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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 ジェラルシィーナ 訓練

「姉さん、今日はお祭りだから遊びに行きましょう。私はクリスタと組手がしたいの!」

「人間だったよね?ディーンがそれ程惹かれる何かがあるんだ。訓練してあげようか?」


何故そんな顔をするのかな?

妹の顔がとても困った顔に見えるよ。


「姉さん、それは止めましょう。クリスタは人間で既に最強なの。世界で5番目に強いのよ?訓練する必要はないじゃない」

「じゃあ、更に強くなれるように進化させてあげよう。楽しみだよ」


「姉さん…。聞いてないわね。とりあえず行きましょう。転移(テレポート)


クリスタが誰かすぐに分かるよ。

1人だけ異常な鍛錬をしているからね。

鍛錬をしつつ、いつでも攻撃に移れるようにしている。


面白い子だね。

シャルもヴィーネもいるのに関係ないみたい。


非常に残念だよ。


人間は自己再生ができない種族だったのか。

じゃあ、訓練内容は1つしか残っていないよ。

極小魔力の操作を習得すれば限界点に到達するね。


ヴィーネが監視するみたい。


んー、信用されていないのかな?

皆して私を異常者だと思っているよ。


私が異常者ならシャルも異常者だよ?

同じ事をした同類だからね。


訓練場に移動しても妹の心配は止まらない。

少し過剰だと思ってしまうね。


「姉さん、絶対にやり過ぎないで。クリスタは人間なの。精神力も人間なの。姉さんは多分知らないでしょうけど、地上で最弱の種族なの。それを絶対に忘れないで!」

「私はクリスタの鍛錬を見て大丈夫だと思ったよ。種族なんて関係ない。覚悟を持てるかどうかに種族差なんて無いと思っているよ」

「私はクリスタを守るから。何かあったら容赦なくいくからね」

「ヴィーネ様、ありがとうございます。私は大丈夫ですよ。待っていたくらいですから。すぐにものにして見せますよ。ジェラルシィーナ様、お願いします」


気持ちのいい覚悟だね。

これは妹が惹かれるのも分かるよ。

待っていたという言葉がどういう意味かまだ分からないけど、きっと訓練中に分かる。


「さあ、クリスタ。始めよう!」

「はい。よろしくお願いします!」


構えは普通だね。

移動速度はディーンの次に早い。


最弱の種族と言っていたのに凄いよ!


地下世界の魔人よりは確実に強い。

私が殺した魔王より強い気がする。


魔力を手から吸収して扱う魔力量が減って行ったのかな?

それで、極小魔力の操作に苦戦している気がする。


本来なら問題のない水準だね。

でも、どうせなら完璧を目指したいじゃない。


正面から向かってくる右拳を左手で受け止め、右手で魔力を流し込む。

「極小魔力の操作が甘いよ。ここに隙間ができている」


【パァン】


右腕が破裂したね。

高位回復魔法(ハイヒール)


破裂した痛みでも攻撃が止まらないんだ。

凄くいいじゃない!


左足上段の蹴りを右腕で受け止め、胸にできた隙間に左手で魔力を流し込む。


【ドパァン】


心臓が確実に破裂したね。

高位回復魔法(ハイヒール)


「姉さん!胸は絶対に駄目。人間は心臓が破裂すると衝撃で即死する可能性がある。即座に回復しても意味が無いかもしれないのよ?」

「ジェラルディーン様、大丈夫です。回復していただけるなら絶対に死にません。絶対に死ねないですから」

「クリスタ、無理なら倒れて。精神が限界だと思ったら倒れてくれればいいから」


みんな心配性だよ。

この子の覚悟がそんなに甘い訳が無い。

あの鍛錬はそんなに優しいものじゃないから。


ディーンはまだ分かっていないね。


ヴィーネは分かっているけど精神の心配をしている。

人間の精神力は知らないけど、この子は絶対に大丈夫。


・・・・。


何回破裂させたかな?

