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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第1章 シェリル

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閑話 アレクシス 呼び出し

討伐隊の隊長としてもっと手厚く対応するべきだったか?

報告書を読めと命令して読む日を決めるべきだったか?

訓練中に何を考えているか確認するべきだったか?


想像以上に酷い状況だ。

記憶消去が一番だった。


討伐隊を残そうとした俺の大失態だ。

俺の目も曇っていたようだ。


隊員をダンジョンに送り出した10日後、区長会議に呼び出された。

街長に区長たち、シャーロット様も参加されている


街長に声を掛けられる。

「隊長、今の状況を教えてくれ。25組ダンジョンに向かったはず。何組ダンジョンから帰ってきた?そして、任務を達成した?生還したのは何人だ?人間と獣人がいたはずだ。分かりやすく教えて欲しい」

「生還したのは20人です。獣人が14名。人間が6名です。人間は元冒険者だけです。残りは今もダンジョンで戦っているのか、他国に囚われているのか分かりません」


エルヴィンさんが声をあげる。

「おい、それは、全パーティーが壊滅してるじゃねーか。生き残った奴も逃げて来たんだろ?あれだけ手厚く訓練方法を教えてもらい、魔獣の討伐も保護してもらい、さらに魔力での身体強化まで知っているんだろ?普通他国の人間に負けるか?」


全くその通りです。

エルヴィンさんも元冒険者だ。

魔力操作を自分でも行っているはず。

他国の人間に負ける訳がないと考えているのですね。


「その通りですが皆が甘えていたようです。自分達は訓練しているから大丈夫。シャーロット様の授業を受ける事ができた、選ばれた者だと考えていたようです。報告書も読んでいないようでしたし、魔力操作を使いこなせる奴はいませんでした」

「はぁ?討伐隊は訓練しかしてないだろ!魔力操作が出来ていない?完璧にできるのは難しいと感じるが、魔力操作を知らない奴を超えるだけの力を得るなら簡単だと感じたぞ」


その通りです。

しかも、実際に目の前で見せてもらっている。

それなのに、できるように努力をしようとしなかった。

全くしていないとは思わないが、何時かできるようになると考えていたのだと思う。


街長がエルヴィンさんを宥める。

そして、俺に質問をする。


「隊長、これは訓練が悪かったのか?それとも、駄目な奴しかいなかったのか、どっちだと思う?」

「訓練が悪かったのでしょう。今回の結果を受けて思った事です。討伐隊にいた奴は全てを説明して命令して監視しないと駄目な奴だったと思います。言われた事すらできないのです。当たり前の事すら知ろうとしないのです。ここまで酷いとは思っていませんでした」


「そういう事なんだろうな。隊長は今回の結果を受けて討伐隊をどうするべきだと思う?」

「解散させるべきです。逃げ帰って来た奴の意識は少し変わったかも知れませんが、組織として残す価値は無いと考えています」


エルヴィーラさんが話をする。

「完全にシャーロット様に守ってもらう事が、当たり前の状況にする訳だね。それが駄目だと思って討伐隊を作ったのに、意味をなさないのね。街長、どうするの?最悪の状況よ」

「本当に最悪だよ。次の世代に任せるしかない。今の子供達の成長を待つしか無いと思う。結局寄生虫のままだが、現実としてそれ以上の策はないのだから仕方が無いだろう」


グスタフさんが話をする。

「多種族国家なんだ。獣人を主軸にするか?戦うのが好きな奴が多い。積極的に訓練すると思うぞ」

「何人集められそうなんだ?」


「50人程しか集められないと思うが、未来を考えて指導方法を確立しておいた方がいいと思う」

「では、討伐隊の名前を変えて国防隊にしよう。少なくとも、魔獣の討伐が本来の仕事と勘違いする奴は減るだろう。隊長は続けるか?それとも、引退するか?」


「俺に隊長の資格はありません。隊を壊滅させたのです。引退します」

「分かった。グスタフは魔力操作を使えるか?」


「ああ、教えてもらってから毎日意識している。やはり完璧は難しいな。俺の仕事を少し減らしてくれ。流石に今の仕事量で隊長は無理だ」

「分かった。では、グスタフを隊長にしよう。問題ないな?」

「私は賛成だよ」

「賛成だ」

「しょうがねえよな。頼むわ」


「よし、全員の賛成だ。グスタフに頼む。仕事は減らすように調整する」

「頼む。今の状況は住民として恥ずかしい。全力で鍛える」


街長や区長はかなり悩み苦しんでいる。

他の住民は仕事をしているから問題は起きない。

意識を変えるつもりではいるみたいだがゆっくりでいい。


だが、国を守るつもりが無いのはありえない。

俺だって同じ立場なら立候補する。


「街長、グスタフさんの仕事を俺に振って下さい。引退するんです。せめて役に立ちたい」

「そうか。そう言ってくれるとこちらも助かる。頼むぞアレクシス」


ああ、隊長ではないからな。

久しぶりに名前で呼ばれた気がするよ。


だが、問題がまだある。

本当に全員死んでいるかどうか分からない。


街長は当然意識しているはず。

だから、シャーロット様がここにいるんだ。


街長がシャーロット様と話を始めた。

「シャーロット様。生きている奴はいますか?」

「5人生きているよ。他国に捕まっているんだろうね。同じ場所にいるから。そして同じ場所で5人が呪いで死んじゃったよ。恐らく、禁句を口にするような状態にさせられたんだろうね。私の呪術を解除するのは長老でも無理だから秘密が漏れてる心配はないよ」


10人攫ってテストされた訳だ。

拷問か洗脳の可能性が高いだろうな。


「救出するべきか殺すべきか迷うが、シャーロット様はどのように考えていますか?」

「こっちは捕まえた人をかなり殺しているからね。捕まったら殺されるのは仕方が無い事だと思けど、私がいる間は助けてあげてもいい思うよ」


その通りですね。

報告書をしっかりと読めば他国が危険だと分かるはず。

どれだけの人をシャーロット様が殺しているか、分かるはずなんだよ。


その奇跡に一番縋ってはいけないのが討伐隊です。


「私は殺して可能なら周りの奴も殺して欲しいと思うが、意見がある奴はいるか?」

「私は賛成だよ。シャーロット様の力に頼り過ぎているんだ。殺す事も頼ってしまうがね」

「俺も賛成だ。そして国民にも伝えるべきだ。シャーロット様はシェリル国の中にいる住民を、偶々守ってくれているってな。少しは国民の目も覚める。死んだ討伐隊の奴にも家族はいるだろうが、間違ってもシャーロット様の責任にするような事だけはあってはいけない。注意するのはそこだけだ」


街長や区長たちは殺すつもりのようだな。


「反対は無しだな。シャーロット様、お願いしても大丈夫でしょうか?」

「そっか、住民だった人も殺す事になっちゃうのか。呪いをかけた相手に対応した人は、全て把握しているから大丈夫だよ。じゃあ殺すね。闇魔法(デス)。終わったよ」


「ありがとうございます。今回の会議はここまででいいな」


街長の終了宣言で会議は終わった。


俺は討伐隊の隊長ではなく、南東区の区長グスタフさんの補佐として働き始めた。

区長の仕事量に圧倒される。


ここまで仕事をしていても鍛えていたんだ。


討伐隊は本当に情けない組織だった。

そして、俺は隊長だったんだ。

一番情けないな。


街長や区長の気持ちが嫌というほど分かる。

上の立場になるほど現状を情けないと感じてしまうよ。

命を助けるという意味では記憶消去が一番でした。


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