閑話 クリスタ 呼び出し
あー、シャーロット様から呼び出された。
嫌な予感しかしないよ。
内容が国防軍の選別だしね。
「何をそんなに不満気な顔をしているの?シャーロット様から指名されたのよ。喜ぶべき所でしょ?」
「カーリンなら喜べるかもしれないけど私は酷い目に遭ってるの。実験に使われるの」
身体強化も私だったし、魔石持たされたのも私だったし、教員室を作ってもらったのは自業自得だし、ヴィーネ様に呼び出された時なんて悲惨な状況だったんだからね。
「私が動かない事を祈って寝るわ。おやすみ」
「補佐を頼まれて不貞腐れるなんて、本当に駄目ね」
うるさいなー!
私の気持ちを分かってもらえると思ってないもんね。
そして、翌日の夕暮れ。
訓練場に行くと結構な人数が集まっている。
人間はマリアンネさんだけか…。
まあ、仕事をする人間以外は飛ばされたからね。
ハイオークとエルダードワーフ以外の種族は来てるね。
凄いやる気あるじゃん。
あー、見た目詐欺の恐怖の2人組が来たよ。
しかも、シャーロット様の隣に呼ばれたし。
希望者に剣を持たせたって事は、心のテストだろうね。
シャーロット様、結構本気だよ!
真祖になったもん。
流石に驚いちゃった。
既に足が震えている人がいるね。
まだ何も始まってないよ?
前には可愛い女の子が3人いるだけだよ。
ほんと失礼しちゃうよね!
孤児院の大人たちを参考に殺気を出すと思うから、最後は私かな。
やっぱりそうみたいだ。
私が動ける殺気…。
全く問題なく動ける優しい殺気だね。
直接向けられていなくてもピリピリくるよ。
マッサージに良さそう!
皆、足がブルブル震えて、剣もフラフラしているね。
シャーロット様の中では別の意味を持つテストだった気がする。
隊長はマリアンネさんになったよ。
私が横にいたから気合が入ったかな?
冒険者時代の教え子の前で倒れられないよね。
私は実演だけだ!
なーんだ。
巻藁を粉砕する。
あれ?
拍手とか無いの?
無反応は酷いよ!
しかも、私が教師をするのですか…。
教室で立ち見が出そうですよ?
シャーロット様は言いたい事を言い終えたら帰っちゃうし。
回復魔法をかけたのはいいのですが、みんな気絶したままですよ?
やっぱり酷い状況だよ!
100人近く気絶している。
全員生きているのが奇跡だよ。
手加減の仕方が上手過ぎるね。
さて、帰りますか!
「明日からお願いしますねー。では!」
「ちょっと待て!教師が気絶した者を放置して帰るはずが無いよな?」
最悪だよー!
もー、私も転移して下さいよ。
「どうしましょう?全員にビンタします?」
「つまり殺すという事か?」
どんな殺人鬼ですか。
気絶した人をビンタで殺すとか。
「気合が足りないみたいでしたからね。もっと心を鍛えないと駄目ですよ」
「クリスタはどうって事ないのか?」
「何とも無いですよ。殺さないように優しさが滲み出ていたじゃないですか。マッサージに良さそうな殺気だと思ったくらいですよ」
「嘘ではなさそうだし本物の化け物になったようだね。人間卒業おめでとう!」
何故その言葉をマリアンネさんが知ってるんですか?
心の中で泣き喚いた悲しい言葉を。
「それは禁止用語ですよ。シャーロット様に言われて心の中で泣いたんですから。早く皆を起こして帰りましょう」
「そうだな。勇者クリスタの言う通りだ!」
何故その言葉まで知っているんですか?
あー、お祭りの屋台だ!
土地神リンゴ飴を売っている場所からだと聞こえたんだ。
どこまで聞かれているか分からないから黙って皆を起こそう。
特別報酬まで聞かれていると流石にまずい。
背中や肩をトントン叩いたりして、なんとか皆を起こす事ができたよ。
「それでは明日の授業で会いましょう」
「ああ、よろしく頼むよ」
みんな話す気力も無い感じだね。
心の底から疲れたと言った表情だよ。
「ただいまー。やっぱり酷い目にあったよ。結局私の時はいつもこうだよ」
「お帰りなさい。また不貞腐れているの?お手伝いができたのを喜ぶべきなのよ?」
「シャーロット様が100人近く気絶させて逃げたんだよ。酷くない?普通起こしてから帰るよね?」
「気絶する軟弱者が悪いのよ。死なないだけましでしょ?感謝するべきだわ!」
「その通りではあるんだけどね。皆テスト前は自信ありそうだったからさ」
「死なないように手心を加えてもらったんでしょ?やっぱり感謝するべきだわ!」
「国防軍に所属しようとした事は評価してあげないと。シャーロット様は死ぬ可能性があると脅しているんだから」
「シャーロット様からの呼び出しは全て応じるべきなのよ。死ぬ可能性なんて関係ないわ!」
ほんとに極端過ぎるよ。
カーリンは死亡率10割でも参加しそうだもん。
絶対にクリスティーネは中立派にしないとね。
死亡率10割でもカーリンは参加します。
カーリンが参加すれば当然死亡率が下がります。