数えていないけれど破裂させられる箇所は全て破裂させた気がする。

勿論隙間ができていたらの場合だけど。


笑っているのが気になるね…。

痛みでおかくしなったのではなく、嬉しそうに笑っているから。


「ねえ。何が楽しいのか教えてくれないかな?」

「身体強化は教えてもらった技術ですからね。本来は痛みを知らない私が使っていい技術ではないのです。ですから、この技術が生まれる為に必要だった痛みを少しでも知りたかったのですよ」


なるほど。

教えてもらったから痛みを知らない。

だけど、自分で破裂させる事はできたはず。


ああ、シャルが止める可能性があるね。

だから、訓練という名目で破裂させながら鍛錬をしたいと考えていた。


極小魔力の鍛錬は破裂させながらするのが覚えがいいから。

体で違和感や痛みを覚える必要があるからね。

ここまで鍛えていれば間違える事は無くなる。


「ちょっと姉さん。普通に組手を楽しんでいるじゃない。私に交代してよ!」

「あれ。凄いね!もう習得したんだ。気付かなかったよ」

「ありがとうございます。凄く充実した訓練でした」


この子の覚悟は普通じゃないね。

何故ここまで覚悟できたのかな?


気になるけど聞かないでおこう。

シャルとクリスタの絆からきていると思うから、私が立ち入っていい話ではないね。


「すみません。魔力を限界まで吸収するので少しお待ち下さい」

「ええ。最高の状態で楽しみましょう。半年も待っていたのよ!」


本当に楽しそうに組手をしているよ。

私もあんな顔をしていたのかな?


「シィーナ叔母さん。何でクリスタの覚悟を見極められたの?」

「あの魔力操作は普通の覚悟じゃできないからね。ディーンもまだできない。つまり、竜王より覚悟があるという事だよ。だから、問題ないと判断した」


「この国にはクリスタに簡単に追い付けると思っている馬鹿なドラゴンが2人いるんだ。目障りなら殺してもいいよ。私は母さんに止められているけどシィーナ叔母さんには関係ないからね」

「馬鹿なドラゴンほど不愉快な生き物はいないよね。竜の国を滅ぼしたいくらいだよ。だからといって、鍛えてあげたくなるドラゴンもいない。空の支配者だと思われているけど、空に逃げた蜥蜴だよ」


「その通りだね。現実を知らない馬鹿は殺したくなる。母さんの技術を教えてもらって勘違いした馬鹿をたくさん見てきたけど、ドラゴンは不愉快過ぎて駄目だね」

「そうだね。努力せずに手に入れた力を自分の物だと勘違いする馬鹿は多いよ。ディーンも私の技術を使っていただけだから私に勝てない。5000年も遊んでいたら駄目だよ」


シャルは自力で身体強化を見付けだした。

魔力量を考えても100回以上は体を破裂させているはず。

クリスタが破裂を止められると思っている事を考えると、人間の魔力操作で破裂する可能性のある動きは全て試しているだろうね。


弱者の為に不要な痛みを相当我慢してきた。

クリスタはそれを知っているから痛みを知りたいを思ったのかもしれないね。


私の訓練を笑顔で終えてディーンと笑顔で組手までしている。

話で聞いていた以上に面白い子だよ。


シャルも合流して組手も終わった後、ディーンがお酒を買いたいと言い出したから街を歩いているけど、改めて見るとかなり発展しているね。


竜の国とは雲泥の差だよ。


「土地神リンゴ酒は売っているかしら?」

「ありますよ。お1人様1本までですが、2本買われますか?」


「姉さんも数にいれてくれるなんて優しいわね。じゃあ、2本お願い」

「妹さんでしたか。すみません、逆だと思っていました。2万ギルになります」


「お金を払うなんて初めての経験よ。はい、これでいいわよね?」

「はい。ちょうど頂きました。ありがとうございます」


5000年以上生きていて、お金を払うのが初めての経験ってどうなの?

問題があり過ぎじゃない?


