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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第4章 神国シャーロット

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閑話 クラーラ 説明会

食事場所は広くて最高だね。

皆で秘密の会話をするには最適な場所だよ。


雨でもカーリンお姉ちゃんに内容を聞かれる心配が無いのが特にいいよね。

今日は新しく入ってきた子に孤児院の説明をするんだ。


鬼ごっこをすると嘘を吐いて全員集合だよ。

300人を超えると流石に凄いよね。


お姉ちゃんは少し抜けているんだ。

鬼ごっこをしていると思っているはずだよ。


カーリンお姉ちゃんだけカーリン軍に気付いていないからね。


だから、このまま秘密にしようって事になっているんだ。

私たちが埋めていると知られると確実に監視されるようになるから。


お姉ちゃんは心配性なんだよ。


「さて、早速説明会を始めるね。新しく入ってきた子にも知っておいて欲しい事があるから。まず、この孤児院には2つの派閥があるんだ。1つ目はカーリン軍。最大派閥でカーリンお姉ちゃんを侮辱した男は必ず埋める事になっているよ。殺したら駄目だからね。2つ目はチェルシー親衛隊。ここに来るまでは酷い国で獣人の子供を守っていたんだよ。だから、今でもその時に守られていた子と、それに感銘を受けた子が所属しているよ。そして無所属。何の組織にも所属していない子だね。孤児院は自由だから組織に所属する必要は無いよ。気になる組織があるなら所属すればいいだけ。あと、孤児院最大の決まり事があるよ。シャーロット様を侮辱した相手は必ず埋める。これは全員参加ね。見学だけでもいいよ。後悔させる為に死ぬギリギリまで痛めつけるから。何か質問があれば答えるよ?」


シャーロット様を侮辱する人は許さない。

必ず埋めて後悔させる。


「はーい!各組織に隊長はいるの?」

「カーリン軍にはいないよ。みんな平等で所属した時から仲間だね。チェルシー親衛隊はグンターが答えてあげて」


グンターは犬の獣人。

チェルシーお姉ちゃんが守っていた子供の1人だよ。


「僕がグンターだよ。酷い国にいた時にチェルシーお姉ちゃんが匿ってくれていたんだ。食糧も手に入れるのが大変だったのに、自分の分より僕たちの分を一生懸命に探してくれたんだよ。シャーロット様に助けてもらった時に、チェルシーお姉ちゃんも助けて欲しいと頼んだんだ。人間なのに獣人の子供たちを守り続けてくれた優しいお姉ちゃんだよ。怒るとちょっと怖いけどね…。親衛隊も特に決まり事はないよ。カーリンお姉ちゃんは男の人によく声を掛けられるけど、チェルシーお姉ちゃんは外に出る事が少ないからね。もし、同じように侮辱されたら埋めるつもりではいるよ。隊長なんていないから自由だよ。所属すれば仲間だね。まあ、孤児院で一緒に住んでいるからカーリン軍も仲間なんだけどね。孤児院は皆家族で仲間だから好きなようにすればいいよ」


孤児院に入れば家族であり仲間でもある。

この関係は卒業した後も変わらないね。


「他に質問のある人はいる?」

「はい!絶対にしてはいけない事はあるかな?」


「孤児院に住んでいるのにシャーロット様やヴィーネ様を侮辱するのは許されないよ。あとは、種族による差別は禁止。上下関係もないから命令するのも禁止。孤児院に住んでいる大人を侮辱するのも禁止。基本的には優しいお姉ちゃんしかいないからね。ただし、門限を破ったり物を壊したりすると怒られるよ。私たちが喧嘩しても怒られるからね。喧嘩両成敗だって。えっと…、話し忘れるところだったよ。孤児院の施設については外で話したら駄目だよ。シャーロット様に物凄い特別扱いをしてもらっているからね。こんなに整った家はこの国のどこにも無いから。食糧の補充も定期的にシャーロット様がしてくれるんだ。偶にお小遣いもくれたりするよ。服や靴のお金もかなり出してくれているんだよ。他に質問がある人はいる?」


