シャーロット お掃除
ヴィーネの与えた生きる機会を無視して国を乱そうとするとはね。
最初から国長になれるなんて思っていない。
より多くの人を巻き添えにして死のうと思っていただけ。
賛成した人は院長の事を勘違いしている。
余りにも滑稽。
国内で突発的な問題が起きた時に対処したのが孤児院だけ…。
あの程度で国が割れる事はないだろうけど、国防軍が誰も気付いていないのは残念だね。
やはり、私やヴィーネからの指示に慣れてしまっている。
指示がなければ安全だと思っているのかもしれない。
それでは意味が無い。
「ヴィーネ、孤児院しか動いていないよ。警備隊でも組織する?」
「うーん…。国防軍の再テストで判断しようと思っていたんだよね。何人参加して、何人合格するか未知数だから。国を守れる訳がないから、最初は国内の警備を任せるつもりだったんだよ。あれだけの騒ぎに気付いたのが孤児院だけとはね。国内にいる国防軍の隊員は駆け付けて欲しかったけど、残念な結果だよ。マリアンネは待機させたけどね」
シェリル区の騒ぎにマリアンネが気付かない訳がないからね。
ヴィーネが止めていたんだ。
警備隊を組織したとしてもテストは必要だろうね。
国防軍の再テストで集まった人の中で組織した方が楽かな…。
「とりあえず、今回の選別は終わったよ。埋められている人も逃げ延びた人も殺す。娘が生きる機会を与えたのに、楽な道を選ぼうとするような人間はいらない。ヴィーネ、どっちに行く?」
「私は埋められた方に行くよ。ついでに逃げ延びた人も殺す。少し痛みを与えてからね。訓練場は母さんが行った方がいいよ。レナーテが喜ぶからね」
レナーテの激怒が凄かったからね。
私とヴィーネを侮辱する発言を聞いてしまったのだと思う。
「レナーテが激怒していて、クリスタも激怒していたけど止めていたからね。私が様子を見てくるよ。じゃあ、行ってくるね。転移魔法」
ヴィーネに手を振って訓練場に移動した。
「お疲れ様。満足したかな?」
2人は慌ててこちらを振り向いた。
「シャーロット様、苦痛を与え足りませんでした。申し訳ありません」
「いやいや。十分でしょ?魔力ギリギリじゃない!」
訓練場には院長のものと思われる腕や脚が何本も転がっていた。
切り飛ばしては再生を繰り返したんだね。
それ程の激怒だったのか…。
とりあえず、レナーテの魔力を回復させないと。
「レナーテ、そのままで孤児院に帰ると怪しいよ。魔力を回復するね」
レナーテの手を握り魔力を送り込んだ。
「シャーロット様…。ありがとうございます」
「そんな事をしたらレナーテが魔力使うの止めますよ。間違いないですって!」
無属性の魔力に個性も何も無いよ。
世界に満ちているものと一緒なんだから。
「魔力は毎日入れ替わるから気にする事はないって。私が入れた魔力は3日もすればレナーテの魔力だけになっているから」
「そんな…。3日でシャーロット様の魔力が無くなってしまうのですか。固定しておきましょう」
身体強化の技術の使い方がおかしいよ。
私の魔力を固定してどうするの!
「いやいや、おかしいからね。無属性魔力は皆と一緒だから。そんな事をするなら次会った時に魔力を抜くからね」
「酷いです。私の大切な思い出…」
「この惨状で何が大切な思い出なのよ。全然終わらせないんだから!」
この状況で楽しそうな会話はおかしいよ。
さてと、念力。
「2人とも飛んでもらうよ」
「おおー!一度飛んでみたかったんです」
「ああ…、最高の1日です」
どこが最高の1日なのよ…。
この光景を見てそんな事が言えるのはレナーテだけだよ。
嬉しそうに飛んでいるクリスタは異常者だから除外だね。
3重結界。
訓練場の地面を結界で覆う。
施設に影響が出ないようにしないとね。
水魔法
地面に付着した汚れを水で浮かせる。
院長の血で訓練場を汚しておきたくない。
クリスタの血を汚しているのがとても不愉快だよ。
闇魔法。
死体や千切れた体の一部、汚水を全て飲み込む。
結界解除。
とても綺麗な地面になったね。
「さあ、孤児院に帰ってお風呂に入るよ。転移魔法」
孤児院に移動するとチェルシーが椅子に座っていた。
私を見て慌てて椅子から立ち上がったけど、そんな事をする必要は無いのに。
「シャーロット様。カーリンは食事場所に隔離しております」
「完璧だね!じゃあ、2人ともお風呂に入って着替えてきて」
レナーテは血塗れだからね。
クリスタも多少血で汚れている。
「はーい。レナーテ、早く行くわよ」
「分かりました。では、失礼します」
このまま帰ってもいいけど、せっかくだし覗いて行こうかな。
2人だけお風呂に入っているのは怪しいからね。
「チェルシーも行く?お風呂から出て乾くまでの時間は私も食事場所に顔を出すよ」
「それでは御供します」
何をしているのかな?
