大切な準備
私には絶対に譲れないものがある。
お祭りの日は子供たちにお腹いっぱいお肉や果物を食べさせてあげる事。
しかし、今の焜炉では200人以上いる子供が同じ時間帯でお腹を満たすのは厳しい。
かといって、焜炉を広げる余裕は孤児院の周囲に残されていない。
大問題だよ!
今後、孤児院の子供は減っていくと思う。
しかし、孤児院はそのまま別の施設として利用可能なほど整っているので問題はない。
やはり、屋上を作るしかないね。
屋上を作り、屋上への入り口を固い土の小さめの部屋にする。
雨が3階に入らないようにする必要があるからね。
今は三角形の屋根だから平らにして屋上にしよう。
屋上の外周を柵で囲み子供の落下を防止する。
雨水が屋上に溜まらないように排水ができるようにする必要もある。
煙突はそのままで邪魔にならないように縁に位置を変更しよう。
300人の子供が座れる椅子と机を用意する。
そして、50人が同時にお肉を焼ける焜炉も設置する。
今までもお肉を焼いた後に机で食べる事で大人数でも今の焜炉で問題なかった。
しかし、人数が増えた今では子供が同時に外に出ただけで溢れてしまう。
焜炉の大きさや、机の広さ、椅子の長さが足りない。
やるしかないね!
「ヴィーネ、最重要任務だよ!孤児院に屋上を作ってお祭りの日にお肉を焼けるようにするよ」
「他にも大切な問題はたくさんあると思うけど、母さんは孤児院の子供たちがお肉を焼くのが最重要なんだね。まあ、今の人数では焜炉で焼くのも手狭だしいいと思うよ。屋上を作ってあげた方が色々と便利だろうからね」
「じゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。頑張ってね」
分かってるよ。
布団から出る気がない事は分かっている。
ヴィーネが手伝ってくれない事は分かっていたもん。
寂しくなんてないんだからね!
ヴィーネに手を振ってから孤児院に移動する。
転移魔法。
今は授業中。
孤児院にはカーリンとチェルシーとクリスティーネしかいないはず。
「カーリン、チェルシー、クリスティーネ、外に出て来て」
「はーい、どうしましたか?」
カーリンは早いね。
いつも思うけど早過ぎるよ!
「遅くなりました。何かありましたか?」
「大丈夫。全く遅くないよ。クリスティーネは?」
「彼女は魔法の練習をする為に外出しています」
「そっか。魔法が使いたかったからね。いい心掛けだよ」
国防軍も見習って欲しいよ。
謙虚な気持ちで秘儀の訓練をすれば、あんな事にはならないからね。
「今から屋根を屋上に作り替えるから。このままではお祭りの日に子供たちがお肉をお腹いっぱい食べられないからね」
「今の焜炉でも上手く回せば子供たちはお腹いっぱい食べられると思いますよ?」
カーリンが指揮をすれば大丈夫だろうね。
子供たちの動きが全く違うから。
でも、それでは駄目なんだよ!
カーリンを基準にすると皆が付いてこれない。
お肉を屋上まで運ぶのが手間ではあるけど仕方がない。
お祭りの日ではなくても使えるのだから、屋上を作る意味はある。
「まあ、見ててよ。孤児院の屋上、私の思った通りになーれ!」
ふーむ…。
ここからでは見えないね。
「どうなったか見に行こう。転移魔法」
カーリンとチェルシーを連れて屋上に移動する。
「これは魔法ですか?何でこんな事になるんですか?」
「流石シャーロット様です!問題点はどこにも見当たりません」
完璧だよ!
屋上の床も固い土。
3階に下りる為の小部屋も固い土でできている。
身体強化を使わない限り子供たちが落下しない柵で外周を囲んである。
少しだけ床の中央を高くする事により、雨水が縁に溜まるようにした。
そして、雨水を地面に排水する通路も用意した。
屋上の北側に焜炉を設置。
お肉を焼くなら木材や炭がいいけど、当日は火の魔石を設置する事にしよう。
長机を北から南に向かって設置
同様に長椅子も設置。
同じ机と椅子を3列平行に設置。
机の両側に椅子があるから、1台の机で100人食事ができる。
お肉が焼きたくなったら焜炉に向かう。
そして、お皿に入れて椅子に座って食べる。
分かりやすい子供たちの流れができたね。
大人たちが夜にお酒を飲みながらお肉を焼いてもいいからね。
用意した小部屋から1階まで下りていく。
うん、大丈夫そう。
「かなり余裕がある作りにしたから問題はないと思う。何か気付いた事があったら教えてね」
「分かりました。お祭りの前に大人たちで使用してみたいと思います」
「シャーロット様は完璧ですから問題はありません。孤児院の大人たちで夜に使ってみます。ランプもありますから問題ありません」
私がランプを孤児院に6つ支給したからね。
孤児院の大人たちは特別扱いだよ。
「じゃあ、私は戻るね。またねー。転移魔法」
2人に手を振って別れる。
「ただいまー。完璧にできたよ」
「おかえりー。早く寝ようよ!」
ずっと布団から出てないよね?
寝てたよね?
甘えん坊の恐怖の大魔王は布団が大好きだからね。
私も布団に入る。
「じゃあ、おやすみー」
「うん。おやすみー」
布団を温めているヴィーネちゃんでした。




