シャーロット 国防軍の再テスト(後半)
さて、どんな人たちが集まっているかな?
マリアンネも来ているね。
テストに参加するのかな?
人間はフーゴとダニエルとアリスターだけか…。
この国で一番多い人間がこれだけでは駄目だね。
他の種族は人数が少なくても最低3人は来ている。
国防を意識している証拠だよ。
ヴィーネが話すみたいだね。
「皆お待たせ。今回のテストは命懸けだと知っていて参加を決意したのは立派だよ。だけど、本当に命懸けだから帰るなら今の内だよ。テスト内容は周知されている通り。でも、前回国防軍が秘儀を覚えたテストも実施しないと不公平だと思ってね、別のテストも実施する事にしたよ。テストは2種類。国防軍のテストと警備隊のテスト。国防軍のテストは周知されている通りの殺気を当てる。合格者は秘儀を覚える資格が有り、エルダードワーフの武器を与える。あと、警備隊よりも給料が多くもらえる。警備隊は前回国防軍が合格した殺気を当てる。秘儀を覚える資格が有り、給料がもらえる。今後はテストを1年に1回に戻すから、警備隊で秘儀を覚えた後に国防軍のテストに挑戦するのも有りだよ。マリアンネはテストに参加する?」
マリアンネはどうするのかな?
「いいえ、私はテストに参加しません。臨時ではありますが隊長としてお手伝いに来ました。今回のテストで新しい隊長を決めていただきたいです。私はお2人の補佐としての仕事を優先したいと思います」
補佐の方が大変な気がするけど、マリアンネが納得しているならいいね。
私からマリアンネにお願いしておこう。
「マリアンネに仕事をお願いするね。秘儀は私が命懸けで生み出した技術だから、鍛える事を止めたり軽く扱うような真似をしたら記憶を消す。初めて秘儀を覚える人には厳しさを知ってもらいたいから、一度だけマリアンネの講習を受けて。その後に学校で子供たちと一緒に秘儀を学んでね。学校に通っている期間は税金から給料が出るから心配しないで。マリアンネ、いいかな?」
「勿論です!私たちと同じ過ちを繰り返さないように伝えさせていただきます」
マリアンネの講習を受ければ同じ勘違いはしないと思う。
国防軍の中で一番説教をされたのはマリアンネだからね。
「誰も帰らないからテストを始めよう。最初は警備隊からね。仕事内容は国内の警備を専門にしてもらう。最終的には私からの指示が無くても犯罪者から国民を守れるようにしたいからね。警備隊のテストを受ける人以外は壁まで下がって。テストに参加する人は中心に集まって私と同じ距離を取れるように円になって」
アリスターは最初から国防軍のテストを受けるんだ。
凄い気合が入っているね。
流石だよ!
子供の笑顔を守りたいフーゴとダニエルは警備隊だね。
商店街に2人がいるだけで国内の治安はかなり良くなるよ。
警備隊テストの参加者…。
人間は2人。
獣人は15人。
ハーピィは5人。
セイレーンは2人。
ダークエルフは8人。
数えてみると意外と参加者がいるよ。
多くの人が合格してくれたら嬉しいけど…。
獣人は前回のテストを経験しているから余裕なのかな?
ダークエルフにも同じ感じの人がいるね。
非常に残念だよ。
「さあ、覚悟はできたかな?自分の命を諦めたら死ぬよ。誰かを守る為には自分が死ぬ訳にはいかないからね。じゃあ、気合を入れて。行くよ!」
テスト前に覚悟を持ちやすいように話しているのはヴィーネの優しさだね。
死ぬ気で守っても意味が無いから。
生きているから守る事ができる!
死んでしまえば守れたかどうかは分からない。
テストが始まったね。
予告通りの殺気がヴィーネから当てられている。
立っている人は全身が震えているね。
私の時とは違って少しずつ殺気を解放した訳ではないから、気を失って倒れた人が多い。
やはり私の時のテストよりかなり厳しいね。
このまま続けていると倒れている人が死ぬかもしれない。
無防備でヴィーネの殺気を浴び続けているのは余りにも危険過ぎる。
今後の脅しの意味を含めて何人か殺すのだろうか?
