ジェラルヴィーネ 始動
母さんの思い通りの展開になっちゃった。
5000年の叔母さんの知識は本当に役に立たないよ。
国民の声を直接聞かないようにしていたのは間違いない。
どんな風に思わているのか感情から想像できたから。
だから、母さんはあの場面を私に見聞きさせたのだと思う。
直接声を聞いたら嫌な気持ちになった。
想像以上に嫌な気持ちだったよ…。
私がこの国を守る為にどれだけ苦労をしているのか、理解していない大人が多いのは知っている。
だけど、勝手に守ってくれているだけだと言われるのは我慢できない。
私が守っていると理解していない人を殺したくなった。
私に恐怖している人を殺したくなった。
私が守らなければ死んでいたのだから。
殺意が膨れ上がっていく中で、この親たちの子供が可哀相だと思った。
戦争の為に鍛えられていると親に思われているなんで酷過ぎる。
兵器だと思われていた母さんの過去を思い出しちゃった。
甘過ぎる選別をしてしまったのも分かっている。
母さんがどんな選別をするのかも分かっている。
だけど、私は自分の気持ちを優先した。
本気で我儘を言ったのは初めてかもしれない。
絶対にそれが切っ掛けになったよ。
我儘を言うのなら、我慢せずに好きなようにしなさいと母さんは言いたいのだと分かった。
母さんは待っていたのだと思う。
私が国長を辞めると言うのか、好き勝手にすると言うのかを。
子供を守る事を選択した私を見た母さんは、国を守る事を選択すると考えたに違いない。
そして、私は母さんの思い通りに動かされてしまった。
自分の意思で行動する国長。
母さんのお手伝いではなく、私が好き勝手にする。
私がどんな国を目指すのか母さんは分かっているに違ない。
私は母さんとゴロゴロしたり遊びたいだけ。
いつでも自由にそれができる国を作る。
小さな仕返しで国名を母さんの名前にした。
恥ずかしがっていたけど我慢するしかないからね。
ふーんだ!
念話。
「邪魔な施設を撤去するよ。みんな頑張って働いているのに、何もしていない人はこの国に必要ないよ。心当たりがあるでしょ?病院を撤去する。この国では回復魔法が希少ではないと知っているよね?病原菌や人体の研究は必要だけど、それ以外は必要ないから。世界樹の力で病気になりにくくなっている。世界樹の薬で病気は治る。怪我は回復魔法で治せる。多くの人が働いているから時間をあげるよ。国防軍の再テストまでに身の振り方を考えてね。国から逃げるのなら手は出さない。何もせずに病院内に残っているのなら飛ばす。この国の中央には研究所を建てる。これから先は地下で研究をしているだけでは足りない。もっと多くの研究が必要になるから」
凄く慌てているね。
患者が全く来ないのに平気で給料だけ受け取っているのはおかしいよ。
念話。
「ダミアン、今の大きさの孤児院を想定した研究所を建てるから設計をお願い。国防軍の再テストまでに作ってね」
「おおー、流石ヴィーネ様。私にお任せ下さい!最高の研究所を設計します」
ここであらゆる研究を勧めてもらいたいね。
国を発展させるのに研究は不可欠だよ。
念話。
「エルヴィーラはまだ働けるかな?少し忙しい仕事をお願いしたいんだけど無理なら誰か紹介して欲しい。どうかな?」
「これはヴィーネ様。まだ歩けますので大丈夫ですよ。どのような仕事でしょうか?」
「商人組合は犯罪ギルトと連携しているから信用できないんだ。だから、この国に新しい商人組合を作るよ。その組合長をして欲しい。できそうかな?エルヴィーラは十分に働いてきたし無理はしなくてもいいからね」
「勿論大丈夫でございます。商人の事まで考えていただきありがとうございます」
「大変だと思ったらいつでも言ってね。まずはエルダードワーフと協力してこの国が発行する新しい商人証明プレートを作成して。そして、信用できる商人の登録をして欲しい。この国に訪れた商人は登録をしていないと物の売買をできないようにする。検問所の横に商人組合所を建てるからそこで管理をしてね。できそうかな?」
「この国で発行する商人証明プレートが世界一信用できるものになると考えれば良いのですね?」
流石エルヴィーラだね。
察しがいいよ。
「その通り。他国が発行したものはこの国では通用しない。登録をしていない商人はこの国で登録をしなければ何もできない。プレートを所持していても訪問の度に本人確認を必須にする。この国で不正行為は絶対にさせない。一度でも罪を犯せば没収。登録料はプレートの代金とエルヴィーラが必要だと思う手数料を合わせたものでお願い。国防軍の再テストまでに商人組合所の設計をして欲しい。設計図ではなくても、部屋の数とか何階建てとか欲しい設備とか希望だけをまとめてくれたものでも十分だからね。運営も税金に頼っていいよ」
「かしこまりました。お任せ下さい」
念話。
「母さん、孤児院の前にある焜炉を撤去してもいいよね?新しい病院を建てるのに邪魔になるから」
「屋上にあるからいいよ。国長の好きにしちゃって」
完全に私に投げたね。
物凄く好き勝手にさせてもらうから。
この国が世界の中心だと世界中にある国に認めさせる。
母さんとゴロゴロする生活の為になら私は何でもするつもりだから。
ゴロゴロする為に頑張ります!