訓練場で聞いた話も含めて説教だね。

少しの時間だけ楽しませてあげよう。


あそこにいるのはドラゴンとグレートドラゴンだね。

身体強化を少しだけ齧った感じだ。


ヴィーネが言っていたドラゴンはあの2人だね。


「君たちドラゴンだね。シャルに身体強化を教えてもらったのでしょ?」

「あなたは誰ですか?…、竜王様!どうしてお店にいらしているのですか?」

「何よ?私がお店で買い物をしたらいけないのかしら?それに、姉さんの力も分からないみたいね。竜王は双子だって事を知らないのね」


双子だと知っているドラゴンは竜の国にいる少数だけだよ。

生意気なのは消しちゃったから。


この程度のドラゴンがクリスタに追い付けるとか、ヴィーネが殺したくなる気持ちが分かるね。

私の訓練に笑顔で耐えた覚悟を思い出すと不愉快な気持ちになるよ。


「クリスタに追い付けるとか考えているのでしょ?足りてないよ。訓練する?竜王になれるくらい強くしてあげるよ?」

「何を言っているのですか?竜王様になれる訳が無いじゃないですか。種族が違うのですから」

「その通りです。最上位の鍛えたドラゴンには勝てません」

「あなた達は何を言っているの?姉さんが私に勝てるようにすると言ったら可能だと言う事よ。クリスタに追い付くつもりなのでしょ?訓練受けなさいよ!」


「身体強化を教えてもらってクリスタに追い付くと言っていたドラゴンがここまで逃げ腰とはね。ヴィーネも殺したくなる訳だよ。クリスタは私の訓練を受けて更に強くなったよ。私が新しく強くなれる方法を考えてあげたくなるくらい覚悟のある子だよ。どうするの?最上位の鍛えたドラゴンには勝てないと言ったよね?ディーンはまだ足りないね。鍛え足りないけど竜王だよ。だから、超えられるのさ」

「私は姉さんに鍛えられている所なのよ。あなた達が本気なら勝てるようになるわよ。どれ程の覚悟があるのか教えてくれないかしら?まさか、クリスタが人間だから勝てるだなんて考えていないわよね?本気で殺すわよ!」

「何故お2人がクリスタさんの肩をそこまで持つのですか?お2人なら敵ではないはずです!」


本気で殺したくなる。

この国でここまで腑抜けたドラゴンに出会うとはね。


「クリスタは私の組手友達よ。シャルの国だから殺すのを我慢しているだけ。分かっているの?」

「ヴィーネから殺しの許可は得ているんだ。訓練を受けるか逃げるか死ぬか選んでよ」

「申し訳ありません。双子の竜王様に勝てるとはとても思えませんし、訓練も耐えられるとは思えません。退かせていただきます。行くぞバルドゥル!」

「はい。エリーアス様!」


これは酷いね。

お祭りだから見逃すけど覚悟が何もない。

あんな蜥蜴がクリスタに勝つとかよく言えたよ。


「ディーン。シャルが土地神りんご酒は社に置いてあるって、そういえば言っていたよ」

「姉さん、何で今言うの?買ったばかりじゃない。買う必要なかったじゃないの」


「買い物も知らない妹に経験させてあげたんだよ。本当に初めてとは思わなかったけどね」

「は、初めてじゃないわよ…。さあ、あんな馬鹿の事は忘れましょう。その前に姉さんも何か飲み物を買わないの?」


「シャルが用意してくれているから必要ないよ。さあ、社に行こうか」

「もう、本当に買い物する必要なかったじゃない。行きましょう。転移(テレポート)


静かになったね。

ディーンは早速お酒を飲み始めたよ。


十分に楽しめたよね?


「さあ、楽しいお説教の時間だよ。一番重要な問題から始めようかな」

「な…、何を言っているの姉さん。美味しいお酒を飲みながら楽しい会話をするべきでしょ?」


「ディーンに問題です。逃げ隠れる魔人と世界樹、どちらが大切でしょうか?」

「当然世界樹よ。世界樹がなければ世界が崩壊するのですから」


「正解だね。吹き飛ばした馬鹿は今すぐ正座しなさい」

「はい…。姉さん、お酒は飲んでいてもいいでしょうか?」

逃げたドラゴンと逃げられないドラゴンでした。

お酒を許してあげる優しいお姉さんです。

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