国長の判断に任せよう。
そろそろ死にそうな人がいるね。
誰か死ぬまで続けるのかもしれない。
「終了ー!立っている人は合格だよ。誰も死ななかったね。念力。壁際で休んでいて。マリアンネは気絶している人を起こしてあげて」
「かしこまりました」
警備隊テストの合格者…。
人間は2人。
獣人は0人。
ハーピィは3人。
セイレーンは2人。
ダークエルフは3人。
前回のテストを経験していると余裕を見せていた人はやはり落ちたね。
同じ殺気でも当てられ方で全然違うと理解していない。
そもそも、獣人は覚悟が足りないよ。
「さて、国防軍のテストを始めるよ。母さん、休んでいる皆に結界をよろしく。徐々に解放されていく殺気ではないから最初から全力で抗う必要がある。気を失ったら確実に死ぬよ。私と一定の距離を保って。絶対に死なない覚悟を持ってね。行くよ!」
3重結界。
国防軍のテストの参加者は現国防軍5人とアリスターだけ。
危険な国防軍のテストでは耐える為の助言をしてあげるなんて優しいね。
ヴィーネはテストで誰も殺したくないみたい。
テストが始まったね。
倒れた人はいないけど膝を突いている人がいる。
倒れたら確実に死んでしまうから頑張って耐えて欲しいね。
「今から私の肩に最初に手を置けた人が隊長だよ。全力で抗ってたどり着いてね。制限時間は1分だよ」
やはり誰も殺すつもりが無い。
膝を突いている人の限界を考えて制限時間を設けたね。
膝を突いている人は合格なのかな?
倒れていないからどうするんだろう?
誰かたどり着けるかな…。
「終了!全員合格だよ。アリスターが隊長になるとはね。秘儀の鍛錬をしていないのに凄いよ!」
「あ…、ありがとうございま、す」
結界解除。
範囲高位回復魔法。
本当に凄いよ!
元冒険者であり冒険者組合本部の組合長だった。
犯罪の依頼を止め続ける為に修羅場をくぐり抜けてきたのかもしれない。
「今後の方針を伝えるよ。全員秘儀の鍛錬を全力でして。はっきり言って弱過ぎる。あと、活動報告書に必ず目を通して。私たちの行動や国で起きた犯罪を全て記載しているから。それと、税理官室と補佐室をまとめて、国防軍と警備隊が休憩できる施設を建てる。国防管理所とでもしておこう。そこで管理するように。犯罪者について、当面は私が最寄りの合格者に念話するから対処して欲しい。国防軍と警備隊にはプレートを用意するから身に着けていてね。アリスターは秘儀を鍛錬しながらこの国をもっと理解して欲しい。今の状態では警備配置を考えるのも難しいと思う。目標は私や母さんからの指示が無くても国内の犯罪を全て防ぐ。戦争についてはまだ先の話だね。国防管理所は今すぐ建ててくるよ。母さんはエルダードワーフにプレートと武器の依頼をお願い。マリアンネは私に付いてきて。テスト参加者はゆっくり休んでね。明日は国防管理所で13時からマリアンネの講習。明後日から子供たちと一緒に授業を受ける。質問がある人はいるかな?」
「はーい!予算はいくらですか?」
国長に全部丸投げしているからね。
一応確認しておかないと。
「もー、わざと仕事を増やさないでよね。プレートは1万ギルと5万ギル。剣は50万ギルでいいでしょ?よろしくね!」
「予算は全部私のお金だよね?そこには触れてくれないの?」
物凄い投げ遣りだよ。
面倒そうに答えられちゃった。
しかも、皆からのお賽銭を当たり前のように使おうとしているよ。
国の為だから私も文句は無いけどね。
「母さんのお金は税金の一部だから。私が自由に使ってもいいでしょ?好き勝手にしてもいいでしょ?」
「はーい。国長の言う通りにします」
物凄い我儘娘だよ!
