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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 エリーアス ドラゴン

何故双子の竜王様が私を殺そうとしたのだ?


私はクリスタさんより強くなるつもりでいた。

甘い考えだったかもしれないが、私はグレートドラゴンだ。


同じ技術を鍛えれば人間に負ける訳がない。


甘い考えをなくせば勝てる。

ただそれだけでいいはずだ。

それなのに、クリスタさんに追い付こうと考えていただけの私を殺そうとした。


竜王様はクリスタさんと組手友達だと言った。


幼い方が姉だという事にも驚いたが、竜王様はまだ鍛えている途中だという。

幼い姉が妹を鍛えるという良く分からない状況だが、事実なのだと思う。


しかし、双子の竜王様の訓練に私が耐えられるとは思えなかった。

だから、確実に殺されると思い退く事にした。


私の判断は正しかったはずだ。


何故クリスタさんの事をあそこまで竜王様が評価するのかが分からない。

シャーロット様もヴィーネ様もクリスタさんを評価する。


圧倒的な力を持っている4人が評価する理由が分からない。

世界で5番目に強い。


しかし、所詮は人間だ!


鍛えたドラゴンがいないから5番目なだけで、鍛えたドラゴンがいれば必ず入れ替わる。

ドラゴンが鍛えて人間に勝てないなど、種族としておかしな話だ。


シャーロット様やヴィーネ様に叱られたが、どうしてもその思いは消せない。


お祭りの次の日、隊長に集合をかけられた。

仕事も学校も休みなので全員集まるだろう。


検問所の応接室に13時に集合という事だった。

何をするのだろうか?


私はバルドゥルと共に集合場所に向かう。

8人全員集まっているな。


説教された日からそれぞれ思う事があったのだろう。

皆が別々の気持ちを抱いているように感じる。


視線を感じるのは気のせいだろうか?

監視されるような事をした覚えはない。


「今日集まってもらったのはヴィーネ様からの指示だ。クリスタに追い付けると考えていた皆に見せたいものがあるらしい。それが、訓練所にあるそうだ。何があるかは聞いていない。ただし、それを見てやる気になるか、やる気がなくなるか、心が折れるかは分からないそうだ。最初から怖いと思うのであれば帰ってもらっても構わない。帰る者はいるか?」


また、クリスタさんの話か。

余りにも持ち上げられ過ぎている。


秘儀を覚えてから毎日耳にしている気がする。

正直に言えば食傷気味だ。


帰る人は誰もいないようだな。

当然だろう。


秘儀を覚えた人たちなのだ。

簡単な事で諦める事はできないだろう。


「帰る者はいないな。では、見に行こうか」


隊長を先頭に皆が付いていく。


「バルドゥル、クリスタさんの事をどう考えている。正直な意見を聞かせてくれ」

「子供と話をしたところ、舐め過ぎだと言われました。余りにも舐めているようなら殺されるし殺すよと。全く鍛えた素振も無いのによくそんな事が言えるなと説教をされました。エリーアス様はどうですか?」


「私は子供と話をしていない。子供たちはクリスタさんに追い付けていないのだから意見を聞く意味があるのか分からないと思っている。今弱いのは認める。鍛え足りないのも認める。だが、鍛えたドラゴンが人間に負けるのか?」

「極めたドラゴンが人間に負ける事は無いと思いますが、子供の話を聞いた後だと極める事ができるのかという不安があります」


極める必要はないと考えている。


極めれば人間と絶大な差になるだろう。

しかし、道半ばでも人間に負ける事はないはずだ。


それが、絶対的な種族差なのだから!


訓練所に着いた時、先頭を歩いていた隊長が声を出した。

無理やり絞り出したような声だった。

泣いているようにも聞こえた。


「クリスタ、お前は何故ここまでしてしまった。国を守る為ならばお前の強さは過剰だ。何故自分を追い詰める。ここまでする必要があるのか?これは訓練の後か?こんな光景を見せられて何を思えばいい。何回死を体験したんだ。十分じゃないか。頼むからもう休んでくれ…」


言葉の意味が分からない。

何が見えるのだろうか?


私とバルドゥルは最後尾だったので入り口を通り、訓練場を視界に収める。


皆は声を失ったように地面を見ているだけだ。

何か言おうにも言葉が出ないように見える。


それにしても何だこれは…?

何が起きたらこんな状況になる?

同胞が殺された時でさえこんな事にはなっていない。


竜王様の姉様がクリスタさんを鍛えたと言っていた。

これは鍛えた事で起こりうる光景なのか?


何回の死を体験したのか分からない。

訓練場の地面が赤黒く染まっている。


綺麗な地面を探すのが難しいくらいだ。


こんな訓練があっていいのか?

お祭りで誘われた訓練はこれだったのか?


私はこの訓練に耐えられるのか?

鍛えれば勝てると思っていた人間の訓練に恐怖してしまっている。


ドラゴンが人間の訓練した跡を見ただけで恐怖する。

そんな気持ちでは駄目だ。


私が一番強くなるんだ!

