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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 クラウディア 基礎

これは想像以上にきついですね。

動かす魔力量の増加は本能が拒絶しているようです。


体の震えが止まりません。

地上で行っていたら汗も噴き出しているのでしょう。


体の反応から考えられる失敗の先にあるものは、死ですね…。


シャーロット様は子供たちの間で共有するのは自由だと言っていました。

その言葉を素直に受け入れていいのか、他の意味が隠されているのかが分かりません。


この鍛錬を皆に広めるのを怖いと感じているのでしょう。

ですから、新しい鍛錬の発見なのに喜べません。


シャーロット様に確認をした方が良さそうです。

困った時に相談できる人がいるのはとても恵まれていますね。


授業が終わり、皆が鬼ごっこで遊んでいる時に社に向かいます。

社に向かうと言えば誰も何も聞いてきません。


私たちの中で暗黙の了解になっています。

シャーロット様との会話を知りたいがってはいけないという考えです。


下手な言い訳を考えなくてもいいので楽ですね。


授業を終えた後に社に向かいます。

「シャーロット様、お話したい事があって来ました」


少しの間の後、社からシャーロット様が笑顔で出て来て下さいました。

「悩んでいるね。秘儀の鍛錬の話しかな?」


やはり見破られてしまいますね。

国民の感情を把握しているのです。

私が悩んでいる理由は予想できるのでしょう。


素直に思った事を聞いてみます。

「その通りです。動かす魔力量を増やす鍛錬をすると死ぬ可能性が考えられます。本能が拒絶している事が良く分かります。危険な鍛錬を私が広めてしまってもいいのでしょうか?」

「勿論いいよ。でもね、その技術を扱う事は今の子供たちにはできないよ。本気で鍛錬しても半年以上は鬼ごっこができなくなるんじゃないかな。何故だか分かる?」


基礎力が関係しているはずです。


魔力の移動する速さ。

魔力を溜める早さ。

動きに合わせた魔力の最適な配置。


この技術を覚えた場合、何が変わるのでしょう…。

魔力の移動する速さは変わらないでしょう。

魔力を溜める早さ…。


早くなるのでしょうか?


違和感や痛みにより魔力を溜めるのを止めています。

動かす魔力量が増えた場合、即座に破裂するのでは?

つまり、魔力の溜め方を変える必要があります。


違和感や痛みで魔力を止めていては間に合いません。

動かしている魔力量を一瞬で変更できなければ意味がありませんね。


それも、溜めるのに必要な魔力量にする必要があります。

今までの魔力操作と全く違った技術が必要になります。


「この技術を使えるようにする為には、手や足に溜められる魔力量を完璧に把握して、動かしている魔力量を完璧に把握する必要があります。今までの技術とは全く違う為、同じ魔力配置にする事さえできなくなってしまうのですね」

「正解!今の子供たちは初歩を鍛錬し工夫し力をつけてきた。初歩で失敗しても死ぬ事はない。だから、恐怖を乗り越えれば工夫もできるし、限界まで魔力を溜める事もできた。それに、まだまだ強くなる余地が残されている。クラウディアが気付いた技術は色々な事を気付かせてくれる。ただし、死ぬ可能性がある。共有するのは自由だよ。でも、自分が教えた技術で友達が死んでも耐えられる?教えて知らぬ振りはこの国にいる以上できない。自由だから責任がない訳じゃない。自由だからこそ自分で考えなければいけない。秘儀の授業が初歩しか教えない理由はそれで十分だから。そこから先の鍛錬は各自の自由。自己責任だね。子供にはまだ早いかもしれない。でも、人を殺せる力を得ている以上は責任を持つべきなんだよ」


秘儀の初歩で過剰な力を得ます。

今の状態でもまだまだ強くなる余地があるのは間違いないでしょう。


欠点を知った事で鍛える事が山のように増えたのですから。


皆で鍛錬方法や魔力配置を相談しながら成長してきました。

でも、この国で死ぬ事はありません。

手や足が破裂しても治してもらえます。


教える側が何も責任を感じないのは初歩の延長でしかないから。

授業で教えてもらった事を深く追求しているだけに過ぎない。


私が共有した技術で誰かが死んだ時、それを失敗した子の責任と言える?

同じ学校に通い一緒に遊んでいるのに、私は耐えられる?


教える時に死ぬ可能性があると伝える。

鍛錬すれば更なる可能性に気付くとも伝える。

鍛えている子の責任にしようとしても、何かがあれば私は責任を感じてしまうでしょう。


初歩を追求し鍛えたのは私たちが勝手にした事です。

そして、古代種(エンシェント)ドラゴンにも勝てる程の力を得てしまっています。


秘儀を極秘にしている一番の理由はそれでしょうか?


