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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第1章 シェリル

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閑話 ディアナ 勘違いした住民

討伐隊が壊滅した後に区長会議を行いました。

国を守る為の組織が国から出ただけで壊滅したのです。


どれだけ甘えていたのでしょうか?

そして、これからどうするべきでしょうか?


街長もかなり悩んでいます。

国防隊と名付けたのはいいが役立つ日は遠いからです。


この国に守る人は必要なのでしょうか?

街の発展だけに力を注いでいけばいいと思うのです。


街長から声を掛けられました。

「ディアナ。今回の討伐隊の件、どう感じた?」

「国を守る事を諦めて、街の発展に力を注いだ方が効果的では無いですか?」


街長は失笑しています。

「なるほど。それが住民の考え方か。シャーロット様はどう考えていると思う?」

「討伐隊を組織したのは失敗したと、必要無かったと考えているのではないでしょうか?」


街長の表情が変わります。

怒っているのか悲しんでいるのか分からない表情です。


「ディアナ。会議の時にシャーロット様の表情を見ていなかったのか?もう人間に失望しているよ。それを間近で見ていて分からないのか?」

「それは、討伐隊に失望したのでは?全体に失望する理由はないと思います」


「そんな風に考えるのか。シャーロット様が国を守るのを止めたらどうする?」

「止める前に国防隊が形になると思います」


「恐らく、シャーロット様がここに話しに来る。お前は現実を分かっていない」

「現実とは、シャーロット様に守られている現実でしょうか?」


「違う。討伐隊に一番期待していたのはシャーロット様だよ。人の相手は人がするべきだと考えているからね。まあ、当然の話だ。おかしいと感じるだろ?住民が討伐隊に期待していない。結果的に、一番期待していたのがシャーロット様になってしまっている。そして、思うはずだ。もう、この国を守る価値はないと」

「何故ですか?今まで守って来た成果が無くなりますよ?」


「じゃあ、それだけ守ればいいな。子供たちと研究をしている大人たちだけだ。シャーロット様はそう考えるかもしれないぞ?何でお前は自分が守られると思うんだ?」

「500年以上に渡って守って来たからです。シャーロット様には守る理由があると思っています」


街長の表情が怒りに変わりました。

「おい!私は住民の意見を聞くつもりでお前に話を聞いている。お前の答えが住民の大多数だった場合、もう終わりだ。シャーロット様は大人に見切りをつけ始めている。そして、お前の答えはまさに最悪だ。私は疲れたよ。お前達は何も分かろうとしない。考えようとしない。シャーロット様が人を殺しているのを知っているお前が、自分は死なないと思っている。異常だよ」

「そうなんでしょうか?自分が死ぬ事も考慮するべきだという事ですか?」


街長の言いたい事が分かりません。


最近、子供達に教える事や、国民に伝達する内容が過激だと感じます。

自分達は寄生虫だと。

もっと住民は考えるべきだと。


私もそう思いますが、何故そこまで深刻に考えるのかが分かりません。

時間は十分にあると思います。

焦る必要は無いと思うのです。


シャーロット様が部屋に訪れました。

いつものように、街長をどこかに連れて行かれるのでしょうか?


しかし、シャーロット様は街長と話し始めました。

「マリアンネ、今回の討伐隊の事で思ったんだけど、この国の大人に守る価値は無いの?」

「研究に関わっているような人以外、守る価値は無いですね」


街長が守る価値が無いと言うのは予想取りです。

でも、守り続けて来たのです。


「守るの止めようか?私としては手厚く対応したつもりだけど成長が見られない。これが人だというなら受け入れるよ。500年以上人を見てきた。街に人が増えて行くに従って質が落ちている。これはどういう事だろうか?皆、自分は死なないと思っている。おかしい気がするんだ。昔は今みたいに他国から狙われていなかった。だから分かるよ。でも、今は多くの人を毎日のように殺している。私が人を腐らせているのかな?私とジェラ姉ちゃんの攻防を見ても、恐怖を感じた人が少な過ぎる。理解ができないんだよ。私が本当は怖い吸血鬼だと教えてあげれば理解出来るかな?」


シャーロット様の話を聞いて嫌な汗が背中を滑ります。

どうしてしまったのでしょうか?

何故そんな事を言うのですか?


討伐隊が壊滅した結果だけの意見では無いようです。

つまり、常に人に対して感じていた不満。

明らかに人間に失望しています。


人に育てられた優しい吸血鬼じゃないのですか?


