ジェラルヴィーネ 国防軍の再テスト(前半)
本当に人は予想外の行動をするね。
国防軍の再テストに参加する必要は無いと思っていた2人が参加を決意している。
2人は戦争になっても必ず守ってもらえる。
私か母さんが守らなくても絶対に安全だと言える立場にいる。
それなのに、力を得ようとしている。
子供たちを守る為に。
戦争で役に立てるとは考えていないみたい。
目の前の犯罪者に対処できればいいと考えている。
それでも立派だね!
ダニエルは孤児院に頼ってしまったのが切っ掛けだね。
フーゴは子供と多く接しているから、目の前で事件が起きた時に何もできない自分を想像したんだね。
実際は子供が自力で解決してしまう。
でも、フーゴはそんな事は関係ないと考えている。
その時に動けないであろう自分を恥じているんだね。
子供に守られるような男でいたくない。
子供に愛されるお菓子屋さんの本気は凄いね!
ダニエルの行動は予想外過ぎるよ。
特産品で大人気の土地神りんご酒の販売を国防軍限定にするとはね。
最高に面白いよ!
私の隣で土地神様が少し困っているからね。
「母さん、今回は流石に予想外でしょ?ダニエルは暴動が起きたら全員を倒すつもりでいるよ。国防軍の再テストに落ちたら死ぬだけだと覚悟もしている。孤児院の子供たちに頼ってしまった事を相当恥じているね。自分に力が無い事を悔やんでいる。国民がお願いに来る可能性があるよ?土地神りんご酒を皆に売るように説得して下さいってね」
「もー、本当に予想外過ぎるよ。フーゴにはお祭りの時に子供たちの笑顔を守ってくれていると言ったんだけどね。笑顔にするだけでは駄目みたい。ダニエルも凄いね。国防軍にしか売らないと言っているけど、売る相手を限定するつもりだね。勘違いしている人には売らないって事だと思う。それでも効果は抜群だよ。再テストの参加者は増えないだろうけど、ダニエルが合格したら暴動を自力で鎮圧できるようになる。お願いに来てもダニエルの言葉を曲げるつもりは無いよ。造ったお酒を誰に売るのかはダニエルの自由だから。でも、2人がテストで死んでしまうと損失が大き過ぎるよ。子供の笑顔も、大人の笑顔も減る。再テストの参加者が増えて困るなんて予想外だよ!」
2人が参加するから手加減するなんて事はできない。
そんな事をしたら、本気で鍛錬している人を侮辱する事になる。
でも、2人がテストに合格できるかは分からない。
国や子供を本気で守るつもりがあれば合格するはずだけど、断言はできないから。
侵略される恐怖や戦闘による恐怖を2人は知らない。
参加しない国民より想像はしているけど、想像でしかないとも言える。
その差が余りにも大きい。
手加減しないけど簡単に2人を死なせる事はできないね。
多くの人が生き残れるかもしれないテストを用意しよう。
用意したかった職業だしちょうどいいね!
「テストを2つに分ける事にするよ。国防軍と警備隊のテスト。警備隊は前回の国防軍のテストと同じ殺気に耐えたら秘儀を覚える資格があるとする。国防軍は宣言通りの殺気を出す。それなら、秘儀を覚えた現国防軍からも不満は出ないだろうし、厳しいテストには変わりないからね」
「それが妥当な落としどころだね。でも、それだと皆が警備隊になりたがらない?」
前回の殺気なら死ぬ事は無いから安心だと考えるような人は参加者の中にいないと思いたいけど、そんな考えなら戦争で戦う事はできない。
戦場の恐怖はそんなに甘いものではないから。
それに、徐々に強められる殺気と最初から強い殺気を当てられるのは違う。
前回参加している人でそこを勘違いしていると、今回は気を失うか死ぬ。
「2つの組織に差をつけるよ。国防軍にはエルダードワーフの武器を与える。警備隊は何も無し。当然給料も差が出るようにする。秘儀を使えれば国内で武器を握る必要は無いからね。そんな感じでどうかな?」
「そういえば、国防軍に専用の武器を与えていなかったね。エルダードワーフの武器を持つ資格があるのかどうかも含めたテストとすれば文句も出ないだろうね。クリスタが持っている黒剣より性能をかなり抑えた武器でも十分過ぎる。持っているだけで誇れる武器だからいい案だと思うよ」
国防軍でもクリスタが持っている武器と同等のものは渡したくないんだね。
珍しく母さんの本音が出ているよ。
私もそれには賛成だけどね。
秘儀を極めたクリスタと同じ扱いにはしたくない。
カーリンやレナーテにも武器を用意する事になりそうだね。
秘儀を極めたらご褒美は必要だよ。
「さあ、再テストの時間だよ。訓練場に行こう!」
「国長として大切な仕事だから頑張ってね。今回は約束通り誰も守らないよ。転移魔法」
少しずつ国が変わり始めていますね。