私のお金が税金になっちゃった。
「じゃあ、マリアンネ行くよー」
「かしこまりました」
2人が転移で移動した。
マリアンネに建物の案を考えてもらうんだろうね。
「お疲れ様。今日はゆっくり休んで。体力は回復したけど精神力は回復できないからね。家まで帰れないのなら訓練場の宿舎を使って。この国は国民の国であると意識してもらう為には皆の活躍を見せるのが一番だと思うから頑張ってね。またねー。転移魔法」
チャドの店に移動した。
「チャド、仕事の依頼だよ。警備隊のプレートを10個と国防軍のプレートを6個。1つ1万ギルと5万ギルでお願い。あと、国防軍専用の剣を6本。これから何度も頼むと思うから黒剣より性能を抑えた物でよろしく。1本50万ギルでお願い。できそうかな?」
「おいおい、大仕事じゃねーか。そうか、今日は国防軍の再テストだったな。警備隊なんてものまで用意したのか。国長様は全力だねー。プレートも剣も何度も作る事になる訳だな。一目で国防軍と警備隊だと分かるプレートと、国防軍が誇れる剣を用意すればいいんだな。楽勝だぜ。任せておきな!」
全部合わせて340万ギルだね。
時空魔法で社から取り出す。
「流石だね!はい、340万ギル。皆楽しみにしているよ」
「おおー!こんな大金を目にすると俺の心が揺れるぜ。まあ、任せておきな。プレートは早めに用意するように言っておくからよ」
値段以上の物が必ず出来上がるから、チャドがお金を少しくらい使っても問題ないよ。
仕事の窓口としてお金をもらっているみたいだから必要ないと思うけどね。
「じゃあ、よろしくね。またねー。転移魔法」
噴水前に移動した。
ヴィーネの仕事は早いね。
ここからでも国防管理所は良く見える。
いやいや、見え過ぎだよ!
突然大きくなり過ぎだね。
補佐室と税理官室を合わせて、更に3階建てにしている。
歩いて国防管理所まで行く。
「ヴィーネ、終わったかな?」
「終わったよ。これだけの広さがあれば大丈夫でしょ?3階は税理官室、2階は補佐室、1階は国防軍と警備隊の休憩室だね。シェリル区までに犯罪者を止めれば問題は起きないよ。マリアンネもお疲れ様。明日の講習をよろしくね」
「お任せ下さい。勘違いをしないように話をしたいと思います」
簡単に強くなると勘違いをしてしまうからね。
努力する事を忘れてしまう人が多い。
警備隊は同族に国防軍もいるから大丈夫そうだね。
経験者の話は一番為になるよ。
今後も人が増えてくれれば、勘違いしている人は同族が対応してくれるようになる。
少しずつだけど国が変わり始めているね。
「ヴィーネ。後は任せて帰ろうか」
「そうだね。明日から忙しくなりそうだけど今日はこの辺にしておこう。またねー。転移魔法」
明日から病院を潰して研究所を建てて、孤児院の前の焜炉を潰して小さな病院を建てて、検問所の横に商人組合所を建てるんだよね。
そして、入国する犯罪者に対処して世界も監視する。
国長忙し過ぎるよ!
好き勝手に国長をしているのに仕事を詰め込み過ぎじゃない?
建物を用意すれば、後は働く人の問題になるから大丈夫なのかな?
色々と考えながら布団を敷いたらヴィーネはすぐに布団に入った。
私もすぐにヴィーネの隣に入る。
「今日はお疲れ様。ヴィーネらしいとても優しいテストだったね。おやすみー」
頭を撫でながら今日の仕事を褒めてあげる。
「偶々だよ…。おやすみー」
今日もすぐに抱き付いてくるね。
私の大切な我儘娘はとても可愛くて優しい子だよ。
シャルに褒められたいから優しいテストになりました。