「区長たちと努力していますが成果が見られません。身近で人が死ぬしかないと思います」

「私が動かないだけで簡単に殺されるから殺す必要も無いね。それすら、理解していないみたいだよ。どうして欲しい?土地神だと崇めてくれるのは嬉しいけどさ、おかしいと思わない?何で土地神が毎日、住民の為に働き続けているの?この国の住民は理解していないみたいだけど、私って奴隷だよ。それも、理解していないのかな?無言で命令されているんだよ?助けてくれるのは当たり前だって」


「その通りですね。シャーロット様が、守りたいものだけを守るのが、一番じゃないでしょうか?」

「うーん…。もうちょっと考えてみようかな。またね」


シャーロット様は去りました。

そして、街長は悲しんでいます。


「お前も理解したか?これが現実だよ。シャーロット様の善意を踏みにじっているんだよ。そして奴隷のようにしている。お前もその1人だ。守られるのが当然だと思っている。私はもう疲れた。疲れるだろ?全然理解しないからな」


体が震えて止まりません。

私達はこれほどの事をしていたのですか…。


「どうすればいいのでしょうか?」

「それを考えろと言ってきたんだぞ?子供たちに教える事を教師に伝えても、自分は何も考えていない。私もこの街に来た時に土地神様だと感じたよ。そして、街長になった時に違和感を覚えた。シャーロット様の言葉通りだ。人が増えるに従って、質が落ちている。謝ろうが何しようが関係ない。シャーロット様が守らなければ、この国は即座に滅ぼされる。お前は奴隷が現実的だな。お前に守られる価値は無いし自分を守る力も無いだろ?この国は誰の国だ?私たちの国だろ。昔は知らないが、今の住民のほとんどはシャーロット様の願いを踏みにじり続け土地神様を奴隷にした。しかし、お前も理解しているが土地神様の力は本物だ。奴隷でいてくれる訳がない。今後は守りたい者だけを守るのが一番可能性が高い。区長たちが苦悩している理由が分かっただろ」


言葉が出ません。

頭が真っ白です。


「おい!震えている暇があるなら、国民に伝えてこい。国民を守る為に毎日人を殺している土地神様を、奴隷にした馬鹿な国民に愛想が尽きたとな。お前たちは神様を奴隷に出来るほど偉いのか?自分たちで国を守る努力くらいしろとな」

「すぐ伝えて来ます!」


私は国民に伝達するように手筈を整えました。

シャーロット様の考えが伝わるに従って多くの国民は項垂れました。


いつも通りに働く人もいれば動かない人もいます。

これが考えていた人との差なのでしょうか?


街長室に戻る途中でハイエルフの長老に声を掛けられました。

そして聞かれたのです。


「何かあったみたいですね。教えて頂けませんか?」


今までの経緯をお話ししました。

「なるほど。この国の人は自分たちの事を守る気が無いのですね。討伐隊や魔獣の討伐方法、訓練方法、防護壁まで用意してもらって、更に魔力の使い方まで教えてもらって、それでも、守る気が無いと。そこまで酷い人たちだったのですね。シャーロット様が奴隷だと感じるのも当然です。どうしようもない時に助けてくれるのが、神様じゃないのですか?」


そんな時、国民に対してシャーロット様が話し始めました。

「皆は自分たちの国を守る気があるのかな?私は時間を問わず、毎日のように他国の人を殺し続けて、皆を守って来たけど、それって奴隷だと思うんだ。ちょっと疲れているみたいだから、3日後に国に結界を張るよ。国から人が出られなくなるし、入れなくなるから気を付けてね。3日休みをもらうよ。じゃあね」


長老はとても笑顔です。

「やはり、お優しい方じゃないですか。奴隷として働かされて、まだ助けてくれるんですよ?素晴らしいですね。やはり、この国に来て正解でした」


長老の言葉の通りだと思います。

しかし、私の頭は受け付けてくれません。


すぐに街長室に戻りました。

すると、街長から声を掛けられました。


「奇跡が起きた。まだ、人に機会をくれるとは。実際は何も考えずに過ごしたいだけだと思うぞ。それが、シャーロット様にとっての贅沢になってしまったんだよ。お前は毎日のように働いているか?寝る時間も働いて起きている時間も働いて。土地神様に守ってもらえるから国を守る必要はありませんだと?笑わせるな。神様は人の都合で使うものじゃない。病気も怪我も治してくれるだけで十分に土地神様だ」


何も考えられません。

そして何も思いつきません。


頭は真っ白なままです。


土地神様と崇めながら奴隷にしていたのです。

守ってもらえるのが当たり前だと思っていた害虫ですね。

守ってもらえるのが当たり前なんて無いですよね。

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