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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第3章 神国シェリル

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閑話 マリアンネ 活動報告書

中央区にある税理官室で仕事をしていると、ヴィーネ様が突然訪れました。

何かあったのだろうか?


突然の訪問は不安になります。

国防軍はできたばかりですから問題を起こす訳にはいきません。


「やあ、マリアンネ。仕事中にごめんね。国防軍の隊長だから活動報告書を渡しておくよ。どこに置くかは任せるけど、新しい報告書はマリアンネに渡すね。それと、最新の報告書を読んで検問兵の2人を説教しておいて。よろしくね。またねー。転移魔法(テレポート)


ヴィーネ様は本当に自然現象のようですね。

風のように現れて消えてしまわれる。


活動報告書ですか…。

街長の時は毎日読んでいましたが、まだ書いて下さっていたのですね。


知っている報告書の枚数よりかなり多くなっている。

多くの問題を静かに解決して下さっている。


閲覧権限が戻ってきた懐かしさよりも、報告書の厚さがとても悲しい。

街長を止めたのは問題から逃げたのだと現実を突きつけられた気がしてしまう。


気持ちを切り替えよう。

ヴィーネ様から仕事の要請があったのだから。


最新の報告書に目を通す。


・・・・。

あいつらは何をしているんだ!

余りの内容に業を煮やす。


つい最近、念話(テレパシー)で入国者には注意しろと言われたばかりだ。

戦争に対応している時に入国されていたらどうなっていたか…。

見た目が子供だから素通りさせたのだろう。


愚かにも程があるぞ。


「マリアンネさん。顔が怖いですけど大丈夫ですか?」

「急用が入った。ディアナ、悪いが後を頼む」


「分かりました。ベンノ、クルト、仕事が増えましたよ!」

「「お任せ下さい!」」

「では、行ってくる」


活動報告書を片手に急いで検問所に向かう。

そろそろ門が閉まる時間だ。


それを見計らってヴィーネ様が来たのだろう。

私が検問所に着いた時、ちょうど2人が仕事を終えようとしていた。


「エーゴン、ファビアン。お前らに話がある。重要な話だ。今すぐ応接室に行くぞ。付いてこい」

「「分かりました」」


2人とも訳が分からない顔をしているな。

やはり、重大な失敗に気付いていないか。


検問所の近くにある応接室に入り椅子に座る。

2人が椅子に座るのを待ってから話し始める。


「お前ら2人に確認だ。子供が1人で検問所に来たらどうする?」

「子供ですから、この国では問題がないと判断します」

「同じくそう判断します」


「お前たちは子供の強さを知っていて何故そんな対応ができる?」

「子供が強いのはこの国だけの秘儀のお陰ですから」


エーゴンの回答にファビアンが頷いているな。

どこまで馬鹿なんだ。


「お前たちは検問兵失格だな。もし他国にヴィーネ様のような子供がいても素通りさせるのか?ましてや今回は角のある子だ。お前たちはその子の種族が分かるのか?子供かどうかも分からないじゃないか」

「そんな特例を言われましても…。角のある子の種族は分かりませんでしたが小さな子でしたし、小さな金棒を持っているだけでした。問題が起きても対処できる相手だと判断しました」

「はい。問題が起きても対処できる相手だと思います」


少し力をつけると勘違いする馬鹿は必ずいる。

自分の力を見せつけたいのか?

住民に披露したいのか?


「ふざけるな!問題が起きても対処できるだと?問題を無くす為の検問兵だろうが!秘儀を覚えて勘違いしていないか?相手を力づくで簡単に排除できると考えているだろ。問題が起きた時の犠牲者はどうなる?お前たちは住民に傷がつく前に対処できるのか?はっきり言ってやろう。今回の対応はヴィーネ様に殺される可能性がある程酷い。戦争があるから入国者には注意しろと言われたばかりでこれだ。社にシャーロット様がいて下さって良かったな。シャーロット様の対応された内容だ。読んでみろ」


最新の報告書を2人に手渡す。

急速に顔が青褪めていき、大量の汗が首を流れ落ちる。

報告書を持っている手が震え出す。


人を食べる種族である鬼を素通りさせているんだ。

更に子供とはいえ鬼の中で1番強い。


鬼の目的が食事だったら、こいつらは記憶を消されて飛ばされていただろう。

状況によってはヴィーネ様に殺されていた。


戦争でお2人が社にいなくても対処してくれただろう。

しかし、お2人に任せないのが国防軍だ。


「お前たちにも子供がいたな。母親が自分の娘と立ち合いたいと言われて喜ぶと思うか?黙って見ていると思うか?母にとっては子の強さなんて関係ないんだ。子を守るのが母だ。シャーロット様だから綺麗に片付けているように見えるが、真祖になってまで脅しているんだぞ?相手が子供でも殺す程の威圧をかけている。素直に降参したから許しているが、そんな事ができる母親はシャーロット様くらいだ。そして、そんな母親を見たヴィーネ様はお前たちを許すと思うか?検問兵が素通りさせていいのは国民だけだ。見た目や年齢は関係ない。そして、被害者が出るなら最初は検問兵であるべきだ。理由は語るまでもない。ヴィーネ様に何度も助けてもらって勘違いしたか?問題が起きてから対処すればいいと。お前たちは検問兵の仕事をしてないんだ。確実に監視対象になった。これからは真面目に仕事をしろ。私は活動報告書に目を通さなければならない。反省しておけ」


最新の報告書を返してもらい応接室から出る。

テストに合格したのだから国を守る思いはあるのだろう。


秘儀を覚えて勘違いしたのか、最初から勘違いしていたのか…。

検問兵の仕事を全く理解していなかった。


街長をしていた時にグスタフに任せた結果だ。

私の責任でもあるな…。


【お母さんは雑だよ】

息子の言葉が脳裏に過る。


過去の汚点は解消しなければならない。

私は国を守る国防軍の隊長なのだから。

マリアンネらしいですね。

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