少し楽しみだね。
時空魔法を通り食事場所に移動する。
「やあ、皆で集まっているから様子を見にきたよ。何をしているのかな?」
「シャーロット様。今は新作料理に挑戦中です」
なるほどね。
流石カーリン軍。
カーリンの足止めは完璧だね!
「美味しい料理はできたの?」
「なかなか難しいですね。料理も奥が深いです」
そうだった!
孤児院に子供が増えたのに、カーリンにお金を渡していないね。
時空魔法で社から100万ギルを取り出す。
そして、カーリンに100万ギルを手渡す。
「色々と使ってよ。お酒とか買ってもいいからね」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
子供たちも頑張ってくれたからお小遣いをあげよう。
「全員集合!お小遣いをあげるから並びなさい」
「「はい!」」
子供たちに2000ギルを手渡していく。
人数が多いから結構時間が掛かったよ。
「今日は楽しめたみたいだね。明日にでもお菓子を買いに行くといいよ」
「「ありがとうございます!」」
「料理を作る前は何をしていたの?結構前から皆いたよね?」
「子供たちが私に秘儀の授業をせがむのです。私は子供扱いされているのです…」
いやいや。
天使のカーリンは自己評価が低過ぎるのかな?
「皆カーリンが好きなんだよ。一緒にいたいから理由を考えただけだと思うよ。どう見てもカーリンは子供じゃないからね!」
「そうですか?寝る前に枕をぶつけてくるのですよ?私にだけですよ?おかしいと思いませんか?」
子供たちはカーリンと遊びたいからね。
気を引こうと必死なんだよ。
「カーリンと遊びたいんだよ。鬼ごっこに参加してないでしょ?偶には参加してみたら?子供たちと外で遊ぶのも大切だよ」
「シャーロット様がそう言うのでしたら休日は参加してみます。時間がある時だけですけど」
あれあれ…。
子供たちからの視線が痛い。
物凄い期待をされてしまっているね。
「カーリン、強くなりたいなら時間を作って鬼ごっこをしないと。秘儀をかなり鍛えているけど運動能力の把握が甘くなっているよ。本気で組手をしているならいいけど、そろそろ難しいでしょ?秘儀は体を動かす事なく鍛えられるけど、身体能力を強化する為の技術だからね。今のカーリンの能力なら孤児院の子供たち全員から逃げ切れないといけない。昼過ぎから夕暮れまで子供たちから逃げ続ける事ができたなら、私が組手の相手をしてあげる。クリスタは竜王と組手をしているから公平じゃない。子供たちがカーリンを捕まえたらお小遣い1000ギルをあげる。挑戦する?」
「やります!学校の休日は必ず鬼ごっこをします!」
クリスタと勝負をしたいのなら、対等以上の相手との組手が必須だからね。
レナーテが死なない秘儀の到達点にしている為、組手の相手がいない。
このまま極めたとしても絶対にクリスタには勝てない。
対人では経験が物を言うから。
2人は気持ちで勝敗を決めたいみたいだからね。
せめて同じ条件にしてあげないと。
隙間を埋める訓練はまだ早い。
その時が来たら伝えてあげるし、望むなら私が相手をしてもいい。
「よーし、全員全力だよ!」
「「はい!」」
子供たちの期待にも答えられたし、カーリンの希望も叶えられる。
私は暇な土地神だからね。
社まで声を掛けに来てくれれば組手の相手ならいつでもしたんだけどね。
レナーテやカーリンくらい鍛えているのなら私が相手をしてもいいと思えるから。
「何で皆立っているの?」
「本当ですね。何故立っているのですか?」
2人ともお風呂から出てすっきりした顔をしているね。
これなら大丈夫だよ。
「ふふふ。気合いが入っているからね!それでは、楽しみに待っているよ。またねー。転移魔法」
レナーテも組手をしたがるかもしれないね。
まあ、死なない到達点を極めたら組手をしたいか聞いてみよう。
「ただいまー。病院関係者の皆殺しは避けられたよ」
「おかえりー。こっちもお掃除終わったよ。後は国連軍の再テストに何人集まるかだね」
「あんまり期待せずに次善策も考えておいた方が良くない?」
「そうなんだけどね。孤児院がどう動くのかも気になるし待ってみようと思う」
「まあ、国長の好きにするのが一番だよ。人の動きは難しいからね」
「そうだね。完全に把握するのは無理だから焦らず気ままに進めていくよ」
それがいいね。
本来ならこの国を守り続けるのは不可能。
秘儀が前提で成り立つだけ。
難しい国の運営だからヴィーネのいい経験になると思う。
「今日はお風呂に入ってから寝よう。院長の血の臭いが残っている気がするから」
「実際は残っていないけど感覚的なものだね。じゃあ、入ろう!」
一緒にお風呂に入って、一緒に布団に入る。
「じゃあ、おやすみー」
「うん、おやすみー」
どんな事があっても、この時間があれば関係ないね。
楽しい1日の終わりだと思えるから。
逃げ切りたいカーリン vs 捕まえたい子供たち