この国に住んでいてシャーロット様やヴィーネ様を侮辱する人は何を考えているのか分からない。

本当だったら侵略されて殺されているのに守ってもらっているのだから。


孤児院はシャーロット様に特別扱いされているから口外はできないね。

知られてしまうと中立のはずのシャーロット様が贔屓をしていると思われちゃう。


「秘儀の練習方法を教えて欲しいです!」


ジェナは強さに貪欲だね。

まだ初等科だから、そんなに難しい練習はできないかな。


「説明会とは関係ないけど、まあいっか。基本的な自主練習だけど、魔力を常に動かし続ける事だよ。何をしていても、どんな時でも関係なく魔力を動かし続ける。授業中でもね。動かす事を当たり前にするんだよ。そして、鬼ごっこの時は、皆の魔力配置を見る事を最初はするべきだね。走る時や跳ぶ時にどんな配置にしているか。魔力を動かすのに慣れたら同じ配置にできるように練習するといいよ」


動かすのに慣れるのが本当に大変だけどね。


授業を聞きながら魔力を動かす。

食事を取りながら魔力を動かす。


自然と魔力を動かす癖がつくまで続ける必要がある。

動かす事に慣れたら、ようやく魔力の配置を考える事ができるようになる。


しかし、鬼ごっこの最中に考えながら魔力を動かしている暇はない。

自然と決めておいた配置に魔力を動かす必要がある。


そこまで鍛えるには時間が掛かるね。


「やっほー!嘘吐きを大量発見だよ。何をしているのかな?」


さ、最悪の展開だよ!

鬼ごっこをしてくると嘘を吐いたのがばれている。


確実にここにいるのが分かっていた顔だよ。

判断を間違えると地獄の説教が始まる可能性がある…。


「ク、クリスタお姉ちゃん。大切な話をしていたんだよ。孤児院で絶対にしてはいけない事を説明していたんだ」

「ふーん、そうなんだ。派閥の説明会だと思っていたけど、クラーラはそんな事しないもんね?」


悪い笑顔だよ…。


絶対に分かっている。

嘘を吐かずに正直に話した方がいいね。


「勿論派閥の説明もしたよ。せっかく見学に来たんだから秘儀の授業をしてよ。魔力を速く動かす練習方法が知りたいけど全然見付からないの」

「それくらいなら教えてあげてもいいけど、ちゃんと学校の皆にも教えてあげるのが条件だよ。孤児院だけの秘密にしない。いい?」


教えてくれるの?

絶対に教えてくれないと思っていたのに…。


「皆で共有するよ。高等科まで進んだ子だけでいいでしょ?」

「そうだね。そこまで進んでいないと練習ができないと思うからそれでいいよ。じゃあ、全員魔力を見れるようにして」


「「はい!」」

「まず、大切なのは自分が動かす魔力量を決める事。最初は動かす癖をつける事から始める必要があるけど、そこを卒業したら次は決めないといけない。ゆっくり魔力を動かすから見ていてね」


体の中心から手の平に包み込めるような大きさの球状の魔力が出てきた。

それを、右手に向けて動かして手首で止める。

左手に向けて動かして手首で止める。

両足も同じように足首で止める。


「分かった?皆は手に一瞬で魔力を溜める練習をしている。それも大切だけど基本的な技術として動かしている魔力を止める力が足りない。動かしている魔力量を把握する力が足りない。先端まで動かせば魔力は止まってくれる。それでは意味がないの。自分の意思で好きな場所で止める。それを全身でできるようにする」


短い授業だけど、とんでもない内容だよ。

私たちの自主練習を知っているのにも驚いたけど、考え方が今までと全然違う。


動かしている魔力量は少ないけど意のままに操っている。

速く動かす事だけを意識してしまっていた。


速く動かせても止められなければ破裂する。

一瞬で動かせるなら一瞬で止める必要がある。

違和感や痛みを感じてから止めていては間に合わない。


「私の自主練習を完璧にできるようになるとこんな事ができるよ。見ててね」


クリスタお姉ちゃんが右ひじを指さした。

そこに一瞬で魔力が移動して止まっている。


次は喉を指さした。

一瞬で魔力が移動して止まっている。


太ももでも、脛でも、どこでも関係ない。

魔力を動かせる場所ならどこでも一瞬で止める事ができるんだ。


一瞬で溜めるよりも難しく感じる。

この技術ができないと一瞬で溜める事ができないんだ。


「高等科の生徒なら感じたと思うけど、一瞬で魔力を動かしたいのならこの技術が必須になる。理由は単純だよ。自分で決めた魔力量を一瞬で止める事ができなければ破裂するからね。皆は違和感で魔力を止めようとしている。それでは遅い。溜められる魔力量を正確に把握しておく必要があるって事だね。その為には動かしている魔力量を正確に把握する必要がある。だから、最初は分かりやすい魔力量を動かす練習をするべきだね。じゃあ、面白いものを見せてあげるよ」


これ以上の何かがあるの?

