さんにお願いしたけど、必要となる設備や道具は全て職人に作ってもらうから費用は税金で負担して。当然製紙業には人が足りなくなるから仕事を探している人をどんどん斡旋してあげて。それと、研究所が大量の紙を購入する資金は税金で負担する事にする。研究所から申請が届くようにしたから。あと、研究にはお金が掛かるからなるべく研究所の予算を増やしてあげて。これはできる限りでいいよ。稼働は再来月から。さて、質問はあるかな?」
「私は全てが稼働するまでの臨時という事ですね?」
「その通り。流石にディアナが可哀相に見えたからね。かなり大切な仕事だよ。資料室に研究内容が蓄積されていく事により商品開発の切っ掛けになる。魔法の腕を上げる為に必要な知識があるかもしれない。自分の欲しい知識が無いのであれば研究をお願いできるようにもする。自分が研究員になる道もある。国民は閲覧可能にするけど他国の人には極秘。国の重要な財産だからね。資料室が出来上がる事により大人を篩に掛ける事ができる。この国は更なる発展を目指すのだから現状維持で満足されては困る。子供と大人で差があったけど、大人の中でも差ができるようになる。現状維持で満足しているのなら見逃すけど、不満を感じて暴動を起こしたら容赦しない。今までは努力している人もしていない人も一緒だった。これからは給料や生活に差が出るようになる。他に質問はあるかな?」
ディアナはマリアンネが来て落ち着いたし大丈夫そうだね。
置いて行かれて寂しかっただけなのかも…。
「無さそうだね。じゃあ、お願いするね」
「「かしこまりました」」
転移魔法。
社に帰ってきた。
母さんはまだいないね…。
念話。
「やあ、国長のヴィーネだよ。全国民に話し掛けているよ。再来月から新しい取り組みが始まる。研究員が研究で得た知識を全て学校の資料室に置く事にした。資料室に行けば知識が得られる事になる。勿論持ち出しは厳禁だから資料室で読んでね。国民は閲覧可能だけど他国の人には極秘。漏らしたら重罪。国の重要な財産だからね。研究内容から新しい商品を開発するのは自由だよ。魔法の腕を上げる事ができるかもしれない。自分の知りたい研究内容が無ければ研究所に要望を出せるようにする。何を知りたいのか、何に利用するつもりなのか。当面はビアンカがまとめてダミアンに渡して。当然だけど研究してもらえるかどうかは分からない。どうしても知りたいのであれば自分が研究員になればいいよ。今後の為に学校も大きくした。仕事を探している人が多いよね?そこで人が足りない職業を教えてあげる。税理官、製紙業、研究員、教師、孤児院専任料理人だよ。就職希望を出して足りない知識があるのであれば、勉強する時間は十分あるから頑張って。就職希望を出した人で生活が苦しければ税理官室に申請してね。またねー」
母さんは帰ってきてから私の話を静かに聞いていたよ。
どうせ褒めるんだよ…。
「ヴィーネは本当に優しいね。ディアナの為にマリアンネを呼んだでしょ?そして、ディアナがマリアンネの秘書に戻りたがっているから税理官を最初に紹介したんでしょ?」
何でそこまで詳しいの?
現場にいないのに把握し過ぎだよ。
「税理官室が忙しそうだから臨時でマリアンネに仕事を頼んだだけだよ。ディアナが秘書に戻りたいと言うから2人以上雇えたらと条件を出してきた。後は全部偶然だよ…」
「そっかー。ヴィーネは偶然でも優しくなっちゃうんだね。それじゃあ仕方がないね」
本当にもう…。
母さんは私を褒め過ぎだよ。
物凄くお金を使っても全然怒らないし。
褒められてばかりだよ。
何を言っても褒められるだけだから早く寝たい。
「母さん寝ようよ!」
「そうだね。今日はたくさん仕事をしたしお風呂に入ってから寝よう」
「いいね。お風呂に入ろう!」
母さんと一緒にお風呂に入れるから、ここにお風呂を作って良かったよ。
お風呂では余り話をしないけど、ゴロゴロしているのと似た感覚になるんだよね。
お風呂から出ると母さんが布団を敷いてくれるからすぐに入る。
大きな布団だけど真ん中から少しだけ横にずれて入らないとね。
母さんが隣に入ってくれるから。
「じゃあ、おやすみー」
「うん、おやすみー」
今日も母さんに抱き付く。
とても安心できるし心が安らぐんだよね。
世界に怖いものなんて無いのに、何に安心しているのだろう?
母さんが隣にいる事に安心しているのかな?
うーん…。
考えるのはやーめた!
私の一番幸せな時間が勿体ないからね。
ディアナのやる気が急上昇です。