子供たちに責任を負わせたくないから禁止にしているのかもしれません。

シャーロット様やヴィーネ様なら教えた瞬間に殺す事もできるのですから。


シャーロット様は子供たちに未来を切り開く力を与えたいから秘儀を教えてくれました。

その力は初歩で十分なのです。


今まで全力鬼ごっこに勝ちたい一心で秘儀を鍛えてきました。

そして、海の女王として強くなりたいとも考えています。


・・・・。


駄目ですね。

どれだけ考えても迷いが出ます。


「納得できる答えが出せません。皆に共有しない方がいいと判断しました」

「それも自由だよ。友達の死を背負うのはとても苦しい。鍛える側の責任にしても無視はできないと思う。秘儀の技術はたくさんある。でも、不要な技術は1つもないよ。クラウディアは命の危険のある技術に気付いた。でも、基礎力が足りない。技術を増やす事も大切だけど基礎力が一番大切だよ」


「はい。まずは今回気付けた欠点を克服したいと思います。その後どうすればいいか考えたいと思います」

「それでいいと思うよ。鍛えているから新しい技術に気付けた。新しい技術を覚えようと思うと、自分に足りないものに気付く。それの繰り返しだからね」


鍛えて気付いての繰り返しなのですね。

1つ成長できたと考えましょう!


まだ聞きたい事があります。


海の女王として誰よりも強くなりたいのです!

秘儀の極致は自分で見つけるものだと考えています。


最初の鍛錬の話を聞くのは大丈夫ですよね…?


「お聞きしたい事があります。クリスタ先生が最初に鍛錬した技術を教えていただく事はできますか?」

「海の女王として強くなりたいから気になるよね。そして、今の君になら話してもいいかな。クリスタが最初に鍛えた技術は動かす魔力量を限界まで増やす事だよ」


最初から死ぬ可能性のある技術を鍛錬しているのですか…。

何故そこに視点がいったのでしょう?


シャーロット様は皆に平等に教えるはずです。

私たちが受けている授業と同じ内容をクリスタ先生も聞いただけのはずです。


「悩んでいるね。最初から死ぬ可能性のある技術の鍛錬を始める。授業内容からも外れているし命懸け。色々とおかしい事が多いからね。何故かと言うと私が全身を破裂させて生み出した技術だと知っているからだよ」


誰でも知っている事ですね。

魔力量が多いシャーロット様は全身を破裂させながら秘儀を生み出した。


まさか!

魔力量が少ない人でも手や足が破裂する。

それならば、心臓が破裂する手段もあるかもしれないと考えたのですか?


「もしかして、死ぬ方法を探したのでしょうか?」

「面白い考え方だね!でも、間違ってはいないよ。手や足が破裂するなら、全身を破裂させる事ができるはず。あの子はそうやって考えたんだろうね。ほんとに困った子だよ」


シャーロット様は困ったと言っていますが優しく微笑んでいます。

そこには絆のようなものが見えました。


そして、教える側の責任の話を考えた場合シャーロット様は止めて欲しいと考えるはず。

優しいシャーロット様が秘儀の鍛錬で人が死ぬのを放置できるとは思えません。


シャーロット様が止めてと言えばクリスタ先生は止めたでしょう。


言わない理由は…、万が一の時は止める事が可能だからですか?

死ぬような魔力の動きをしたら止める事ができるから問題ないと判断した。


シャーロット様は秘儀を使っている全ての人の魔力の動きを把握していて、危ないと感じたら止める事ができるのかもしれません。


それは、人が死ぬ可能性のある魔力の動きを全て自分の御身体で試している証拠になります。

破裂する痛みは知りませんが、この御方はどれ程弱者の為に尽くすのでしょう…。


クリスタ先生は1秒に1回以上は死ぬ可能性のある鍛錬を続けています。

万が一の時はシャーロット様が止めてくれるからできるのでしょうか?


いいえ!

絶対に違う気がします。


死ぬ可能性のある鍛錬をしながら死ぬつもりは一切ない。

絶対に死なない覚悟がある気がします。


「クリスタ先生は一度でも死にそうになった事はありますか?」

「鋭いねー!今まで一度も無いよ。それに甘えてしまうと秘儀の成長は止まるだろうね」


私たちが簡単に追い付ける訳がありませんね。

破裂の恐怖に耐えながら鍛えているのと、死の恐怖に耐えながら鍛えているのでは差が広がるばかりです。


「強くなる為に死の恐怖に耐える鍛錬をするべきだと考えたら駄目だよ。君たち子供がしている鍛錬も間違っていないからね。ただし、基礎力が足りないから先に進めない。中途半端が一番駄目だからね!」

「はい。基礎の鍛錬を徹底的にします。ありがとうございました」


シャーロット様に一礼をして社を後にしました。


クリスタ先生は死の恐怖に耐えながら基礎力を鍛えたはずです。

残念ながら私は同じ道をたどれません。


クリスタ先生は初歩を自分の意志で飛び出したのです。

初歩の延長にいる私はその中で基礎を徹底的に鍛えるしかありません。


鍛える技術が同じでも、死の恐怖に耐えながら行っていたクリスタ先生の成長が抜きんでる訳です。


私が今回気付いたように、初歩の鍛錬を追求していくと絶対に選ぶ時がくるはずです。

初歩を飛び出し死の恐怖に耐えながら更に追求するのか、満足して止めるのか。


私は基礎を徹底的に鍛え上げた後、死の恐怖に耐えながら更に追求しましょう。

シャーロット様が見守ってくれているという考えは忘れましょう。


クリスタ先生は一度も助けていただく事なく極致までたどり着いたのです。


私たちはとても恵まれています。

死の恐怖に耐えながら、それでも鍛錬を続けて極致までたどり着いた先生が身近にいるのですから。

クラウディアは大丈夫ですね。

基礎の大切さを理解し、無理な選択をしませんでした。

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