既に自主練習が恐ろしく増えたよー。


最初と同じように魔力を右の手首で止めた。

魔力をまた出して左の手首で止めた。

同様に、両足首で止めた。


4か所に魔力を止めている。


「さて、これを右手に集めるよ」


4つの魔力が順番に右手に溜まっていく。


嘘でしょ!

破裂する直前まで溜まっているよ。


「私の授業を聞いて後悔してもおそーい。皆には地獄の自主練習が待っているよ。カーリンとレナーテはできるけど、ビアンカとチェルシーとクリスティーネはできないね。他にも聞きたい?」


高等科に通っている子が青褪めているよ。

聞きたかったけど、聞きたくなかったって感じだよね。


魔力操作に対する考え方を変える必要がある。

そのうち授業で教えてくれたと思うけど、余りにも高度だよ。


これ以上はまずい。

鬼ごっこで遊べなくなっちゃうよ。


「クリスタお姉ちゃん、十分過ぎるよ。もうお腹いっぱい。当分はいいかなー」

「そうなの?今の授業は高等科にまでたどり着いてからしないと意味がないからね。初等科と中等科は魔力を動かす事にまずは慣れなさい。魔力を全身に延ばす事に慣れなさい。体の中で魔力が動いているのを当たり前にする。魔力は体を廻っているものだと無意識に思えるようになるまで動かし続ける事が大切だよ。それでは、楽しい説明会を続けてねー」


クリスタお姉ちゃんは笑顔で手を振りながら孤児院に戻って行った。

楽しい雰囲気を軽く吹き飛ばしたよ。


「クラーラ、とんでもない事になったね。魔力の動かし方や魔力量の把握が違い過ぎる。基礎を鍛え直さないといけないね。今の僕たちが必死に練習すればできる事しか話していないと思うから、先に進むにはやるしかないよ」

「話を逸らそうと思って聞いたのに授業をしてくれるとは思わなかったよ。やっぱり基礎に戻るんだね。なんとなく分かっていたけど、きつい練習になりそうだよ…」


あれ?

クリスタお姉ちゃんが戻ってきた。


表情がおかしい気がする…。

隠そうとしているけど激怒しているように見える。


嫌な予感に胸が痛む。


「カーリン軍!カーリンを絶対に外出させないようにしなさい。ここに籠らせるのが一番よ。私が孤児院に戻るまでは必ずやり遂げなさい。いいわね?」

「「はい!」」


クリスタお姉ちゃんは、それだけ言うと急いで戻って行きました。


「初等科と中等科はカーリンお姉ちゃんに秘儀の授業を聞きなさい。かなり嫌な予感がする。絶対にお姉ちゃんを外出させないようにして。すぐに呼びに行くわよ!」

「行くぞー!」

「「おー!」」


とりあえず、すぐにお姉ちゃんを見付けないと。

孤児院の中にいるのは間違いない。


外出がまずいと言う事は屋上もまずい。

何かをしている人がいる可能性が高い。


良かった!

1階の机でお茶を飲んでいる。


早く移動してもらおう。


普段通り何も悟られないようにしないと。

冷静に、冷静に…。


「カーリンお姉ちゃん。秘儀の授業を初等科と中等科にしてもらいたいんだ。食事場所で待っているからお願いしてもいい?」

「私が授業をするの?もう、私を同じ子供だと思っているわね。初等科と中等科なら教えられるからいいけど…。仕方がないわね。行きましょうか」


高等科のカーリン軍でお姉ちゃんを囲んで万が一にも外出させないようにする。

食事場所まで行ってくれたので、初等科と中等科のカーリン軍が上手く引き留めてくれるはず。


「私たちは全力で問題解決に動くわよ。嫌な予感がするから派閥に関係なく高等科は全員手伝って。確実に埋めるわよ!」

「かなりまずい気がするな。確実に埋める。高等科は全員動くぞ!」

「「おー!」」


誰が何をしていようと関係ない。

私たちの幸せを奪う相手は絶対に埋める!

真面目に授業をするクリスタ先生でした。

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