ドラゴンが鍛えれば一番強くなれるんだ。


それなのに、目の前の光景が私の考えを否定しているようだ。

お前には届かないと訴えてくるように感じる。


「この光景を見て何を感じたかな?これは、クリスタと竜王の姉との訓練の跡だよ。20回以上は体のどこかが破裂させられた。心臓もね。頭以外は破裂させられたと考えていいよ。私が監視する程の訓練だったけどクリスタの覚悟が勝った。常に笑顔だったよ。意識は朦朧としていたけどね。それでも、攻撃を一度も止めなかった。そして、クリスタが姉に言った言葉がある。本来は痛みを知らない私が使っていい技術ではない。この技術が生まれる為に必要だった痛みを少しでも知りたかった。この光景を見れば少しは痛みを感じられるかな?母さんが感じた痛みはもっと酷い。クリスタはそれを理解している。だからこそ笑顔だった。この訓練の後に何をしたと思う?意識は朦朧としていて、脳が体中の激痛を覚えている。それなのに、竜王と笑顔で組手をしたんだよ。半年前に約束していたから、破る訳にはいかないと思ったのだろうね。少しだけ息を整えて組手だよ。お昼から夕暮れ前まで訓練と組手は続いた。君たちが追い付けると気軽に言った相手は笑顔でやり遂げた。次のテストまでは我慢するつもりだったけど考えが変わったよ。少しは理解した?今からクリスタを馬鹿にしたら殺す!竜王の姉は竜王よりクリスタの方が覚悟していると言った。身体も精神力も最弱の人間が覚悟で竜王に勝ったんだ。どれだけ侮っていたか理解できた?じゃあね。転移魔法(テレポート)


誰も言葉を発しない。

隊長の「今日はもう解散だ」という言葉とともに各自、訓練場を後にした。


ドラゴンは最強の種族で間違いない。

鍛えれば間違いなくクリスタさんより強くなれる。


鍛えられるのか?


あの光景が頭から離れない。

お祭りの日に訓練から逃げた事実は変えられない。


帰りはバルドゥルと会話をしなかった。

お互いに話せる空気ではなかった。


家に帰り息子に聞いてみるか。


考え事でもしているのか、息子のエトヴィンは椅子に座っていた。

机の反対側の椅子に座り声を掛ける。


「おい、私がクリスタさんに追い付けると言ったらどう思う?」

「冗談でも本気でも父さんが口にしていい言葉じゃない。とてもじゃないけど笑えない」


「ドラゴンが鍛えれば最強ではないのか?秘儀を覚えた私が極めればクリスタさんに勝てるだろう?」

「もしかして本気で言っているの?殺される前に殺そうか?極めるなんて初歩も使えない人が言っても殺されるだけだよ。秘儀を舐めているのか、秘儀を使う人間を舐めているの?」


バルドゥルの息子と同じではないか。

秘儀を極めると言っただけで殺そうとしてくる。

今はお前の方が強いが、時間の問題だと理解していないのか?


「そんなつもりはない。極めたドラゴンと極めた人間、どちらが強いかは言わなくても分かるだろ?」

「ふーん…。極めたドラゴンは誰?極めた人間しか知らないけど、父さんは極めたドラゴンを知っているの?」


何故そんな事を聞いてくる。

もしかして、ヴィーネ様も鍛えている途中なのか?


「勿論ヴィーネ様だ。間違っているか?極めた最強のドラゴンだろう?」

「最悪な答えだよ。魔法を使えるのに勝てない。秘儀を使えるのに勝てない。魔法を極めるのは無理でも、人間が極めた秘儀なら自分も極められるつもりだよね?」


魔法を極めるなど、何も理解していないのはお前ではないか。


秘儀は人間が極めた事実がある。

ドラゴンが極められない理由は何もない。


「そんなつもりはない。極めた人間に勝つだけなら、ドラゴンは極める必要もないだろ?」

「自分たちは弱いと演説紛いの事までしていたのに、秘儀を覚えただけでこれだよ。全方向に喧嘩を売っている。相手は僕でもいいよ?人間を相手にしたいのなら孤児院に行く?時間がないよ。相手を指名したいなら早く決めてよ」


何を言っているんだ?

当たり前の事を言っただけで何故喧嘩を売った事になる。


しかも、全方向とはなんだ?

エトヴィンは私の言葉を何だと思っているんだ。

秘儀を私より鍛えているだけで生意気になっているのか?


時間がないのはお前の方だ!


すぐに私が追い付いく。

戦いを望むなら受けてやろう。


「残念!時間切れだよ。最高の相手が喧嘩を買ってくれたね。喜んで死んでよ」

エトヴィンが私の斜め後ろを見て話している。

誰かいるのか?


息子の視線の先を見るように、首を斜め後ろに傾ける。


「な、何故…」

沈黙(サイレンス)3重(トリプル)結界、私にも我慢の限界がある。お前は私の逆鱗に触れ続けた。時空魔法(スロウ)呪術(ステイブルマインド)闇魔法(ハングリーワーム)闇魔法(ブラックホール)。楽に死ねると思うな。無に帰す前に食い破られて死ね。結界解除」


何故シャーロット様が…。


「孤児院に行く?ここで暮らす?私が殺しちゃったから特別にどちらでもいいよ」

「孤児院に行きます。とても楽しそうですから」


体中を無数の虫が食い破っている。

この耐えがたい激痛はいつまで続くんだ…。


何故死なない…。

何故耐えられる…。

何故気絶しない…。


2人の声が遠くなる。

無の世界で蠢く虫と激痛だけを感じる。


いつまで続くのだろうか?

終わらない痛みが怖い…。

殺す場面を見せないように配慮しています。

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